仮面を脱ぎ捨てて   作:どうして

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対戦よろしくお願いします


デビュー前~ジュニア級編(みんなとふたり編)
5話.籌を帷幄に運らし、勝ちを千里の外に決す


【朗報】ペルちゃん、シェアトに加入【トレーナーイケメン】

 

 

 さる平日、アプリ版主人公らしいパーフェクトコミュニケーションで見事ペルちゃんをスカウトすることに成功したトレーナーさんに万雷の喝采を!

 

 ……という冗談は置いておいて、なんとか当初の思惑通りペルちゃんをチームに所属させることに成功した。

 あとはこう、トゥインクルシリーズの3年間をペルちゃんといい感じに駆け抜けてペルちゃんに競争する楽しみを感じていただいて、たまーに俺も外に出て走らせてもらえれば個人的には大勝利間違い無しのルートが固まった。

 

 ただ、いざというときに……というかペルちゃんがレースに出走した際に失神しなくなるまで、レースの主体は俺なのだ。遺憾ながら。

 デビューまでにペルちゃんのあがり症を克服できれば一番だけど……おそらく厳しいだろう。レースのグレードで緊張具合が変わることはないだろうが、外野の声が大きくなればなるほどペルちゃんはアガる。要は、今のペルちゃんならG1なんて出た日にはパドックに入る前の地下道で気絶間違いなしなのだ。

 

 トレーナーさん曰くクラシック路線を走る予定だから、皐月賞までにはなんとかしたいところだが……。そのあたりも相談できればいいな。

 

 今日はチームシェアトメンバーとの初顔合わせ。そういやどんなメンバーがいるのか知らんな……。キングは確定として……

 

 

(もうひとりの私? ど、どうしたのそんな、ぶつぶつって独り言言って)

 

(え? や、まあ大したことじゃないんだけどな。今日チームのメンバーと初顔合わせじゃん? どんなウマ娘がいるのかなって)

 

(んとね、クラスの友達に聞いてみたんだけど、短距離に強いチームなんだって。でも今年チームに加入したウマ娘は2人で、片方はティアラ路線の娘なんだって)

 

(へえじゃあもう1人はオレたちで、クラシック路線走るのか。手広くやってるな)

 

(みんな優しい人だといいなあ。キングヘイローさんは優しかったけど)

 

 

 やいのやいのと心のなかで会話をしつつ、シェアトの部室前までやってきた。

 スピカやシリウス、カノープスらと並んで俺が並ぶのはすごい申し訳ない気分になるというかなんというか……。

 まあ走るのはペルちゃんの身体やしええやろ! かまへんかまへん! う゛と゛ん゛は゛お゛か゛ず゛や゛!

 

 ……しかし何かひっかかるんだよなー。大事なことを忘れている気がする。なんかこう、サバの小骨が喉に突っかかってるみたいな違和感が拭えない。

 無事トレセン学園には入学できたじゃん? この上なく面倒見のよい先輩と仲良くなれそうじゃん? 将来安泰っぽいチームに入れたじゃん?

 

 ……チーム? そう言えばさっきペルちゃん”シェアトは短距離に強いチーム”って言った?

 待て。待ってくれ。そしたらもしかしてチームにはあの娘が!?

 

 

「こ、ここがチームの……。こわがってても仕方ないし……。よ、よし、レッスン1、健気に立て……!

 

 ご、ごめんくださーい?」

 

「はーい? どちらさまー?」

 

 

 扉を開けると、そこには……

 

 

「あ、ウィルちゃんだー! 私カレン! 待ってたよ?じゃ、早速入って入って!」

 

 

 

………

 

 

………

 

 

カ ワ イ イ カ レ ン チ ャ ン !

 

 

 

カレン!カレン!カレン!カレンぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!カレンカレンカレンぅううぁわぁああああ!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくんんはぁっ!カレンチャンたんのクリーミーベージュの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!ストーリー4話のカレンたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!アプリ実装決まって良かったねカレンたん!あぁあああああ!かわいい!カレンたん!かわいい!あっああぁああ!SSRも実装されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!ぐあああああああああああ!!!SSRなんて現実じゃない!!!!あ…ストーリーも育成シナリオもよく考えたら…カ レ ン ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!トレセン学園ぁああああ!!

この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?ホーム画面のカレンちゃんが僕を見てる?ホーム画面のカレンちゃんが僕を見てるぞ!カレンちゃんが僕を見てるぞ!レースエントリー画面のカレンちゃんが僕を見てるぞ!!シナリオ画面のカレンチャンが僕を見てるぞ!!強化育成画面のカレンチャンが僕を見てるぞ!!アプリのカレンちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはカレンちゃんがいる!!やったよキング!!ひとりでできるもん!!!あ、SSRのカレンちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!あっあんああっああんあカフェぇえ!!バ、バクシンオー!!キタちゃぁああああああ!!!サトイモぉおおお!!ううっうぅうう!!俺の想いよカレンへ届け!!トレセン学園のカレンへ届け!

 

 

 

(もうひとりの私)

 

 

はい。

 

 

(うるさいから、静かにしてて)

 

 

ごめんなさい。

 

 

―――

 

―――――

 

――――――――

 

 

 一人で不定の狂気を発症している間に、ペルちゃんはチームのみんなと一通り顔合わせを済ませたらしい。トレーナーとも適切なコミュニケーションが取れているあたり、小学生のころと比較すると成長したな、と改めて実感する。

 ……いや、ペルちゃん割と昔からこんな感じか。身内認定した人には割と普通に話せるのだ。それでも大人の男性とはうまく話せていなかった昔と比較するとトレーナーと(距離はめっちゃ離れてるけど)話せるのは大きな進歩だろう。偏にトレーナーさんの人徳のおかげかな?

