俺の霊圧は消えない   作:ディアブロー

5 / 16


周囲にいる者の精神に反応し、その願いを叶える崩玉……それが意外性を発揮する…だと!?

何とか今日中に更新できたァ!!


チャドがツッコむ……だと!?

 

 

 運命の日──朽木ルキアの処刑日前日の夜遅く…。

 

 双殛の丘の地下深くにて、()()()()が激闘を繰り広げている。

 

 チャドが1日遅れで修行を開始し、黒崎一護の卍解修行が2日目に突入したその日、事態は急展開を迎えた。

 

 朽木ルキアの処刑時刻が早まり、明日の正午に処刑が決行されることになったのである。その凶報に最も驚き、焦ったのは夜一と夕四郎姉弟だ。

 

 一護は卍解を会得できず、チャドも短時間でのこれ以上の成長は見込めず、朽木ルキアを救出することはできず、夜一と夕四郎の脳裏に過ったのは作戦失敗という最悪の展開だ。

 

 しかし、チャドと一護は決して諦めてなどいなかった。

 

 一護は卍解を会得できなかった時のことなど一切考えずに、今日中に必ず卍解を会得するのだと己を強く奮い立たせた。

 

 チャドは夜一からのご褒美の為に……もちろんそれだけではなく、最後まで霊圧が消えることなく戦いに参加できるようにと、更なる力の開花を目指した。

 

 そして、チャドと一護は本当に有言実行を果たしたのである。

 

 その2人は現在、対護挺十三隊隊長格を想定しつつ、今現在の自身の力を把握し、体に慣らす為の調整を行っているところだ。

 

「チャドさん、あなたは大した男だ。

 ねえさまが気に入るのも頷ける」

 

「じゃろう?

 しかし、ここまで成長するとは思ってもおらんかった。まあ、それは一護もなのじゃが…本当に末恐ろしい子供達じゃ」

 

 チャドは夕四郎を倒し、一護は卍解を会得した。

 

 彼らが最終調整を行うに相応しい相手は、今この場所には()()()しかいない。

 

 チャドと一護にとって、これは初めての対決(模擬戦)だ。

 

「な…何なんだよコイツら…」

 

 そのハイレベルな模擬戦──激闘を目の当たりにし、唖然としているのは眉毛から額、首から上半身にかけて大仰な刺青を入れた赤い髪のド派手な死神──阿散井恋次だ。ちなみに、チャド達に処刑時刻が早まったという凶報をもたらしたのはこの阿散井恋次である。

 

 それはそうと、どうして敵であるはずのこの男がこの場所にいるのか……阿散井恋次は黒崎一護に敗北したことをきっかけに腹を括り、幼馴染み(朽木ルキア)を助け出す為に、一護同様に卍解の会得を目指してやって来たようだ……なのだが、その阿散井恋次は卍解を会得することにこそ成功したが、チャドと一護の激闘という模擬戦を目の当たりにし、卍解を会得するだけでは駄目だったのではないかと、目的を果たす為にはチャドと一護並に強くならないといけなかったのではないかと思いつつも、才能の違いを見せつけられ自信を失いかけているようだ。

 

 しかし、阿散井恋次がそうなってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 

 チャドは巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)を解放した状態だが、まだまだ余力を残しており、まだ隠し札(更に上の状態)があるのではないかとすら思わせる余裕さだ。

 

 対する一護も、阿散井恋次と戦った数日前よりも遥かに強くなっている。一護の必殺技"月牙天衝"も自在に放てるようになっており、それに何より……

 

「やっぱ強ェな…チャド。

 お前が味方で本当に良かった」

 

「ふッ、一護もな。

("月牙天衝"のバリエーションが増えている…だと!?

 月牙を纏った斬れる竜巻…"月牙螺旋衝"…だと!?)」

 

 一護の放った斬れる竜巻を防ぐも、チャドですら内心で動揺している。一護の成長はチャドの想定以上。

 

 これまで、お互いの背中を護り合いながら共闘したことはあれど、彼らが戦ったことなどなかった。

 

 修行の成果を確かめる為の最終調整とはいえ、まさかこのような形でチャドと一護が戦うことになろうとは…。

 

 それでも、お互いにとってこの戦いが必要なのは確かだ。一護は想定よりも早く、たった2日で卍解を会得した。そして、チャドは四楓院夕四郎との修行で更に上の領域に至った。

 

