俺の霊圧は消えない   作:ディアブロー

14 / 16


十刃(エスパーダ)上位勢の強さ。未だに思うけど、ウルキオラ<<<ハリベルではないよね。
ウルキオラ>>>ハリベルだよね。けど、一番強いのはバラガン?
ウルキオラ、バラガン、スタークにそこまで差はないような気がする。


チャドの霊圧がついに……だと!?

 

 

 その闘いはまるで、悪魔同士が闘っているかのようだ。

 

「ぐあッ!?

(こ、これがッ、レベルアップした"虚化"一護ですら手も足も出なかった黒翼大魔……ッパネェ!!)」

 

「ぐッ!!

(この男…本当に人間か?)」

 

 激しい空中戦の末に、茶渡泰虎とウルキオラ・シファーは互いに地面に激突する。

 

 拮抗した勝負……一見、無傷のウルキオラが圧しているように見える。

 

 パワーはチャド。スピードはウルキオラ。防御力はチャド。霊圧は同等。総合力ではチャドが僅かばかり上に思えるかもしれない激闘ではあるが、どんな傷も……手足を斬り落とされようとも瞬時に再生するウルキオラの再生能力の高さが脅威となり、実際は人間であるチャドが追い込まれている状況だ。

 

 チャドの手刀で斬り落とされてしまった腕も、チャドの槍で貫かれた傷も"超速再生"能力によって完治し、ウルキオラは無傷の状態だ。

 

 対してチャドは、四肢の欠損など致命的な傷こそ負ってはいないが、体の至る箇所に傷を負っており、かなり血を流してしまっている。

 

「はあ、はあ、はあ…ぐッ…!

(やっぱウルキオラがNo.4(クアトロ)とか嘘だろ!)」

 

 チャド自身も、ウルキオラの強さをその身で嫌というほどに味わっており、内心で悪態を吐いている。

 

 だが、実際は違う。

 

「……。

(奴の拳が()()()()()()()()内臓に強いダメージを負っているな。四肢を斬り落とされるのはまったく問題ないが、このまま奴の拳を受け続けてしまったら何れ内臓が破壊されかねん)」

 

 チャドの拳は確実にウルキオラを追い込んでおり、どうやら互角の闘いを繰り広げているようだ。

 

 ただ、破面の皮膚──"鋼皮(イエロ)"は本来、チャドが思っている以上に硬いものだ。並の死神では傷一つ負わすことができず、指一本で斬魄刀を防がれてしまうほどに硬い。もちろん、その硬さは霊力の高さに比例するようで、護挺十三隊の隊長、副隊長となれば、傷一つ負わせられないということはないだろう。

 

 もっとも、ウルキオラ・シファーが相手となると話は別だ。まず、副隊長達では腕を斬り落とすどころか、掠り傷一つ負わすこともできないはずだ。

 

 それほどまでにウルキオラは強い。

 

 しかしそれはつまり、チャドがそれだけ強くなっているということでもある。

 

 そもそも、チャドは手刀で破面の腕を斬り落とせるほどまでに成長しているのだ。これも、夜一との修業の成果であり、強くなることに意外と貪欲なチャドの願望と努力に崩玉の欠片(崩子ちゃん)が応えたからでもある。

 

 チャドの霊圧は、どうやら本人が思っている以上に高次元に至りつつある。尸魂界(ソウル・ソサエティ)での激闘の日々……それだけではなく、総隊長・山本元柳斎重國と十一番隊長・更木剣八との予期せぬ闘いが、その扉を抉じ開けてしまっていたのだろう。

 

 数多の死線を潜り抜けることで強くなる……これは、死神、破面、人間と、どんな種族にも限らず共通していることだ。寧ろ、人間と死神に関しては、成長するにつれて雑念などが混じることで薄れてしまう野生──生に対する本能を取り戻したとも言うべきだろうか…。

 

「俺は…負けない」

 

 今のチャドは、生きること(霊圧が消えないこと)に対してどこまでも我夢者羅で死に物狂いだ。絶対に死ぬまいと、鬼気迫る様子だ。

 

「…ッ!

(ここに来てまた霊圧が増している…だと?

 仕方ない。万一の場合、現世で使うのを一回だけ許されている。まさか本当に使うことになるとは思っていなかったが…。大したガキだ…茶渡泰虎)」

 

 そんなチャドの鬼気迫る様子に危機感を覚えたウルキオラは、禁忌の技をチャドに放つ。

 

「冥土の土産に有り難く受け取るといい。

 

王虚の閃光(グラン・レイ・セロ) 』」

 

 自身の血を霊圧に混ぜることで放つことのできる最強の虚閃(セロ)。その威力、範囲は通常の虚閃や黒虚閃(セロ・オスキュラス)とは比べ物にならないほど大きく、空間すらも歪めてしまうほどのものだ。

 

「うおォォォォォ!!

(ウルキオラが強いのは最初から知ってた!

 けど、俺は負けん!俺の霊圧は絶対に…消えない!!)」

 

「!

(何…だと?

