クソ雑魚貧弱オリ主 作:とく
9000字ってなんなんだ…
「ということでミステリーツアー行こっか!」
「待て待て、まったくわからん!」
何がということでなのか説明してくれない!?いや、まふゆもなんでさっさと俺の荷物まとめようとしてるわけ?案外お前ノリノリだな?それに絵名も手伝わんでよろしい!奏…は、うん。そこの席空いてるから座ろっか。
「まあまあいいじゃん。泊まりで行くわけじゃないんだしさ!」
「え、おう…まあいいけどさ」
★★★
まあそんなこんなで拉致られ、電車に乗せられた。電車ってこんな感じの作りなのか。初めて見たな。
「で、ずーっと電車に乗ってる訳だけど…いい加減にどこ行くか教えなさいよ!」
「えぇ~!えななんってば堪え性が無いな~!こういうのは着くまであれこれ想像するのが楽しいのにー。ま、もうすぐ着くし、ネタバラシでもしちゃおっかな~」
「はいはい、勿体ぶらずにさっさと言いなさいよね」
「ゴホン。今日行くのはなんと──」
そこまで言って数秒溜めると瑞希はにっこりした顔で告げる。
「──今最も激アツな心霊スポットでーす♪」
テッテレーと音がなりそういい笑顔で言い切った途端、奏と絵名が青ざめる。心霊スポットって言うとあれか?富士の樹海とかそういう感じのやつ?
「…し、心霊?」
「幽霊ねぇ…正直、セカイやミクたちの方が謎な気もするけど」
「まあ確かにそうかもね~!でも、幽霊の中には害があるものだっているじゃん?ミクたちはボクたちに害をなさないから安心しない?」
「そんなもんか?」
「そんなもんだよ!」
まあ確かにミクやリンがまふゆや瑞希に何かするかと言えば…まあ、そんなことはないとは思う。
「は!?え、なんで心霊スポット!?」
「まーまー落ち着いて。これには深い理由があるんだよ」
「…深い理由?」
「うん!ボクが前文化祭で絵名の弟くんと会ったって話したでしょ?その時に弟くんのクラスがお化け屋敷をやってたんだよね~。それで──」
ああ、これただ一緒に肝試しやりたいだけだなとため息を着くとにっこりとまた笑って瑞希が告げる。
「──ボクもみんなと肝試しやりたいなーって思って♪」
「…ただあんたが行きたいだけじゃない!」
「そうとも言うかも~☆」
「あのねぇ…!」
絵名の怒りが爆発する寸前、横から思いがけない言葉が入る。
「…何か問題あるの?」
そう、我らがまふゆ様である。相変わらず空気を読まないというか、読む気がないと言うか…。
「は?」
「奏が曲を作れるようになるなら、行く場所はどこでもいいじゃない」
「うっ……わたしにつきあわせてごめん…」
やめとけやめとけという意を込めてまふゆの肩を掴んでそっと下がらせると溜息をつきながら黙り込むまふゆ。飛び火がすげえんだわ。絵名に言ったかと思えば奏にダメージを負わせてみたりね。
「あ、えと、奏は別に悪くないってば!悪いのは行き先を心霊スポットにした瑞希で…!」
「大丈夫だよ奏!ボクはみんなと旅行できてとっても嬉しいよ!」
「そういう問題じゃなーい!」
「…まあそこまでにしときなよ。そろそろ着くし、もうどうしようもないだろ?それに、心霊スポットとか行ったことなくて楽しみだし」
「うっ…まあ、そういうことなら…」
「あっはは~やっぱりえななんってば凛くんに甘~い」
「はぁ!?そんな事ないでしょ!?」
「…絵名は奏にも甘いよね」
「うっさいわよ!」
また始まった口論に肩を竦めて電車の揺れに身を任せた。
★★★
「とうちゃーく☆」
「へ~心霊スポットってこんな感じなのか」
目の前にあるのはいかにも!という感じの不気味な雰囲気を醸し出すトンネル。初めて見る心霊スポットへの好奇心から周りのことをスルーして杖をつきながら歩こうとすると急に後ろからガシッと腕を掴まれる。
