仮面を脱ぎ捨てて 作:どうして
誤字訂正ありがとうございます。
いやあ……セイウンスカイは強敵でしたね(10k)
【朗報】俺氏、身体を動かせるようになる。しかも超早い
ペルちゃんが気絶しているときに限る、という枕詞はつくが。
コースに立つまでは気づかなかったのだが、ペルちゃんはキャパシティ以上の緊張感に苛まれると気絶してしまうらしい。
気絶した数瞬後に自分のタイミングでまばたきをしていることに気づき、慌てて駆け寄ってくれた他のウマ娘ちゃんに引き起こされて立ち上がったとき、「これは来たんちゃう?」と身体を動かしてみると歩くことができたではありませんか。
手をグーパーして、足を上げ下げし、頭上にある耳を触り、前世で耳があった部分に何もついていないことを確認し、尻尾を掴んでみると、自分がウマ娘になってしまったことに実感が湧いてきて、思わず変な声が出てしまい……
その瞬間レースがスタートしてしまった。
ひいんごめんクラスメートのみんな、と思いながらとりあえず追いかけるため、一歩、二歩、三歩。
あ、これ違うわ。ってその瞬間悟ったよね。
踏み込みの力が桁違い。
足の回転も並外れてる。
これがウマ娘か。いろいろ人間とは違う描写があったけど、いざ実感してみると恐ろしささえ感じる。
最初の方はつい転生前の走り方で走っちゃったけど、途中からウマ娘特有の走り方……あのとんでもない前傾姿勢での全力疾走を思い出し、前の子たちとの差を詰める。
ペルちゃんがウマ娘の中でどれだけ才能に恵まれている子なのかはわからないけれど、少なくとも運動会のレースでは一番速い子だったらしい。
出遅れもなんのそので大外一閃。見事一位で走り抜けましたとさ。
そんなこんなでクラスのみんなにもみくちゃにされて、うちのクラスが所属していた白組が勝利して、なんか学校全体のMVPに選ばれちゃって、興奮さめやらぬうちに家に帰り……そしてペルちゃんの意識が戻った。同時に俺もペルちゃんの中に戻った。どうして……。
で、問題は家族で打ち上げをしている最中。
「いやっ!!!!!」
とんでもない大声で鋼の意志を発揮するペルちゃんがいるのでした。
ことのあらましはこうだ。
なんと今日の運動会、トレセン学園の理事長とその秘書……あの秋川やよいと駿川たづなが観戦していたらしい。将来見込みのある子を遊興がてら見て回っていたらしい。
たまたまご覧になっていたレースで、スタート前落ち着きがなく、しかも大きく出遅れたにも関わらず、まくりにまくって一着。大層お気に召したそうで、レース後すぐにお父様とお母様に声をかけられたそうで。平たく言えばスカウト?のようなものを受けたそうな。小学校を卒業したらうちにどうですか、と。スカウトと言っても試験はあるし、他の受験生と比べて優遇されるということはない。あくまで理事長のお墨付きというやつだ。通ってくれたら嬉しい、みたいな。
この話に、もともとトレセン生だった、なんなら重賞を勝っていた根っからの競争ガチ勢お母様は大喜び、その場で返事をしかけたが、なんとかお父様が止めきった。
「本人の意志を尊重したいので、帰ってから話し合って決めます」と丁重に返事をし、俺inペルちゃんを連れて帰り、そこで気がついてなにがなんだかわからない状態のペルちゃんにこの話を持ちかけたところ……
「やだ!!!!行きたくない!!!!」
これである。
しかも行きたくない理由は「トレセン学園に行くようなウマ娘たちは絶対はやい。ならどうせそこでレースに出ても負ける。勝てないから行きたくない」である。さすが鋼の意志デフォルト持ち。ぶれない。
しかし鋼の意志は母譲りなのか、この親あってのウィルペルソナなのか、お母様の説得にも熱が入り身を乗り出してレースの魅力を語りだし。
対するペルちゃんも(なぜか自分がレースに出たくない理由は言語化できないみたいだが)拒否の一点張り。
聞かん嬢!わからずや!意気地なし!スカポンタン!おたんこにんじん!すっとこどっこい!コンコンチキンの スットコドッコイショの チョンチョコピー!
