トレーナー辞めて結婚します   作:オールF

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1話目を投稿してから、24時間以内に4話投稿したからもう俺が書き損じた二次創作や、消してしまったやつのことは忘れてくれ……(懇願)
それはそうと感想と評価ありがとう……! 返しにくいやつに関してはスルーさせてもらってます。


④名誉終身追っかけ厄介ヲタク

 辞めたいという話をすると、人はいつも否定的だ。どうしてそこで諦めるんだと問う者やもうちょっと頑張ってみないかと引き止めてくる者もいる。快く送り出されたという者は見たことがない。

 これは彼らなりの温情と捉えることも出来れば、貴重な戦力を失ってしまうことを危惧しているとも取れる。もし、辞めたいと言って簡単に放り出されてしまったら、自分は誰にも惜しまれずに手放されるほどに愚かな存在であったのかと自覚してしまう。

 そう考えれば昨日の俺は理由は聞かれても、辞めるのを止めてきた者は誰もいなかった。冗談なのかと言われて本気だと伝えても制止はされなかった。つまりは俺はこの学園にとっても、ウマ娘たちにとっても無価値だったということだろうか。

 エイプリルフールには虚言を吐きまくり、夏合宿では担当ウマ娘から目を離して他の女性の身体を目で追っている。練習場に顔を出すのは呼ばれた時だけで、呼ばれない限りは冷暖房のある仮眠室を占拠してダラダラと過ごしている俺だが、顔は悪くないしトレセン学園での生活で鍛えられた肉体とメンタルは中々のものだ。なか卯の持ち帰り牛丼をウマ娘に奪われて病んでから音信不通になったトレーナーに比べれば常務取締役と部長くらいの差がある。

 身長179センチ、体重は……健康診断の紙は結果だけ見て捨てたから覚えてないや。爽やかヘアースタイル(自称)に恐れ知らずなクールフェイス(自称)、引き締まった肉体(自称)に加えて6年間のトレーナー業務で得た収入を晒せば、身体とお金目当ての女の子がわんさか釣れることは間違いない。しかし、そこに愛はあるんか? 俺は理想に生きる男。顔や身体、収入で食いつく女には興味ありません! 俺だって女の子は見た目だけじゃなくて中身も大切だということはこの歳になれば理解している。この俺が性格を語るのはタブーな気がするが、あえて言わせてもらおう! 顔も身体も性格もどちゃクソにいい女と結婚したいです。

 

 

 閑話休題。

 

 働きたくない+結婚相手を探すためという邪な気持ちでトレーナーになったはいいが、結局めちゃくちゃ働いて、挙句には彼女もできなかった。まぁ、ウマ娘という女の子と過ごしたおかげで女性への扱いには慣れた。今なら1時間もあれば初対面の女の子を落とすことが出来る……気がする! 

 

 

 話を戻していこう。快く送り出される者は組織に必要のない者や不利益をもたらす者が自主的に去った場合のみだ。大抵そういうやつは送り出されるのではなく、排除される。

 では、引き止められもしないし、学園側やウマ娘から切られなかった俺は一体なんなのか。たまたま優秀なウマ娘にトレーナーがいなくて、その子の目の前にいたのが俺だったという話なのだが、それでも残してきた輝かしい実績は俺と共に共有される。可哀想なウマ娘たち。頑張ったのはお前たちなのに。いや、俺もめちゃくちゃ頑張ったわ。テンション上げたいからって理由で横断幕も作らされたし、旗も作った。応援歌も作詞・作曲したし、オペラもやった。俺は本当にトレーナーか? トレーナーの中には薬物実験に付き合わされたやつもいるらしいから、それに比べれば遥かにマシかもしれない。この前見たらナメック星人みたいになっていたが元に戻ったのだろうか。

 

 