「一護の野郎…卍解してないのに何て霊圧してやがる。あのチャドって野郎もだ。コイツらすでに隊長格の霊圧に匹敵してやがる!!」

 

 たった数日で、戦闘技術だけではなく霊力、霊圧も大きく増したチャドと一護。

 

 阿散井恋次も卍解を会得し、他の副隊長よりも一歩先を行ってはいるが、まだ隊長格の領域には程遠い。

 

 しかし、チャドと一護は彼が越えられなかった壁を、特別な理由があるが、容易に乗り越えてしまった。もちろん、特別な理由だけではなく、チャドと一護が血反吐を吐きながら必死に修行した成果でもある。

 

「コイツらなら本当に──ルキアを助け出すことができるかもしれねェ」

 

 卍解をせずに、己が卍解した状態よりも強いかもしれない一護と、その一護と対等に渡り合っているチャド。これでは、自信を失いかけてしまうのも仕方がない。

 

 己の目的が、他人任せになってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 

 ただ、自信を失いかけてしまっていたのは阿散井恋次だけではない。

 

「チャド、俺はお前が朽木白哉と戦ってる時、すげぇ情けなかった。今まで一緒に、互いの背中を護り合いながら戦ってたのに、いつの間にかお前は俺の遥か先を行ってた。もう一緒に戦えないのかと思って悔しくて…それと同時に寂しかった」

 

 黒崎一護もまた、チャドの力を目の当たりにして同じ思いを味わっていたのだ。それでも、一護は決して立ち止まることなく、もがき苦しみながらも必死に修行した。

 

 何度倒れようとも立ち上がり、決して諦めなかった。

 

「チャド、また俺に背中を托けてくれ」

 

「一護…。

(え…つまり、一護はあの場所で…()()()()()()()で己自身の無力さを心の底から呪ったってこと?)」

 

 これまで背中合わせで互いを護り合っていた唯一無二の親友が、知らないうちに己よりも遥か先を歩んでいれば悔しくて仕方なく、己の無力さを呪うのも当然だ。

 

 そして、そんなチャドの存在があったからこそ、一護は新しい技を会得し、卍解すらも2日で会得することができたのである。

 

『卍解』

 

 一護は、再びチャドと背中合わせで戦う為に強くなった。もちろん、朽木白哉に打ち勝ち、朽木ルキアを救い出す為でもあるが、彼が得た力は自分一人で全てを背負い込もうとする独りよがりのものでは決してない。

 

「チャド、お前はこれからも俺の為に殴ってくれ。

 俺はこれからも、お前の為に斬る。

 "天鎖斬月"…俺はこの(卍解)をその為に得たんだ」

 

 黒いロングコートを纏い、卍型の鍔に柄頭に鎖の付いた斬月よりも小型化した漆黒の刀身が特徴の斬魄刀を手に持った一護。これが、一護の卍解だ。

 

 ただ一つだけ……一護の卍解はチャドの記憶にあるものと少し()()()()()ようだ。

 

「一護…。

(一気に()()()突入!?)」

 

 柄頭の鎖が長く伸びて右腕の肘付近辺りまで巻き付いた状態になっており、斬魄刀が右腕と融合しているような…。

 

 一護が決死の思いで会得した卍解を目の当たりにし、チャドは戦慄する。

 

「そ、それが…お前の卍解…なのか?

(お前もかィィィ!!俺と井上だけじゃなくて、お前も()()()()()を受けたのか!?

 お前はダメだろォ!崩玉の影響まで受けてどんだけ()()()()()()になるつもりなんだよ!?)」

 

 チャドは内心、かつてないほどの発狂状態だ。もしかしたら、茶渡泰虎に転生したことに気付いた時以上の大発狂かもしれない。とにかく叫びたい勢いだろう。

 

「それからチャド…卍解に慣れる為とはいえ、お前とこうして戦うことになるとは思ってもなかったけど、お前が相手なら()()()()()必要もなさそうだ。

 天鎖斬月の()()()()()()()()()()みたいだからな」

 

「何…だと…?」

 

 漆黒の斬魄刀"天鎖斬月"から迸る黒い何か……いや、これは黒い炎なのか…。

 

 

月牙滅尽

 

 

 全てを滅ぼし尽くす禁断の黒炎。

 

 その黒炎が月牙となり、チャドに容赦なく襲いかかる。

 

「ッ!?

(う、嘘…だろ!?

