D.C.Ⅱ〜初音島に転生した転生者〜   作:もりっち

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一心同体〜もう一人の理解者〜

 

 

〜陵side〜

 

 

俺は今走っている。それは…ある人を探してるからだ。

 

あっちは探したし…残るわ…。そんなこと思いながら俺は走っていた。

 

季節は冬。寒空の下、今日はいつもより、桜の花びらが吹き荒れていた。

 

「いた…」

 

片隅のベンチに、俺が捜していた人……固い表情をした女の子が座っていた。

 

俺はその女の子…音姉に近づきながら

 

「……お姉ちゃん?こんなところで何してんの?」

 

「……………」

 

って無視ですか?俺地味に気づついたんだが……。

 

音姉は俺の言葉には反応しないでまったく顔を上げようとしない。うつむいたまんま背中を丸めている。

 

視線は、地面をじっと見つめたまんまだ。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。僕の声聞こえてないの?」

 

「……聞こえてるよ」

 

……なんなら返事してくれよ。心の中で泣いた。がちで…。

 

「あっ、良かったー。やっと返事してくれた」

 

「ねー、僕と義之と由夢ちゃんでの4人で一緒に遊ぼ!」

 

いつもは、誘わない自分だが今日は思いきって誘ってみた。

 

「……由夢はともかく、どうして私が、あなた達と遊ばなきゃいけないの?」

 

あなた達?俺と義之の事だよな?音姉から冷たい視線が突き刺さる。

 

「え…いや、どうしてって。僕がお姉ちゃんと遊びたいから……それに、心配なんだ」

 

遊びは…ついでだ。けど、心配しているのは本心。

 

「由夢ちゃんや義之もお姉ちゃんの事、すごく心配してるよ?」

 

「最近だれとも話しなくなって、ご飯もほとんど食べてないしさ、このままじゃ病気になるんじゃないかって………」

 

「……いいの。私は、病気になりたいんだから」

 

……へ?…ちょっと待って?!

 

「いやいや!?病気になんかになったら、由夢ちゃんも義之も家族みんながすごく悲しむよ?」

 

「いいのっ!……このままずっとご飯食べないで、病気になって……そうしたら、お母さんと同じところに行けるんだから!」

 

音姉は、叫び声のように…いや、悲しい声で、泣きながら叫んだ。

 

やっぱり…原因はお母さんのことだった。音姉と由夢の母親……由姫さんが亡くなった…からだ。

 

……俺がもっと原作について詳しく知ってれば助けられたかもしれない。……けど、助けられなかった……。何やってんだよ俺…。

 

「だけど、お母さんと同じところに行ったら、みんなに会えなくなっちゃうんだよ?」

 

「……いいの」

 

「…いいわけないって!みんな、お姉ちゃんの大事な家族なんだから!」

 

「だって……私とは、違うもん。みんなには私の気持ちはわかんないんだもん!」

 

分かんないって……そんなわけ……。

 

「分かんないわけないだろっ!俺だって由姫さんが亡くなって……もう、これ以上誰もいなくなって欲しくないんだよ!どうしてそんなこと言うんだよ!!」

 

俺は言葉を吐き捨てるように言った……途中、言葉がめちゃくちゃで、子供ぽくない言い方になっていることに気がついた。

 

「えっ?………」

 

「いや、あのさ……そうだ!」

 

話をそらそうと思い付いたのは義之と特訓したあの魔法。

 

「これ、食べて…元気だしてよ…」

 

手のひらに力を込めて出したのは自分でも上出来だと思える『イチゴ大福』だ。

 

どうしてイチゴ大福かって?それは、俺が和菓子の中で一番好きだからだ。

 

「……え?」

 

驚いた音姉の表情。ありゃ?イチゴ大福嫌いなのかな?

 

「…ちょっと酸っぱいかもしれないけど美味しいと思うよ…」

 

イチゴ大福は手から初めて出したからな。鉄板なのを出せば良かったかな?って少し後悔した。

 

「これ、どうしたの?」

 

「えぇーと、魔法って言ったら信じてくれる?」

 

「魔法?」

 

「うん、魔法。……って信じられないよね?」

 

「…………」

 

うわー。どうしよ。ますます、悪い方向に進んでるんじゃね?音姉は、俺が持っている和菓子をじっと眺めている。

 

「その、………和菓子嫌い?」

 

「ううん、そんなことない」

 

そう言って、俺の持っていた『イチゴ大福』に手を伸ばし、口にはこんだ。

 

「……不味い」

 

くそー。見た目だけかよ。もうちょい練習すれば良かった。

 

でも、

 

「……あはは」

 

俺の出した和菓子を持ちながら、音姉が笑っていた。……音姉の笑った姿ここに来てはじめてみた。

 

結果オーライってとこか?

