汚い西住の子を拾ったので虐待することにした。 作:つヴぁるnet
被った
緑豊かに包まれた自然を眺めながら私は学園の屋上で黄昏る。
ここは少し北の方だから肌寒い空気が常に纏わりつく。
それにいま着てる格好だけでは少しだけやはり寒さは凌げないようだ。
長袖なんだけど防寒着ではない。
でも一番日の当たる場所だから、何もない放課後はこの場所で過ごすのが好きだ。
もちろんここまで連れてきてくれた彼と過ごす時間も幸福だが、生憎今日はお仕事であり共に過ごすことはできない。
かと言って新たな学園で友達を作れず、一人で寂しく過ごしてる訳でもない。 むしろ黒森峰の頃よりも友達がたくさんできた。 指で足りない程度の人数がいる。 でもたまには一人でボーっとしていることが何気なく楽しい。
でも本当は彼とコタツで引っ付いていたい。
あの膝の中で背中を預けてウトウトとするのはどの時間よりも勝る。
「ふぁ〜」
私は呑気に欠伸をする。
黒森峰にいた頃とは比べものにならないほど私は気を緩めて、この場所でノンビリしながらポケ〜としていた。
この場所が他にない特別だから。
縛られる事も、追われる事も、強いられる事も無く、解放的で豊かである。
この場所まで連れてきてくれた彼からは生徒の自由意志が尊重される学園だと聞いた。
一部の生徒が好んでサバイバル生活をしているほどである。
その意味でも自然豊かなこの地で解放的に生きていける不思議な場所だ。
でもこれらは良き経験となって人を育てている。 そんな私もたまに友達とサバイバルしてるけどかなり楽しい。 昔はよくお外でやんちゃしていたから外の環境に慣れているので「みほちゃん素質あるよ!」と褒められた事もある。
嬉しいけど…
そこは女性としてどうなんだろう…?
だけど黒森峰時代よりもたしかに私は充実していた。
生活における恵は豊富じゃ無いが、あの場所よりも私は生きていた。
使命感に追われる事なく、重圧に苦しむ事もなく、自由であった。
そしてこの場で生きる生徒たちも豊かだ。
最初はまだ学校に行くことに困り、怯えと恐怖を持ち込みながらここの生徒と出会ったが、何も恐れることが無かった。
更に言えば西住流の西住みほが現れても「大変だったね!?」「大丈夫だったの!?」「みほちゃんは悪くないよ!」と心配される始末だった。
黒森峰とは全く持って正反対の声と温かみ。
心が大らかな人々に出会い私は涙を流した。
この場所に連れてきた彼以外にも私を理解してくれる者がいる世界を教えてくれた。
この学園はそんな生徒さん達で溢れていた。
それから私は再び学園に通える生徒として青春時代を捨てないで生きることができた。
だから…
あれから一年前くらいにパーキングエリアで彼に言われた事を有言実行する。
辛い記憶を塗り替えられる何かをこの場所で探し、私にとって幸せと楽しい記憶で埋めてくれる何かを探した。
それは今も続いている。
「……あ、もうこんな時間か」
私は入学祝いに彼から貰った腕時計を確認するともうすぐいつもの時間が始まる事を確認した。
なので私はとある武道の履修生としてグラウンドに向かう。
「皆さん早いですね」
最近、彼のお陰でやっと取り付けられた屋根のある収納庫に足を運ぶと既に仲間が沢山集まっていた。
この学園の生徒は基本的に自由だから部活もサボる人は珍しくない。
しかし一部の武道は盛んに活動しており、私が通うこの武道も力が込められていた。
「あ、みほちゃん!」
「はい、さっきぶりですね」
「おいおい、副隊長が先に来て隊長はまだかよ?」
「まぁまぁ、そのうち現れますよ。 とりあえずいつも通りに始めましょう」
「「「はーい」」」
「みほちゃんの方がよっぽど隊長らしいぜ」
「もう、思ってもそんな事は言わないの」
赤毛の少女の呟きに付き合う少女達と共に私は収納庫に入った。