「…ん?奏?」
「ま、待って…置いていかないで…」
「…分かったよ。みんなで行けば怖くないだろう?」
プルプルと子鹿のように震える奏に苦笑いしながら手を差し出すとカタカタと震えながら手を掴む奏。
「あー!凛くんと奏が手を繋いでる~!」
「あら、ほんとね…映そう」
「心霊写真になっちゃうかもね」
「…やめとくわ」
なんだか後ろが騒いでいるが、とりあえず早く来いよ!と声をかけるとパタパタと駆け寄ってくる三人。
「いや~やっぱり名所だけあって雰囲気あるねぇ」
「心霊スポット…って言う割には地味だな」
「あはは、怖いもの知らずだね凛くん。まあ奏が怖がっちゃうから一人くらいそういう人がいて助かるよ~!ほら、まふゆとかは怖がりそうにないけど…」
「気遣いが出来ないから仕方ない」
プルプル震えながら腕にしがみつく奏を見て肩を竦めると、瑞希がトンネルの壁に出来た凹みを撫でながら呟く。
「これ、事故で出来た跡かな?」
「確かに、軽自動車くらいのものがぶつかったくらいの凹みだな」
「そうだよね!?ねぇ、凛くん写真撮ってみてよ!」
「ん?…まあいいけど。ハイ、チーズ」
「イエーイ!」
パシャリと写真を撮る。見ようとすると奏がその手をガシッと掴んで止める。少しも見たくないのだろう。お楽しみは後にとって置こうとスマホをしまう。
「楽しみが増えたなぁ!帰りにみよっか」
「ああ。…って、奏!?大丈夫か?」
「う、うん大丈夫…ちょっと足くじいちゃって…」
「そっか…背中乗るか?奏くらいなら行けるでしょ」
「ちょ、ちょっと凛くん!危ないよ!?」
「…ねぇ、何してるの?」
「…ナイスタイミングまふゆ。奏が足くじいたらしいから背負ってやってくれないか?」
「…いいけど、瑞希じゃダメなの?」
「まあまあ、いいから…さ!」
「あ痛ぁ!?」
バシッ!と瑞希の背中を叩いて笑う。絵名が遅れて走ってきたので何してたかと聞くと暗闇で俺たちを見失ったのだとか。まあ確かに暗いし仕方ないか…。
「お、あそこが出口かな~」
少し立ち止まり、くるりと後ろを向いて先程写真を撮った所を見て俺は一言。
「──失せろ」
「おーい凛くん!何してるのー?」
「悪い!なんでもない!」
さっさとここから瑞希を離した方が良いなと考えながら駆け足で瑞希たちの元へ向かう。その背後で暗闇の中、何かが蠢いたような気がした。
★★★
トンネルを往復し、第二のスポットとやらに来ることになった。
「はい、次のスポットへ到着~!」
「外、だな。というか神社?」
「神社…だね…」
「ここも不気味だけど…まあ外だし、さっきのトンネルよりはマシかな」
「ただの神社に見えるけど、どこが心霊スポットなの?」
「ふっふーん!よくぞ聞いてくれました!ここは通称『呪いの縁切り神社』って呼ばれてる場所なんだ!」
「呪いの縁切り神社?」
神社なのに縁を切るのか…まあ八百万の神とか言うし。そういう神がいてもおかしくない…のか?いややっぱおかしいだろ。恐れが集まると神になるみたいな寸法なのかね。
「そう!──昔、大きな御屋敷仲のいい姉妹が住んでたんだ。ふたりはどんな時も一緒にいてお互いに大切に思いあっていたんだ。だけど…ある日、姉妹がかくれんぼをして遊んでいた時、火事が起きたんだ。お姉ちゃんも妹も、火の中でお互いを探し回ったんだけど──結局見つからないまま死んじゃったんだ」
「またすぐそう言う話する…」
「…かわいそうだね」
「そんなことがねぇ…」
それが本当だとすれば可哀想な話なのだが…それで何故心霊スポットになるんだ?その姉妹がお互いを探して…とか?
