キャラ造形や彼らの認識の整理を含めて書いたベルフェゴールの独白文です。
沼に落ち切った者の末路です。

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第1話

 

 

たまに後悔する。

つくづく、召喚されなきゃよかったってな。

 

 

「儚いヴィータのお前さんが死ぬまで」

そう休戦期限を定めて、お前さんに召喚されたのは確かさ。実際、そん時はそう思ってた。それもまあ悪くねえってな。

 

 

軍団、『メギド72』に在籍して、年甲斐も無く結構驚いたりしたもんだ。

 

追放メギドだけじゃなく、なんらかでこっちに来たり、向こう脛に傷があるような奴らが全員仲良く…とまではいかねえが、それでもくだらねえ内紛は起こさず、軍団として機能している。少数だからってのもあるだろうが。

 

正直、異様で気持ち悪ぃ。

 

 

一番以外だったのはてっきりお飾りの王…いいとこ、フォトン袋ぐらいにしか思ってなかった王サマが想像以上に果敢に働く事だ。

 

ひ弱で貧弱で、フォトン寄越してくる以外戦闘にはクソの役にも立たないが…問題はその考え方だな。

 

そりゃあ、ヴィータである事に変わりは無いが…メギド、として幻獣の全ての立場に立って、思考をしてる節がある。そんでそれがサマになってやがる。

 

 

俺たちゃメギドだ。そりゃ当然の事。当然に生態系のトップに立つし、ヴィータなんぞは見下してるし、生まれながらの強者。そうじゃなきゃ、生きていけない。そう生まれてきたんだ。

 

だから、他からの立場の視点がわからない。種族レベルで異なる相手の理解が出来ないのさ。

俺らんとこの王サマは、それを補ってる。

 

成る程。『多様性』か。

悪くねえ。素直にそう思う。

 

 

全く、オジサンが驚くような事だらけだ。数日間がうん十年みたいに感じる。それくらい、濃密だ。色々とな。

 

案外、アジトで駄弁ってたりするのも悪くない。色々な話を聞く事が出来るし、顔見知りにもちょくちょく会える。師匠、なんて呼ばれた時はこんな所で会うもんかねえとも思った。

 

何より、たまーに贈り物を貰えんだ。

なんとかって日の菓子はハイカラなものすぎて石鹸かなんかだと思ったけどな。

 

 

そんな感じで、軍団での生活は、まあ充実していて、気楽で…

んで面倒くさい。

イヤ本当、何度も何度も戦いやら探索やらに駆り出すのは勘弁してくれよ。その度憂鬱になんだよ。やっぱりあの時、きっぱり断って殺しとくべきだったかねえ。

 

 

たまに、後悔する。

召喚されなきゃよかったってな。

 

やれやれとソファーベッドから降りて、さあ、今日はなんだいと思ったある日の事。

 

だんだん俺がソロモンの力に成ろう、なんて思っている事に気がついちまった。

うちんとこの王サマに、どうしたら『勝算』を与えられるかってな。そりゃ、軍団の一員なんだし当たり前ではあるんだけどよ。

 

ぐうたらと数十年ぽっち過ごしてりゃあ終わるだろうと思ってたこの生活が、いつのまにやら微妙に惜しく感じてきちまった。

 

そうなった自分に、気づいちまった。

せめて気づかなきゃ楽だったんだが。

 

 

ヴィータ式の愛着だとか、感情を、どんどんとこの身体が得ちまってる。ヴィータがヴィータらしくあるための、戦争社会とメギドに不要な、下等生物の持つ感情だ。

俺たちメギドが本来、持つ筈もねえ感情。

 

 

ああ、クソ。これだからメギドはヴィータ体を取るべきじゃなかったんだ。

 

窮屈な身体に押し込められて、その身体を持った時から、生命体としてのメギドは衰退を始めた。ヴィータの体となり、ヴィータに興味を持たざるを得なくなった時点で、俺たちはもう終わっていたのさ。

 

『新世代』を見てみろ。

奴らはヴィータじゃない。ましてやメギドでもな。ヴィータの身体をした何者か。そんでそれが、新たなメギドの枠組みに、時間と共に成り代わるだろう。

 

俺は怖いね。いつか俺たちみたいな『戦争好き』こそが古い者として淘汰されるかもしれないんだ。

 

 

ヴァイガルドはいわば、メギドにとっちゃ無駄な知識の宝庫さ。知ること全てが損になりかねない。いや、それで実際損したのがビルドバロックのあの醜態か。芸術組の排斥すら正しく思えるぜ。

 

 

俺自身、ヴァイガルドなんざ知っちまった挙句にこんな老いたヴィータ体に身をやつしちまってるんだ。

 

今でも、忘れるこたあねえ。

魂が、この身体が忘れさせない。鏡を見る度に、顔に入った傷が思い出させてくる。

無茶の度に痛む腰と肩が、老いた身体とその現状を否応なしに思い出させる。

 

俺はなんでヴィータの女なんかと暮らしていたんだろうな。結婚した理由なんざ覚えてもないし思い出すのも面倒くせえ。

ただあれは、楽しかった。その漠然とした感情だけは忘れられない。

 

 

そしてまた、今も楽しい。

それらが事実なのが忌々しい。

 

 

「…つ、いててて」

 

 

目の横にある傷と、ズキりと痛む腰をそれぞれ片腕ずつでさする。

 

ソロモンが死んだら。

この軍団から離れて長く生きる内に、俺はどういう理由でここに居たかも思い出せなくなんのかね。で、そん時はまた、ただ楽しかったって事だけ思い出すのか。女々しく、ヴィータみたいに。

 

それとも、この軍団に居る数十年の内に死ぬか。そもそもここに居るうちに、後ろから撃たれて死ぬかもしれねえか。

そもそも本当にこいつらの事を信用していいのか?それすら未だに信じきれねえな。

 

 

俺はいつまで、そうして生きてるつもりかね。

 

 

クッ、と笑って考えるのをやめだ。

面倒くさいし、憂鬱になるだけだ。

やめやめ、我ながららしくも無いぜ。

 

先の事を考えるなんて憂鬱になる。ただでさえ現在すら目を逸らしたいもんだらけなんだ。これ以上抱えこまなくてもいいだろ。

 

 

「ん…あいよ、ご指名かい」

 

 

だから俺は、目の前の今だけを楽しむのさ。

どうせ、すぐに過ぎてく儚い一瞬。

ヴィータの命なんざ、たかが数十年。

楽しい時間はあっという間に過ぎちまう。だからこそ、この今をこそ楽しまなくっちゃあな。

 

 

走ってく王サマの後ろを付いてく。

幻獣のピリつく殺気の気配。血の匂い。いいね。だんだん気分が上向きになってきたぜ。

ちょっと前ならこれだけでもテンションマックスだったんだが、歳は取りたくないもんだ。

 

 

くっくっ。

笑いが、込み上げる。必死に走ってるソロモン王の姿。俺たちよりも寿命も短く、貧弱で、どうしようもなく愚かな下等生物。メギドと比べるのすら失礼なくらいの。

 

 

そんな奴が、此処に居るメギドの誰よりもまた必死な顔をしてんだ。

 

ヴィータはいいね。

メギドよりよっぽど感情が豊かだ。

そしてまた、その表現の仕方もな。

 

 

 

「さあ…

ギリギリの命のやり取りと行こうか」

 

 

 

だからヴィータは、嫌いになれねえ。

そう否応なしに思わされちまう。

 

ああ、こんな事思っちまうくらいなら召喚されるんじゃなかったぜ。

たまに、後悔する。

 

…ホント、たまにな。

 

 

 

 


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