仮面を脱ぎ捨てて   作:どうして

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対戦よろしくおねがいします


立ち回りのコツ◯ ~マンカフェ様がみてる~

 

(というわけでほら、ウェルカムランとやらに登録しておいたから)

 

(なにがどういうわけで「というわけ」なの……?)

 

 

 キングヘイローとそのトレーナーに声をかけられ、トレーナーに寄られた瞬間気を失ったペルちゃんの代わりに先方の要望を満たすような立ち回りで適当に話を切り上げて。

 すでに始まっていた食堂での新入生交流会にすすすっと入り込んで情報収集に勤しんだ。

 

 途中からペルちゃんが目覚めて交代することになってからも、心の中でペルちゃんに鞭打ってなんとか仲良くなれそうな娘を何人か確保。

 女の子同士で親交を深めるにはまずは行動を共にすることだ(偏見)という鋼の意志で、なんとか用事のない日はお昼を一緒に食べる約束を取り付けた。えらいぞペルちゃん!

 

 

 いろいろ情報収集していて、わかったことがある。

 

1.いわゆるURAファイナルズは去年第一回が開催された。

 

2.オグリキャップがチーム・シリウスに現役で属しており、メジロマックイーンはチーム・スピカにいる。つまり、URAファイナルズはあるが時空的にはアプリ版ではない。アニメ版ではオグリの所属チームは明らかではないので、アニメ版時空であると断言も出来ない。

 

3.リギルとスピカがURAのタイトルを総嘗めにしようとしていたところに真っ向から殴り込んだのが、現シェアトのトレーナー&キングヘイローと、桐生院トレーナー&ハッピーミーク。前者はURA中距離部門の、後者はダート部門の頂点に立ったらしい。

 

 

 ……ってことはあれか?ペルちゃんが声をかけられたシェアトのトレーナーとやらが、「ふと閃く」ことに定評のあるアプリ版のトレーナーなのか?

 ある意味大物だわ。そんな人から声かけられるペルちゃんはやっぱすごいわ。私は敗北を知りたいね(ペシペシ

 

 

(半分以上もうひとりの私のせいだよう……)

 

 

 アーアーキコエナーイ

 

 ……俺が身体を動かしている間の記憶はペルちゃんにはないようで、起きた瞬間その時の状況とそれまでの経緯を簡単に説明している。なんでスピカの看板は覚えてるんだろうか。

 急に態度が変わることに疑問を感じる同期の娘もいたが、「ま、中央だしそんな娘もいるよね!」と大半の娘に流された。どんな魔境だよ中央。

 

 あ、ちなみにその時改めて自己紹介したのだが、寮のルームメイトはブリュスクマンさんというらしい。

 美浦寮に入る予定だったのだが、スピカの看板が床穴をぶち抜いてしまい、部屋が使えなくなってしまったことから、一時的に栗東に移ってきたそうで。

 本格化はまだだから、ここでじっくり鍛えてトゥインクルシリーズに望みたい、とのこと。

 これ美浦寮の床直ったら一人部屋になるのでは????やったぜ。

 

 ……そいや原作でもいまいち描写曖昧だった気がするけど、本格化とはなんぞや。ペルちゃんは来てるんだろうか、本格化。

 

 

 

 ちなみに今は人混みに酔ったペルちゃんが食堂を出て一息入れているところ。時間はほぼ夕方。草木を夕日が照らす頃であり、風が吹けばほんのり涼しさを感じる時間帯である。場所的には大樹のうろの近く。一人でいるので、遠慮なくこちらからペルちゃんに話しかけても問題ないのだ。

 なのでまあ、ペルちゃんが気絶してる間に何があったのかを詳細にしているわけだが。

 

(うう……そのウェルカムランっていっぱい人来るんだよね? 嫌だなあ……走りたくないなあ……)

 

(年貢の納め時やぞ)

 

(なんでそんなこと言うの……!?そもそもなんで口調安定しないの?)

 

(そこはそれ、キャラ付けというか、可能性の模索というか)

 

(私、もうひとりの私が言ってることがよくわかんないことのほうが多いんだけど。……っ!?)

 

 

 あいも変わらずネガティブに振り切っているペルちゃんをしれっと(嫌だけど出るしかない)と思う方向へ誘導している最中、ペルちゃんがなにかを感じ取ったのか勢いよく後ろを振り向いた。

 ……割と尋常でない反射神経と感応力である。ソナーかお主は。同じ身体なのにまったく気づかなかったぞ。

 

 振り向いた視線の十数メートル先には、振り向かれたことに対して多少驚いている様子のウマ娘が渡り廊下の柱の影に一人。すぐに表情を戻してこちらに歩いてくる辺り、もともと用はあったんだろうか。……んん?このウマ娘、見たことあるような?

 

 

「……すいません。驚かせるつもりはありませんでした。……マンハッタンカフェといいます。お名前を伺っても……?」

 

 

 厨二心をくすぐることに定評のある勝負服のマンハッタンカフェさんでした。今は勝負服じゃなくて普通の制服。リアル競馬だとアグネスタキオンとかと同期なんだっけか。

 雰囲気からして新入生ってわけじゃなさそうだし、なにかペルちゃんに言いたいことでもあるのかね? 体育館裏に呼び出されて焼きを入れられたりするんだろうか。

 

(そんな事する人じゃないと思うよ……なんでそんな発想が独特なの……?)

