テラに異世界転生したら不憫さん(サリア)になっていて人間関係が泥沼過ぎる件   作:もふもふニキ

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ギャグパートだと思った?残念シリアスパートのお話です

※この回は喫煙描写が多数あります、序盤を読んで嫌な予感がした場合はブラウザバックしてください


file2 二つの影

「ああは言ったものの、体の鈍りが取れていないな」

 

ドクターの部屋から出た後、少し考えながら廊下を歩く。戦い方なんて俺はちっともわからない、そうなると協力者が必要になるわけで……どうするかな。

 

そう思っていると、どうやら食堂で騒ぎがあったらしい、面倒なので購買で適当に何か買って済ませるとしようか。

 

「ちょっといい?」

 

「ん?」

 

「時間、ある?」

 

「特にすることはないが……」

 

「そう、じゃあ少し付き合って」

 

そんな風に通路を歩いていると後ろから声をかけられた。

 

先程ドクターの部屋に居たバグパイプだった。サリアさんとは接点がなかったのでどうしようかなと思いつつ迷っていると、バグパイプが此方の手を取って何処かに連れていきたいようだ。

 

そうして連れてこられたところは屋外に通路からしかいけない部屋だった。どうやら込み入った話がしたいらしい、かなり見つかりにくい場所だからほとんど人が来ないんだろうな。

 

「此処は元々新しい施設を作る予定だったんだけど。往来とかの関係で駄目になった部屋なんだって」

 

バグパイプはそういうと持ち込んでいた椅子に軍服をかけながら背伸びをする、バグパイプも何方かと言うと酷使される側だからこういう部屋は欲しいんだろうな、と思いながら部屋を見渡す。なかなかに私物が多いのを見る限り、これは大分ストレス発散に苦労していそうだ。

 

「あ、そうだ。サリアは煙草って吸う?」

 

「あぁ、吸うぞ」

 

灰皿があったことから何となく察していたがどうやらバグパイプは喫煙者らしい、サリアさんの部屋にも灰皿があったから吸っても大丈夫だろう。

 

「それじゃあ吸いながら話そっか、ちょっと長くなっちゃうからさ」

 

そう言うとバグパイプは煙草が入った箱を向けてきたので1本拝借しつつ、ポケットに入ってたライターで火をつけてみる。結構キツイやつだな此れ。そう思いながら一吸いしていると、バグパイプはしきりにスカートを弄っていた。どうやらライターを何処かに無くしてしまったらしい、この時間が一番イライラする時間でもあったりする。

 

「バグパイプ、此方を」

 

「ん?あぁ、ありがと…へぇ。そういうことするんだ」

 

バグパイプが咥えている煙草の切り口に自分が火を点けている煙草の切り口をつけて火を点ける所謂シガーキスと呼ばれるものだ。

 

「こういうことするの、意外だったよ」

 

「だろうな」

 

お互いに煙草の火が点けば、少しの間だけ会話が止まる。バグパイプが何かを言おうとしていることぐらいはすぐに分かる。

 

それを待っていれば案の定バグパイプが少しだけ荒んだ目をしながら此方を眺めつつ問いかけてきた。

 

「サリアはさ、ロドスの戦い方。どう思う?うちは正直に言うとぬるいと思ってるよ。やるなら徹底的に叩かないと駄目なのにね」

 

「そうだな、確かに詰めの甘い所は大いにある。たとえ元が民間人だったとしても」

 

「そうそう、やっぱりサリアなら分かってくれると思ってた」

 

バグパイプの言葉に肯定してやると少し身を乗り出してきて此方の顔を覗き込みつつ何度も何度も頷いている。どうやら思う所はある程度あるのか結構溜め込んでいるようだ。

 

「感染者を救う、その発想は悪いことじゃないんだと思う。実際それで救われた人も居るのも分かる。ただ、人を救うってことは自分に余裕がないと上手く行かないからさ。そういうところの詰めが甘いっていうか、救うっていうことに酔ってるんじゃないかとかね」

 

割と容赦のない言葉を聞きながら紫煙を吐く、バグパイプからしたらロドスの戦い方。というか在り方は少々良くない風に思っているそうだ。軍人上がりからするとそういう風に見えても仕方ないんだろうな。

 

ほんの少し分からないわけじゃないし。此処は肯定しておくとしよう。そうするとバグパイプは上機嫌そうに煙草を吸う。鬱屈した感情は誰でも持っていることは知っていたが此処まで溜まっているとは思わなかった。