すると中には既に一人の女性が座っていた。
「さーて、誰が副隊長よりも遅れてるかな?」
「なんだ、いたのかよ」
先ほどの悪口を言った赤毛の少女は特に悪びれる事もなく女性とすれ違う。
そのまま準備に取り掛かった。
「今日も寒いですね」
「そうかな? いつも通りだよ」
それはあなたがサバイバルに慣れてるからそのセリフを言えると思います。
正直に言うとジャージ姿は防寒着にならないから寒くて敵わないです。
「さて、もうすぐ大会だ。 今までこのチームは副隊長を作らずにやって来たが、今年から副隊長の地位を導入した新たな試みだ。 しっかりと連携して行くよ」
「「「はい」」」
エンジンが起動した音が収納庫に響き渡る。
苦痛なき自由な練習の始まりだ。
「副隊長、IV号戦車出ます」
「はい、わかりました」
私は黒森峰時代に名残あるドイツ戦車に乗り込んで車長のポジションに着いた。
冷たい装甲に触れながら今回の練習を開始する。
もうすぐ大会だからしっかりと練度を上げてチームを磨いていかなければならない。
「じゃあ今回の模擬戦も昨日と同じようにしようぜ。 隊長と副隊長がそれぞれの流派から飛び出した同士としてな!」
「その案は構わないが、元いたにしても流派をネタにして話すのは感心ならないかな。 みほもそう思わないかい?」
「え? あー、そうです……ね? あ、でも私は気にしませんよ? だって西住流とはもう関係無い人間ですから。 だから世間ではそのまま死亡扱いで、どうぞ」
「おいおい一年前とは違って逞しくなったな副隊長。 この学園に汚染されたか?」
「ふふ、柔軟になったとだけ伝えときますね」
「にっしし! そうかいそうかい!」
「さぁミッコ、お喋りはそこまでだ。 大会も近いからな」
「りょーかい」
赤毛の少女のミッコから「今日も頑張ろうぜ」と肩を叩かれる。
彼女はそのまま愛車のBT-42に乗車した。
するとタレ目で優しそうな雰囲気を持つ女の子が話しかけてきた。
「またミッコが変なこと言わなかった? もしなんか言われたら私が注意しとくから!」
「大丈夫ですよ、アキさん」
「本当に?」
「はい。 むしろミッコの性格があるから助かってると言うか…な?」
「そう? でもなんか行き過ぎた事されたり厄介に思ったら遠慮無く言うんだよ! 私はみほちゃんの味方だからね!」
「ありがとうございます」
「じゃ! 模擬戦頑張ろう!」
「はい」
そう言うとアキさんはミッコさんと同じBT-42の戦車まで乗車に向かった。
「……ふふ」
「どうしたんだい?」
私の微笑みを聞いたチューリップハットの隊長が尋ねる。
「ふぇ? あ、いや……ただ、気がとても楽だなって思いました」
「ああ、それはいい事だ。 息を詰められた状態では大事なことを忘れさせてしまう。 魅力も感じなければ有り難さも得られない。 戦車道は人生で大切な事を教えてくれる世界だ。 それを周りの手によって濁されてはたまったもんじゃ無いからね」
「ええ、そう思います。 だから私は決めました、隊長」
「何をだい?」
「私の今を持って次の高校戦車道大会で優勝を目指したいです。 これは家元に言われたからじゃないです。 背負わされた使命だからじゃ無いです。 私自身が心の奥底から得たいと思ったワガママです。 私は求めます。 この継続高校と共に私は表彰台で旗を掲げたいって」
「…………君は変わったね……いや、変わりすぎた。 でも良い方向に剥けたと言うべきかな? だからその意思はここまで連れてきた彼に対する大きな恩返しとなって、それは喜んでくれる」
「はい」
「でもまだほんの少しだけ甘いかな、みほ」
「え?」
「私はね、彼がもっともっと嬉しがる方法を私は知ってるんだよ」
「!?」
「今の黒森峰は半壊したけど、おそらく次の大会も出場するだろう。 もしトーナメントで戦うことになったらこう考えて臨むと良い」
