クソ雑魚貧弱オリ主 作:とく
詳しく言うと激しく体調を崩した凛くんの話なので血やらなんやらの描写が出てきます。
次の話はイベストだから許して…許して…
…風邪をひいた。そのことに気がついたのは朝目が覚めた時の事だった。体が異常に重い。身体中から警告音が鳴り響いているかのように響く耳鳴りに視界がぼやけるほどの頭痛。軋む体に鞭打って、無理やりナースコールを押すと意識が少しづつ薄れていく。ああ…これヤバいやつだ…。
「凛どうかしたか?…って、オイ凛?凛!?…オイ!誰か輸血の準備と点滴の用意をしろ!今すぐにだ!!」
しかし、いつもなら気を失い目が覚めればことが終わっているのだが、意識が消えるよりも前に、無理やり意識を叩き起されるような痛みが体を襲う。
「ア゛、カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! 」
痛みになれているとはいえ痛いものは痛い。口から血がこぼれるのが分かるが口から漏れる絶叫が止まることは無い。涙が溢れ、その際当然のように目の血管が切れて両目から血の涙が流れる。凄まじい苦痛と風邪と思わしき気だるさが同時に襲いかかってくる。
「グ ゥ…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! !」
体をよじり痛みを逃そうとするが痛みはオレを掴んで離さない。ああ…クソ…今度こそ死ぬかも…。
「凛…!凛!?」
薄れゆく意識の中、切羽詰まったような声が聞こえたような気がした。
★★★
凛の体調が崩れたと聞いた時、初めに思ったのはどれくらいのレベルで体調を崩したのだろう?ということだった。大切なはずの人が体調を崩したはずなのに良い子の仮面は心配を上回るほどの理性で冷静さを失うことは無かった。──そう、病院について凛の姿を見るまでは。文字通り血を吐きながら絶叫し、悶絶する凛を何とか抑えながら輸血や点滴、鎮痛剤などを打っている医者や看護師の姿を見て簡単に良い子の仮面は打ち壊された。自分でもわかるほど顔を青ざめさせながら慌てて駆け寄るが、ただの高校生の私に出来ることなんてない。自分の無力さと、絶叫する凛を見ていられなくて私はいつものようにセカイに逃げ込んだ。
「まふゆいらっしゃい…まふゆ?」
ミクが私を見つけて話しかけてくれるが、その言葉に何も返せずただ踞る私。どこか普通でない様子の私に少し混乱したようにミクがこちらを見て来て、数分もするとパタパタとどこかへ駆けて行った。
「凛…凛…!」
ほとんど感情なんて分からないはずなのに、凛が死ぬかもしれないとなると唐突に湧き上がる恐怖心。その恐怖をどうすることも出来ず蹲っているとミクに呼ばれたのか瑞希や絵名、奏が駆け寄ってくる。
「まふゆ!?どうしたの!?」
「ちょっとどうしたのよあんた!」
瑞希と絵名が背中を摩ってくれたり、奏が飲み物を渡してくれたりしたが恐怖心が薄れることは無い。無意識に震える体を押さえつけるように両腕を固く握りしめると奏がその手を取って優しく話しかけてくる。
「まふゆ、ゆっくりでいいから話して?私たちはまふゆの力になりたいんだ」
ああ、ここでもヒーローのような言葉を吐くんだな、と少しづつ復活しつつある良い子の仮面が無機質に考えるが、脳裏に過ぎる凛の姿にその仮面をすぐに砕かれる。
「…凛が」
「凛くん?凛くんがどうしたの?」
「凛の体調が悪くなったって…それで、病院に行ってみたら凛が血を吐いててそれで…」
いつもなら考えられないほど言葉や思考が纏まらない。しかし、凛の体の弱さを知っている三人は納得がいったように頷く。
「凛くん…今回そんなに体調崩してるの?」
「…うん。ここ数年あそこまで崩したのは久しぶりかもしれない。多分何かしらの病気…風邪とかにかかったのかも」
凛は体が弱いだけでなく、あらゆる病気への免疫も弱い。そのせいで、何かしらの病気にかかるとこうして体調を崩すことが多かった。ただ、今回ほど体調を崩すのは稀なのだが。
