仮面を脱ぎ捨てて   作:どうして

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対戦よろしくおねがいします


府中の空は狭い

 本日は晴天なり。

 

 ペルちゃんの心境は曇天なり。

 そう、今日はトレセン学園の入学式である。

 

 

 いやおかしいとは思ってたんだよね。ついこの間までのお母様の言動と行動。

 

 

 

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「この問題説いてみて!制限時間60分!はいスタート!」

 

「うぇっ、ちょ、なにママ急に!? ……てこれ、レースの問題?」

 

「私語はなーし! じゃ私は部屋の外で待ってるから! あ、ちゃんとカンニングしてないか確認するためにビデオも回してるから!」

 

「なんで?! ……行っちゃった」

 

(問題文ざっと眺める限り、相棒でも解けるレベルだな。まあ勉強しといて損はないしやってみてもいいんじゃないか?)

 

(今日は向こうの山10往復したかったんだけど……)

 

(60分後に始めればいいさ。早く解けばその分早く走れるぞ?)

 

(んー……。わかった。やってみる)

 

(じゃ、いつも通りに俺は回答わかってても黙ってるからな。がんばれよ)

 

 

 

――――

 

 

―――――――

 

 

―――――――――

 

「計測機器を買ってきたわよ!」

 

「また!? この前も別のやつ買ってきてなかった!?」

 

「ペルちゃんがやっと私の前で走ってくれるんですもの!ほら早く!ここから1000m直線!タイム測るわよ!」

 

「う、うん……わかった」

 

(お母様まーたビデオ回してるな。娘の記録を残しとく、ってのには大仰過ぎる気がするけど)

 

(ずっとママの前では走ってなかったからそれもあるのかも。一度言い出したら聞かないし)

 

(相棒みたいだな!)

 

(か、からかわないでよぅ……)

 

 

「はーいペルちゃん位置についてー!」

 

「……」

 

 

「よーい!どん!」

 

「っ」

 

 

「……よしよし、このタイムなら」

 

 

 

 

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――――

 

 

「面接するわよ!」

 

「今度はなに!?」

 

「いいからいいから。はいインタビュー! カメラの向こう側には先生がいると思ってね!」

 

「意味がわからないよ!?」

 

「質問は1つだけ!シンプルイズザベスト!

レースに出るとしたら、何を望む?」

 

「ママ全然話聞いてくれない……。レースも出ないもん」

 

「たらればの話よ。もしよ、も・し!」

 

 

「うぅ……」

 

 

(ありのまま言っちゃえばいいんじゃないの。20年後くらいに見せられてうわああああってなるのペルちゃんなんだし)

 

(全然安心できないんだけど!? ……ありのままかあ)

 

 

「……れ、レースにでるなら一番にならないと意味ないと、思います。

一位になるためにみんなレースに出てるんだし、負けるために出るウマ娘なんて、いないからです。

私がレースにでる機会はないと思うけど、もし出るとしたら一着が欲しいなって、思います」

 

 

「~~~! オッケーオッケー!じゃ!」

 

 

「……行っちゃった。なんだったんだろ」

 

(昔から行動派だったけど最近輪をかけて変よな)

 

(うん……ほんと、どうしちゃったんだろ)

 

 

――――

 

 

―――――

 

 

―――――――

 

 

 

まさかあの問題もレースの計測も面接まがいの映像も、全部トレセン学園の入試に使うものだったなんてなあ。試験会場で一斉に試験するわけじゃなくて、試験問題と志願者に郵送されるお題を面接風に撮った動画と、走りを撮影した動画を送付すれば合否判定が出るなんて思わないじゃん。

 

 問題解いてる様子も動画に収めたりしてたけど、割とカンニングとか仕放題だと思うんだが。筆記試験はあんまり配点高くなくて、面接と走りの動画に重きを置いているのか? それにしても、おそらく膨大であろう志望者数に対して、合否判定ができるほど細かく採点できるもんなのかね?意外と来る者拒まずの精神なのかもしれんね。

 

 なんにせよ、ペルちゃんもこれからは立派なトレセン学園生だ。親元を離れ子一人、寮生活で他のウマ娘との交流はあるにせよ多感な時期に親族と離れて暮らすのは何かと不安もあるだろう。俺がちゃんと見守ってやらねば……

 

 やだ、わたし、思春期の娘を見守るとかキモすぎ……?

 

 

 さて、始業式の前日に寮に入り、寮長のフジキセキさんにご挨拶。

「よろしくね、新しいポニーちゃんたち」とあのキラキラスマイルで新入生の大半はノックアウト。あの立ち居振る舞いは一朝一夕で身につけられるもんじゃあない。天性のたらしだ。あれでいたずら好きというのもギャップで大変よろしい。ペルちゃんもぼーっとしてたしなあ。

 

 ……が、事前に送っていた部屋に運び込む荷物をルームメイトとなる人と一緒に搬入していた最中にトラブル発生。今年の新入生が入る部屋のど真ん中に、いつの間にか立て看板が立てられていたと。

 

 我が目を疑ったよね。

 

 

――”チームスピカ 入部しないやつはダートに埋めるぞ”

 

 

 なんでだよ。なんでアニメでよく見たあの看板が部屋のど真ん中に立ってるんだよ。なんでこれ見て新入生がチームスピカに入ると思ったんだよ。てかアニメ見てたときから思ってたけどどうやって誰がコース掘り起こして誰が埋めたんだこれ。

 下手人は間違いなくヤツなんだろうけど、看板の絵が衝撃的すぎて気絶してしまったペルちゃん。その代わりにえんやこらと身体の主導権を借りて搬入作業を終わらせましたとさ。

 

 

 

 ……というどたばたがあってからの冒頭に戻るわけだ。気絶してもあのショッキング?な看板は覚えているらしく、これから負け続けると信じて疑わないレース人生と慣れない環境に身を置くことの不安とでペルちゃんの機嫌は絶不調なのでした。

 

 

 

 閑話休題。ほらペルちゃんや。どんよりしてないでさっさと行きますわよ。今日は入学式からのレクリエーションだけだから終わったらカフェテリアでお昼をぱくぱくですわ。

 

 

「……うぅ。なんかもうひとりの私のほうが学園生活向いてる気がするなあ」

 

 

 ま!なにをおっしゃいますの!?そんなことはございませんわ!あと私と会話するときは心のなかでと申し上げておりましてよ!?

 

 

(その喋り方、よくわかんないよう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日のフジキセキ寮長もそうだったが、やはり転生前は画面の向こう側の住人だった人たちが目の前にいるというのは感慨深いもので。入学式の中で在学生代表のシンボリルドルフが挨拶のため壇上に上がったときは、騒いでも周りの誰も気づかないのをいいことに大声を上げて歓声を送りまくった。あとでペルちゃんに怒られたが。

 

 ペルちゃん的にも、”無敗の”三冠馬には大層興味があるらしく、「粉骨砕身の気概で、公私ともに充実した学園生活を送ってほしい。危害を細心の注意を払って跳ね除けて、な……」と意味ありげな言い方で降壇するところまで注意深く見ていた。

 

 その時は俺はどちらかというと他の生徒会メンバーに注目していて、ナリタブライアンは苦々しげに「台本にない。アドリブだ……」と口にしながら頭を抱えていたし、エアグルーヴは「粉骨砕身」と「細心」を、「気概」を「危害」とかけて話していたことに会長が降壇してから気づいたらしく頭を抱えていた。

 

 

 

……生徒会って大変なんだなあ。そういう気苦労のかけ方は間違いなく間違っていると思うけど。いろいろと。




対戦ありがとうございました
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