ウマ娘専門の育成機関の中でも、中央だとか、最高峰だとかともてはやされるトレセン学園の規模は伊達ではなく、屋内練習場に、体育館、トレーニングジムに屋内温水プール……ってこの辺は前も言った気がするな。これらに加えてライブの練習をするためのステージもあったりと、トレセン学園は伊達じゃない……! と力強く言いたくなるような設備だ。
これだけ練習場が多いと担当ウマ娘のスケジュールを把握していないトレーナーが彼女たちの1人を見つけるのにも一苦労である。よく良く考えれば今日はグラウンドではなく、ジムとプールを抑えるように言われていたのでそのどちらかだろう。
ジムはジャージ、もしくは薄手のトレーニングウェアを着て、プールでは当然だが学園指定の水着を着用することが義務付けられている。どちらも眼福なのだが、如何せんウチの指定服は制服以外可愛げがない。まぁ、俺の担当たちは可愛いからクソダサジャージや世間一般的なスクール水着すら着こなしてしまうんですけどね。しかし、1人だけ目の毒になる奴がいる。あれはダメだ次元が違いすぎる。エアグルーヴよりも大きいよ絶対……と初めて見た彼女の乳揺れを思い出していると噂をしていないのにそいつはやって来た。
「WOW! トレーナーさん! グッモーニング!」
先程のトーカイヘイローを短距離レースで3バ身差を付けて快勝したスピードクイーン、パワフルウマ娘の異名を持つ、俺の担当ウマ娘、その名をタイキシャトル。
アメリカからやって来た元気っ子で、異名の通りのパワフルな性格とダイナマイトボディが特徴的なマイルの女王だ。
「おぉ……お、おはよう。……今日もその、元気、そう、だな」
「ハーイ! ワタシはいつも元気ネー!」
あぁ、今日も元気に揺れ……ちがっ、違う! 己のウマ娘をそんな下卑た目で……想像するのは自分のお母さん、お母さん……よし、落ち着いた。にしても、ホントに高校生とは思えない身体だ。勝負服もThe Americanって感じがして、初めは目のやり場に困ったし、タイキシャトルにいやらしい目線を向ける奴らにはレーザー光線を当てなければならなかった。俺は担当だから邪な視線を向けたりとか、変な気を起こしたりはしない。心はそう……修行僧だ。
「ハウディ? トレーナーはどうデスか?」
「無論、元気で候」
元気すぎて言葉遣いがやや古風になるくらい元気。だって土曜日なんだもん。
「That's nice! それでどうしてここにいるデスか?」
あ、いちゃいけませぬか? 否、そうは言われておらぬで候。
「貴殿を探していた」
「貴殿? ワタシのことデスか?」
「肯定」
俺が頷くと、タイキシャトルは首を傾げた。
「……どうして理事長と同じ話し方デスか?」
「否定。そんなつもりは」
「そんなことナイ? ノー! ワタシの目はノット・ゴマカセ!」
腕を組みながら胡乱な眼差しを向けてくるタイキシャトル。なんだそのハイブリッドランゲージは。まぁ、いつもの事か。
「ふっ、流石タイキシャトル。みんなの目は誤魔化せてもお前の目はノット・ゴマカセだったな」
「イエース! Exactly!」
ふふんと得意気になってしまい、修行僧の人格が離れてしまう。元からそんな人格はないんだけどね。……って、いかんいかん、このままでは本題に入ることが出来ない。
「で、タイキシャトルを探してた理由なんだが」
どう話したものかと顎に手を添える。超元気印の健康優良児だが、心はそうでも無い。些細なことで落ち込むし、意外とさみしがり屋で、一人でいることを嫌うほどだ。今日は1人であることを見るに、こいつも俺を探していたのかもしれない。そんな女の子にどう伝えるか悩んだ結果。
「俺、トレーナー辞めるんだ」
悩んでも仕方ねぇ! 猪突猛進ゴー、ストレート! 俺ちゃん、トレーナー辞めるってよと言うと、タイキシャトルはぱちくりと瞬きを繰り返す。
「What? どういう意味デスか?」
ありゃ、伝わらないか。まぁやめるって言葉の意味は日本も外国も複数あるもんだしな。仕事を辞めるって英語でどういうんだっけか。それっぽいのはstopだけど、止めるって意味の方が強そうだ。続けていたことを辞めるからdiscontinueでも通じるか。さっきのやつに聞いとけばよかったな。なんか賢そうだったし。
だが、俺には俺なりの言葉がある。高校以降触れていない言葉を無理に引き出すよりは、回りくどくてもしっかりと伝えるべきだ。
「もうお前の面倒を……いや、見てないな。あー、傍に……大していなかったな。あとは、そうだな……」
「ノー! そんなことないデス!」
思った以上に彼女を放置していたことが浮き彫りとなり、言葉に詰まってしまう。しかし、こんな男にでも優しく笑顔を見せてくれるのがタイキシャトルという女の子だ。優しすぎてウマ息子になったわね……ヒヒン。それならいいんだがと仕切り直して、俺は伝えるべき言葉を述べる。