 親友に放っていいような技じゃないんだけど!?背中を托けるどころか、俺の霊圧を消す気か!?)」

 

 まさかの……チャドも仰天の敵は身内にあり。

 

 一護の放った炎すらも燃やし尽くしてしまうという黒炎は、"巨人の盾"で跳ね返せるようなものではない。守護悪魔(ディアブロ・グアラディアン)ですら防ぎきれないだろう。

 

 とはいえ、チャドが焦りを見せたのは一瞬のみ。すぐに平常心を取り戻して真剣な表情を浮かべ、彼は瞳をゆっくりと閉じる。そして、右手を胸元へと持っていき…。

 

 

巨人の拒絶(レチャゾ・ヒガンテ)

 

 

 右腕の盾"巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)"からオーラのような──霊圧のバリアが展開され、チャドを覆う。それはまるで、中身(チャド)を護る卵の殻のようだ。

 

 盾で跳ね返せない攻撃すらも……あらゆる攻撃を拒絶して身を護るチャドの絶対防御。

 

「へへッ、やっぱチャドは凄ェな。

 これも防いじまうんだからな」

 

「一護…今のお前ならば必ず朽木白哉に勝つことができるだろう。俺とお前ならば、必ず朽木を助け出すことができる。井上も、石田も、岩鷲も必ず助け出し、生きて空座町に帰ろう。

(寧ろ、朽木白哉死んだりしないよな?大丈夫だよね?)」

 

 一護の急成長に驚異と脅威を同時に感じているチャド。

 

 もっとも、一護と同様にチャドも脅威的な成長をしているのだが、本人は今一つそれを理解できていない。

 

 本当に、上限知らずの成長を見せる末恐ろしい高校生だ。

 

「ッ──!?

(朽木隊長に勝つだと!?あの人は俺がッ)」

 

 そんな2人に対し、阿散井恋次は強い焦燥感を抱く。

 

 この翌日、焦燥感を抱きながら先に向かった阿散井恋次は、己の上司であり、目標でもある六番隊隊長・朽木白哉と激闘を繰り広げるも、格の違いを見せつけられ敗北することとなる。

 

 目指した相手は遥かに遠く……辛うじて刃は届くも、届いた刃は砕け散り…。

 

 

 

 

 

 ▪️▪️▪️▪️

 

 

 

 

 

「チャド、一護…準備はいいか?」

 

「ああ。いつでも行けるぜ」

 

 朽木ルキアの処刑日当日──運命の日。

 

 俺達の戦いはいよいよ佳境を迎えようとしている。ここからはまさに未知の世界。

 

 史実通りならば、茶渡泰虎はこの場所にはいない。ほぼ観客のような扱いだ。

 

 しかし、俺は違う。最後まで、夜一さんと一護と共に戦う。それがこの物語にどのような影響を及ぼし、変化するかは俺にはまったく想像も予想もつかない。

 

 もしかしたら、とんでもない事態が待ち受けているかもしれない。この一連の騒動の()()から、後ろからいきなり刺されたり斬られたりするのは避けたいが…。

 

 とにかく、やれるだけのことはやった。

 

 さァ、囚われの姫を助けに行こう。

 

 






天鎖斬月が実は残火の太刀を真似て作り上げられた説。これ、かなり本当のような気がしている。

一護の中の滅却師の人がそろそろ卍解会得させんといかんけどどないしよ?って思案した結果、とりあえず残火の太刀を真似て作ろうってなり、能力はどないしよって悩んでたところ、『そや、一護のオヤジも炎熱系の使い手やったな』って思い出し、一護もその力受け継いでないやろかって考えてたところで、崩玉がその願いも叶えてくれてしまったという…。

進化した卍解。
最後の月牙天衝会得時の一護に近い形態。
崩玉の影響を受け、天鎖斬月が右腕と融合している。ただ、右腕に巻き付いた鎖の長さが肘の手前付近なのは、藍染との最終決戦時の実力には至っていないということ。

『月牙滅尽』
流刃若火、残火の太刀の炎すら燃やし尽くしかねない危険な黒炎。
そんな危険なもの親友に放つなと思うかもしれないが、チャドなら大丈夫という絶対的な信頼。もしかしたら、チャドの霊圧を消すかもしれない最大の障害は一護かもしれない。

バリエーションが増えた。
『月牙螺旋衝』
月牙を纏った斬れる竜巻を放つ。

チャドの絶対防御
巨人の拒絶(レチャゾ・ヒガンテ)
あらゆる事象、攻撃を拒絶する。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。