「それで、バラバラのまま死んじゃったから、ふたりは、一緒にいられる人がうらやましくなって──強く思い合う人同士がここに来ると、呪いをかけて、離れ離れにしちゃうんだ。で、そんなふたりの魂を鎮めるために、この神社が出来たんだってさ」
「いやとばっちりじゃねぇか」
「それだけやってもらってるんだからそろそろ成仏しなさいよね…」
しかし、案外心霊スポットってバックストーリーみたいなものがあるんだな。創作か真実かは置いておいても興味深い。いやでもやっぱり…。
「──案外、見えるもんなんだな」
「何か言った?」
「なんでもない。案外面白い話だったなと思って」
「あはは、確かにそうかも。よく考えられてるお話だよね~」
「話は面白いかもしれないけど、死んでもお互いを呪うほど仲のいいきょうだいなんていないでしょ!」
「えー、そう?ボクはお姉ちゃんと仲良いけどなー」
「そういえば、瑞希はお姉ちゃんがいるって言ってたっけ。海外に住んでるんだよね」
へぇ、それは初耳だなぁ…なんて思いつつ神社に向かって手を振る。それを見てまふゆが怪訝そうな顔をしていたのでにっこり笑って誤魔化しておく。
「ねぇねぇ、まふゆと凛くんは死んでも会いたいって思う人っている?」
「私は…特に無いかな」
「まふゆは…そっか。じゃあ凛は?」
「俺?…いるよ。死んでも、死ぬような思いをしてでも会いたい人」
「えっ…?」
「…ははっ…冗談だよ、冗談。さすがに死んでまで会いたい人はいないかな」
「そ、そうよね!ちょっとアンタが言うと洒落になんないんだからやめてよね!」
「おやおや、もしかしなくても心配?」
「うううううっさいわよ!ほら瑞希!他にもまだあるんでしょ!?」
「わわっ!ちょ、ちょっと待ってよ!えななん!」
そんなふたりの姿を見て口元を緩めつつ、まふゆたちに行こうと言うと奏とまふゆは何かが引っかかったような顔をしつつも着いてくる。くるっと最後に神社を見て、笑う。──案外、逸話ってのは間違ってるのかもな。そう思いながら、
★★★
誰もいないセカイ。そこで、三人バーチャルシンガーが話していた。
「…ねぇ、メイコ」
そこにいるのは、初音ミク、鏡音リン。そして──新たに現れたバーチャルシンガーMEIKO。凛が行ったステージのセカイとは似ても似つかぬメイコは静かに首を傾げる。
「どうして、みんなにあんな風にいったの?」
「あんな風、って?」
「『私のことはいないものだと思って』って」
「…うん。みんなのことを知りたいなら、みんなと話した方がいいと思う」
リンとミクの言葉を聞いて静かに頷くメイコ。だが、それではダメなのだと首を振る。
「…そうね。それも一つの手段だわ。でも、近くなりすぎて見えなくなることもある。だから私は、距離を置いてあの子たちを見守ることにしたの」
「え…?」
リンが訳が分からないという風に首を傾げる。それを見たメイコは静かに口を開いた。
「まふゆの想いでできた、このセカイにあの三人だけは出入りできる。つまり、まふゆにとって、あの三人はとても大切で、欠かせない存在。でも、あの三人も何かを抱え込んでいる気がするの。私は、その正体を知りたい。特にあの子──瑞希は、大きな想いを抱えているみたいだから」
そこまで言って息を着くメイコ。そして、空の遠い彼方を見つめ悲しげに微笑むメイコ。
「そして、『セカイ』に愛された少年。あの子はとても辛い運命を背負っているわ」
「…もしかして、凛のこと?」
「そう、貴方たちは知らないのね…なら教えておくわ。もしも彼がこのままセカイに関わり続ければ───
