・・・・・・ただ、その記録には奇妙なことが書かれていた。
彼は記憶障害でも患っていたのだろうか?
今日も神様は俺たちを見ている。
こちらの冒険を導く神様は、俺たちを洞窟まで連れていく。
目の前に白く淡い輝きを放つ妖精がいて、これが神様の手の代わりのように指示を出している。
時々間違えはするけど、大体のことは指示通りに動けば何故か上手くいってしまう。
いつからそうなのかはわからないけれど、幼い頃にじいちゃんに聞けば、ずっと昔からそうだったとだけ教えてもらえた。
今のメンバーは、王直々の命を受けて勇者になった俺ことワンと、優しい心を持った僧侶のトゥ、怪力自慢の格闘家スゥリ、頭脳明晰の魔法使いフォスの4人だ。
前日に全員が同じ酒場で出会って意気投合し、即席ながらも期待できそうなパーティーが出来上がった。
しかし全員酒を飲んだり元々手持ちが無かったりしたのか、所持金を全員合計しても1人宿にすら泊まれないような状況だった。
仕方なく人目のつかないところで夜を明かし、再び酒場で金策となるクエストを探して、ついに見つけた。
さて、長々話していたら目的地の洞窟についた。
今回のクエストは、近場の洞窟に済むゴブリンの親玉を倒してお宝を持ち帰るのだ。
宿に泊まることすら叶わないビンボーパーティだが、今回の依頼を成功すれば、全員一生涯かけて遊んで暮らしてもなお余る大金が手に入るらしい。
ただ、みんなどうしてか手をつけないので、俺達が先に頂いてしまおうってやつさ。
景気よくみんなでオーっと掛け声を高らかにあげ、洞窟の地面に足をつけた。
・・・・・・が、何かがおかしかった。
少し進んだだけなのに、頭がおかしくなるような瘴気を感じるし、どうも記憶まで混濁してしまったみたいだ。
おかしいな、スゥリは途中で敵の起こした崖崩しに巻き込まれて帰って来なかったのに・・・・・・なんでここにいるんだ?
どうしてそんなに可愛らしい笑顔をしているんだ?
・・・・・・それに、ゴブリンの親玉なんてどこにいるんだ?
倒したと思ったんだがな・・・・・・???
それでも妖精は淡い光でまっすぐ洞窟の奥へ進んでいく。
でも、洞窟なのにこんな不気味に紫に輝くような壁や天井をしてるものなのか?
まるで本で見たような、アメジストがちりばめられたような・・・・・・いや、本物は1度見ている。
何万年もかけて育まれたそれは、今でも昨日のように思い出せ・・・・・・あれ、昨日は魔王討伐に向けて宿を・・・・・・???
いやいやおかしい、いったん整理しよう。
まず酒場でクエストを受けて、その後目的地の洞窟に入った。
それで・・・・・・なんでだ、どうしてこうなった?
俺の体はこんなに筋肉質だったのか、それに豪華な鎧やらを着込んで大剣まで担いでる。
買った事も無いし、そもそも貧乏人達にそんな金がどこにある?
そうして混乱する俺をよそに、フォスは一方的に顔を赤くして上目遣いに見つめて口を開ける。
「ねーワン、私・・・・・・あなたの初々しい背中を忘れられなくてそのままついていって、今はすっかり逞しくなって・・・・・・。
そんなあなたが愛おしくてしょうがないの。
帰ったら・・・・・・その・・・・・・結婚、しましょ?」
フォスは、さも長年隠していたような素振りで俺を見つめて愛してる事を伝えるが・・・・・・昨日あったばかりだろ・・・・・・少し気味が悪い。
スゥリは眉一つ動かさず、瞬きすら見かけていない。
トゥは薄ら笑いをして、優しさなんてもはや昔に捨てたような不気味さを覚えた。
俺は・・・・・・悪い夢を見ているのか?
みんな、人としての何かを失っていて・・・・・・これじゃあまるで異常者の集まりじゃないか・・・・・・。
誰もいない瘴気の漂い続ける廊下をひたすら抜けていくと、ゴブリンの親玉が現れた。
・・・・・・いや、魔王か。
優しい母親の顔つきに逞しい父親の肉体、フォスのように強大な魔力を隠しもせず・・・・・・。
・・・・・・。
見た目を判断している途中、胃の中にあるもの全てを出すように勢いよく嘔吐してしまった。
おかしな物を見すぎて思考が壊れた事を体が訴えているようだ。
消化しきれていない肉やら野菜やらが出てきた、いや・・・・・・消化どころか、これは高い金を出して食べるようなステーキじゃないか!?
俺の腹から、美味しそうな匂いを醸し出す上等なステーキが出てきやがった。
鉄板なんて飲み込もうとも思えないのに、当たり前のように肉を乗せて出てきちまった。
そんな様子を妖精は見ているような感覚がする。
目なんか1度だって見ていない、ただ・・・・・・こちらで起こっている奇妙な状況を、ひたすらに笑っているような視線を感じた。
その時、強烈な頭痛を起こして意識を失ってしまった。
何もわからなかった、何も・・・・・・。
「さて、酒場で仲間を集めるぞ!」
朝が来た、冒険を始めよう。
お供に神様の使いの妖精を連れて、街まで向かっていく。
清々しい青空に遮らない陽の光が暑い。
まるで冒険の始まりを祝福しているみたいだ。
しかし、そんな祝福は無惨にも絶望に変わってしまう。
地平線まで続くようなヒビ割れが、空を2つに分けた。
空が落ちてくる、青い色の雲間と模様そのままに。
そうして光さえ届かないような暗闇が隙間に見え、ヒビは暗闇から逃げるように広がっていき・・・・・・その暗闇から巨人が姿を現した。
初めは神様だと思った。
小さい頃に読んだ本によれば、神は雲の上に住んでいて、私達を見守っている。
だが、神様と思わしき巨人は、俺をじっと見つめているように思えた。
薄ら笑いが気持ち悪い。
まるで何かに興味を持っているみたいだ。
そして巨人は、空を巨大な指でカタカタとつつきだした。
ヒビは入らなかった。
しかし、街に目を向ければ異様に縦へ横へと引き伸ばされた建物が見える。
点滅しているものだってあった。
俺の肩も横へ無駄に伸びて建物を貫通したが、痛くも痒くもなかった。
その後も嬉しそうに巨人は空をつついて、その度に俺達が奇形を形成していく。
満足しきれないのか、酒場に向かう俺なんかどうでもいいように装備が勇者に相応しい物へ変わっていき、様々な状態異常を与えられて絶望的な苦しみを味わわされた。
それでも俺は無表情でいるしかなかった。
そして激しい頭痛に意識がプツンと切られてしまった。
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朝が来た、冒険を始めよう。
お供に神様の使いの妖精を連れて、街まで向かっていく。
清々しい青空に遮らない陽の光が暑い。
まるで冒険の始まりを祝福しているみたいだ。
今日はいい事、起こるといいな。
チートバグ動画見てたり、今年の太鼓のエイプリルフールで解禁された曲とか聞いてたら思いついてしまったので、忘れないうちに書きました。
気味の悪い文章、難しい。