「俺、結婚するんだ」
「それは絶対ないデース! トレーナーさんはダメデース! 戦争の権化デース!」
「えぇ……」
結婚出来ないって言われるのはまだしもダメとか、戦争を誘発する存在になるとまで言われるのは心外なのだが。具体的に何がダメなのでしょうかと下手に出て尋ねてみる。
「そういうところデス」
「What!? Why!?」
「エアグルーヴも言ってマシタ! トレーナーさんはノー! ガールフレンド作れません!」
わぁ、言いそう。作らないとかできなさそうとかじゃなくて作れないって断言してる辺り。けど、俺は作れないんじゃなくて、作らないんだ。だが、そんな反論を許さないかのようにタイキシャトルは口を開いた。
「だから、トレーナーさんは、ココにいるべきデスっ!」
いやしかしここにいると結婚出来ないしな。どこにいても結婚できない気はしてるんですけど。それも俺の本性が剥き出しになっていればという話。俺の鍛え上げた演技力なら、交際中くらいは猫を被るのも容易いこと。その後に本性がバレて離婚ってなっても、法に触れないようにあらゆる手を使って阻止してやると将来の嫁に束縛宣言をしていると、タイキシャトルの肩が震え出した。
「だ、だから、いて、くだサイ……トレーナー……」
「お、お……」
どんなに強がってもこの子はまだ子供だ。10年前の俺よりも脆く弱い女の子。人より脚が速くても、身体が強くても、心は年頃の女の子なのだ。頼りなくても、クズを絵に描いたような性格をしている俺でも、3年も一緒にいれば愛着のようなものが湧いて、寂しいって気持ちが芽生えてくるんだろう。
「悪い。でも、もう決めたことなんだ」
この決断は取り下げることは出来ない。辞表も出したし、言葉にもした。辞めることも、結婚することも。
相談したらきっと止められると思ったから。この子は止めてくると俺は分かっていたから。言うのも最後が良かった。でも、止めてくれなかったら……っと、俺まで暗くなるのは良くねぇわ。
「そんなぁ……」
「気休めになるかは分からないけど、心はずっと一緒だ」
「……ココロ?」
「あぁ、ハート。気持ちってやつ」
一緒に傍にいなくても、同じ空の下にいれば心は通じ合えるし、今はインターネット社会なんだ。ケータイ1つあればいつだって連絡が取れるし、SNSを使えば近況を知ることも出来る。だから、俺がトレーナーをやめてトレセン学園から居なくなっても、心はずっとタイキシャトルと共にある。
「トレーナーさんと気持ちがトゥギャザー……?」
涙を溜めながら首を傾げるタイキシャトルに俺が力強く頷くと、彼女の顔が一転して笑顔へと変わる。俺の気持ちが伝わったと安心すると、彼女は俺へと飛びついてくる。
「うぉっ!? って、どうした急に」
「親愛のハグですっ!」
タイキシャトルは仲のいいやつにハグと称してタックルしたりすることがあったが、俺にしたことは1度もなかった。てっきり、嫌われてるか、良くてそこまで好きじゃないからだと思っていたが。なんだよ……結構可愛いじゃねぇか……ふへっ。
しかし、タイキシャトルの身長は172cm。俺と7センチしか差がない。髪の毛から漂うシャンプーの香りに、女の子特有の柔肌……これが女の子……ッ! 圧倒的リラクゼーションッ! だが、俺はトレーナー。彼女の保護者。監督責任者。犯罪者になるわけにはいかない。いでよ、マイマザー! ……よし、落ち着いた。俺は次男だけど耐えられた!
「トレーナーさん、さっきの言葉、約束デス!」
そう言いながら彼女は小指を差し出してくる。ファル子辺りが教えたのだろうか。この子には、嘘をついたら何をさせられるのだろうか。
「指切りげんまんウソついたらハリセンボン飲ますデス!」
「はは、そいつは怖ぇ」
出来れば痩せてる方がいいな。角野……なんだっけ。クレアおばさんでもないや。まぁ、似てるのが多すぎる方は御遠慮だ。そして、針千本もハリセンボンも飲みたくはない。だから、どんなに遠く離れていても俺の心だけは彼女の傍にいれるように努力しよう。この答えがたとえ詭弁だとしても。互いに後悔はしないように。
タイキシャトルの話し方難しいっすね。ルー大柴とは一味違う
デスがですだったりするのはストーリー読んでもこんな感じだったので
ひらがな+デス カタカナ+です っていう風にしてます。
次で最後の担当ウマ娘やって3話くらいで決着着けばいいな〜(着くかしら)
オリキャラ(トレーナー)
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出していいよ
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出すな