クソ雑魚貧弱オリ主   作:とく

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配信ネタを書こうかと思いましたが都合が変わったので別の話を書くことになりました。


十四話

俺は今、いつもの退屈な病室…では無く外にいる。そう、外にいるのだ。なんと体調がだいぶん良くなってきて、外出の許可が出たのだ。当然無理のない範囲でのことではあるが。というわけで無理はしないようにシブヤまでやってきたわけだ。とはいえ、やることも特にないのでいつもあまり見ることの出来ない街並みを見て歩いていたのだが…

 

「…あつい…」

 

一時間も経たずにダウンした。気温が高すぎる。もう本当に暑すぎて死にそうだ。とりあえず体力の回復のために奇跡的に日陰になっているベンチがあったためそこでぐったりしている。あー…あついー…。つーかこのフードが暑すぎる。外出する際に瑞希と絵名にフードは付けろと言われて仕方なくフードを付けているのだが、あまりに暑すぎる。なんでフードしないといけないんだ…?

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「…ん?彰人?」

 

「誰かと思えば凛じゃねぇか。なんでこんなとこに?って、顔色やべぇな…ちょっと待ってろ」

 

「…分かった…」

 

聞き覚えのある声に顔を上げるとオレンジ色の髪の毛友人…東雲彰人がこちらを見ていた。彰人はぐったりしていたのが俺であると分かった途端に呆れたように目を細めたが、よっぽど顔色が悪かったのか心配そうに顔を歪めるとどこかへ歩いていった。

 

「ほら、スポドリ」

 

「ありがと…あ~生き返る~!」

 

スポーツドリンクを買ってきてくれたらしく、手渡されたそれを一気に飲む…と喉が切れるのでゆっくりと嚥下する。うめぇ…スポドリうめぇ…。

 

「で?なんでこんなとこでダウンしてたんだよ?」

 

「その前にお金払うよ」

 

「いや、要らねぇ。病人から金せびるほど金欠でもねーしな」

 

「でも」

 

「はあ…んじゃ、いつも絵名が世話になってる礼って事にしとけ」

 

「…わかった」

 

なんだか上手く丸め込まれたような気がするが、千日手になりそうだったのでありがたく受け取ることにする。

 

「で?ここにいる理由は?」

 

「ん?ああ、散歩してたら暑すぎてダウンした」

 

「そりゃそんなクソ暑そうな服着てたらそうなるだろ」

 

「だよね!?実はこれ絵名と瑞希に着てけー!て言われてさぁ」

 

「は?んでアイツらがそんなこと言うんだよ」

 

「さあ?なんでも目立ちすぎるからとか何とか」

 

「は?…ああ、そゆことか。なら納得はできるがにしても暑すぎんだろその服装」

 

「え?なんで納得出来たの?」

 

え?納得出来る要素あるか?無くないか?

 

「…とりあえず涼めるとこ行くか。歩けるか?」

 

「え?ああ、うん。多少体力も回復したから行ける」

 

「んじゃ、ついてこいよ」

 

彰人に言われて着いていく。慣れた様子で歩いていく彰人について行くとなんだか歌ったり踊ったりという人が増えてくる。

 

「…これ、ストリートってやつ?」

 

「おう。俺がよく通ってるストリートだ…っと、着いたぞ」

 

「WEEKEND GARAGE?」

 

俺のつぶやきに何も答えることなく彰人は店内へと入っていく。俺もそれに続いて入ると体を心地よい涼しい風が迎え入れてくれる。

 

「あ゛~゛!涼しい~」

 

「どっから出てんだその声…兼さん、こんちわっす」

 

「おう、いらっしゃい彰人。それにそっちの子はお前の友人か?」

 

「はい。…凛、自己紹介出来るか?」

 

「お前は俺のおかんなの…?どうも初めまして、浅野凛です」

 

「ああ、初めましてだな。俺は兼。ここのマスターをやってる。おい杏!彰人が来たぞ!」

 

「え!?もう!?ちょ、ちょっと待ってて!」

 

兼さんが誰かを呼ぶが、その人はまだ用意ができてなかったようでバタバタと駆け回る音が聞こえる。それに思わず苦笑してしまう。彰人と兼さんは頭を抱えてため息をついていた。

 

「悪いな、うちの娘が騒がしくして」

 

「ああいえ、気にしてませんよ。彰人、杏さんはもしかして彰人とユニット組んでるってあの?」

 

「おう。あとの二人ももうちょいで…噂をすればなんとやらだな。来た見てぇだな」

 

入口を見てみると、帽子をかぶった小柄な少女と文化祭の時に知り合った冬弥がいた。

 

「四人組なんだね」

 

