クソ雑魚貧弱オリ主 作:とく
ピッ…ピッ…っと凛の心拍を伝える音だけが響くいつもの病室。しかし、そこにはいつもの暇をして外を眺めてぼんやりとする凛の姿は無く、酸素を供給するためのマスクを付け、目を閉じて一切動かない、見ようによっては死んでいるのではないかと感じるほど生気の無い凛がベッドで横たわっていた。その傍には心配そうに凛を見つめるまふゆ。
「…んん…?」
「凛!」
「まふ…ゆ…?」
「よかった…!」
静かに目を覚ました凛とそれを見て思わず声を上げるまふゆ。そんなまふゆの方を見たあと、周囲を見回す凛。
「病室…?」
「そう。凛がセカイで倒れてたから」
「そっか」
「…あんまり無茶しないで」
「ごめんね」
どこか泣きそうな雰囲気のまふゆに申し訳なさそうに笑いながら頭を撫でる。充電されているスマートフォンを起動してみるとそこにはたくさんのメッセージが来ていた。メッセージを送ってきていたのは天馬兄妹を初めとしたよく遊びに来る面々だけではなく草薙寧々や最近はあまり見なくなったが昔は時々雑談程度のことはしていた桐谷遥など様々な面々からメッセージが来ており、迷惑をかけたなと顔を顰めた凛。
「凛」
「ん?」
「次セカイに行く時は私に知らせて。ついて行くから」
「…わかった。そうするよ」
正直な話をすれば、あの時凛が倒れたのはもとよりそこまで体調が良くない日であったことも起因する。日によって体調が上下する凛は、体調が悪い時になると歩くことすら困難であり、倒れた時の体調はそれより多少ましな程度──少し歩ければ僥倖というレベルの体調であった。しかし、『セカイ』への好奇心や突如として知らないところに連れてこられたことによる興奮でアドレナリンが分泌され、体調が悪くなっていることに気がつけなかったというのが大体の流れである。しかし一度倒れ、皆に迷惑をかけている以上文句を言う訳にも行かない。
「んん…っと、体調は元通り、かな?どれだけ寝てた?」
「ほぼ丸一日──23時間47分かな」
「いや細かいな!?」
そう当たり障りのない会話をしているとガラリと扉が開かれる。そこからゆっくりと入ってきたのは一人の男性。
「げっ」
「なぁにがげっ!だこのバカが!医者を見てそんな反応をするやつがあるかこのアホ!」
「アホとはなんだこのバカ!」
「無理して倒れたやつのどこがアホじゃねぇんだよ!」
「ぬぐっ…!」
入ってきて早々にやいのやいのと口喧嘩を始める凛と男性の二人。この男性の名は桐谷悠人。浅野凛の担当医であり、数年前のある出来事の命の恩人だ。とはいえ、二人の関係性を簡単に述べるなら年の離れた男友達と言ったところだろうか?お互いがお互いを尊重しつつも、口汚く罵り合うこともままある不思議な関係。
「ま、今回の診断結果は伝えるまでもねぇだろ?」
「過労」
「正解。全く、朝比奈さんに心配かけんなよこのバカ」
「ぬぐぐ…!」
ケケケと口元を歪めながら凛をバカにしたように笑う悠人を歯をかみ締め悔しげに睨みつける凛。
「ま、今回に関しては後遺症の心配もないしもうほとんど元通りっぽいしな。まあ今日くらいは安静にはしろよ?」
「さすがに起きて早々に無茶なんてしねーわ!」
「ほんとか~?」
「信頼ZEROか!?」
「当たり前だろ」
「ですよね」
無茶をするということに関しては定評のある凛のことなので、いつ無茶をしてもおかしくないのだが──まあ今日は無理かと笑う悠人。その視線の先にはスっと鋭くなった視線で凛を見つめるまふゆの様子があった。あの様子なら、無茶しようとしたら殴ってでも止めそうだと退出する悠人。
「はぁ…疲れた」
「…メッセージ返さなくていいの?」
「ん?…あっ、やべ忘れてた」
その手にあるスマートフォンには着実にメッセージが送られてきており、その総数は約20以上とどんどんと恐ろしい速度で増えていく。凛の人徳のなせるところではあるのだが──その数に口元をひきつらせる凛。
「とりあえず返すからちょいまち」
「わかった」
そこからは無言の時間が続く。その無言の空間の中で謎の胸のざわつきに顔を顰める朝比奈まふゆの姿があったが凛がそれに気がつくことはついぞ無かった。
桐谷悠人
皆さんご存知大人気アイドルの父親。天才的な腕を持つ外科医であり、大抵のことは出来る万能医。この人がいなかったら物語は始まらなかった。なんだか原作では職業が出ていたような気がするがこちらの世界線では医者。数年前のある出来事での命の恩人。その出来事は後々分かる。ただ分かるのはシリアスになることだけだ。
桐谷遥
大人気アイドルで、最近多忙なため凛と会うタイミングがない。元々世間話をする程度の仲でしか無かったが、父親から倒れたと聞きまた今度お見舞いでも行くかと考えている。つまり…?
朝比奈まふゆ
色々とフラグを建てられてる可哀想な人。でも大抵主人公が悪い。桐谷悠人には感謝はしているが、特段興味が無いため凛との掛け合いが起こっているときは口を開くことは無い。