クソ雑魚貧弱オリ主   作:とく

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※この話は三人称です。
※感想ください(小並感)


三話

右手にスマートフォンを持ち、どこか驚いたような表情で画面を見ている凛。スマートフォンにはメッセージが一件来ており、そこにはまふゆからのメッセージが送られていた。そのメッセージにはサークルのメンバーが会いたいと言っているから明日病室に連れて行ってもいいかと書いていた。そのメッセージ──主にまふゆが知り合いを連れてくるという点に驚きつつも珍しいこともあるものだとクスリと微笑みいいよと返信を送る。

 

★★★

 

翌日。相変わらず代わり映えのない病室でどこか楽しげに笑う凛。何せ、()()()まふゆが友人を連れてくるからだ。まふゆは今まで誰も連れてこなかったのか?その答えはYESだ。なぜなら真の意味でまふゆの友人と呼べるの他でもない凛しかいなかったからだ。まだ感情を持っていた頃の友人で、しっかりとまふゆのことを見ているのは凛だけだった。故に"仲良くしている"と思っているのはまふゆと話している相手だけだったりする。なにせまふゆに取って彼ら彼女らはどうでもいい存在でしかないのだから。

 

なので、凛は今日という日をとても楽しみにしていた。もうその楽しみようは近年稀に見るレベル…というよりは、天馬兄妹が来た日くらいにはテンションが上がっていた。数分たった頃、凛の病室の部屋がノックされた。

 

「どうぞー」

 

凛が入室の許可を出すとガラリと扉を開け、四人の少女たちが入ってくる。一人は当然まふゆなのだが、ほかの三人は今まで一度も見たことの無い人だった。少なくとも、まふゆに見せてもらった学校生活などの写真の中に彼女らの姿は凛の記憶には覚えがなかった。

 

「へぇ~キミがまふゆの幼なじみ?」

 

「ちょっと瑞希、初対面の人に失礼でしょ!」

 

「あはは、構わないよ。──さて、瑞希さん?の問いに答えるとするとYESかな。なんなら生まれた病院まで一緒だしね」

 

幼少期から病弱だったから生まれた病院が一緒でお互いの両親が幼なじみでない限りは恐らく関わることは無かっただろうしね、と付け加えるように言うと凄い奇跡もあったもんだね…とピンクの髪にゴシック風の服を着た少女──会話から察するに瑞希という名前なのだろう──が苦笑をこぼす。それに全くだ、と凛が笑うととりあえず自己紹介をしようかと長い銀髪にジャージを着た少女が言う。

 

「ああ確かに。どうも初めまして、浅野凛です。いつもまふゆがお世話になってるようで」

 

「あはは、こちらこそ。ボクの名前は暁山瑞希、よろしくね」

 

「東雲絵名です。よろしく浅野さん」

 

「宵崎奏。よろしく」

 

三者三様、多種多様とも言える自己紹介に苦笑いを零した凛は個性的だなぁと呟き、そもそもまふゆが個性的だからそれに張り合うくらいは個性的なのか…?更に呟き、まふゆに頬をつねられる。

 

「まふゆ、いはいいはい」

 

「余計なこと言わないで」

 

「はーい…全く、怒りん坊なんだから」

 

「何か言った?」

 

「なーんにもー?」

 

凛と初めてあった印象が儚げな美青年といった様子であったところから一転、まふゆと唐突に漫才を始めた凛に目を白黒させる三人。それを見てあっやべと言った顔をする凛。しかし、唐突に何かを思い出したのかあれ?という顔をする。

 

「そういや、他の人がいるのにそっちなんだな」

 

「そっちって?」

 

「え?ああ、まふゆは素で接してるな~って。いつもいい子ちゃんって感じなのに」

 

ぽつりとこぼした独り言に反応した暁山瑞希の問に凛とまふゆ以外の人がいるのに学校生活や親の前で見せる『優等生』の面ではなく素っ気なく冷たい素を見せていることに驚いたとあっさりと告げる凛。

 

「…別に、隠しても意味ないから」

 

「意味ない?バラしたの?バレたの?それとも成り行き?」

 

「…成り行き」

 

「よくそれで今までバレてこなかったなとオレは今猛烈に感心してるよ」

 

「別に。学校のクラスメイトの子たちとはそこまで深く関わらないから」

 