 そいつのことよりも、自分のことだ。俺ももう三十路。そろそろ身体が思うように動かなくなる時期だ。少しの運動で身体は悲鳴を上げ、胃は縮まりラーメンの替え玉が頼めなくなる。更に精力も弱って子供も作れなくなるかもしれないという歳だ。これは結婚を前提に妊娠もしてもらわねばと考えたところでキモすぎて死にたくなった。そもそも彼女の1人も居ないのに……。

 何故か気だるげな雰囲気が漂っているので、消し去るために朝の陽光を浴びようと外に出た。すると、外は大雨ザーザー。なるほど君の仕業か。低気圧は敵。憎むべき敵。

 こんな雨の中、他の担当ウマ娘への報告に行くのはめんどくせぇなと自然にため息が出る。ため息とはそういうものだ。

 濡れるから仮眠室へと戻ろうとすると、バチャバチャと水の滴ったコンクリートを走ってくる音が聞こえてくる。こんな朝早くに誰だと目を見やれば暗くてもよく映えるキラキラした栗色の髪を揺らして、見知った顔がこちらへと向かってくる。

 そいつは雨宿りするために、建物の屋根の下に入ると口を開いた。

 

 

「もぉ〜雨が降るだなんて聞いてないんだけど〜!」

 

 

 学生カバンからピンク色のタオルを出して濡れた肌や衣服を拭き取る彼女は、ようやく気付いたといわんばかりに俺の方を見た。

 

 

「あ、キミはファル子のファン第1号のトレーナーさんじゃん! ぐーぜんだね!」

 

 

「……なにやってんのお前」

 

 

 いつ突っ込もうか悩んでいたが、さすがにこの時間に偶然ここへ来たというのは無理がありすぎるだろうと俺は担当ウマ娘の1人、スマートファルコンへと口を開いた。

 

 

「うーん、青春ドラマに出ることになった時の練習? ほら、今のウマドルは走って歌って踊れるだけじゃなくて、もっとマルチにいかないといけないから!」

 

 

「そうじゃなくて……ってまぁいいや」

 

 

 なんか聞くと長くなりそうだ。昨今のウマドル事情について早朝からハイテンションかつ早口で語られるとか新しい拷問かな? 俺が投げやりに言わなくていいよと手を振ると、ファル子は嬉しそうに頷いた。

 

 

「うん! ファル子、トレーナーさんのそういうとこ結構好きだよ!」

 

 

 あぁ、俺も自分のこういう気にしといて、あとから別にいいやってなるところ嫌いじゃないよ。好きかって聞かれたら微妙だけど。

 

 

「で、どうだった? ファル子の演技、ウマドル界でも通じそう?」

 

 

「さぁ、俺はウマ娘界しか知らないからなぁ。プロデューサーかマネージャーさん辺りに聞いてみれば?」

 

 

 なんならそのウマ娘界に関してもあやふやなので、プロデューサーもマネージャーもよく分かっていないんだけどね。

 

 

「……ファル子にとってのプロデューサーさんとマネージャーさんは、トレーナーさんだけだよ?」

 

 

「ンンンン、それでは拙僧過労死してしまいますぞ?」

 

 

 しかも全部裏方じゃん。裏方好きですけどね? 本番頑張らなくていいって考えると、もうずっと裏方でいいなって思えるし、人生も主役じゃなくて脇役かモブでもいいやってなる。

 けれど、スマートファルコンはそうでは無い。常にセンター、1番目立つところにいたい。色んな人にチヤホヤされたい。愛されたいという願望を持っている。それに見合った努力は怠らないし、ファンとの交流や自身の宣伝活動にも力を入れている。まさに努力の化身だ。

 そんな彼女が貴重な睡眠時間を削ってまでここに来た理由には大凡の見当はついている。理事長室、生徒会室で暴露してきたんだ。学園全体とまではいかなくても担当たちの耳には入っていてもおかしくは無い。

 

 

「ねぇ、トレーナーさん」

 

 

 呼ばれて俺はファル子の顔を見た。その顔はいつものファン達へと向ける笑顔に溢れたものではなかった。雨に濡れてなのか、それとも暗い外気が彼女に沈鬱な表情を引き出させているのか、16番人気の俺が辞めるということを知って悲しんでいるというものだが、答えは今のところ分からない。

