〜陵side〜
「終わったねぇ……」
小恋はさっきまであった卒業式の余韻に浸っていた。
卒業式はというとリハーサル通り進んで終わった。
卒業していく卒業生には卒業証書が授与され、感極まって泣き出す生徒がちらほらいた。
在校生も卒業していく先輩のことを思い泣いている人もいた。
もみくちゃになりながら第2ボタンをとられてた卒業生もいたな。
だが………。
「ん?なにが?」
義之は、教室で極太の羊羹にかぶりついていた。
「はぁ…義之お前な〜」
「……って、何食べてるの?」
小恋が、呆れたように言及していた。
「見てわからないのか?これは羊羹だ」
「それはわかるけど…」
「言っとくが、やらんぞ」
「いらないもん。今、そんなの食べたら、焼きおにぎり食べられなくなっちゃうよ?せっかく、味見してもらおうと思ったのに……」
「だいじょうぶ、和菓子は別腹だから」
「そんなこと言って、太っても知らないからね」
「大丈夫、大丈夫」
…あいつ手から和菓子だしたんだな。小さい頃に義之から教えてもらった魔法。
義之は、純一さんから教えてもらったみたいで、今はかなり上達している。
一応俺も、同じ魔法が使える。
しかし、義之の場合は自分のカロリーを使って作るからプラマイゼロだ。
今、小恋に言った『別腹』ある意味正しいかもな。
「…で、なんだって?」
義之は、羊羹を口に放り込みながら言った。
「んもう。義之のせいで感動も台無しだよ」
「いいから言ってみろよ」
「もー、卒業式も無事終わったね、いい式だったね、って言おうと思ったの!」
そう小恋は言いながら頬を膨らませていた。
「あぁ、普通にいい式だったな」
これほど平和に卒業式が終わり拍子抜けしていた。生徒会役員も厳重に警戒していたが何も起こらず。俺たちと一緒のような感じだった。特にまゆき先輩は……。
杉並が騒ぎを起こさないってのも別に悪くないなと思っている自分と、騒ぎがあるから普通だったなって思う自分がいる。
まぁ、問題を起こせば超豪華商品が、なかったことになっていたかもしれない……。
そう、今は卒パの売り上げが大事だからだ。
「……いや、終わりではないぞ。ここからがはじまりなのだ」
「そうよ。こうなったら、超豪華賞品とやらを拝んでやろうじゃないの!」
「というわけで、だ。まもなく開店準備は整うわけだが、佐々井と桜内はどうする?」
杉並が俺たちに訊ねてきた。
「ん?どうするって?」
義之が訪ね返した。
「もちろん、我々にしかできないことをやるのだ。すなわち……」
「……敵情視察ってわけか?」
「さすが佐々井だ、話がはやい。午前中のうちにまわっておきたいから、お前たちは二手にわかれて偵察してきてくれ」
「えー、焼きおにぎり屋さんを手伝ってくれるんじゃないの?渉くんや杏たちが偵察にきた時にも、いてほしいよ」
「なーに、強制ではない。どうしてもというなら、この杉並が行こうではないか」
「でも、杉並がうろついていると、それだけで相手に警戒されるかも」
委員長が偵察するのに杉並はまずいのではないのか?とそんな感じに言っているようだった。
「案ずるな。そんな下手を打ったりはしない」
「どうする陵?お前はどっちに行きたい?それとも残るか?」
「…できれば偵察に行きたいな。義之はどうするんだ?」
「そっか、じゃあ俺は……俺も偵察してくるよ…クラスは…3組を」
「雪村杏……侮れない存在よね」
委員長も相当警戒してるみたいだな。
「わかった。じゃあ俺は、2組の偵察に行ってくるわ」
「そっちのクラスは任せたぜ、陵。渉たちのクラスはだいたいどんなことをやってるか想像つくけど、油断するなよ!」
「任せとけって!」
「ふむ。でわ、お前たちよ。場合によっては、その場で破壊工作をしてきても構わんぞ」
「そうね。お願いするわ。彼女たち…学校行事にふさわしくないことしてそうで、なんだか怖いのよね。まぁ、念には念を入れなさいってことよ」
…委員長らしからぬ発言で一瞬ビックリした。
その時、中庭の方から空砲の合図が聞こえた。卒パが開始された合図だ。
「よし!俺行ってくるわ」
義之が教室を出て行こうとする。
「義之ぃ……」
小恋はよっぽど不安なんだろうな。心配そうな目で義之を見つめている。
「ん?」
「気をつけてね……」
「大袈裟だなぁ」
「危なくなったら、逃げてもいいんだよ?」
なんだ?この夫婦のようなやり取り?よそでやってくれよ。
「まぁ気をつけるさ」
義之は、教室から出ていった。
「じゃあ、俺も行ってくる」
「陵も、気をつけてね」
「了解っと。てか杉並どうすんだ?」
「なに、色々策を練っているから気にするな」
「そっか。なら行ってくる」
俺も義之の後を追うように教室から出ていった。
…さーてと、2組は『白河ななかのディナーショー』だよな。偵察頑張りますか。