「おう。おい冬弥!こはね!こっちだ!」

 

「彰人、先に来ていたのか…ん?凛さんもいたのか、こんにちは」

 

「こんにちは、冬弥。それにキミもこんにちは」

 

「あ、はい!こ、こんにちは!」

 

「おいこはね、そんなに怯えんなよ」

 

「安心しろ小豆沢、凛さんは決して悪い人じゃない。」

 

「う、うん。ありがとう二人とも…凛さん?もごめんなさい」

 

「あっはは、気にしてないよ。俺は浅野凛。見ての通り体が弱いただの一般人だよ。よろしくね」

 

「小豆沢こはねです。えと…よろしくお願いします!」

 

わたわたとする小豆沢さんを見て笑いが込み上げてくるが、それを何とか飲み込んで三人で雑談をする。兼さんが持ってきてくれたコーヒーを飲みつつ雑談をしているとバタバタと一人の少女が駆け寄ってきた。

 

「ごっめーんみんな、待たせちゃって!」

 

「おせーぞ杏。凛、こいつは白石杏。見ての通りガサツなやつだ」

 

「ちょっと彰人!そんな説明の仕方は無いでしょ!?白石杏です。よろしくね!」

 

「うん、浅野凛だよ。よろしくね…なんか、凄い目立ってない?」

 

「ああ、俺たちはここら辺ではある程度知名度があるユニットだからな。それで目線が集まってるのかもしれない」

 

「へぇ…そりゃすごい」

 

軽く手を叩きながら言うと彰人が呆れたような顔をする。

 

「あのなぁ、そりゃ俺たちの知名度もあるだろうが…お前、自分が目線集めてるのに気がついてねぇのか?」

 

「はぁ?なんで俺が視線集めるんだよ」

 

「…まあいいか。気がついてねぇなら。とりあえず外ではそのフードとんなよ?」

 

「え?…わかったよ。なんでみんなフード取るなって言うのかねぇ…」

 

まあ多分これに関しては教えて貰えないと思うのでもやもやを飲み込んでコーヒーを飲む。周りを見てみると、数名はまだこちらを見ていたがそれ以外の人はほとんど自分たちの席で会話をしていた。そのまま店内を見回していると気になるものを見つける。

 

「ねぇ、彰人」

 

「なんだよ」

 

「あれ何?」

 

「ああ、あれか…あれはあそこで演奏できるんだよ」

 

「演奏?」

 

「おう。歌を歌うのも良いし、楽器を弾くだけでも良い。まあスナックにあるカラオケみたいなもんだ」

 

「そんなことまで出来るのか…面白いから俺の病室に付けてくんないかなぁ…」

 

「いや、無理だろ」

 

「だよねぇ」

 

へらりと笑ってみせると彰人が呆れたようにため息をつく。なんか、今日俺めっちゃ彰人にため息つかれてるんだけど?

 

「ピアノでもあれば演奏出来るんだけどねぇ…」

 

「あ?ピアノ弾けんのか?」

 

「ん?まあね。前会った司っているだろう?アイツの親がピアノ講師だからついでに教えて貰ってた」

 

「へぇ…なあ兼さん!」

 

「なんだ?」

 

「ピアノかなんか無いっすか?」

 

「ピアノ…?ああ、あるぞ。それがどうした?」

 

「実は凛がピアノを弾けるらしくて」

 

「そうなのか?演奏してみるか?」

 

「まあ、迷惑でないなら」

 

「分かった。じゃあ取ってくるからちょっと待ってろ」

 

兼さんが裏へと回ってピアノを取りに行く。多分電子ピアノかなぁ?ならまあ弾けそうかな。グランドピアノとかだとちょっと調整に時間かかるし。

 

「ついでに何か歌うか…マイクもあるし」

 

「え!?凛さん歌もやってるの?」

 

「実はこっそり音楽サークルに所属してる。どのサークルかは言えないけど」

 

「凄い…!」

 

「いや、そんなに凄い人でも無いけど…っと、やっぱり電子ピアノか」

 

なんの曲にしようかなぁ…ジェヘナはそこそこ再生数が言ってるから歌えないし…なんの曲にしよっかな~。

 

「うーん…よし。アレにしようかな。椅子借りますねー」

 

「おう。上等なピアノじゃないが許してくれよ」

 

「ピアノがあるだけマシですよ。無かったらアカペラになるところでしたし…うん、調整完了。…え?なんかめっちゃ見られてない?」

 

「まあ物珍しさもあるんだろう。まあ失敗しても気にするな、のびのびと歌えばいい」

 

「そうですね…んじゃ、聞いてくださーい。『ラグトレイン』」

 