そう悲しげにメイコは笑う。その表情を見て、メイコの言っていることが本当のことなのだと悟ったミクは顔を青くする。なにせ、彼がセカイに関わるようになったのはミクが無意識のうちに彼を呼び寄せたからだ。『まふゆ』を救う助けとなると信じて。リンとしても悲しいことだ。時たまやってきては、話をしてくれる友人が消えるかもしれないのだから。
★★★
最後の場所である。前にあるのは校舎らしきもの。というか校舎。完全に学校だった。
「学校も心霊スポットになんの?」
「まあ割とポピュラーではあるわね。トンネルやら学校、あとは廃病院とかもね」
「へぇ~そうなのか。初めて知った」
廃病院…なるほど、人がたくさん関わる場所や、人の生き死にが関係してくる場所はやばいのか。
「さて、奏!ここで曲のイメージまとまんないと帰れないから、頑張ってね~!」
「うっ…が、頑張る…」
「ま、題材程度に考えれば良いのかもな。ところで、ここにもそういう話はあるのか?」
「うんっ、ここは音楽室に生徒の霊が出るっていうウワサがある学校なんだ」
「ふぅん…案外、その生徒もセカイに関わってる人とかだと面白いな」
「はぁ?なんでよ」
「だって、セカイに入ると元々いた場所から消えるわけだろ?その生徒が音楽室でセカイに行こうとしたのを見られたけど傍から見ればその生徒は消えたように見えるわけだ」
「あっ、だから幽霊が居たって話になったって事か!面白いこと考えるな~凛くんは」
「まあそう考えると怖くないだろ?」
「まあ、今ので怖さ半減ってレベルじゃなかったわね」
「まあ残念ながらちゃんとしたお話があるんだよねぇ~。なんでもピアノの全国コンクールに出られるくらいすごい女の子がいたらしいんだけど──みんなからの期待がプレッシャーになってそれに耐えられなくなって死んじゃったんだってさ。…で、校舎を取り壊そうとするとその霊が邪魔していつもケガ人が出ちゃうから取り壊しの計画が無くなっちゃったと言う!」
「ほらまたそういう話するー…!せっかく凛のおかげで怖くなくなったのに!」
「えーだってせっかく心霊スポットに来てるんだし、そういう話した方が──」
「…期待をかけられて、か」
「…まふゆ?」
ずっと黙り込んでいたまふゆが静かに呟く。なんだか嫌な予感がしてまふゆの方を向くが、既にまふゆはどこを見ているかも分からない目でフラフラと歩き出した。
「それでよかったのかも。余計なものがなくなって、ひとりになれたなら」
「え?なんでよ」
「──その方が、ずっと楽だから」
「まふゆ…」
「みんなと旅行してる最中に言うことじゃなくない?…って、ちょっと!」
「あ、校舎の方へ行っちゃった…」
それを見て瑞希がまふゆを追いかけていくが、俺は静かにため息を着くと校門で座り込む。なんだかすごく疲れた気分だ。
「…大丈夫?」
「奏?…まあ、久しぶり色々動いたからちょっと疲れたかも」
「…そうだね。私もちょっと疲れた」
「まふゆは?」
「分からない…今絵名がメッセージを送ってて瑞希が向こうを探しに行ってる」
「なんだ、そうだったのか…安心しなよ、まふゆはそろそろ…っと、ほらね」
「ま、まふゆ!?」
パタパタと駆けていく奏を見て大切にされてるなぁと思う。──もう俺の助けが無くても手を引っ張ってくれる奴らがいるんだな、まふゆ。
「なーに黄昏てんのよ」
「…ははっ、子供の成長を喜ぶ親の気持ちが分かったよ。…ほら、あっちにまふゆはいるから行こうか」
「えっ、ちょ、ちょっと!ああもう!瑞希呼んでくるから待ってて!」
「はいはい」
ダッシュで瑞希を捕まえに行った絵名を待ちながらスマートフォンの写真を見る。…やっぱり真っ赤だ。全然いい予感がしなかったからあのもやもやを散らしたが良かったのだろうか?