 

 チームメンバーはキングヘイロー、カワイイカレンチャン、サクラバクシンオー、そしてカワカミプリンセス。

 

 この中でティアラ路線を走っていたのは確かカワカミプリンセスのみだったから、ペルちゃんが言っていた”今年チームに入ったティアラ路線を目指す娘”とは彼女のことだろう。

 それにしても、俺が前世にいたときにチームレースで短距離を張れる娘が勢揃いだな……。あと短距離路線といえばヒシアケボノとかビコーペガサス、あと実際の競馬でサクラバクシンオーに勝ったニシノフラワーだっけか。

 

 メンバーの中でも特にカワカミプリンセスはこっちに対する距離の詰め方がすごい。「共に頑張りましょうわよ!」とふんすふんす近づいてくるさまはさながら大型犬のごとしだ。頑張りましょうわよってなんだよ。

 

 

 そして、ホワイトボードに書かれていることから推測した、ペルちゃんの今後のトゥインクルシリーズ出走方針は以下の通りだ。

 

・現在は5月の半ば、トゥインクルシリーズのメイクデビューは6月末から解禁されるが、これにはペルちゃんは出走しない。

・というのも、いくらペルちゃんの身体が他のジュニア級の娘と比較して遜色ない体つきになっているからといって、実際のレース場の雰囲気やレースの駆け引き等の基礎知識を練習や勉強なしに出走するのはシンプルに怪我につながるらしいからだ。

・ということで、諸々の練習を重ねながら、夏合宿終了後しばらくして、つまり10月末から11月上旬のメイクデビューを目指す。

・このデビュー戦の成績次第では若干過密になるが、年明けからオープン戦、重賞とステップアップし、最終的に皐月賞の出走権をもぎ取る。

 

 ということらしい。

 アプリ版ではジュニア級の夏合宿はなかったが、この時空ではあれは芝やダートに慣れないうちから砂浜で走ることが危ない等の安全面、シンプルに練習スケジュールに身体の追いつかない技術面から、やはりジュニア級の夏合宿は推奨されていない。

 しかし、俺が走った模擬レース、そしてペルちゃんの身体の仕上がりから、キングやバクシンオー、カワイイカレンチャンが参加する夏合宿に参加してもいいと判断したため、トレーナーさんは今回ペルちゃんの土壇場参加を認めたそうだ。

 

 なお、カワカミちゃんは6月末のメイクデビュー出走のため夏合宿には参加しないとのこと。専用のメニューを作っているため、トレーナーさんは学園と合宿場を行ったり来たりするそうだ。

 たいへんそう。(小学生並みの感想)

 

 

 なお、この時空ではキングはアプリ非実装のトゥインクルシリーズ4年目、バクシンオーはシニア級、カワイイカレンチャンはクラシック級に該当しているらしく。

 それぞれ”全距離G1制覇”、”春秋スプリント制覇”、”カワイイを極めること”を当面の目標としているらしい。今までの戦績としては、今年にあった高松宮記念ではバクシンオーが堂々の優勝。すでに短距離ではG1を取ったキングは来月の安田記念、カレンチャンはG3の葵ステークスに向けて準備をしている、とのこと。

 

 ぶれねぇ。さすがカワイイカレンチャン!(掛かり気味)

 

 

 

「……私、負けるのがこわいんです。負けるくらいなら走らなくてもいいや、って思ってました」

 

「正直、今もその気持ちは拭いきれてないと思います……たぶん」

 

「でも、私を見てくれてる()()()()()()()と、もうひとりの私に似ているトレーナーさんのこと……信じてみようと思って」

 

「だから、まだきっとレースではもうひとりの私に頼り切りになると思うけど……期待されたくないけど、裏切りたくないから……が、がんばります!」

 

 

 と、アプリストーリーの最後らへんで言ってそうな宣言をして、ひとまず挨拶は終わり。

 あとは実際に走ってみようぜ!ということで、服を着替えてトレーニングを行うことになりましたとさ。

 

 

 ……着替えている途中、キングからかけられた言葉が嫌に頭に残る。

 

 

「いいこと? キングのチームに所属する以上、ウィルさんにも一流を目指してもらうわ」

 

「頼れる人がいる、それもいいでしょう。一緒に頑張る、それもいいでしょう」

 

「でも、一流となるのであれば、そこで止まってはいけないわ。自分の意思でターフに立って、自分の意思で一歩を踏みしめて……初めて一流への扉は開かれるの」

 

「覚えておきなさい。一流とはレースの結果だけではない……自分の気持ちも伴ってこその一流なのよ」

 

 

 ……ペルちゃんの目を通して、それは俺に語りかけられているような気がして。思わず身が竦んだ。今の俺身体ないけど。

 けれど、やることは変わらない。ペルちゃんがいつかみんなで楽しく走れるようになる日まで、ペルちゃんをできるだけサポートするのだ。

 

 

 

 ――とりあえず、「カワカミと併走してみよう」と言われておめめぐるぐるになっているペルちゃんを宥めるところからかな。うん。




対戦ありがとうございました
よかれ(やけに俺ちゃんの評価が高い気がするので株を下げとこう)と思って……
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