 腕だけではなく、()()()()()()しただと?アレは何だ?アレは…まるで鎧だ)」

 

 チャドはウルキオラが放った最強の虚閃を前に一歩も引くことなく、真っ向から立ち向かう。そんなチャドに呼応するかのように、新たに進化する能力。両腕から胴体に向けて、胴体を護るように鎧が覆う。

 

 右半分と左半分は、それぞれ腕と同様に模様が違っている。だが、その鎧はチャドの霊圧がまた一つ……更なる高みへと登った証明だ。

 

 "魔王の鎧(アルマドゥラ・デル・サタナス)"。防御の右腕、攻撃の左腕、破壊の両脚。そして今度は、チャドが魔王への道を着々と上り詰めているかのように、胴体が禍々しい鎧に覆われた。

 

「俺の霊圧は…消えない!!」

 

 チャドが人間を越えた存在へ──本物の悪魔(魔王)へと進化した瞬間だ。"悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)"に霊力を集中させ、指を開いて構えるチャドはまるで、獲物を狩るかのように……その禍々しさは破面とはまた違う。

 

 

 

魔王の鉤爪(ガラ・デル・サタナス)

 

 

 

 魔王が王虚を斬り裂いた。

 

 それは如何なるものも斬り裂く──自ら運命を切り開き、如何なる困難も乗り越えてきたチャドの強さを体現していた。

 

「何…だと…」

 

 ウルキオラも、解放状態で放った最強の虚閃を斬り裂かれるとは思ってもいなかったらしく、表情こそ微動だにしてないが、実際はかなり驚いているようだ。

 

「くッ…。

(やべェ…限界っぽい)」

 

 ただ、さすがのチャドも限界を迎えてしまう。血を流しすぎたのだ。傷の治りが常人よりも遥かに早いとはいえ、ウルキオラのように瞬時に再生できるわけではない。いくらチャドの力が虚、破面に似ていようとも、チャドが人間であることは否定しようのない、疑いようのない事実だ。常人よりも遥かにタフで、崩玉の欠片と魂魄が融合したことで超人になりつつあるが、それでも()()人間だ。

 

「チャド!!」

 

「夜…一…さん。

(ホント…いいタイミングで来てくれるよな。

 王子様みたいだ…)」

 

 薄れゆく意識のなか、チャドの瞳が捉えたのは愛しい女の姿で……チャドはそのまま、安心して意識を手放した。

 

 

 

 

 

 ▪️▪️▪️▪️

 

 

 

 

 

 目が覚めると、見慣れない天井だった。

 

 そして隣には、俺のよく知っている褐色巨乳美女が眠っている。俺の右腕にしがみつくように眠っている彼女からは、いつもの気紛れな様子がまったく感じられず、美しさよりも可愛さが際立っているように思えてしまう。

 

『ようやく目が覚めましたか。

 チャド様はウルキオラ・シファーとの闘いから()()も眠られていたのですよ』

 

 それと左腕には、崩子ちゃんだ。

 

『チャド様、ウルキオラ・シファーとの闘いではさすがでした。血を流しすぎて気絶してしまわれましたが、夜一さんとの修行での成果はしっかりと出ていましたよ』

 

 そうだった。

 

 俺は、"刀剣解放(レスレクシオン)"したウルキオラと闘い、力尽きて気絶したんだった。その記憶が次第に鮮明に甦ってくる。我ながら、よく生き残れたと思う。主人公(黒崎一護)ですら手も足も出ないウルキオラと死闘を繰り広げ、どうにか生き残ったのだから…。"刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)"までされていたら、もしかしたら終わっていた(霊圧が消えていた)かもしれない。

 

『そして…あなたの力は、ウルキオラ・シファーとの闘いによって進化した』

 

 下手したら終っていたかもしれない。それでも、ウルキオラとの闘いが俺に与えた影響はとても大きかったようだ。

 

 しかし、それよりも気になるのは俺が気を失って以降がどうなったのかだ。

 

 辛うじて、夜一さんが駆けつけてくれたところまでの記憶は残っている。それが最後の記憶で、それ以降の記憶はまったく残っておらず、夜一さんが到着したということは、恐らく浦原喜助も到着したのだろうという予測しかできない。

 

 一護もその後に到着したのか…。一護とウルキオラが闘ったのかどうか……実に気になるところだ。

 

 本来なら、茶渡泰虎はヤミー・リヤルゴに右腕をもがれてしまい、そこに黒崎一護がやって来て闘い、()()()()の影響を受けてしまったことも影響して一護も惨敗し、夜一さんと浦原さんが助けにやって来るという展開なのだが、俺が腕をもがれたくないあまりにヤミーを撃退したことでウルキオラが黒翼大魔(ムルシエラゴ)になるという予想外の展開に発展してしまった。

 

 正史とはまったく違った展開で、もうこれから先がいったいどうなってしまうのか予想できない状態になってしまっている。もっとも、それは偏に俺が原因だ。

 

「ん…んん…」

 

『夜一さん、物凄く心配されてましたよ。

 なので、まずは夜一さんのご機嫌とりですね』

 

 ただ、俺がまずやるべきことは寝起き甘えっ娘な夜一さんをとことん甘やかすことである。

 

「チャ…ド…?

