小人族でも、女でも英雄になりたい   作:ロリっ子英雄譚

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遅れた。メンゴ。
課題とかバイトとか大会とか多かったんだ。許して。


第十三歩

 

 

 

 ハーフエルフの女の子。ルゥちゃんの親元を探す為にお姫様抱っこで街の中を歩いている。歌を唄いながらテクテクと歩いているそれを見て、何故か蒼い鳥と言われた。

 

 

「〜〜〜♪」

 

 

 迷宮英雄譚より抜粋。『希望の星』。

 子供から愛されて、広く親しまれているものだ。オラリオでもこの歌は珍しくないし、何なら飲食店でもよく流れているのを見かける。

 

 歌を口ずさんでいると、ルゥちゃんはお姫様抱っこされたまま寝てしまった。いや、寝ると親元が誰なのかわからないのだが、スヤスヤと可愛い寝顔を浮かべてしまったルゥちゃんを見て起こすのも忍びないと思い、とりあえずギルドまで向かおうとした時。

 

 

「すみません!通してください!」

「?」

 

 

 隣を通り過ぎた白い兎が小さな女神様を抱えていた。シルバーバックがこの通りにいたと聞いていたが、どうやら倒したのはあの子らしい。

 

 

「ベル……倒したんだね」

 

 

 おめでとう、とポツリと呟く。

 あの時、自暴自棄になった少年は前を向いて街角の英雄となったそれを見て、軽く笑みが浮かんだ。

 

 

 ★★★★★

 

 

 ルゥちゃんをギルドに預けようとした所で、親元と言うより修道女の服を着た綺麗な女性にあった。マリアさんに泣きついたルゥちゃんを見て、私は頭を撫でた後、二人に手を振って別れを告げてホームに戻った。

 

 

「ただいまエレ様!買ってきたよー!お酒に合う屋台のご飯……ってあれ?」

 

 

 ベッドは整っていて、部屋も綺麗になっていた。

 ただ、薔薇が一輪だけ窓の近くの花瓶に入っていた事以外は何も無かった。何故か全てが片付いていた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「エレ…様?」

 

 

 何故か、嫌な予感がした。

 エレ様が遠くに行ってしまうような、そんな予感に荷物を置いてすぐに宿から外へと駆け出した。

 

 

 ★★★★★

 

 

 夜の市街上部。

 夜の風が僅かに靡く中、オラリオの光を眺めながら黒いドレスを着た金色の女神は俯いていた。

 

 ぐるぐると頭の中が混乱している。

 ルージュに何も伝えずに外に出た事、このままあの子の主神として過ごしていいのか。一年は改宗が出来ない。恩恵は授けたままだし、逃げる事はしない。それはルージュにとって成長しない事と同義だ。

 

 蒼い子供がモンスターに襲われて、返り討ちにした。その噂を窓を開けていた私は聞いてしまった。そうやって駆け出して、ルージュを探して見つけた。

 

 ハーフエルフの女の子を抱えて、優しく歌を歌っているのを見て私は思った。この子は()()()()()()()()。心は強くても、いつかその優しさで折れてしまうんじゃないかと。

 

 私は冥府の女神。忌むべき存在。

 嫌でも厄災を寄せ付ける。冥府の女神の在り方は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だからあの時まで、ずっと独りぼっちで誰も助けてくれなかったのだから。あの時、ルージュが助けてくれなかったら死んでいた。とても優しい子だと思って眷属として受け入れた。だが、眷属(こども)を持つ主神(おや)になってから、嫌なことばかりが頭をよぎる。

 

 私のせいで、いつかルージュが傷ついてしまう事が耐えられない。

 

 

「どうすれば…いいのかしら」

「いや、普通に帰ってきてくださいよ」

 

 

 背後から聞こえた声に咄嗟に振り返ると、軽く息が切れていたルージュがそこにいた。

 

 

「どうしてここが?」

「愛の力です」

「どうしてここが?」

「サラリと躱されると傷付くんですけど。まあ、聖域を限界まで広げて探しましたよ。恩恵授けたエレ様なら探知出来るし」

 

 

 その代わり精神力(マインド)が七割消費した。

 都市の四分の一まで範囲を一瞬だけ広げて探知したが、想像以上に持ってかれたらしく、二秒広げて約三割以上は消費され、地味に辛かったようで息切れしていた。

 

 

「ちゃんとお土産買ってきたんですから、帰りましょうエレ様。心配したんですから」

「………」

「エレ様?」

 

 

 ルージュが手を引こうとするが、エレシュキガルの手は力無くダランと落ちる。どうしたらいいか分からない答えをルージュに聞いた。知りたかった、今の眷属の気持ちを。言葉にしないと分からない自分に嫌気が差しながら、エレシュキガルは心のどこかで怯えていた質問を聞いた。

 

 

「ねえ、ルージュは本当に私が主神でよかった?」

「はっ?」

「……今、少し悩んでるのだわ。貴女は間違いなく、英雄になれる素質がある。だからこそ、私が主神でいいのかって」

 

 