「お待たせ、ほら行こ!」
「ああいや、俺はここで待って──」
「馬鹿っ!まふゆが一番頼りにしてんのはアンタなのよ!こんな時に行かないでどうすんのよ!」
「お、おわっ!?」
手をぐいっと引かれてそのまま連れていかれる。そのまま連れていかれた先にあったのは桜だった。美しく咲き誇る桜。
「あ、まふゆ!」
「…いたんだ」
「いたんだって…こっちは散々探したんだけど!?フラフラとどっか行かないでよ!」
「ごめん」
「…え?あ、うん。わ、わかればいいけど…」
「桜、見てたの?」
「うん。なんとなく、目が離せなくて」
「…どうしてこんなに綺麗なんだろう。花の、最期なのに」
「本当に…こんなに綺麗に終れるなんて……ずるい」
「ずるい、かぁ…泥臭くてもいいんじゃないか?別に」
「え?」
虚をつかれたとこちらを見てくるまふゆに笑う。
「なにせ、俺は泥臭く生きて来てるわけだしな。綺麗に終わろうって思うなら…俺は数年前に死んでる。それでも今生きてるのは、泥臭く生にしがみついてるからだ。それに、最期まで泥臭くても、最期に笑えるならそれでいいんじゃないか?」
「…凛…」
「…なんて、旅行の時にする話じゃねぇな。そろそろ帰らねぇとまずいな。特に俺が。閉め出される…!」
「へ?あっ、やばい!ほんとだ!凛くんが閉め出されちゃう!」
「アンタらねぇ…もう少し余韻に浸るってのはないわけ?」
「余韻よりも屋根の下で寝れることの方が重要だっての!ほらほら、さっさと帰るぞ!」
「まあチケットは取ってあるから大丈夫なんだけどねー」
「先に言えよ!」
「ふふっ、それじゃ帰ろっか」
「おう。…奏、曲はできそうか?」
「…うん、なんかいい曲出来そう」
「だってよ!良かったな、まふゆ」
「…そうだね」
そんなこんなあり、電車に乗った俺たちは疲労がありつつも雑談に花を咲かせていた。
「ねーねー!みんなが同じクラスだったらどんな感じだと思う?」
「俺らが同じクラスねぇ…いや、学校のことなんにも分からんからなぁ…」
「まあ凛はそうよね。…というか、みんなで体育の授業受けたりするわけでしょ?イメージわかなすぎ」
「体育なんてしたら死ぬと思うんだけど。いや、最近の俺ならそこそこ出来るか…?」
「やらせないよ」
「はい、すいません」
やっぱりまふゆには勝てなかったよ。でも学校ねぇ~。みんながクラスメイトなら楽しそうだけどね。
「まあ体育はそうかもだけど、勉強のことはまふゆと凛くんに聞けばオッケーでしょ?」
「……答えしか教えないよ」
「まあ授業で起きてて分からないなら教えてやらんことも無い」
「うんっ、それで十分!めちゃめちゃ助かる!」
「…いや、まふゆの奴じゃ勉強にならないでしょ。それに、凛って案外厳しいところもあるわよね」
「まあ甘やかすだけだとダメだし…ねぇ?」
「…なんでそこで私を見るの」
「なんででしょー」
お前は甘やかすだけだとダメやってことやでまふゆゥ!厳しくしていくからなまふゆゥ!でももうちょい人に甘える癖をつけろよまふゆゥ!
