仮面を脱ぎ捨てて 作:どうして
UA100000超えとかまじ?草
「っしゃあっ! さすがウィルさんですわ! ぶちかましですわね!!」
「……危なげない勝利だこと。やるじゃない」
「直線の伸びすごかったねー? ホントに飛んでるみたいだった」
「私のバクシン的指導のおかげですね!!!!」
「それはない」
ちょわっ!?と弾けるバクシンオーを横目に、へらへらと観客に手を振るウィルを眺めやる。
快勝である。4バ身差の差し切り勝ち。最後方から垂れウマを避けて最終直線で横に広がり大外一閃。実に気持ちのいいレースだった。
いろいろ(主に表の彼女に)課題はあるが、今日のところはとりあえず満足しておくべきだろう。なんせ自分の担当しているジュニア級のウマ娘が両方ともメイクデビューで勝利を飾ったのである。
トレセン学園に入学できるのがウマ娘全体の上澄みであるならば、未勝利バでない状態で3年間を走り切られるのはその裏漉しで、G1ウマ娘ともなればそこからさらにスポイトで採った一滴である。
なんとかまあ、本人の資質通りの活躍をさせられたことにほっと息を撫で下ろす。カワカミが出走する前も緊張で割といっぱいいっぱいだったし、今回もそうだったのだが。
如何せん立場がトレーナーであるが故に、緊張をウマ娘に悟られてはならないのだ。
ちらり、とキングに見られた気がするが、視線を競技場へ戻したのを察するに、セーフ判定はいただけたらしい。
元より胆が太いとかそういうわけではないのだ。キングをスカウトしたときも夢中だっただけで、家に帰ってから「ああああああああああああああ!」とベッドの上で転がりまわったのは苦い記憶だ。
なんであんな宣言したんだろう、とか、もっとタイミングあっただろう、とか。
……雑考は置いておいて。
「ウィナーズサークルへ行こうか。お祝いしてあげなきゃな」
提案は、当然可決された。
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――――――
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「どーです? ま、それなりに勝てたんじゃないでしょーか」
第一声は、彼女のそんな言葉だった。
勝てて嬉しいのはそうだろうが、この息の弾み方は走られたことに対する高揚感に身を任せているという意味合いの方が強いのだろう。
レースという過酷な運動によって頬は紅潮しているものの、表情は穏やかな微笑みのままで。テンションの高さの割に台詞が大人しめだ。
文句なしだったぞ、と伝えてあげると、微笑みを深めて軽くうなずき、こちらからターフ側に目を向けた。
首の動きから察するに、それは自分が走っていたコースを追っているようで、レース展開を想起しているようで、自分の一歩を噛み締めているようで。
うん、と呟き、再度こちらに向き直る。
「ねえ、トレーナーさんや。 ……やっぱ走るのって楽しいわ」
にやり、と笑うウィル。「だろう?」と返すと、大いに頷いて、「おめでとうございますですわー!」と横から突っ込んできたカワカミからのヨイショに流れを身を任せた。
ちょっと???カワカミさん???ウィナーズサークルに入らないで???「勝利の舞ですわー!」じゃないよ???
「ウィル持ち上げて振り回すんじゃありません!」
「ほら、早く降ろしなさい! ウィルさんが怪我したらどうするの! その子これからウィニングライブがあるのよ!?」
されるがままに目を回していたウィルが身体を硬直させるのと、叱り飛ばされて(俺のは響いてなかったから多分キングの叱責が効いて)カワカミの動きが止まるのはほぼ同時だった。
ぶーたれてウィルを地面に降ろしたカワカミだったが、彼女が固まっているのを見て不審げな目で見守っている。おーい、とかバクシーン?とカワカミが問いかけてみるが、まるで反応がない。
まさか本当にカワカミに振り回されたときにどこか痛めたか……!? とカレンに控室でアイシングの準備するよう指示しようかと思った矢先、裏の彼女が振り向いた。
その動きは、まるで油を差さずに捨て置いた歯車のようで。関節から「ギギギギギ……」と音の鳴りそうなさじ加減で。彼女にしては本気で焦っているようで顔を蒼白にして。
「
と。
…………。
いやいやいやいや。
「ウィルはそつなく歌もダンスも出来てたろ!? え!? ライブ練習については
「そもそも走りも引き継がれてないの! 勉強とか頭の中で完結するのはそりゃどうとでもなるけど身体の動かし方は個々で独立してるの!