「そうなんだ…あ、そうだ!ねぇまふゆ、今からお見舞いって行けるのかな?」
「ちょっと瑞希!」
「えななん、言いたいことは分かるんだけど…友達が苦しんでるのに見て見ぬふりなんて出来ないよ」
瑞希が真剣にそういうのを見て軽く目を見張る絵名。まふゆも驚かなかったといえば嘘になるが、今はそんなことはどうでもいい。
「…お見舞い自体は出来ると思う。でも、良い気分にはならないと思う」
ある程度時間も経ち、落ち着いてきた頃ではあろうがそれでもまだ予断を許さぬ状態だろう。いつまた容態が急変するかも分からない。
「はぁ?そんなこと私たちが気にすると思ってんの?さっさと行くわよ」
「…外は暑いけど…うん、分かった。行こう」
奏達がセカイから退出した。恐らく病院へ向かう準備をしたのだろう。少し気分も落ち着いたため、私もセカイから出ることにする。もう一度病室に戻ると呻きながらも眠っている凛が見れる。
「ああ、朝比奈さんか。…一応、今のところは落ち着いた。ヤマも超えたしな…だが、予断は許されねぇな。それにこりゃあインフルエンザだな。たくっ、めんどくせぇもんにかかりやがって」
医者が明らかに苦虫をかみ潰したような顔をする。インフルエンザと聞き、私も顔を顰めてしまう。風邪ならまだしもインフルエンザだとすると最悪だ。本当の意味でいつ死んでもおかしくない。
「だがまあ、安心しな。コイツが死なねぇように手は尽くすからな」
「…お願いします」
頭をぺこりと下げると医者はさっさと外に出ていった。医者──桐谷悠人は少なくとも凄腕の医者だ。彼のことは信用できるだろう。今まで何度も凛の命を救ってきている。
「失礼します…あ、今は落ち着いてるんだね。良かったぁ…」
「失礼するわよ…って、これ血の匂い?」
凛のことを気にして気がついていなかったが、落ち着いてきて気がついたが病室には血の匂いが蔓延していた。まあアレだけ血を吐けばそうなるかと思いつつ、病状を軽く説明する。
「インフルエンザァ!?…って、それ私たちに移ったりしないの?」
「…しないよ」
「なんでそう言いきれんのよ」
「凛の体質。体からウイルスを一切出さない体質をしてるの。…その代わり体に入ったウイルスは体内で消滅するまで残り続ける。数年分溜め込んだ微量のインフルエンザウイルスが今になって発症したんだと思う」
「そんな体質あるんだね…」
凛の体質は今まで凛のことを見てきた全ての医者が首を傾げるような不思議な体質ではあるが、何年も付き添ってきたのだからもうそういうものなのだろうと割り切っている。
「あぐっ…」
「凛!?」
目が覚めたのか、胸元を強く握りながら体を起こそうとする凛。それを慌てて止めればポテッと頭が枕の上に落ちる。
「まふ、ゆ…?それに瑞希たちまで…ゴホッ!」
口から血が零れるが、それを意に返さず無理して笑おうとする凛。あまりに痛々しいその姿に眉をひそめてしまう。
「ゴホッ…ゴホッ…!」
しかし、流石の凛とは言えどもう話す元気も目を開く元気も無いのか定期的に漏れる咳と苦痛に呻く声だけが静かな病室に響く。
「…本当に体弱かったのね、凛って」
「確かに、いつも会う時は元気な時だからね~」
「こんなに苦しい思いをしてたんだ…」
どこか悲しげな様子の三人の声を聞きながら凛の手を握ってただ祈る。どうか、神様──凛を死なせないで。私から凛を奪わないで。
「…凛」
そう名前を呼ぶと、軽く握っている手に力が籠ったような気がした。
浅野凛
体内にウイルスわ溜め込む特殊な体質。というか、これ以外にもおかしなところがありすぎて医者もお手上げ状態。誰が呼んだかびっくり箱。体質のことが詳しく分かれば、ウイルス対策の大きな一歩になりそうなものだが、凛の体が弱すぎてどうしようもなかった。次の話では快復してる模様。
朝比奈まふゆ
また悲しい思いしてるよこの子…。暗い話になるのはだいたい作者のせい。でも次の話は楽しい話にするから許して。
桐谷悠人
しっかりと凛の体調や体質を加味して完璧な処置を施した。マジモンの有能。この人がいなかったらこの回で凛は死んでた。