 

 

「え、えと、ウィルペルソナっていいます。新入生です。……あの、マンハッタンカフェ先輩?って呼んでいいですか? その、なにか失礼なことでも……」

 

「ああ、いえ……。そういうわけではないのですが、連れてこられたんです。あの子に」

 

「あの子……?」

 

 

 ……二人が話に盛り上がっているところだが、ペルちゃんはウマ娘と話す分には割と緊張はせずに話しうる程度にはメンタルが強い。

 ……いや、言葉は正確に選ぼう。「ウマ娘同士の会話でないと極度に緊張してしまうほど、ペルちゃんは緊張に弱い」。なので初対面の先輩でも、ウマ娘相手であればこうして少しどもる程度で喋れるのだ。人間、大人、しかも異性であれば推して知るべし、であるが。

 

 

「あの、その子ってどんなウマ娘さんで……」

 

「……? そこにいますが。いえ、それはいいんです。聞きたいことがあって……」

 

 

 真面目な話、仮にレースに出たとしても今のペルちゃんのメンタリティでは耐えられないと思われる。小学校の運動会レベルの声援ですら気絶したのだ。”走ることが目的で集まってる”メンバーのレースともなれば自然応援の熱量も変わってくる。レースの相手も運動会のそれとは比べ物にならないほど真剣に、隙あらばこちらを蹴落とそうとしてくると思われる。実際にトゥインクルシリーズに出走しようと思えばなおさらだ。

 

 これから改善すればいい話ではあるが、ペルちゃんは”勝つ”という執念は誰にも負けないし、実際に勝利を掴むだけのポテンシャルもあるように思われる。入学式後、勧誘の追手を撒くときも俺が走るよりびっくりするくらい瞬発力があった。おそらく身体のコントロールが抜群に上手いのだろう。

 ……まだ俺がペルちゃんの身体に慣れてない説もある。ただ、俺はペルちゃんが気絶したタイミングでしか表に出られないので、こればっかりは致し方ない。

 だが、そもそも俺がずっとペルちゃんと一緒にいられるとも限らず、そもそもペルちゃんが気絶しなければ俺が表に出てこられない。ペルちゃんの注目嫌いも人見知りも、もっと抜本的な解決のアプローチを試みる必要があるだろう。

 

 

「え……ここには私とマンハッタンカフェ先輩以外……い、いえ!なんでもないです!聞きたいことってなんでしょうか……?」

 

「ええ、はい……。私には見えないんですけどあの子には見えるらしいんですよ。あなたに憑いてる……」

 

「わ、私についてる……?」

 

 

 そういう意味では、入学初日に優秀そうなトレーナーに声をかけられたのはチャンスでもある。中央のトレーナーとなればメンタルケアもおそらく嗜んでいるだろうから、ペルちゃんが本格化を迎えているか否か、いつトゥインクルシリーズに出走するかどうかに関わらず、早め早めからペルちゃんの度胸をつける指導をしてもらうのは悪くない。

 

 キングとトゥインクルシリーズを駆け抜けたということは、キングの母親絡みの話も二人で乗り越えたということだ。ハリボデの虚勢から王者の精神への変遷を間近で見られたことは羨ましく思うが、挫折を知っているからこそペルちゃんにも寄り添える可能性が高い。

 

 となると、なんとかウェルカムランで好走して改めてシェアトにスカウトして貰う必要があるのだが……。

 

 

「幽霊が」

 

「幽霊が!?」

 

「はい。ウィルペルソナさん。あなた、幽霊が見えるんですか? そこにいるんでしょうか……?」

 

 

 うーむ、どうしたもんかなあ。ウェルカムランは恐らく俺が走ることになると思うけど、トレセン学園の同期の実力が未知数なんだよな。勝てるかなー

 

(ど、どうしようもうひとりの私!)

 

(ん?)

 

(マンハッタンカフェさんにもうひとりの私が幽霊だと思われてる!)

 

(ん!?)

 

 

 なにがどうしてどういう流れでそうなった!?

 

 

「……どうしました? ひょっとしてテレパシーか何かで話せるんですか?」

 

「あ、いや、そういうわけじゃなくて、ぅう、わ、私ちょっとよくわかんないなあ……あの子さんの勘違いじゃないかなあ……なんて」

 

 

 そうだそうだ!ジッサイ=スゴイ・シツレイインシデントだ!名誉毀損にもほどがある!こちとら幽霊じゃなくて人格やぞ!はいだらー!

 

 

「……そうですか。すいません、早とちりみたいですね。でも、何かしら抱えてるみたいなのがわかったので、今はそれで十分です」

 

「は、はあ……」

 

「……では。ウィルペルソナさん、いつか一緒に走れるのを楽しみにしています」

 

 

 そう言って、マンハッタンカフェ先輩は去っていった。

 ……なんか見透かされてない?こわいんだけど

 

 

(わ、私には優しかったよ?)

 

(俺は幽霊扱いされたんだが!?)

 

(お、怒んないでよお……早とちりだって言ってくれたんだし)

 

 

 ……まあいいか。誤解を解く機会はこの先いくらでもあるだろう。同じ学び舎にいるんだし。

 ひとまずマンカフェ先輩の話は置いておいて、俺はそろそろオリエンテーションが終わる時間帯だから食堂に戻るように、とペルちゃんに伝えたのだった。

 

 

 ……俺幽霊判定なの?マジで?




対戦ありがとうございました

某ウマ娘実装に伴い、元ルームメイトの名前を差し替えました
(2022.5.4)
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