 忌避される女神と英雄になれる少女。

 無名の女神ならよかった。けど、エレシュキガルの存在は他の神から忌避され、それが眷属にまで降り掛かる。英雄になるなら名声は必要だ。無名の女神なら、出世して恨まれる事はあれどそれだけだ。他の神からすら疎まれる自分の存在が、ルージュの叶えようとしている英雄の道の邪魔になる。

 

 我が子を思うこそ、離れるべきなんじゃと考えてしまう。

 怖くて、離したくなくて、でもそれを押し殺して見て見ぬふりをしてしまうときっと自分を嫌いになる。

 

 だから、ハッキリ言って欲しかった。

 ルージュから否定の言葉が出れば迷わない。私は……

 

 

「てい!」

「あだっ!?」

「何勝手にナイーブになってんですか。馬鹿なんですか?」

「えっ……はっ?」

 

 

 急に手刀をかまされた事に呆気に取られているエレシュキガルにルージュは話し続ける。

 

 

「私はエレ様が好きですよ。誰でもよかったなんていいません。二週間経って、嫌いになるわけないでしょ」

 

「で、でも」

 

「ていうか、なんでそう思ったんですか?」

 

「わ、私が冥府の女神だから」

 

「いや関係ないでしょ。恩恵は大体同じだし」

 

「わ、私が主神だと他の神とか、他の人と険悪になるかもしれないし」

 

「いや、別にエレ様知らない人なら反応は大体同じですよ。神々のちょっかいくらい跳ね除けますよ」

 

 

 強情にも引き下がらないルージュはエレ様にため息をついた。

 

 

「ハァ……そんなに心配なら言い方を変えます」

「?」

「––––()()()()()()()()()()()()

 

 

 神々が聞いたらクサい言葉かもしれない。

 でも、ルージュは真っ直ぐな瞳で射抜いてくる。この言葉に偽りはなく、本気で心から告げている事に。嘘を見抜ける神だからこそ分かってしまう。

 

 ルージュは更に続ける。

 

 

「そして私の側で、英雄の道に上がる所を見て欲しい。それじゃダメなんですか?」

「……っ」

「貴女が私の主神である事の、理由になりませんか?」

「そんな訳、ないじゃない!」

 

 

 咄嗟に叫んだ言葉にあっ、と呟く。

 突き放そうとしたのに、欲が出てしまった。そしてそれが答えだった。エレシュキガルも離れたくないと思ってしまっているのだ。だから、否定してしまった。

 

 

「今ここに宣言しましょう。冥府の女神、エレシュキガル様」

 

 

 エレシュキガルの前で跪き、手を伸ばす。

 

 

「私はいつか必ず、英雄になります。誰も見た事の無い、強くてカッコよくてどんな『理想』も叶えられる英雄に」

 

 

 それはまるで英雄の誓い。

 英雄譚に出てくる英雄が、大切な人へと誓いを結ぶソレだった。

 

 

「だから、その道を貴女が見守ってくれませんか?私と一緒に、その道を歩んでくれませんか?」

 

 

 ポロポロと、涙が落ちた。

 無意識のうちにエレシュキガルの瞳から涙が溢れていた。押し付けられては疎まれて蔑まれていた自分を、選んでくれて大切に思ってくれていた子に出会えた。

 

 自分とは違いすぎて、手放さなきゃいけないと思っていたのに……

 

 

「……私…なんかでいいの?本当に」

「うん、私は貴女に見て欲しい」

 

 

 それでも、捨てきれない想いに涙が出てしまった。

 こんなんじゃ、女神の威厳を保てない。きっと酷い顔をしているのだろう。でも嬉しくて、もう否定できない。目を擦り、涙を拭い、目の前にいる少女に告げた

 

 

「––––冥府の女神の下に貴女を認めましょう。気高き誇りと魂を持った眷属よ。貴女の名を告げなさい」

「ルージュ。ルージュ・フラロウワ。この身、この魂は貴女と共に」

 

 

 そうしてエレシュキガルは手を取った。

 そして、二人とも笑い出した。夜の街のせいか雰囲気に酔ってこんな誓いを立てるなんて面白くて、そして可笑しくて笑ってしまう。

 

 

「ふ、くふっ!あはははははは!!!どーよ。ちょっと英雄っぽかったでしょ!」

「––––そう、ね。私の眷属として誇らしいわ」

 

 

 もう迷いは消えていた。

 エレシュキガルはルージュの背中を見守り続ける主神(おや)としての自分を肯定してしまった。これから色んな厄災や試練、そして悪意が降りかかるかもしれない。だけど、彼女が隣に居たいと言ってくれたのだ。だから後悔はなかった。

 

 

「んじゃ、改めまして。よろしくねエレ様!」

「ええ、啖呵切ったんだから。ちゃんとカッコいいとこ見せてよね?ルージュ」

「もち!」

 

 

 当然、狙うは頂天。

 英雄になれるのはまだまだ先だが、それでも絶対に誓いを破る事はない。そう決意した夜に二人は本当の意味で『家族』に成れたのだ。

 

 それが嬉しくて、暫く二人で笑い合っていた。

 




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