なんにも企んでないし!…うん。
2055年3月15日の朝――。
〜陵side〜
ひら、はら、と目の前の横切る花びらが眠気を誘発する
「「ふあ〜あぁぁ〜あぁ…」」
義之と同時に桜並木で大あくびを連発した。
季節は巡り俺は付属の2年生になった。幼少期から思いっきり飛んだ?まぁ、気にするな。ご都合主義。笑
毎日退屈することなく今日も学校に向かう途中だ。
しかし今日は俺にとって楽しいイベント風見学園の卒業式だ。別に卒業式が楽しいのではなく、卒業式後の『卒パ』が楽しみだからだ。
この風見学園はお祭り好きなのか『卒パ』の他に『クリパ』やらパーティーが年に何回も行われている。
そして今日がその『卒パ』の日。
「義之−お前も眠いのか?」
「陵もかよ…ふあぁぁぁ〜」
「弟くん達、眠そうねぇ」
隣を歩いている音姉が、クスッと笑っていた。
「なんか楽しみすぎて寝れなくて…」
「そんな分かりきった嘘ついてもバレバレですよ、兄さん」
そう俺の会話に入ってきたのが由夢だ。
「どうして嘘って言いきれるんだよ」
義之の隣でニマニマしながらいる由夢に問いかけた。
「だって兄さん達、1週間くらい前から張り切ってたもんね」
「そうなの弟くん?」
由夢が余計なことを言うから音姉が怪しんでる。
「俺は、違うよ」
義之は即座に否定した。俺はってなんだよ。お前俺だけ売ったな?
「音姉も、いちいち信じるなよ。てか、由夢だって眠そうじゃん?俺らと一緒じゃん」
「わたしは卒パがかったるいだけだよ。兄さん達と一緒にしないで」
そう言いながら由夢は、俺らと同じぐらいの欠伸をした。なんだよそりゃ?
由夢は、学園内では優等生で通っているが家ではまったくもって違う顔…そう猫をかぶっている
まぁ心を開いてるって思えば…うん。
「俺らと変わらんぞ?その欠伸」
「違うってば−」
俺と由夢が、がみがみ言い合いながらそれを微笑ましく音姉と義之が見ている。
俺と義之が、朝倉家に厄介になって10年ほど経とうとしていた。
初めは、さくらさんの家で厄介になるつもりだったが、さくらさんは魔法の桜のバグがなくなった後も家を空けがちなため、今は純一さんを含め5人で住んでいる。
「じゃあ何も企んでないの?」
「俺は企んでないよ」
また義之が俺だけ売りやがった。
「弟くんは、企んでいるの?」
そういや、音姉も由夢も俺と義之をまとめて呼ぶ時は『弟くん達』『兄さん達』って呼ぶけど
俺一人だけ呼ぶ時は、それぞれ『弟くん』『兄さん』と呼んでいる
義之に関しては、『義之くん』、『義兄』と呼んでいる。
俺も義之のように、『陵くん』、『陵兄』ってな感じでもいいんだけど。
……まぁ本人達が気に入ってるから良いか。
「企むわけないじゃん…」
「最後の方、少し聞こえにくかったよ兄さん」
「由夢!お前!」
「だめだよ、弟くん。お祭り大好きでも、やってイイこととダメなことがあるんだからね?」
いやだから、まだやるとは決めてないし。うん…まだな。
「弟くんいい?くれぐれも変な騒ぎは起こさないでね。いくら私が生徒会の役員でもかばいきれないんだからね」
「お姉ちゃん、兄さんに言っても無駄だよ」
二人は俺を信用してないのか?ふむ…切なくなってきたわ。
「兄さん達は、ぜ−ったいになんかやらかすからね!」
「俺もかよ!?」
義之も含まれていた。さすが妹。
「俺も信用ないのかな?」
「もってことは俺確定なのかよ?はあ〜俺はもっとへこむわ…」
そんな感じで4人で登校していると、
「おっす、陵!義之!」
バス停の方向から声が聞こえてき
「よっ、おはよ」
「お、バス通組か?おはよう」
俺と義之が声のする方に挨拶をした。
渉と杏と茜たちがバスから降りてきてこっちにやって来た。
渉は、俺と義之の悪友。いつもこいつを含め悪さ?…まぁ仲良くしている。
杏は、一言でいうとロリだな。これに限るか。
茜は、大人顔負けのボディの持ち主だ。正直同い年にはみえない。