 

「シビアだな」

 

「シビアだよ」

 

その会話の後、しばらく無言の時間が続く。バグパイプは少しとはいえ溜まっているものを吐き出して気分が良くなったようだ

 

「ほら、吸い終わったならもう一本」

 

「……すまない」

 

サリアさんどうやら結構なヘビースモーカーだったのか1本吸うだけじゃ足りないようだ。バグパイプからもう1本……というか箱ごと渡された。封を切ったばかりなものだったけど押し付けられたので大人しくもらっておくとしよう

 

「なんというか、思ったよりかは話しやすいんだねサリアは」

 

「まあ、な。そちらは思いの外シビアだったが」

 

「まあね……あんまり見せられるものじゃないからさ」

 

互いが互いのイメージが違ったことに言葉を交わしていれば不意にバグパイプが視線を遠くに飛ばしながら紫煙を燻らせる

 

「ほら、うちはチェンのお世話とかしてたとか言う話がもう来る前からあったからさ。チェンも昔と変わっていないっていう認識で話しかけてくるし、そうなるとそのイメージを崩すわけにもいかないから」

 

「律儀だな」

 

「めんどくさがりなだけだよ」

 

ため息混じりのバグパイプにサリアが相槌を入れると再度溜息を吐きながら心底めんどくさそうにしている。やっぱりそういう面もあって然るべきなんだろうな

 

「ある程度の人付き合いは必要だし、道具の整備とかもさ。うちは精密機械扱うの苦手なのもあるけど…力がありすぎるのも困りものかなって」

 

「生きづらさはある程度考慮しなければならないとはいえ、割り切るのも難しいか」

 

「そうだね、割り切れないことも多いかな」

 

何もかも投げ出して、何処か遠くに行きたいなと言う風に愚痴るバグパイプはだらっと椅子に逆座りして背もたれに顔を乗せる。軍人とはいえバグパイプもまだ若いと思うサリアは同調しつつ、仕方がないと言いながら紫煙を吹く。

 

「よっと……んっ!?」

 

「……」

 

バグパイプがだらだらとしつつ体を揺らしていると、前に居たサリアごと倒れてしまう、端から見るとバグパイプがサリアを押し倒しているような構図だ

 

「「……」」

 

互いに無言でほんの少し時間が流れる、バグパイプの橙色の髪がサリアの頬にかかる、サリアはただただじっとバグパイプの顔を見つつ特に何もせず、バグパイプも特に何もせずに見つめ合っている。

 

「…何か、言わないの?」

 

「…謝れば良いのか?」

 

しばらくの沈黙を打ち破ったのはバグパイプだった、その言葉にサリアが無表情のまま問い返せば、何かが堪えきれなかったかのようにバグパイプは笑ってしまった。

 

「それ、普通逆じゃない?謝るのはうちの方でしょ?」

 

「……叫べば良いのか?」

 

「サリアのイメージじゃ考えられない」

 

「…なら何をすべきだったのか」

 

「そこは深く考えなくてい良いんじゃない?サリアってちょっとどこかズレてるよね」

 

「………」

 

一頻り笑った後のバグパイプの顔は何処かスッキリした様子で、サリアはそれを見ると軽く息を吐いた。

 

「…どうかしたか?」

 

「特に理由はないけど、駄目?」

 

「いや…」

 

お互いに煙草を咥えるとサリアがライターで火をつけると、バグパイプが体を寄せて火を貰う。先ほどよりも距離感が近くなったことをサリアが尋ねるとバグパイプはそう言いつつ紫煙を吐く

 

「うちも人恋しさは、無いわけじゃないからね」

 

等と言いつつ不思議な距離感のまま時間が過ぎていく、サリアからしてみればもう少し今後について色々考えたかった事があるのだが根を詰めすぎても意味がないのも知っていたため特に邪険にする必要性もないと判断した。同じヴィーヴルであれば、まあ接点があっても疑われないだろうということもあるのだが。

 

「そういえば戦線に戻るって言ったけど大丈夫なの?」

 

「問題はない、アーツの方も感覚も戻ってきている、ただ以前のようなアーツの扱い方をしようとすると体の負荷がよりかかるようだ」

 

「なるほど、ね」

 

何気ない会話に答えると何かを考えるようにバグパイプは押し黙った後、端末を開いて何やらいじくり回しているらしい、こういうことは普通にできるのになと思いつつ彼女は端末をじっと見ている

