小人族でも、女でも英雄になりたい 作:ロリっ子英雄譚
「ふっ!!」
インプを斬り、オークの魔石を穿ちシルバーバックを蹴り飛ばし喉を斬り落とす。此処は
多少の無茶かもしれないが、それにも訳がある。
十日後に私は遠征についていく事になったのだ。それも、
勿論、断る事も出来た。
だが、それ以上に助けを求めていた存在に近づくチャンスでもあったのだ。故にステイタスを上げる為に単独で潜っている。
それは二日前の事だ。
ウラノス様から語られた一つの神の過ちを。
★★★★★
神々が遊びに来た。
その中の一柱に医療を司る医神もまたこの世界に下界していた。
彼の名はアスクレピオス。
医神にして、この世界で
この世界は神々が訪れる前は精霊くらいしか超常現象を起こせる存在はいなかった。エルフも精霊の信仰から力を借り、魔法を行使していた。当然ながら治癒魔法なんて全く存在しない。傷を治すのに信仰が必要だのなんだの迷信を信じていた存在だっている上に病原菌に対しては神の怒りと断じて死ぬ運命を受け入れる人だって存在した。
そんな時代を終わらせたのがアスクレピオスだ。
彼は天界の医療情報、病の正体の研究、怪我の正しい処置方法などを世界中に知らしめた。その上で薬剤を調合し、生み出された魔法のような回復薬がポーションである。彼は言わばこの世界においてはある種の英雄として、秩序ある神として世界から讃えられた。
ただ、アスクレピオスは眷属を作らなかった。
それは世界を回り医療を発展させる事を目的とした彼にとって英雄譚など
そんな彼が唯一、たった一人の眷属を作った。
名前はルナ、それは森に捨てられた孤児だった。彼女は不治の病によって捨てられ、雨の中ただ必死に体温を冷やさないように大樹の木陰で震えていた。
そんな彼女をアスクレピオスは助けた。
当然ながら不治の病と称されたそれを治すには時間がいる。だから恩恵を授けた。恩恵を刻めば人である事を超越出来る。だから少しとは言え延命にはなるからだ。
そして彼女は一月で不治の病を治した。
そしてその後、アスクレピオスに恩を返すために助手として彼女は眷属になったのだ。
アスクレピオスは医療の事以外は捻くれているが、彼女と触れ合う事で少しだけ医療の事以外にも目を向けたり、神らしき視点から人の優しさというのを少しだけ知り始めた。
こんなのも悪くない。
そう思い始めた。海を渡り、山を越え、砂漠を進み、都市を回る。そんな順風満帆な日々が過ぎていった。
そんな彼に、悲劇が起きたのだ。
唯一の眷属、ルナが死んだのだ。
原因は毒殺。医神に対して気に食わない人は存在した。アスクレピオスは良くも悪くも治すことのみに特化している。
その知識を間近で得られるルナは言ってしまえば巨万の富を手に出来る存在でもある。ルナはそんな事はしないし、アスクレピオス自身も眷属はルナだけでいいと告げて断ってきた。
その意趣返しというべきか、はたまたルナが死ねば眷属に迎え入れられる可能性が増えると思ったのか、ルナを毒殺した。
ルナはLv.3で【調合】と【神秘】。
そして範囲の回復魔法を持っていたが、【対異常】は持っていなかった。それはあくまでルナはアスクレピオスの眷属であり続けるつもりだったから。
そのルナが死に、アスクレピオスは初めて涙を流した。
失う事がどれほどに辛いものなのか理解した。そして、彼は禁忌を犯したのだ。
「禁忌?」
「ああ、
そう、アスクレピオスは『
ルナは蘇った
寿命はかなり減ったかもしれないがもう一度この世界で生きる権利を得た。魂が浄化される前にそれを実行出来たのだから。
そしてアスクレピオスはゼウスによって送還された。
当然だ。『
ゼウスが懸念したのはそこだけではなかった。
ルナが『
つまりは、寿命を削っているのだ。
人間が神の力を行使出来るわけがないし、それを持つだけで寿命を削り、終いには魂さえ虚無へ消えてしまう可能性があった。
