小人族でも、女でも英雄になりたい   作:ロリっ子英雄譚

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第十七歩

 

 

 

「んー……?」

「……えっと、ジロジロ見るのはやめてくれないか?殴った事は謝るが、少々不快だ」

 

 

 神様二人がカフェで会談している最中、私とベート、そして【デュオニュソス・ファミリア】の団長のエルフ、フィルヴィスと待っている。私は一応治癒力促進の為に聖域を軽く展開したら、フィルヴィスの方から変な反応があった。

 

 なんなら、フィルヴィスが苦しむように胸を押さえていたから焦って大丈夫かと触れたら殴られた。乙女の顔にLv.3のビンタが。耐久値が更に上がった気がする。めっちゃ平謝りされた。

 

 

「うーん。分からないなぁ。似てるのにちょっと違うし……あっ、もしかして神様の血とか飲んだりしてる?」

「吸血鬼か私は!?」

「あっ、自己紹介してなかった。私はルージュ、えっとフィルヴィスだっけ?」

「あ、ああ……フィルヴィス・シャリアだ。馴れ合うつもりはない」

「神様の血をこっそり飲むとかやめた方がいいよ?いくら長寿でもどんな事があるか分からないし」

「だから違うと言っているだろう!?」

 

 

 じゃあなんだ?この存在の強さは。

 怪物とは違う。神聖な感じがするのに嫌悪感を抱くようなものは。聖域を展開し、アレに似たような感覚があったのは間違いないし。

 

 アレは()()()()()()()()。聖域を展開し、神を感知した時に感じるソレと同じだ。神の力、もしくは似たような力を持つ存在。神々の意思を継いだ存在と言えば、他にあるとするなら……

 

 

「じゃあ、精霊とか?」

「………っ!?」

「……いや、精霊って子供産めるっけ?」

「いや……神と同じで不変だから産めないだろう」

「うーん、じゃあなんだろ?……あっ」

 

 

 精霊と契約した存在はそれこそ精霊の力を借り莫大な神秘の力を行使出来ると聞いた事があるけど、実物を知っているのはハイエルフと神々くらい。私も見た事はない。

 

 

「もしかしてハイエルフだったり?」

「断じてハイエルフではない。ハイエルフだったなら私は自害している」

「何故に?」

「私は穢れている……だからハイエルフだったなら生き恥を晒さずに死を選んでいただろう」

「穢れ……何で?めっちゃ美人でめっちゃ綺麗だし汚れてないじゃん。何処が穢れてるの?」

 

 

 キョトンとした無垢な顔で首を傾げるルージュを見て、フィルヴィスは答えに詰まった。深蒼色(ネオンブルー)の瞳に見つめられ、答えを上手く吐き出せない。

 

 

「はっ……えっ、それは、私に近づく奴は大体死ぬからだ」

「何で?」

「だから私は……」

「そんなの運が悪かった。それだけでしょ?えっ、直接手を下したの?」

「そんな訳……!」

「だったら穢れてないよ。血塗られてなんかない」

 

 

 今度は優しく手に触れた。

 それを振り払おうとしたのに、優しい顔で微笑んだルージュを見てフィルヴィスは困惑していた。図々しいが、それでも掴まれた手を離せない。かつてこんな事は無かったのに、その小さな手を握られて安心する自分がいる。

 

 

「私は貴女の手、結構好きだよ?」

 

 

 めっちゃ綺麗で憧れる、と口にしたルージュに思わず頬が赤くなる。動悸が早くなって耳が染め上がる。我に返った瞬間、手を払い思わず叫んだ。

 

 

「ば、馬鹿じゃないのかお前!?私は……その……」

「えー、エルフだからってちょっと触れたらビンタする人に言われてもなー。あー、痛かったなー」

「それを引き出すのは卑怯だぞ!」

「てへっ☆」

 

 

 額に手を当て、可愛げに舌を出す。

 隣にいたベートが呆れたようにため息をつく。カフェから出た二人に対して遅えと視線で釘刺す。ベートからしたら退屈な時間だっただろう。

 

 

「なんや、もう仲良うなっとるんか?」

「まあね。エルフと初めて友達になった」

「私は友達と言って––––!」

「えっ、嫌なの?」

「うっ……す、好きにしろ」

「ははっ、こんなフィルヴィス初めて見た。今後とも仲良くしてやってくれ」

「ディオニュソス様!?」

 

 

 ロキ様が拝みながらご馳走様と言ってきた。

 ディオニュソス様は朗らかに笑い、フィルヴィスは反論するように抗議する。

 

 

「……っ」

 

 

 脇腹が疼くように傷んだ。

 治癒力はあっても骨は折った。この【凶狼(ヴァナルガンド)】が持っていた携帯用ポーションと聖域の力で折れた骨は罅程度まで回復はしたと思うがまだ怪我人だ。そろそろ帰りたいのだが……

 

 

「神ロキ。もういいですか?私帰っても」

「ああ待ちぃ。少し付き合ってくれへんか?怪我人引き摺るようで申し訳ないんやが」

「何処へ?」

「ギルド。ウラノスんとこや」

 

 

 おい待て、怪我人引き摺って行く場所じゃない。

 そもそも、ギルドはどのファミリアにも中立。ギルドの中枢部に居るウラノス様に会えるはずがない。それは【ロキ・ファミリア】であってもだ。

 

 

「いや無理でしょ。私冒険者だし、そのウラノス様は中立のギルドの最深部に居るんですよね?」

「ウチが聞きたいのは別件もあるんやし、ついでやついで。それに、ウチの勘が言っとるんや。絶対に聞いといた方がええ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「………」チラッ

「……ロキは性格はアレだが、勘は外さねぇ。大人しく行け」

 

 

 助けの視線出したのに一蹴された。

 道化の神(トリックスター)の直感は少なからず外した事がないらしい。何それすごい。と言う事は少なからず、私のスキルがロキ様の助けになるかもしれないって事か?天下の【ロキ・ファミリア】が私に助けを?