およそ3人家族になってから勃発したことのない罵詈雑言が飛び交う親子喧嘩にお父様も苦笑い。
なんとか仲裁し、お互い頭を冷やすように誘導した。
……冷静に考えてウマ娘同士の喧嘩を仲裁するのって結構勇気いると思うわ。さす父。
もう寝る!!と好物のにんじんスティック(味噌マヨネーズディップ)を抱えて部屋に飛び込み、今までかけたことのなかった部屋の鍵をかけ、ベッドの上で三角座りをしているなう。
この味噌マヨネーズは母のお手製なのだが、そこはそれ。誰が作ったものであれ、おいしいものに罪はなし。意外と割り切りはしっかりしているのよねこの子。
(そこまで拒否しなくてもいいじゃんね。物見遊山気分で行ってみれば?)
(やだよう……)
そして俺は、いつの間にかペルちゃんと会話できるようになっていた。
一度「表」に出てこられたのが幸いしたらしい。どうせ声届かないだろうと思っていろいろ呼びかけてみたらなんと反応が帰ってきたのである。
見えないところから声が聞こえてくるのでペルちゃん大慌て。こちらも慌ててそれっぽい理屈でペルちゃんを納得させることで急場をしのいだおかげで今があるのだ。
曰く、俺はウィルペルソナというウマ娘のもう一つの人格。
曰く、俺はウィルペルソナが気絶したときに身体を動かしていた張本人。
曰く、俺のことは「もうひとりの私」とでも呼んでくれ。
こんな話に、本人しか知り得ない隠しエピソードを披露することで信じ込ませることができた。(だいたいお漏らしの話題である。)ちなみに俺はペルちゃんのことは「相棒」と呼んでいる。そら(二重人格で名前が一緒なら)そう(この呼び方になる)よ。
なお、俺と会話するときは心の中で会話することを徹底させている。ただでさえ引っ込み思案な子なのに、(ぱっと見)一人でぶつぶつ独り言を言っているように見えたら友達できなくなるからな!
俺としては、是非ウマ娘の世界の中心を見学したい気持ちはある。
とはいえ身体を間借りしている手前、本人の意志に背くようなことはしたくはないし……。
(なんだかんだ今日は勝てたじゃん)
(あれはもうひとりの私が走ったからだよう……。私その時気絶してて覚えてないし)
(いや身体は相棒のを使ってたんだって。だから相棒が走っても勝てるんだって)
(いーやっ。とにかくいや。行きたくない)
行かないもん、とにんじんスティックをハムスターのように咥えながら食べすすめるペルちゃんを見て、本人に聞こえないようにため息。
……まあ行きたくないって言ってるんだったらしゃーないよな。幸いこの子も見てる分には飽きないし、運動会みたいに止むに止まれぬ事情で走らざるを得なくなったときに身体貸してくれればそれでいいか。
スペちゃんとかテイオーに会えないのは少しばかり残念だけど。アイネスフウジン好きなんだよね実装はよ。ご飯食べさせてほしい。メイン3章の1枚絵はしびれたね。かっこいい。
あと一番好きなコミュはカレンチャンのお兄ちゃんとの馴れ初め→「初めてカワイイって言ってくれた」のとこかなカレンチャンは基本的に一人でトレーニング→レースの流れが完結しちゃってるんだよねいやトレーニング内容とかそういう意味じゃなくてメンタル的な意味で表面的なことだけ捉えてカレンチャンコミュのトレーナーに対して「これトレーナーいらないじゃん」とか言うやついるんだけど違うんだよ「トレーナーいらないじゃん」じゃないんだよ「トレーナーはいるだけでいい」んだよカレンチャンにとっては初めて自分の夢を笑わなかった大人なんだよそこにいるだけでカレンチャンは頑張れるんだよいるだけでメンタルケアできるって勲章だと思いませんかあなたそれがわからんやつが多すぎて巷の野郎どもはまったく見る目がないねと抱腹大絶倒の腹筋崩壊デストロイヤーですわ
―――なんて甘いことを考えていたのだが。
「ペルちゃん!トレセン学園の入試受かってたわよ!」
「ごめんペルちゃん、止められなかった……」
なんで????????
ちょっと?????お母様?????