ルナはそれを分かっていた。
彼女は世界を回って旅をした。アスクレピオスと一緒に歩いた道のりを辿るかのように。時には人を魔法で救った。彼女もまた、『
その後はどうなったか分からない。
ただ、消息不明のまま彼女は『聖女』と讃えられこの世界から消えていった。
「––––それが、神の罪であり『聖女』と呼ばれた少女の話だ」
「これも、そのスキルだと?」
「彼女の範囲回復魔法、それは『聖域』と呼ばれ、領域全ての存在を癒す。それは彼女の意思で効果を変える事も出来ると聞いている。神々においてその聖域は
それめちゃくちゃじゃないか。
神殿の権限は神々の司る権能の行使が可能となる。それを下界に下ろせば当然ながら世界そのものがぶっ壊れかねない。ルナはそこまでの力を有していたが、私はその完全下位劣化。まあスキル化した以上寿命が減る事はない……らしい。『
「だけど、それを何で私が?ルナは人間で子供は産まなかったんですよね?」
「そこまでは知らないが、恐らくだが血だろう。恐らくは
「……成る程」
経緯は知らんがそれが一番納得出来る。
多分、私の一族がルナの血を分け与えられたのだろう。そしてこの話を聞いて何処か納得というより、知らなかった力を自覚した気がした。話を聞く前と後で少しだけ生まれ変わったような気持ちになった。
「ありがとうございましたウラノス様。なんか胸のつっかえが取れた気がします」
「––––ルージュ・フラロウワ。一つだけ尋ねたい」
「?」
「貴様はその力を使って、何を成す?」
細めた目で私に問う。
神の力の一部、言わば神工の存在である彼女は下界に何を成すのか。破滅か、それとも聖女のように誰かを救う道を選ぶのか。
「私の目標は最初から変わりませんよ」
神々の決めた道には乗らない。
決められたレールに沿って歩くなど真っ平御免だ。私が目指すのはそういう存在じゃない。神々の意思なんて吹っ飛ばせるくらいにかっこいい。
「––––英雄になりたい。エレ様もびっくりするくらいのとびきりのね」
己を知り、自分のそれがどんなものなのかを知り、生き方が変わるわけじゃない。聖女に救われ、その一部が先祖返りの如く発現した私だが、私は聖女じゃない。
私は強くなってエレ様に笑って欲しい。
強くなって、英雄を越えてその名を轟かせてその道を英雄譚に刻みたい。幼稚かもしれないその夢は未だ変わらないのだから。
★★★★★
エレ様の所に戻る前に顔の見えない魔術師に依頼を出された。それは、私の素性を知った上で頼み込んできたものだ。その手付金として魔導書まで渡された。
場所は24階層。
【ヘルメス・ファミリア】と一緒にモンスターの異常発生の調査についての依頼。武器も無いしお荷物になる可能性が高いのだが、透明化のローブを渡され魔導書まで渡された。
聖域の感知はオラリオの四分の一程度まで可能。縦は無理だが横の感知はかなりのものだ。前にエレ様探す時にそれが見られてたらしくて、依頼の問題解決に打ってつけらしい。
サポートとして秘密裏にそれを調べてほしいらしく、私はそれを引き受けた。当然ながらまだLv.1でステイタスは限界突破しているのが二つあったが、それでも上がれるだけ上げてランクアップをした方がいいと思い、単独で11階層に来ていた。
モンスターを狩り尽くし、バッグの中がパンパンになるまで魔石を入れて帰り、エイナさんに少し怒られた後、換金して宿に戻った。
「ただいまエレ様」
「おかえりなさい。ルージュ」
エレ様はルージュの頭を軽く撫でながら帰ってきた眷属に朗らかに笑う。ルージュはシャワーを浴び、汗や血を洗い流した後、ステイタスの更新をエレ様にお願いした。
「かなり服がほつれてる。無茶したのね?」
「……まあ、少し」
「はいダウト。かなーり無茶したのね」
少し怒りながらもステイタス更新をするエレ様。
ランクアップは少しだけ後にしていたが、ここまで伸びてしまえば上層で伸びるのは少しだけ厳しいだろう。エレ様もその上昇率に呆れているくらいだ。