 

「ちょっと外すよ」

 

そう言うとバグパイプは部屋の中に戻っていたので手持ち無沙汰にしつつ煙草に火をつけ直して吸いつつこれからどうしようか考える。

 

まず必要なのはアーツの知識、やはりというかサリアさんの残した資料はあまりにも膨大であんな短時間では1割にも到底満たない、そうなると知識の吸収は急務である

 

次にやはり実戦経験の確保である。命のやり取りに飛び込む上である程度のリスク管理ができる戦場が欲しい、所謂実地訓練である。勿論訓練も大事だ、と言うかそこから始めないと話にならない。ただの素人が命のやり取りしようとか無謀の極みだ。

 

「やることが山積みだ」

 

だが一つ一つ片付けて行くしかあるまい、俺が消えた上で次のバトンをつつがなく渡すためにも弱音は吐けない、そんなことをしている暇があるなら専門用語の一つでも覚えるべきだ。

 

俺にとってはゲームの世界だったが今ではそう思えない、少なくてもこうして話している以上相手がたとえプログラミングされただけの存在だとしても、例え話の都合で呆気なく居なくなったとしても

 

当事者になった時点でそんなことは関係ない。言うなれば私はもう此方側なのだから、

 

そんなことを思っているとバグパイプが戻ってくると若干険しそうな顔をしつつ再度煙草を咥えたので此方から火を移してやると何だか驚いている顔をしている

 

「……お前からしてきただろう?」

 

「……そうだね」

 

そうして煙草を吸うと若干むせる、吸いすぎだと思いつつ背中を擦ってやると。じっと此方を見てはまた吸いつつお互い顔を前に向ける

 

「サリア、自分の体のことは知ってるんだよね?」

 

「知っている」

 

「そう、じゃあうちからは特に何も言うことはないよ」

 

どうやら先程いっていたサリアさんの体についての話についてらしい、この程度で止まるわけがないだろに。そう思いつつ回答するとバグパイプは押し黙りつつまた沈黙が続く。

 

ただ、嫌な沈黙ではなかった。バグパイプも存外聡い、此方が納得した上で戦うことも了承して、どうなるかも把握した上で何も言わないという辺りそう思う。

 

「訓練相手とか居る?」

 

「いや……」

 

「そう、じゃあうちやるよ」

 

「良いのか?」

 

「良いよ」

 

「お前にもやることがあるのではないのか?」

 

「うん、でも良いんだ」

 

「そうか…」

 

「そうだよ」

 

短い会話を繰り返してはお互いの意思を確認する、言外に様々な意味を込めている両者の会話は端から見れば簡単な会話に聞こえるだろう、当事者同士はそうは行かないだろうが

 

「物好きだな」

 

「物好きだね、サリアもだろうけど」

 

「そう、だな」

 

「ふふ」

 

「何だ?」

 

「サリアって口下手?」

 

「……自覚はある」

 

「あるんだ」

 

バグパイプの少し影がある笑みを浮かべつつの揶揄に思わず視線をそらせば、ようやく少しだけ力の抜けた笑い声を出す

 

「なんだろ、サリアってあれだよね。言うべきことは言うけど言いたいことは言わないよね」

 

「そう聞こえるか?」

 

「うん、とっても」

 

いつの間にか煙草ではなくマグカップを持っているバグパイプはカフェラテのようなものに口をつけながら言葉を区切る

 

「自分の本心とは違うことを言うんだと思う、たとえ心配してても、苦しくてもそれが不適切だと自分で感じたなら絶対に言わない、そんな感じ」

 

「……」

 

「そういうところ、チェンによく似てると思う。自分の感情を押し殺しすぎて何処かで爆発したり。何処に吐き出して良いのか分からなくて自分を追い詰め続けるような感じ」

 

そう言うとバグパイプは遠くに視線を飛ばしながら小さな声を零した。

 

「ままならないよね、色々とさ」

 




次はギャグパートかな、シリアスパートはシリアスしつつ。ギャグパートとは違った方面の百合になります

…百合SSじゃなかったんだけどな最初

アークナイツ(悪口)は居る?要らない?

  • 居る
  • 要らない
  • もっとイチャコラしろ
  • もっと不憫しろ
  • もっと周りが拗らせろ
  • もっと腕にシルバー巻くとかさ!

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