「ここで友達って言葉じゃなくてクラスメイトって言うところが筋金入りだよねほんと」

 

まふゆのクラスメイトは友達としてすら認識されていないことにどこか哀れみを感じながらも肩をすくめる凛。まあ素でいるなら楽でいいやと言い、静かに三人の方を見すえる。ちなみに、全員椅子に座っている。まふゆがせっせと用意しており、それを見て三人は相変わらず驚いていた。

 

「まあ細部…というか、答えたくないことは言わなくてもいいんだけどさ。とりあえずどういう集まりで、どういう経緯があってまふゆがこうなったか教えて貰っていいかな?」

 

「いいよ~奏と絵名もいいよね?」

 

「…ま、仕方ないわね」

 

「うん、私もいいよ」

 

「…私は?」

 

「いや、まふゆに拒否権はねぇから」

 

暁山瑞希がはいはーいと言わんばかりに手を伸ばし、ほかの2人にも了承をとる。それを見たまふゆが自分が含まれていないことに疑問の声を上げるがその言葉はあっさりと凛に切られて消える。凛は気がついていた。まふゆが何かしらをやらかしていることを。そして、だいぶ迷惑をかけていることを。

 

「ええと…とりあえず始まりから話すね」

 

その言葉から話が始まる。まふゆを含めた四人の繋がりは『25時、ナイトコードで。』という音楽サークルであるということ。そしていつも通りに曲を作っていたある日、『セカイ』という不思議な場所に誘われたこと。そして、そんなことがあってからまふゆが失踪したこと。そして、見つけたと思ったらまふゆに全員がボロクソに言われたこと。そして紆余曲折あり、まふゆが帰ってきたこと。そしてある日、まふゆが凛のことを話題に出し、気にしたほか三人が会いたいと言って今に至るということ。その説明を聞いて頭が痛そうに頭を抱え、ため息を着く凛。ちなみにまふゆが失踪したというところから凛は頭を抱えていた。

 

「えっと…その…アホが実にご迷惑をおかけしました」

 

「コイツ連れ戻すのほんっとーに疲れたんだからね!!」

 

「ほとんど奏が連れ戻したみたいなものだと思うけど…?」

 

「あんたねぇ!?」

 

まふゆが余計なことを言い、東雲絵名が怒る。それを見た凛の顔が全てを悟ったような無表情に変わる。

 

「まふゆ?」

 

「…何?」

 

「明日、朝七時にここに来ること。久しぶりのお説教ね」

 

「…どうして?」

 

「どうしてもこうしてもねぇよ!!!このおバカ!!」

 

ほんとにこいつ何やってるんだ…だの、もうなんか申し訳なさで死にそう…だとかブツブツ呟き始めた凛に真実を告げただけで、なにも悪いことはしていないのにだんだんと悪いことをした気分になってくる3人。しかし、数分もすれば落ち着いてきたのか凛が躊躇いがちに口を開く。

 

「まあ、うん。色々…あったんだな」

 

「うん、色々…あったよ」

 

「ええ、色々あったわね…」

 

遠い目をする凛、瑞希、絵名。まふゆのストッパーである凛とニーゴのストッパーをすることが多い瑞希と絵名はあっ、こいつ気が合うなと悟ったような思考になるがはぁ…とため息を着く三人。

 

「…なんか、すごい疲れた」

 

「アンタも苦労してるのね…」

 

「キミらもね。…そういえば宵崎さん」

 

「なに?」

 

「いや、本当に単純な疑問だから聞き流してくれて良いんだけど」

 

「うん」

 

「まふゆや世界中の人を救いたいって願いがあるってさっき言ってたけどさ…」

 

言っていいのか迷うなと顔を顰め、数秒黙り込む凛。しかし、意を決したように宵崎奏の青い瞳を見つめて聞く。

 

「その理想は凄く素晴らしいものだと思うんだけど──君自身は誰が救うの?もしかしてずっと自己犠牲で生きていくの?」

 

そう聞くと固まる宵崎奏。いや奏だけじゃない。その場にいた全員が固まる。『宵崎奏(救世主)』を救うなんて誰も考えたことも考えようとすらしてこなかったからだ。

 

「この世界には、色んな思いや理想を抱えてる人がいる。『家族に応えたい』、『才能が欲しい』、『容姿を良くしたい』…まあなんでもあるだろうし、その理由も理想も様々だろうけど─言ってしまえばそれは所詮自分でも何とかできてしまうものだ」