「な、何をですか?」
「残酷極まりない虐待を施してやる……ってね」
「!!」
そう言うと隊長は自分が被っていたチューリップハットを私の頭に被せました。
少しあったかい。
「今日からそれを被ると良い。 一応みほって事は隠す必要がある。 それに…」
「?」
「私は来年で卒業だ。 だから私の今の
「え! そ、それは!?」
「この名前は先輩から貰い受けたんだ。 私も君と同じように、自由を得ながらこの学園で生きる先輩の存在によって変えてくれたからね。 だから先輩の私は、後輩のみほに私がいま持つこの偽名を与えるよ。 勝手にね」
「ふええ!? ほ、本当に勝手ですよ!」
「その疑問に意味があるとは思えない」
「な、何でですか!?」
「そりゃ、ここはそう言う学園だからね。 それでも首を傾げるなら君もまだまだ継続高校を理解仕切れてない様だ」
「なっ…」
「でも、いつか君が『ミカ』って名前を名乗れる日が来た時、それはここの素晴らしさを本当に本当に味わった時だね。 まだ少し先になりそうだけど」
「!」
それだけ言うと隊長はBT-42まで歩いて行った。
すると隊長はなにかを思ったかの様にこちらに振り向く。
「私も目指すなら君と同じ優勝だ。 だから皆を率いる隊長として副隊長に遅れを取りたいとは思わないよ。 こう見えて私は負けず嫌いな人間だからね」
「!」
グラウンドに舞い込んだ風に靡く髪の毛を払いながら彼女は好戦的な笑みで、私を睨む。
「かかってこい、相手になってやる」
いつもとは違う雰囲気を持って隊長は言いました。
だけどいつもの隊長はあんな感じではありません。
もしかしたらアレが本当の隊長なのでしょうか?
チューリップハットを脱いで素顔を晒してくれた。
それは私に期待してるからだと考えた。
「……」
今被っているチューリップハットはなぜか重く感じる。
ただの布切れなのに。
でもそれはまだ私が受け渡された
吹き付ける風が寒いので私は仲間の待つIV号戦車に乗り込みました。
「みなさん!」
「「「は、はい!」」」
IV号戦車の中で共に戦う仲間に一言かけると反応してくれました。
チューリップハットを被ってる私の姿に少し不思議がってますが私は言葉を続けました。
「少し前の事なんですが、私のお弁当のおかずを隊長が盗み食いしました。 彼が作った手作りをです。 許せません。 なのでこの模擬戦で捻り潰してあげましょう」
「え、えええ!?」
「ふ、副隊長??」
「あ、あのぉー?」
「……なんて、冗談ですよ。 いつもと同じ様に怪我なく頑張りましょう」
「は、はい」
「……みほちゃん、変わったね」
「う、うん、そうだね」
「では、みなさん! パンツァー、フォー!」
私の掛け声を聞いた仲間は一斉に動き始める。
鉄の塊が大地を揺らしながら今日も始まる。
「…」
私はまたこうして戦車道の世界に戻った。
もちろん抵抗はあった。
友達からも誘われた。
私と一緒に戦車道をしたいと言ってくれた。
それからミカさんと出会って少しだけ踏み出せた。
仲間と共に、本当の楽しさと素晴らしさをまた戦車道を通して感じたいと気持ちを取り戻したから。
でもたまに…あの時の事を思い出します。
つらくて悲しい記憶。
だけどこの場所に来て立ち向かう事を決めた私はまた鉄の塊で戦う事を選びました。
彼は反対する事もなく「頑張って」と応援してくれました。
黒森峰と対戦することになったら仕返しすると調子に乗って言ったら「素晴らしい虐待だ」と変な褒め方をしてくれました。
ええ、黒森峰には本当に色々と恨みがあります。
西住流に関してはもうどうでも良いですが、通っていた学校ではわたしのボコのグッズや上靴をゴミ箱に捨てられたりと、幼稚な虐めもあったから、ぶっちゃけると私はあの学園はあまり好きじゃない。
だから完膚なきまでに叩き潰します。
今なら消炭流になれそうかな?