「あはは…ねぇ、まふゆはどう思う?みんながクラスメイトだったら!」
「…絵名は毎日遅刻してそう」
「は?サラッと失礼なこと言わないでよね」
「思ったことを言っただけ」
「でも、美術の授業にはちゃんと出てそう」
「わかるー!でも、絵名って描いてる時うんうん唸ったり急に『こんなんじゃない!』って言うから、隣になったらかなりうるさそうだよね~」
「そんなことしてないでしょ!」
「え、自覚してなかったの?」
「…え、嘘。そんなに独りごと言ってる?」
瑞希のマジトーンに固まる絵名。それに追い打ちをかけるように奏が言う。
「…たまに、ミュートし忘れている時とかは…」
「たまに?結構、の間違いじゃない?」
「え、ちょっと、教えてよ!」
「あっはは!でも、あの声聞くと絵名頑張ってるなーってわかって結構すきだよ、ボク」
「はぁ!?…はぁ、もういいわ。じゃあ凛がクラスメイトだったらどう思うのよ」
「凛くんが?…うーん、どうだろう。あっ!すんごいモテそう」
「…へ?」
ぼーっとしているとよく分からない話になっていた。俺がモテるわけ無いんだよなぁ。
「ああ、分かるかも。めちゃくちゃモテてファンクラブまで出来るやつよ」
「ふふっ、もしかしたらまふゆと同じくらいのファンがいるかも…」
「あー!奏それ有り得る!二人してめちゃめちゃモテるんだよね!」
「…よく分からない」
「…分からんなぁ…」
二人して首を傾げていると三人に笑われる。なんでやそうはならんやろ。そうこうしている内に疲労のせいかずっと瞼が落ちてくる。やべぇ…これはアレだ。眠い…
「…凛?」
「あはは、凛くん寝ちゃったね」
「凛に無茶させ過ぎたかな…」
「奏は悪くないわよ、悪いのは全部瑞希」
「…奏はトンネルの中でずっと凛にくっ付いてたけど」
「うっ……ごめん、凛」
するりと凛の頭がポテッとまふゆの膝に落ちる。それを見て苦笑いをするまふゆを除いた3人。まふゆは呆れたようにため息をついて、凛の髪の毛を弄り始める。
「いやあ、こうやって見るとほんとにイケメンだよね凛くん」
「ほんとよね、ムカつくくらい整ってるわよね」
「そう、だね…みんな整った顔つきだと思うんだけど…」
「いや、それは奏もだからね」
そこからは凛を起こさないように静かな会話が続いたが、初めに体力のない奏がダウンし、その次にまふゆがダウン。そして最後に絵名もがダウンする。最後には、どこか物悲しげな瑞希だけが残っていた──はずだった。
「痛っ…あれ?もしかして俺寝てた…って、うわお瑞希以外全員ダウンしてる」
「あれ?凛くん起きたの?」
ゴンッ!と割と鈍い音と共に凛が目を覚ます。頭を擦りながら顔を上げると周りを見て苦笑いを零す。
「おう、まふゆの肘が降ってきた。…なんだよ、随分としみったれた顔してるな」
「あはは、分かっちゃうかー」
「…まあ、そんなに気にすることもねぇだろ。みんな受け入れてくれるだろうし…まふゆにいたってはだから何?くらいは言いそうだしな」
「…あっはは、確かにそうかも」
「まあ、言いたい時にいえばいいんじゃねぇの?俺はもう一眠りするわ。良い枕もあるし。おやすみ」
パタッと頭をまふゆの足に倒すとまた眠りについた凛。自由だな~と思いつつも瑞希は外の景色を眺める。少しだけ、心が軽くなったような気がした。
★★★
さて、ようやくシブヤに到達した全員。体をのばしつつ軽い雑談に花を咲かせる四人。
「いやーみんなおつかれ!すっかり暗くなっちゃったねー」
「首…痛い…」
「あはは、奏、途中から思いっきり横向いて寝てたもんねー!」
「…私は早く帰らないと」
「そっか。まふゆは家族より早く帰らないとだもんね…って、何してるの?」
「凛が、起きないの」
「えぇ!?それ大丈夫なの!?」
「…うん、多分疲れてるだけ。もう病院は閉まってるし私の家に泊まらせる。お母さんもお父さんも凛には何も言えないから」
凛を背負ったままそういうまふゆ。
「え?そうなの?」
「…昔色々あってお母さんもお父さんも凛に色々言われたみたいで」
「そ、そうなんだ…。とりあえず、もう暗いから気をつけてね!」
「まふゆ、またね」
「じゃあね~…で、私たちはどうする?」
まふゆたちを見送った三人だが、やはりバラけて帰ることに。そうして、楽しかった旅行も終わりを告げた。色々あったが、概ねみな楽しめたと言ってもいいだろう。
浅野凛
このまま放っておくと消滅することが判明。本人が知っているかは不明。心霊スポットで明らかにヤバそうなやつと幸せそうな姉妹を見たが、それを言うとやばそうなので胸の中にしまった。写真に関しても何とかして見せないようにしている。