 ん、チャドの匂い…大好きじゃ…ふふ」

 

 ああ、もしかしたら俺は、ウルキオラとの死闘で、実は死んでしまっていたのかもしれない。寝起き甘えっ娘は天使へと進化していた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 何度目の青天の霹靂だろう。

 

 夜一さんの寝起きの可愛さを堪能した俺を待ち受けていたのは、衝撃的な事実……残りの夏休みで進化していたのは俺だけではなく、一護もだった。

 

「到着した一護が"()()"した時は儂と喜助も心底驚かされたもんじゃ。しかも安定した状態で虚化しおった」

 

 残りの夏休み、一護とは連絡を取り合っていなかったのだが、その間にいったい何が起きたのだろう。一護が虚化を体得するのはまだもう少し先のことで、()()()()()()──"仮面の軍勢(ヴァイザード)"の手助けが必要不可欠なはずだ。それを独力で体得したのだろうか…。

 

 しかも、"黒翼大魔(ムルシエラゴ)"状態のウルキオラと拮抗した勝負を繰り広げていたというのだから驚きである。確かに、俺の記憶にある……正史の黒崎一護よりも、一護は強くなってこそいるが、まさかここまで変化が起きようとは思いもしていなかった。

 

 ただ、今後の展開がまったく予想できない。強くなった弊害は、もしかしたらあまりにも大きいかもしれない。

 

「ウルキオラという破面の口振りでは、破面(アランカル)の斬魄刀解放には、死神の斬魄刀と同じような…始解と卍解に当たる解放が存在しているようじゃ。

 つまり、ウルキオラには更に上の状態があるということ。奴の第一段階の解放状態は霊圧から見ても卍解に匹敵…いや、それ以上かもしれん」

 

 どうやら、ウルキオラは"刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)"まではさすがに披露しなかったようだが、更に上の状態があることを仄めかしてはいたらしい。ただ、俺はウルキオラのその行動に、強い危機感を抱いてしまっている。俺のこの不安、心配が杞憂に終ってくれればいいのだが、こういう時の勘は、まったくもって喜べないが恐ろしいくらいに当たってしまう。

 

 刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)の存在を大々的に仄めかしたということは、藍染にも知らせているはず。もしかしたら、他の破面達もそれを体得している可能性が高い。

 

 そして何より、ウルキオラは第二階層の更にその上にまで辿り着いてしまった可能性も高い。正史(原作)ではないが、ウルキオラがその姿を披露している記憶が俺の中には残っている。

 

 もしこれが事実ならば、相当に危機的な状況なのかもしれない。

 

 もし、今現時点で藍染惣右介の下に"刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)を体得した破面が10体以上存在していたら尸魂界(ソウル・ソサエティ)は滅亡するという最悪の事態が、本当に起きてしまうかもしれない。

 

私の本体(崩玉)ですからねェ。

 それくらいは平然とやっちゃうでしょう』

 

 崩子ちゃんがこう言っているのだ……きっと間違いない。破面の上位勢はきっと第二階層を体得していると考えるべきだろう。俺が生きるこの世界は、何もかも(難易度)が違う。

 

 果たして俺は、正史よりも遥かに難易度が上がっているかもしれない破面戦(破面篇)生きて(霊圧が消えず)乗り越えることができるのだろうか…。

 

「チャド、おぬしが無事で心底安心したぞ。

 じゃが、儂をここまで不安にさせるとは…おぬしは本当に罪な男じゃのう。

 そんな罪な男は今日1日、儂と布団の中でゴロゴロすること…よいな?」

 

 きっと乗り越えられるだろう。俺には女神がついている。

 

 

 






夏休み残りの期間、夜一とみっちり体術修行していたおかげで、ウルキオラのスピードにも対応できたチャド。
勝てないまでも、霊圧が消えることはなく…。今のチャドの限界ギリギリの闘いを経験したことで(崩子ちゃんと藍染の無茶振り)、更なる高みへ!!

チャドの新能力"魔王の鎧(アルマドゥラ・デル・サタナス)"。
"巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)"、"悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)"、滅脚悪魔(ディアブロ・デストルクシオン)、両腕、両脚ときて、今度は胴体。右半分は巨人の右腕の模様、左半分は悪魔の左腕の模様となっている。


魔王の鉤爪(ガラ・デル・サタナス)
ウルキオラの王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)を斬り裂いた鋭すぎる爪。悪魔の左腕の爪が鋭く伸びているだけだけども、威力は申し分なしである。


他の破面達も刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)
ブレソルで、帰刀のその先の形態が描かれてますよねぇ。ウルキオラに至っては第三階層が……まさか……。

チャドの知らない内に一護が虚化体得。
残りの夏休み期間中に体得していた模様。実は、内なる虚ことホワイトが、チャドなんかに負けんじゃねェ!って協力的になっていてことなどチャドは知るはずもない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。