 

「君も魔法が使えたんだね」

 

小さく笑った後、音姉は俺のことを振り返った。

 

「それじゃあ、お返し」

 

音姉の手のひらの上には鉄板中の鉄板。『饅頭』がそこにあった。

 

「え?」

 

そうだった…。音姉も魔法使えたんだったよな。忘れてたわ…。

 

「あはは。和菓子、嫌い?」

 

違う意味で驚いている俺を見ながら、音姉が楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「……お姉ちゃんも魔法使えたんだね」

 

「うん。だって私は正義の魔法使いだから」

 

「正義の魔法使い?」

 

……あぁー、そんなことなんか聞いたような?……聞いてないような?

 

「そう。それより、食べないの?」

 

おっと!音姉に促されるように一口で食べた。

 

「…うまい」

 

きっと俺が出したのとは格段と違う旨さなんだろう。そこいらに売っている和菓子より旨い。

 

「でしょ?」

 

そう言いながら、ニコニコと嬉しそうに笑う。さっきまでとは全く違う雰囲気で。

 

良かった元気?になってくれて。俺は、音姉の笑顔が見えて嬉しかった。

 

「ねぇ、弟くん」

 

「え?」

 

確か今、音姉の口から『弟くん』って……?

 

「だって君は、私の家に住んでいるんだから、私の弟みたいなものでしょ?

 

それに、私ばっかりお姉ちゃんって言われるのも不公平な気がするし

 

だから、弟くん。文句ある?」

 

少し不安そうに見つめながら言ってきた。―――文句か。普通ならないよな。

 

「いや、ないよ」

 

そう答えると、音姉は安心したようにな笑みを浮かべた。

 

「魔法が使えることは、二人だけの秘密だからね」

 

「秘密……あぁーそっか」

 

そうだよなー。日常茶飯事に使ってるとこ見られたら不振に思われるし、気味がられるよな。

 

俺、音姉の前で使ってしまったし。危ないな、これから気つけるか。

 

「うん。それは、私の正義の魔法使いだから。

 

困っている人がいたら助けてあげる、正義の魔法使い

 

正義の味方って正体を隠すものでしょ?」

 

……はい?なんだよ、そういう意味かい!アニメの主人公でよくある設定みたい……

 

……てかアニメの影響だろ。

 

「だから、二人だけの秘密。わかった?」

 

「う、うん…わかった」

 

俺は、しぶしぶ返事をする。

 

「それと、秘密を共有するってことは、二人は一心同体になるんだよ」

 

「一心同体……ってちが…?」

 

おい?使い方間違ってなくね?良いのかこのままで?もうどうにでもなれ!!

 

「…?私もよく分かんないんだけど、何か困ったことがあった時とかは助け合う関係なんだって

 

で、弟くんは…私と一心同体でいい?」

 

……音姉が不安そうな瞳で覗き込んでくる。選択肢は……ひとつしかないよな。

 

…俺は由姫さんとのことを思い出していた。…約束。ちゃんと守るよ。音姉と由夢、二人のことを守ってみせる。

 

言われたから守るって訳でもない。家族となってみんなが俺にとってかけがえのない人たちになったからだ。

 

「うん、いいよ」

 

「それじゃあ指きり」

 

俺の小指と音姉の小指が縮まる。…指きりってなん十年ぶりだろう…。

 

「指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指きった!」

 

言い終わると小指と小指は離れた。音姉は安心したかのように俺をみている。

 

つい数十分前とは全然違う。明るい笑顔で微笑んでいる。

 

「これで、私たちは一心同体だからね」

 

「うん…じゃあ。由夢ちゃんと義之のところに行こっかお姉ちゃん」

 

そう言いながら俺は、手を差し出す。

 

「うん!弟くん!」

 

音姉が明るくなって本当に良かった。怒ってばかりの音姉じゃなく、いつも笑顔でみんなを元気にしてくれる音姉が……本当の音姉だと。

 

「それよりさ、弟くん?どうしてさっき口調が変わったの?」

 

…忘れてくれてよかったのに。

 

 

 

 

 

〜音姫side〜

 

 

私を元気付けようとしに来てくれた弟くんにひとつ疑問があった。

 

「それよりさ、弟くん?どうしてさっき口調が変わったの?」

 

たまに見せる大人びた顔。私は、気になっていた。

 

「さっき、いつもは『僕』っていってるのに『俺』って言ってたよ?」

 

「…その。言わなきゃダメかな?」

 

……その言い方だと何かあるのかな?

 

「……一心同体」

 

困ったことがあったら助けてあげたい。そう思いながら呟いた。

 

「……お姉ちゃん、誰にも言っちゃダメだよ。ぼ…俺…転生者なんだ」

 

真剣な目で弟くんが見つめてきている。

 

「てんせいしゃ…?」

 

「うん…こことは違う世界…から来たんだ」

 

弟くんが、嘘を言っているようには思えないそんなお話だった。

 

 

今は分からなくてもいいから覚えていてっと言われた。

 

彼のその意味を知りたくて私は、弟くんのことをもっと知りたくなった。

 

 

 

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