「うん。もうこれ以上は上層で上がらないと思うのだわ。ランクアップする?」
「はい」
「えっと、発展アビリティが……うわっ、多い」
エレ様もその多さに驚いていた。
記されているものを順番に読み上げるが、一つだけ訳も分からず首を傾げた。
「えっと『対異常』『狩人』『精癒』……あとは『神聖』?」
「神聖?何ですかソレ?」
「うーん。多分神に近づくとかそういう意味なんだろうけど、多分聖域に付随したアビリティだと思うのだわ」
「じゃあそれで」
「軽いし早っ!?えっ、いいの!?」
「まあ聖域の強化があるなら一番いいと思いますし」
聖域自体を全て把握してるわけじゃないが、恐らくそれがいいと直感で理解する。もし誰かを救える力があるならと、後悔だけはしたくない。だから助けられる力として神聖が一番いいのかもしれない。
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
ルージュ・フラロウワ
Lv.1
力:A892 → SS1001
耐久:SS1099 → SSS1254
器用:A863 → S983
敏捷:SS1021 → SSS1200
魔力:A863 → S950
《魔法》
【ソニック・レイド】
・加速魔法
・詠唱『駆け上がれ蒼き流星』
《スキル》
【
・早熟する
・対抗意識、宿敵意識を持つほど効果向上
・逆境時に全能力に対して
【
・
・精神力消費
・歌唱時、自身を中心に『聖域』を構築
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「はい、ランクアップしたのだわ」
「……普通だ」
「力が溢れてくる!ってことは無いのだわ。まあ直ぐに変化は分かるから、新しい魔法も発現してるし」
起き上がって羊皮紙を確認する。
ランクアップした実感は無い。まあ後々分かると言ってたし置いておこう。そして新しい魔法、それを見た時に私は少しだけ運命を感じた。
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
ルージュ・フラロウワ
Lv.2
力:SS1001 → I0
耐久:SSS1254 → I0
器用:S983 → I0
敏捷:SSS1200 → I0
魔力:S950 → I0
神聖:I
《魔法》
【ソニック・レイド】
・加速魔法
・詠唱『駆け上がれ蒼き流星』
【フロート・エクリエクス】
・全癒範囲魔法
・任意で『魔防』『対呪』の付与
・付与時、精神消費増加。
・詠唱『紡がれし命をここに、永遠に輝く
《スキル》
【
・早熟する
・対抗意識、宿敵意識を持つほど効果向上
・逆境時に全能力に対して
【
・
・精神力消費
・歌唱時、自身を中心に『聖域』を構築
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「––––ふっ、あはははは!」
「…?どうしたの?」
「いや、ちょっとばかり運命が好きになった!」
私はルージュ・フラロウワ。
そこは変わらない。けど、私はそれと同時にルナと同じ力を継ぐ存在だ。紡がれし命が巡り巡って今がある。
それがどうしようもなく嬉しくて、運命が少しだけ好きになった。多分、私は一人の神様と一人の英雄に助けられて生きてきた。その二人の力を使って、今度は自分が誰かを助けるなら……運命が巡っていると思っちゃう。
ランクアップに二十九日。
モンスター討伐数は2986体。
今日この日、少女は世界最速のレコードを刻んだのだ。
【装備】
・ナイフ『影淡』摩耗中
・予備用ナイフ 摩耗中
・小太刀『緑刃』摩耗中
・鎖帷子 一部穴空き
・籠手『煉甲』 やや傷有り
【持ち物】
・所持ヴァリス 185000
・透明化のローブ(フェルズ作)
・魔導書(フェルズ作)
良かったら感想評価お願いします。