「あらら」*1
「どどどどうするのよ!? しばらく休憩したらすぐウィニングライブ始まるわよ!? スペシャルウィークさんの二の舞になる気!?」
「この時空でもスペちゃん初めてのライブで棒立ちしてんの!?」
「はい!ウィルさん! この時空って一体何のことですか!?」
「「バクシンオーは黙って!」なさい!」
「ちょわっ!?」
「ってことはカイチョーに無礼るなよされるじゃんうわーやべーワケワカンナイヨー!」とあわあわしているウィルを傍目に、ひとまずウィナーズサークルから控室に撤収するよう指示。
ぶっつけ本番で裏の彼女に踊らせるのはだいぶリスキーか? 歌詞だけ無理やり詰め込んでカラオケ形式にさせてもらう? それすら難しければカンペか? やべえ。どうするにしても時間が足りん。どうすっかなー……
くいくい、と袖を引かれた。カワカミがなにかを言いたげにこちらを見ている。
そういえば叱ってそのままだった。フォローの意味も兼ねて用件を聞いてみる。
「今のウィルさんがライブ出来ないのでしょう? そしたら、いつものウィルさんにやってもらえばいいんじゃないですの?」
…………。
それしか、ないか……!
「そういうわけなんだ。頼む!」
「ううぇ↓↙←↙↓↘→!?」
場所は変わって控室。裏の彼女に無理やり表の彼女を起こしてもらって(どうやってやったのかはわからん)、尋常じゃない発音で拒絶反応を示しているウィルに再度説得を試みる。
「むむむむむむむむ無理ですよぅ! だってぇ……」
身体を抱えてぷるぷる震える。思い出しているのはパドックで一瞬見えた観客の山だろうか。
今回は完全に見立て違いで、ライブまで裏の彼女がやってくれると思ってたからなあ……。念の為改めてライブ出来るかどうかを確認したら、「自慢じゃないがカラオケで80点以上取ったことないぞ」とのこと。ウマ娘でそれは逆に才能だわ。
「ウィニングライブは気持ちの整理の場でもあるのよ。レースであなたたちに負けたウマ娘が、「あれだけ輝いているウマ娘に負けたのならしょうがない、次は頑張って私がセンターに立つ!」って割り切るためにも必要なの。……出るのは勝者の義務よ。わかる?」
「応援してくれてるファンの皆さん、レースの関係者の皆さん、トレーナーさん、そして私自身への感謝の気持ちも込めて歌うものなのです! 恐れることはありません!! さあ!!」
「周りの声なんて気にせずにどーーーーーんと声を張って歌えばいいんですのよ! 『Make debut!』を歌ったときは気持ちよかったですわあ……」
「うぅ……でもぉ……」
……説得に説得を重ねるも、なかなか首を縦に振ってくれない。
こうなるとこの娘はなかなか頑固だ。どうする……?
「カレン、なにかいいアイデアないか?」
「んー、あるにはあるんだけどー……」
あまり気乗りがしないようで、カレンは珍しく控えめに(何故か俺の影に隠れながら)提案を試みた。
曰く、観客を見ずにライブすればいいのではないか、と。
「……それが出来たら苦労しないんじゃないか?」
「そうかなあ。多分出来ると思う。ウィルちゃん、走るときすごい集中して周りが見えてないときあるし。あれの延長線で出来ないかなーって」
なるほど、と納得は出来てしまう。
あまり提案に乗り気じゃないのは、ファンに対する不義理になるかも、と考えているんだろう。
実際問題、ファンに向けて笑顔を向けられているかとかは、ウマ娘古参ファンならライブ見るだけでわかるもんなあ……。
「……よし。それでいこう。どっちにしろ五体満足なんだしサボタージュは出来ないしな。ウィルも腹括れ。ライブ中は常にもうひとりの君と話し続けてみろ。観客に注意がいかないくらいに」
「ぇう……」
「パフォーマンスの指示をもうひとりのウィルちゃんから貰いつづければいいんじゃないかな。踊る練習をしていないだけで振り付けは覚えてるんでしょ?」
「……だそうだ。まあ、あとはよくあるリラックス法だな。人の字を手のひらに書いて飲み込むとか、観客を全員じゃがいもだと思うとか」
「……そこらへんの民間療法、片っ端から試すわよ。気絶して途中で入れ替わって、そこから棒立ちなんてことになったら目も当てられないわ」
そのあとは実際に紙に「人」と書いた紙をウィルに飲み込ませようとするカワカミを止めながら必死にメンタルケアを行い、なんやかんや歓声に対し奇声を上げながらも辛うじてライブをやりきったウィルをヨイショして、府中から引き上げた。
……次の目標の話は、うん。明日以降でいいかな……。
目標達成!
Clear! →ジュニア級メイクデビューに出走
Next! →皐月賞で5着以内
ヒスイポケモン図鑑が完成したので初投稿です。
マリカは9が出たら買おうと思っていたのにDLCが出たので諦めて買いました。
対戦ありがとうございました