トレーナー辞めて結婚します   作:オールF

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担当はあと2人です。そして主人公に友達はいません。
短めだけどキリが良かったので。


⑤友達の定義から教えてくれないかしら

 

 ファル子との会話を終えた俺はケータイをチェックする。読みもしないメールマガジンの通知や、おすすめ商品の宣伝、ウマッターからの興味はありませんかというメッセージと大して重要性はないものばかりだと思っていたが、下の方にたづなさんを通して理事長からメッセージが来ていた。

 堅苦しい文言ばかりが並んでいたが、要するに午後の3時頃に理事長室に来て欲しいというものだ。話すことは話したし、出すものは出したんだが。辞表に不備があったのなら書き直すが、理由が不当だとか言われたら俺は断固戦わざるを得ない。たとえどんな理由だとしても、退職する自由はあるはずだ。しかも、結婚するから辞めるという言葉のどこに不当性があるのだろうか。相手がいないから? それを見つけるために辞めるんだよ!!

 まぁ、相手もいないのに辞めてどうするんだよとは全くもって同感だ。反論のしようも無い。けれども、結婚するのに相手は必要だが、退職するのに相手は必要ないのだ。何を言ってるのか分からないって? 俺にも分からない。

 いつものように1人自問自答を繰り返しながら、仮眠室の扉を開ける。雨は止んでおり、雲は流れて青い空で太陽がギンギラギンにさりげなく光っている。

 

 

 さて、せっかくの土曜日だと言うのに、15時に予定ができてしまった。トレーナーに休日などあってないようなものと聞いたことがある。基本的に放任主義の俺は毎日が日曜日だったので、勝ち組、I'm winner.と働き者の他のトレーナー達を嘲笑っていたが、担当が増えるにつれて毎日が平日へと化していた。ウマの勝ち。俺は無価値。休み無し。それ悲しい話。たかが休み。それでも働く、毎日真剣とビートを刻みながら横断幕や応援旗を作った記憶が懐かしい。ああいうのは有志で作るもんだと思うんですけど、どうして俺は1人で作ってたんですかね?

 答えは簡単、俺は友達が少ない。友達の定義から教えてくれないかしらと、友達がいない人の発言ができるくらいには少ない。少なすぎて"達"じゃなくて、"人"ってつけるのが適切なレベルだ。

 今の世の中では、顔も本名も知らないような相手を友達と呼称することが可能らしい。加えて、バトルの後はみんな友達という名言もある。それらを踏まえれば俺の担当たちで倒してきたウマ娘とトレーナーはみんな友達ってことになるな! また1つ、世界の真理を解き明かしたところでトレセン学園のグラウンドへとたどり着く。

 見れば顔は知ってるけど名前はよく覚えていないウマ娘がトレーナーの指示を受けてわんさかいやがる。授業もなく、土曜日だというのに精が出るものだなと感心しながら、自分の担当の中で直接報告出来ていない者を探す。しかし、今日は屋外練習ではないのか、あるいは休日にしているのか、俺の担当ウマ娘は見られない。

 

 

「あら、アナタはエアグルーヴさんのトレーナーじゃない。珍しい」

 

 

 探していると、見たことはあるがこれまた名前がよく分からないウマ娘に声をかけられた。いかにもお嬢様って感じの毅然とした振る舞いに、メジロ家っぽくは無い毛並み。そう名前は確か……

 

 

「キングテイオー」

 

 

「キングヘイローよ!!!」

 

 

 あぁ、そうだったキングヘイローだ。あれ? じゃあテイオーはなんだ? でも、テイオーは白い毛があった気がするしヘイローで合ってるのか。ちぃ、覚えた。彼女の名前を復唱していると、こちらへと近づいてくる人影がひとつ。

 

 

「我が王の名前を間違えないで欲しいな、結婚するから辞めるトレーナーくん」

 

 

 キングヘイローのトレーナーは俺に意趣返しどころか倍返しで名前すら呼ばずにそう言うと、彼女の隣に立つ。

 

 

「悪い、自分の担当以外は覚えられなくてな」

 

 

「それってトレーナーとしてどうなの?」

 

 

「本当のトレーナーなら結婚したいから辞めたいなどというくだらない理由では辞めないよ我が王」

 

 

 キングヘイローに訊かれて嫌味たらしく肩を竦めた。

 

 

「結婚がくだらないだと? それ結婚したくても結婚できないやつにも言えんの?」

 

 

 もしくはお前が結婚したいと思った時に言われて何とも思わないの?

 

 

「趣旨を履き違えないでくれたまえ。くだらないのは結婚ではなく、それを理由に逃げる君さ」

 

 

「逃げる……?」

 

 

「あぁ、そうだとも」

 

 

 確かに俺は逃げまくりの人生だが、中央のトレセンでトレーナーができるように努力を積み重ねたし、運と慧眼で優秀なウマ娘を引き入れて、GIレースで優勝していただいた男だぞ。逃げるは恥だが役に立つという、どっかの国のことわざをご存知ではない? 

 

 

「我が王は完璧だった。短距離、マイルレース共に。これ以上にない仕上がりだった。そう、君のウマ娘さえいなければ」

 

 

 どこの国のことわざだっけと思案していると、キングのトレーナーは1人でぶつくさ喋っていた。確かハから始まる国だった気がする。

 

 

「恨んでいるんじゃない。むしろ感謝したいくらいだ。おかげで、今の王はより高みへと至ることが出来た」

 

 

 は、は、はから始まる国……ハイチ共和国とあとなんだっけな。

 

 

「だから勝ち逃げは許さない。次は私と我が王が、君と君のウマ娘よりも上だということを証明」

 

 

「なぁ、ハで始まる国ってハイチ共和国以外に何があったっけ?」

 

 

「えっ? ……バやパを抜くなら、あとはハンガリーくらいだと思うが」

 

 

 あぁ、そうだハンガリーだ! ハンガリーのことわざだった!

 

 

「おう、サンキューな!」

 

 

 俺の悩みも解決したし、ここには俺の担当はいないみたいだし、室内練習場でも探してみるか。俺は感謝の言葉を口にすると、その場から立ち去る。

 

 

「大丈夫?」

 

 

「……あぁ、心配ご無用だ我が王」

 

 

 耳にそんな声が届いたが、ウマ娘に心配かけるトレーナーが俺以外にもいるとは。やはり、俺だけがダメな訳では無いようだ。

 




友達ではなく、トレーナー枠。主人公のライバル的な存在だが名前は覚えられていない。担当はキングヘイローのみ。
主人公の友人は出ることが出来るのか……?

オリキャラ(トレーナー)

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