この3人とは、クラスは違っているが、1年の時からばか騒ぎする時は何かとつるんでいる。
しかし、今日のこの卒パではライバルである。
俺と義之は1組
渉は2組
杏と茜は3組
最高の仲間にして最高のライバル。ライバルが多ければ多いほど燃えると言うが、これはこれでかなりの強者揃いだ。
「ふふ、ちゃんと逃げずにやってきたことだけは褒めてあげるわ」
「義之くん達にのクラスには、ぜ−ったいに負けないんだから」
「俺らも杏達のクラスには負けないしな。な、義之?」
…そう今回ばかりは、絶対に負けられない。
「あ〜どもども」
渉は、俺たちに挨拶を済ませると調子よく音姉と由夢の所に擦り寄っていった。
「おはようございます、音姫先輩。オハヨ〜、由夢ちゃん♪」
「おはよう」
音姉は、にっこりと挨拶を返した。
「おはようございます、先輩方」
さっきまでとは、別人のようにすまし顔で挨拶をしている…さすが猫かぶ…
「兄さん、顔に出てますよ。後で覚えていてくださいね」
え?最近よく俺の思っていることがバレる。いや?そんなはずはないと思うけど…鋭い由夢だな?
「おはよう」
「おはようございます」
杏と茜も、音姉と由夢に朝の挨拶をしていた。さっきまでとは、態度が全然違う。お前らすごい切り返しだな。
そんな感じで、しばらく7人でおとなしく登校していた。
が、校門をくぐるとき渉が鼻を鳴らしながら
「義之ど−だ?1組の様子は?」
俺らを見下しているのか、直球すぎる言葉だった。
自分のクラスが俺らより勝っていると思っているのかこいつ?
まぁ、こいつの回りくどい言い方じゃないから一応エール交換のつもりかなんかだろう。
しかし、敵に情報をやるほど甘くはない。俺からしたら、今日会った瞬間から戦いは始まってた。
義之がどう対処するのか考えていると
「小恋のクラスだから、どうせ対した準備もしてないんでしょ?」
「昨日も自信なさそうにしてたもんねぇ、小恋ちゃん」
二人は、小馬鹿にしてるのか心配しているのか。どっちにしろ腹がたった。
「ふふ、俺たちにも奥の手があるんだ。後で吠え面かいても知らないからな」
よく言った義之。やるからにはとことんやってやるしな!
「わぁ、大きく出たねぇ」
「すごい自信ね。…義之達のバックにはあいつもいるし…」
そう…あいつがいるからな。今年の卒パも盛り上がれそうだ。
「それもそうだな。でも、こっちにだって最終兵器がいるからな!お前らになんかにぜってー負けねーからなっ!」
そう言いながら渉は教室まで走っていった。最終兵器?2組の最終兵器ってなんだ?
「いきましょ、茜」
「うん。お互いベストを尽くそうね。じゃあね」
杏と茜も、教室の方に先に向かって行った。
「相手にとって不足なしだな」
「俺らの1組の力をみせてやろうじゃん」
義之と俺はその決意に燃えて拳を握った。
あれだけ眠たかった眠気がいつのまにか消えていた。…上等じゃん。
「兄さん達、絶対になにかやらかすつもりだよ!!」
「もう……」
姉妹の心配をよそに二人は燃え上がっていた。
「「おはよ(〜さん)」」
俺と義之が挨拶をしながら教室に入るとすでにほとんどのクラスメイトが揃っていた。
「あ〜、義之ぃ〜、陵ぅ〜」
月島小恋が小走りでやってきた。
「どうしたんだよ、朝っぱらから不景気な面しやがって、そんなんじゃ今日は乗りきれないぞ」
「だってぇ〜」
義之が小恋をいじっている
俺たち2人は小恋とは幼馴染みで、毎年同じクラスにあたっている、長い長い腐れ縁…にもほどがあるんじゃないか?ってぐらいの仲だ。
「だってもくそもない、ちゃんと進んでるから心配すんなよ」
「だけどさ〜」
どうして心配するんだよ?昨日よりかは、確実に進んでいるし、今のところ問題は無さそうにしか見えない。
飾り付けや点との準備はほとんど終わっていて、残るは食材がくるのを待つだけじゃないのか?