 

 

「……まあいいか。こっちも知れるだけ知れたら得だし」

「ほな行こか」

「そうですね。んじゃ、またねフィルちゃん」

「フィルちゃん!?取り消せ……!」

「渾名なんだけど……ダメ?」

「私、多分お前より歳上だからな?」

 

 

 えっ、てっきり同年代くらいかと。

 いやまあ、団長って言ってるくらいだし。なると……

 

 

「……さん付けの方がいい?」

「……もう好きにしろ」

 

 

 じゃあフィルさんで。

 それを見ていたディオニュソス様がクスクスと笑っていた。

 

 

 ★★★★★★

 

 

 んじゃ、付いてきてぇな。という一言で私は神ロキの後ろを歩いているが、ひょいひょいとギルド員に軽く挨拶しながら突き進むそれを見て苦笑を浮かべながらも後ろについていく。

 

 不思議そうに見つめる視線と、止めようとする職員たちから抜けていくと、資料を手に考えこんでいるエイナさんがいた。

 

 

「あれ、ルージュちゃん!?何で……っというか何その傷?」

 

 

 あっ、脇腹見えてる。

 そういえば貫かれかけた時に、鎖帷子まで貫く勢いだったから、服がボロになるのはしょうがない。藍色と白のデザインのコレ結構気に入ってたのに。

 

 

「あー、その話はまた後で。神ロキの付き添いみたいなものかな」

「いや貴女【エレシュキガル・ファミリア】じゃない」

「まあそうなんですけど」

「コッチにも事情があるんや。ほな行くで」

 

 

 いや神ロキ。貴女もギルド長の脇腹掴んで駄々捏ねるようにしてるなよ。ギルド長嫌われ者なのは分かるけど。肥えた豚と呼ばれる理由は分かるけれども、仮にもその人ギルド長ですよ。怖いもの知らずか。

 

 ……やっぱ駄目じゃない?普通に帰った方がいいのでは?

 

 

『––––構わん。通せ』

「!」

「ウラノスの声や」

「し、しかしウラノス様!」

『よいと言っている。お前たちは引け』

 

 

 どうやら、ウラノス様自身も何かありそうだ。

 奥の階段を下り、暗い通路を通るとそこにいたのは不動の老神。

 

 世界にダンジョンという『蓋』が出来る前の話。人々は無力ながらもモンスターに抗い、殺されては殺す。血で血を洗う戦いが日夜蔓延る世界の話、精霊の力を得て立ち向かうもの。種族としての能力によって強化し、狩り尽くすもの。 

 

 そんな中で、モンスターが現れる『穴』をダンジョンという存在で『蓋』をし、彼等は下界に舞い降りた。神々の能力を封じて遊びに来た中に一人、不動の大神は静かに玉座に座り、祈祷を捧げ続けた。

 

 それが創設神ウラノス。

 それはまるで巨大な大木。或いは柱にも見える。視線が此方に向くと軽く頭を下げる。

 

 

「久しぶりやなぁウラノス」

「ああ、久しいなロキ。して小人族(パルゥム)は?」

「……初めましてウラノス様。えっと、ルージュ・フラロウワです」

 

 

 軽く自己紹介を終えるとロキ様が口を開いた。

 

 

「単刀直入に聞くでウラノス。食人花を地上に運び込んだのはギルドか?」

 

 

 その言葉に息を呑む。

 アレをギルドが運び込んだものなのか?だとしたらどうやって?【ガネーシャ・ファミリア】でも知らないと神ロキは確認している。だとしたら、あんなレベルのモンスターを運び込める人物、一体誰と繋がっているのだろう?

 

 

「それは、違う」

()()()、な」

 

 

 含みのある言い方だが、嘘ではなさそうだ。

 

 

「んじゃ本題その2。昔、聖域を使う『聖女』が居たやろ?詳しい力について話してくれへん?」

「何故だ」

「この子、ソイツと同じ『聖域』のスキルを持っとる」

「–––––何だと?」

 

 

 ウラノスが、怪訝そうに眉をひそめた。

 この見るからに超然とした、厳かな神の表情が変わり、視線が此方に向く。

 

 

「……ロキ、退出しろ」

「嫌に決まっとるやろ。ここまで来といてお預けなんて」

「ステイタスには守秘義務がある。漏れる口は最小限にしたい」

「……あの、神ロキが居ちゃダメなくらいにやばいものなんですかこのスキル?」

 

 

 ウラノス様が首を縦に振る。

 おいマジか。ロキ様すら目を見開いている。聖域のヤバさはよく分からないが、そこまでヤバいならロキ様が居るのは確かに危ないかもしれない。実力行使の引き抜きだったら洒落にならんし。

 

 

「あのロキ様。後で話すので一回退出お願い出来ますでしょうか」

「……しゃーないな。後で話してくれな」

「話の内容によります」

 

 

 ロキは頭を掻きながら歩いてきた道を引き返した。

 どうやら退出を譲らなければ話さない頑なな老神を見て、自分が居ても得られるものはないと踏んだのだろう。

 

 二人きりとなった今、私は改めてウラノス様に聞き始めた。

 

 

「……話してくれますか?『聖域』について」

「––––そうだな。語るとするなら五十年前の話となる」

 

 

 ウラノスは語り始めた。

 聖域についてのスキル。その成り立ちについて、老神は語る。かつて起きた許されない神の罪を。

 

 

「––––下界に降りた一人の医神とその眷属が【聖女】と呼ばれるまでの話だ」

 

 




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