ピアノを弾きながら昔に作った曲を歌う。懐かしい気持ちになりながらも最後まで歌いきり、軽く礼をすると拍手が起こった。

 

「ありがとうございました。久しぶりにこの曲歌ったから上手く歌えたかわからんけど」

 

首をまわすとバキリと嫌な音が鳴るがまあいつもの事なのでそのまま立ち上がりピアノを仕舞おうとするがそれを見て慌てて彰人が手伝ってくれる。

 

「いやぁ、久しぶりにあれ歌ったわ」

 

「…おい、冬弥」

 

「ああ、分かっている。小豆沢たちも行けるか?」

 

「当然!行こっ、こはね!」

 

「うん、杏ちゃん!」

 

「えぇ…何事…?」

 

俺が席に戻った瞬間、四人同時に立ち上がる。それを見て顔を引きつらせる俺。いや、普通にびっくりした。

 

「良いものを見せてもらった礼だ。俺たちの歌も見せてやる…行くぞ、冬弥」

 

「ああ!行こう彰人」

 

「ほんと、あんなの見せられて黙ってられるかって!行こっ、こはね!」

 

「うん!私たちも頑張ろうね、杏ちゃん!」

 

四人が俺が先程までいたステージまで歩いていくと四人にマイクを持って顔を見合せ頷くと、曲が流れ始める。

 

「行くぜお前ら!盛り上がっていけよ!!『Ready Steady』!」

 

歌が響く。それを聞いて、純粋に凄いと思った。歌から感じる厳しい練習の跡や四人の固い絆。その曲を聞いていたその時だった。

 

「熱っ…!」

 

スマホが熱を発する。ポケット越しに感じるほどの熱に顔を顰めながらスマホを開くと音楽ファイルが1つ増えていた。…これってもしかして…。

 

「Untitled?」

 

そこにあったのは新たなセカイの入口だった。だが、今はそんなことはどうでもいい。今は彰人たちの歌を聞こう。セカイについてはどうとでもなる。そんな気がする。

 

「ーーー♪!!…ハァッ…ハァッ…っし、悪くなかったな」

 

「…ああ、今日もいい歌だった」

 

「ふー!彰人も冬弥もおつかれー!みんなも聞いてくれてありがと~!こはね~!今日も絶好調だったね!」

 

「ありがとう!杏ちゃんも絶好調だったね!二人もお疲れ様!」

 

四人が笑い合うのを無言で見つめていたが、周りに合わせてとりあえず拍手をする。俺も体が強かったらあんな風にみんなと────

 

「おいおい、何をしけた面をしてるんだ?」

 

「…あはは、分かります?」

 

「当たり前だろう?これでも一人の子供の親なんだ。子供の顔見れば大体のことは分かる」

 

「親、か…はは、親ってのはすごいんだなぁ…」

 

俺の親はそんなこと教えてくれなかった。…教えてなんてくれなかった。

 

「体が弱いんだってな」

 

「え?はい、そうですね」

 

「それも相当悪いって聞いた。今日外に出れてるのも奇跡的だって彰人が言ってたからな」

 

「そう、ですね…俺は──」

 

口をついて出た言葉に兼さんが目を開いて固まる。この事は、俺と友人しか知らないことだった。でも、何となく兼さんは傷つくことなく受け入れてくれそうな気がして口を滑らせてしまった。

 

「…あはは、忘れてください。口が滑りました」

 

「そう、か。そうだな。俺は何も聞かなかった、それでいいか?」

 

「はい。それでお願いします」

 

「おい凛!何話してんだ?」

 

「ん?いや、なんでもないよ。…って、もうこんな時間!?悪い、病院戻らねぇと医者に怒られる」

 

「なら俺が送っていこう。彰人、お前も乗ってくか?」

 

「いや、俺はもう少し練習して行きます。またな、凛」

 

「うん、またね──多分、すぐ会うことになるだろうけどな」

 

スマホを手に弄りながら笑うと俺の言葉に首を傾げた彰人とお客さんや杏さんたちに手を振って兼さんの車に乗り込む。車は楽だなぁ…。と、そんなこんなあって、俺は病院に送って貰って病室で眠りについた。明日はこの謎の音楽ファイルを開いてみようか。




浅野凛
なにか重大なことを隠してる人。兼さんには口を滑らせた。親に関してもなにか思うことがある模様。ちなみにコイツが視線を集めてたのはイケメンだったから。まふゆのAPPが18だとしたらコイツもAPP18くらいある。イケメンめ!

兼さん
重大な秘密を知っちゃった人。知らないフリに務める気ではあるが、もしも言う必要があると感じれば躊躇なく彰人達に話すだろう。
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