 

 

「ウマドルってどれくらいで結婚するのがいいのかな?」

 

 

「そういうのはファル子の方が詳しそうだけどな」

 

 

「うん、そうなんだけど。よく分からなくて」

 

 

 みんなバラバラだし、なんならしてない子もいるしと小さく言った。まぁ、ヒトのアイドルだって婚期はバラバラだし、そこはウマ娘と大差ないだろう。大抵は30近くになってからな気がする。俺やん! 

 

 

「ファル子は結婚したいのか?」

 

 

「うん! だって、結婚って女の子の夢だよ? 真っ白で綺麗な教会で、純白のウェディングドレスを着て、みんなに祝福されて、素敵な旦那様と幸せな家庭を築くんだよ?」

 

 

 わぁ、俺よりも結婚に前向きな上に結婚式やその後のことまで想定してらっしゃる。女子高生がそう考えているのに対して、俺はと言うと相手の妊娠と俺が働かないことしか考えていない。控えめに言ってもカスである。

 

 

「でもさ、ウマドルになる以上、結婚はしばらく諦めなきゃーって」

 

 

 壁に背中を預けたファル子は雨を降らせている雲を見ながらそう零した。

 

 

「……トレーナーさんは、結婚したいんだよね」

 

 

「あぁ」

 

 

「いないと思うけど、相手いるの?」

 

 

「いないって分かるのに聞くのやめてくんない?」

 

 

「それなのに結婚したいの?」

 

 

「……まぁ、おかしなこと言ってる自覚はある。けど、したいって思ったんだからしょうがない」

 

 

 お前のウマドルと同じだと、続けても良かったが、朝だからか紡げる言葉には限りがあるらしい。ファル子と同じくいつまでも雨を降らせてそうな暗い雲を見つめる。

 

 

「もう、辞めちゃうの? ファル子の次のライブ、応援してくれないの?」

 

 

「嫁ができるまでは応援出来ると思うぜ」

 

 

 なんなら結婚した後でも行っちゃうわ。なんと言っても俺はファル子が認めたファン第1号なのだ。1号ってのは万物万象、全ての原初だ。仮面ライダーしかり初号機しかり、ロボット系の1号機しかり。始まりがなければ後に続くものは無いんだ。だから、1番初めにファル子を応援した俺が行かなくてどうするってハナシ。名誉終身スマートファルコン応援団長の座は譲る気は無い。

 

 

「……そっか、じゃあトレーナーさんが結婚できないように願ってないとね」

 

 

「それはちょいと酷くない? ファンを幸せにするのがアイドルの仕事では?」

 

 

「結婚出来なくてもファル子がライブで幸せにしてあげるから問題ないよ!」

 

 

 それは魅力的な提案だ。結婚出来なかったらファル子追っかけの厄介ヲタクにジョブチェンジしようかしら。貢ぐお金はファル子に稼がせてもらったわけだし。

 

 

「だから、待っててね。私も待ってるから」

 

 

 差し出された小指へと俺は指をかける。嘘ついたら針千本飲ますとは言われなかったが、もし約束を破ったら何をさせられるのやら。ライブで飛ばす用のテープ作りとかは勘弁して欲しいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ファル子視点はなし。ごめんね……眠くって……。

最後のファル子の一人称が「私」になってるのは仕様です。言ってねぇよ! って言うやつはうまよん見ろ!

ランキング見て思ったこと→トレーナーって入ってるタイトル多いね

トレーナーが幼児退行した後の話にしようかと思ったけど、ファル子の話が書きたかった……! 俺が幕間を書かなかったのはファル子や時間のせいじゃなくて、俺が悪いんだよ。俺が持続力と集中力を持っていないのも俺のせいだ!! もう……嫌なんだ、自分が。うまぴょい、うまぴょい……うーだっち……。

オリキャラ(トレーナー)

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