「敵の車輌を見つけました!」
「わかりました、そのまま偵察を続けてください」
隊長の話を聞く限り彼女もどこかの流派に所属していた人です。
しかも西住流と強く対立してるあの流派だから油断なりません。
しっかり理解して私達は挑まなければなりません。
「今日はわたしが、勝ちを貰いますから」
「ねぇ、隊長変わったよね…」
「うん、凄い変わった」
「やはり"ミカ"になれる人なんだね」
ここまで好戦的に笑みんだのいつ以来か…
もしくは初めてなのか…
いや、今の私がどうなのかと問いかけたらこの笑みは初めてだと思う。
だってボコの新グッズを見つけた時以上に心が弾んでいるのだから。
正直昔の私からしたらありえない事なのかもしれない。
だから新たに笑い飛ばす。
何度もこの戦車道で。
そして、この気持ちをまず一番にぶつける相手はやはり隊長しかありません。
絶対に……私は負けませんからね。
「ねぇミカ、みほと何を話したの?」
「偽名がどうちゃらって話してたぜ」
「そうなの? でも名乗らないって言われたらどうする?」
ミカはゆっくりカンテレを弾きながら答える。
「その時はその時さ。 被るか、被らないかの話」
「えー」
「なんだそれ」
随分と軽い回答に批難の声が出てくる。
しかしカンテレの音は絶えない。
彼女の言葉は続いた。
「でも私はね」
「「??」」
続いた言葉に二人は耳を傾ける。
楽しそうに彼女は言った。
「彼女の判断を信じるよ」
放任主義な彼女だけど人の流れを遮ることはしない。
相手を尊重し、たまに惑わし、それでも最後は肯定して後ろから見守る。
彼女にとってそれはカンテレの音が耳に流れる様に自然である。
一輌だけ独特な雰囲気を纏う戦車は進んだ。
これは石川県の母校から旅立った学園艦の上で、一人の少女が戦車道の世界へ再び身を投じた"もしも"の物語。
背負う使命感も無い。
自分の戦車道を繰り広げることが出来る。
そのかわり、受け渡されたチューリップハットは違う重さを感じていた。
だがその重さは苦しくのしかかるモノではない。
背負いたい暖かみがあった。
だから後に名乗ることになるだろう偽名を勝手に託されながらも、副隊長となった少女はチューリップハットを被ってこの場所で自由を育むだろう。
そして託されたこのチューリップハットと偽名を、次は自分が誰かに託す時が来るかもしれない。
そう思ってならない。
それはまだわからない将来の話だが…
いまはそれで充分だ。
ようこそ、継続高校に。
私の名前?
とりあえず皆から ミカ と呼ばれてます。
よろしくね。
え?
わたしが消えたあの有名人に似てるって?
ふふっ…
さて、それはどうかな。
わたしはミカだから違うかもよ?
でも…
わたしはこう思うよ…
その質問に意味があるとは思えないね。
〜 おわり 〜
継続高校ルートに進んだ場合の話。
大洗に似た雰囲気故に戦車道を続けれました。
あと本人が原作並みのメンタルですね。
卒業後もアキが本当に良い友達でいてくれそう。
見直しても見直しても、誤字と脱字多くて笑えない。
この小説自体は数年前に筆記した作品。
かと言って今も変わらずお粗末な筆記力。
長文向いてないのかな…と、まじめに考えてる。
それでも妄想が収まらない。
二次小説がやめられない。
なぞる指が終わりを見せない。
ああ、そうとも。
好きさ、好きで仕方ない。
この想いは、歩みは…
止められないからよ…
だからよ…
止まるんじゃねぇぞ…
次回『異世界オルガルパン』
次でラストにしまーす!