…だけどなんだ?昨日より熱中ぶりが嘘のように感じる…なんでだ?
そんなことを考えながら
「委員長おはよ〜さん」
「いいんちょー、おはよ」
義之と俺は現場の指揮をとっている女子に挨拶をした。
「おはよう、桜内…佐々井…」
クラス委員長の沢井麻耶。
委員長は、目も合わさずに応えた。いつもの委員長とは違い力もとないな?
「どうしたんだよ?順調に進んでるしなんとかなるだろ『焼きおにぎり屋』」
俺が『焼きおにぎり屋』と言った瞬間に委員長がため息をついた。
…まぁ。大体予想はついていたがな。今さら後戻りなんかできないし、現実を受け入れるしかないだろ。
「ねえ、いったんは引き下がった身で、今さら話ぶり返してもしょうがないけど………もう一度言わせてもらっていい?」
「……………」
正直…聞きたくない。俺は黙りこんだ。
「…ちょっと!言わせてもらうわ!」
「わたしも言わせてもらうよ!」
小恋も横から口を挟んできた。はぁ〜なんだか珍しい組み合わせだな。
「……なんだよ?」
俺の代わりに義之が対応してくれた。こういう時まじ助かるぜ義之。
「「なんで焼きおにぎり屋なの!?」」
いきぴったりな委員長と小恋であった。大声で言わなくても…鼓膜さけるっつーの。
「わさわざ声そろえなくても」
「そろえたくてそろえたんじゃないよ〜」
「正直、騙された感が抜けないのよね」
3人のやり取りにクラスの大半が委員長の意見に同意しているようだ。…肩身が狭く感じる。
「べつに、俺達が決めたわけじゃねーし」
さすがに義之だけじゃかわいそうだから話に加わわった。
「そうよ!そもそもあいつが決めたんだから佐々井から言ってよね!」
「そうだよ。代表して、陵が言ってよね」
「どうして俺が?…別にいいじゃね?おもしろそうだし」
定番な店よりもインパクトあった方が面白いと思うんだけな?
「おもしろい?そう思ってるの陵だけなんだからー」
「佐々井、お願いだからあいつにーーー」
「…騒がしいな。なにを言い争っている?」
1組の諸悪の根元が、ようやく教室にやってきた。…別に俺は思ってないぞ?
「きたか……遅いぞ」
義之は、杉並をにらんでいた。
こいつは、杉並俺と義之の悪友一人。
成績優秀、運動神経抜群の男だがこいつがかなりのくせ者。悪友でもかなりの要注意人物だ。
「すまんな、高坂まゆきに追われていたのでな」
「そりゃ、遅くなるか」
高坂まゆきっていうのは、音姉と一緒で生徒会の一員。それゆえ、なにかと問題を起こす杉並を目の敵にしている。
「なんかバレたのか?」
「そんなところだ」
くそー。何がバレたんだよ。…俺の楽しみがひとつ減ったというのに、杉並は涼しそうな顔をしている。
「で、なにを言い争っていたのだ?」
「お前が提案した『焼きおにぎり屋』が不服みたいだぞ?」
一応さっきまでの流れをひとまとめして説明した。
「まだそんな話をしていたのか?すでに決着はついていると思っていたのだがな、委員長よ」
委員長は図星なのか顔が少しひきつった。
「…そうかもしれないけど、納得いかないものはいかないの」
「そうだよ。こんなので本当に勝てるの?」
委員長と小恋が杉並に不満をぶつけている。
「ふむ、そんな疑問を抱いているのか……。ならば、敢えて言わせてもらおう…………勝てる!!」
杉並はきっぱりと断言した。…言いきりやがったわ。
どうしてこれだけもめているかって?
ことの発端は、一週間ほど前にさかのぼる。