 

あっさりとそう言い切る凛。凛だって、『自由に動き回りたい』という理想を持って生きている。だがそれは叶わないと知っているからこそ、割り切れる。理想とは心の持ちよう、考え方によっては叶ったり叶わなかったりするものでなければならない。なら、『全ての人を救いたい』という理想は?それは割り切れるものなのか?──不可能だろう。だって、『全ての人を救いたい』という理想はあまりにも主軸に『他人』を置きすぎている。

 

「断言するよ、ここにいるオレを除いた4人の中でキミが最初に理想に潰される。どれだけ才能があろうと、どれだけ足掻こうとキミは最初に潰れる。──それでも今の理想を貫くかい?」

 

ぶっちゃけてしまえば、『浅野凛』は『宵崎奏』を憐れんでいる。どこまでも憐れで哀しくて、そして優しい存在だと気がついてしまった。だからこれはお節介だ。唯一この場で『他人』であり、抽象的に見れる凛にしか出来ない事だと確信している。なんたってほかの三人は少々宵崎奏に対して盲目的だから。

 

「それ、は…それは…」

 

「今ならば辞められる。今ならば間に合う。今ならば逃げられる。だから今聞こう。理想を貫いて潰れるか、理想を捨てて生きるのか」

 

「私は…」

 

悩む宵崎奏にどこか悲しげな目を向ける。このままだと自分の問のせいで宵崎奏が潰れると判断した凛は静かに口を開こうとする…が。

 

「奏は作るよ」

 

「…まふゆ?」

 

凛より先にまふゆが口を開く。凛の問いにあっさりと奏は理想を貫くと確信したように告げるまふゆに驚いたように目を向ける凛。

 

「私が救われるまで、曲を作り続けるって言ったもの。私はそう簡単に救われないと思うよ。──それこそ、人類最後になるくらいまで」

 

その答えを聞いて静かに笑う凛。その言葉を聞いて静かに宵崎奏の目に火が灯る。その目には覚悟があった。

 

「私は──私は作るよ。理想に潰されるまで…ううん、まふゆを救うまでは絶対に」

 

「そっか…そっかぁ」

 

どこか眩しいものを見るように目を細めた凛は口元をゆがめてそして笑う。もうそれは大爆笑だった。

 

「クッフ…クフフフ…アハハハハハ!まふゆが救われるまでかー!それはそれは長い道のりになるだろうなぁ」

 

どこまでも楽しそうに笑う凛。ああ、もうまふゆには仲間がいるのだと悟ったから。少しづつまふゆの未来が明るいものになっているのを感じたから。

 

「そっか…じゃあ、これからもまふゆをよろしくお願いします」

 

「うん、任せて」

 

しっかりと頭を下げた凛にしっかりと笑みを返す宵崎奏。その様子を見て慌てたように残りの2人──暁山瑞希と東雲絵名が再起動する。

 

「はっ、ボクたち忘れられてない!?忘れるなら絵名だけにしてー!!」

 

「瑞希ぃ!なんで私はいいのよ!?」

 

「えー?だって絵名はここにいる人に忘れられてもSNSで覚えてもらってるからいいじゃーん」

 

「なぁんにも良くないわよ!」

 

しんみりとした空気を払拭するように叫ぶ瑞希と絵名を見て笑う凛と奏。まふゆは相変わらず無表情だったが、凛に頬をつままれ無理やり笑わされる。

 

「あっ、ちなみにお説教は忘れてないから」

 

「…余計なことは覚えてる」

 

その言葉にまた他の全員が笑った。

 

その笑い声が病院に響くと同時に、凛のスマートフォンが独りでに起動し、その画面には『悔やむと書いてミライ』という曲が自動でインストールされている画面が表示されていた。




救世主が全てを救うなら、救世主は誰が救うんだろう?

ちなみにこの後凛は全員とナイトコードを交換しました。
※宵崎奏が病室にお見舞いに来るようになりました。
※暁山瑞希が病室にサボ──遊びに来るようになりました。
※東雲絵名が暁山瑞希に連れられて来るようになりました。
※『誰もいないセカイ』に行けるようになりました。

凛の容姿を書いていないことを思い出したので一話の前書きに書いておきます。
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