小人族でも、女でも英雄になりたい   作:ロリっ子英雄譚

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 言わせてくれ。後悔はない。


第一歩

 

 

 

 英雄譚を見た。

 そこに描かれていたのは輝かしい英雄の軌跡。

 

 そこには少女の夢の全てがあった。

 いつしかこんな風になってみたいと、いつか絶対に英雄になりたいと少女は語った。

 

 だが、同胞が鼻で笑った。

 お前なんかに何が出来ると、夢見る少女の希望は簡単に打ち砕かれそうになった。少女は小人族(パルゥム)であり、女だった。勿論、英雄譚には女の英雄は存在はする。

 

 だが、女の英雄として主人公になれた話は存在しない。単純な話、ヒロインとして名を馳せ、英雄の隣にいる英雄のような女は確かに存在する。だが、メインにはなり得ない。しかも小人族。

 

 酒場の誰もが笑った。

 だが、その言葉に少女は希望を捨てなかった。

 

 むしろ興奮した。

 何故なら、まだ主人公として英雄譚に載っていないならもし英雄になれたら自分が最初の女の英雄として君臨出来る。

 

 少女は負けず嫌いだった。

 そんな罵倒も、嘲笑も、今に見ていろと隠れて中指立てた。なんなら行動は早く、ゴングがなった瞬間に荷物を纏めてオラリオへ向かっていた。

 

 負けず嫌いだから。

 誰かを憧れ、憧れた誰かに勝ちたいと。勝って、勝って、勝ち続けて、その生き様を以って英雄の軌跡とする。

 

 それが少女––––ルージュ・フラロウワの最初の一歩(ファースト・ライン)だった。

 

 

 

 ★★★★★

 

 

「此処もダメか……」

 

 

 ギルドから貰ったファミリアのリストの名前に線を引く。もう十三件回って全滅だ。足下見やがってと愚痴をこぼしながら次のファミリアの場所に向かう。

 

 そう、女であり小人族である以上、マスコットとして置いてくれても冒険者としては論外と見下される。

 

 

「っと、次は……?」

 

 

 裏路地に入ると、誰かが倒れている。

 金髪で赤い外套を被って呻き声を上げている……もしかして行き倒れ?見た感じ、息はあるし、意識もありそうだが、何というか、裏路地のゴミ箱を漁った形跡がある。貧乏なのか?

 

 

「………あの、大丈夫ですか?」

「う、うう……お腹が空いて力が入らないのだわ……」

「おお、重症ですね。あの、保存食でよければ」

 

 

 バッ、と身体を起こして私を見てきた。

 出した保存食に涎を垂らして目がキラキラしている。なんだろう、地味に可愛いなこの女神様。

 

 

 ★★★★★

 

 

「んぐ、んぐ……ぷはぁ!た、助かったのだわ。割と本気で送還してしまう所だった」

「それは良かったです。割とマジで」

 

 

 近場の噴水にて買っておいた保存食を女神様に渡すと、貪るように食べ進め、今に至る。どうやら、最近下界に降りてきたらしく、地上の事を何にも知らなかったらしい。この女神様は手続きがかなり大変だったようで、下界に来るのが100年以上遅れたと愚痴っていた。

 

 

「貴女の名前は?良かったらお礼……と言っても私に出来ることは殆どないと思うけど」

「ルージュ・フラロウワです。女神様は?」

「私はエレシュキガル。助けてくれたし、私に出来る範囲なら、なんでも言ってほしいのだわ。正直、女神としてあるまじき姿を見せちゃったけど」

「!なら、眷属になるのは可能ですか?」

 

 

 少女、リスト内のものを順に回っても時間の無駄だ。大手ファミリアは自分から希望しなかったのは、王道が一番早くて()()()()()()()()()だからだ。

 

 英雄になりたいと言った以上、苦難はつきもの。それをファミリアが強いからと言い訳して跳ね除けるのはなんか違う。自分が英雄になりたいなら自分だけの軌跡を積まなければならない。

 

 

「えっ、それはまあ、可能なのだけれど。……いいの?私、冥府の女神だし……縁起悪いし……その、さっきみたいに迷惑かけちゃうかもしれないのだわ」

 

 

 エレシュキガル。

 冥府を司る女神であり、天界から降りてくる神とは違い、彼女は冥界からやってきた神である。冥界は果てしなき深淵に存在し、エレシュキガル様が此処まで来るのに一度天界に向かわなければいけなかったらしい。

 

 エレシュキガルの逸話は病魔や死とかそう言ったマイナスの要素が多いから、眷属を探していたけれど、いざとなると自分が疫病神として迷惑かけてしまうんじゃないかと思い、今に至る訳だ。

 

 

「構わない。苦難上等、それを跳ね除けてこそ英雄でしょ?」

「!」

 

 

 キラキラした王道?

 いいや、そんなもの興味ない。苦難も、試練も、自分だけの、自分にしかない英雄譚を創りたいなら、死ぬ気で最底辺から駆け上がる。

 

 それもまた王道。

 だがスタート地点が同じだけ、どう昇るかは自分次第。いいじゃん、それがカッコいい英雄の軌跡だ。

 

 

「……私は英雄になる。絶対に。誰もが知らない軌跡を歩いて、英雄になってやるって決めてるから」

 

 

 覚悟は出来てる。

 私は多分、世界一負けず嫌いだ。だから英雄を目指した。小さくても、女でも英雄になると。膝を地につけ、右手で女神様に手を出す。

 

 

「だから、エレシュキガル様、私は貴女の眷属になりたいです」

 

 

 神様は誰でもいいわけじゃない。

 けど、この女神様がいい。その直感は間違いじゃない。女神様は震えて、俯いたまま私の肩を掴んだ。

 

 

「め、めっちゃいい子なのだわー!下界に降りてきて良かったー!」

「……と言うことは?」

「いいのだわ!初めての眷属ゲットなのだわ!!」

「「いえーい!」」

 

 

 因みに言っておこう。

 物語に酔ったわけでも、酒を飲んだわけでもない。単純に、ノリがいいだけである。

 

 ともあれ、【エレシュキガル・ファミリア】が生まれた記念すべき日となった。

 

 

 






恩恵はまた次回。
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