小人族でも、女でも英雄になりたい 作:ロリっ子英雄譚
課題が全部終わりちょっと落ち着きを取り戻したので書いていきたいと思います。では行こう。
目が覚めた。
ああ、この感覚はいつぶりだろうか。
疲れが溜まっていないのに身体が重い。
眠気が覚めたのにまだ寝足りないような倦怠感。
けど、それと同時に身体が震える。
今日が私の最初の死線となるであろう二十を超えた階層の調査の動向。そして、それは未知という恐怖と畏怖を抱きながらも、未知に対する圧倒的な興奮を孕んだ闘争心が身体をニヤけさせる。
まだ日が出ていないこの時間帯に最後の装備の確認をする。装備も荷物も抜かりない。両頬を叩き、目を完全に覚ます。
「エレ様」
まだスヤスヤと眠っている彼女の髪に触れる。
うわっ、サラッサラだ。透き通るように綺麗な星のような髪に軽く唇に触れる。おまじないのようなものだが、自分とエレ様を含めた互いの武運を祈るおまじない。
「行ってきます」
今日が最も危険で最も重要な日。
それと同時に冒険者である自分の冒険の日でもあった。
★★★★★
……と、意気込んだものの、今回私はあくまで後ろの
だから敢えて弓矢と魔法の触媒になる錫杖型の杖。報酬の前払いで買った初心者向けの増幅機能を持つものだが、安くても数十万ヴァリスした。流石に渋ったが、命が関わる以上背に腹はかえられないので買った。
ナイフはしっかり腰に装備、弓矢は昔狩りの時に教えてもらってるから問題なし、矢筒の中には四十本ある。そしてフェルズから貰った『ハデスのローブ』。透明になれて被っていれば実体を視界から認識できなくする。ここまで準備したから問題はないだろう。
そしてフェルズから貰った『
確認が終わり、私は荷物を纏め、約束の場所へと足を運ぶ。バベル前、の近くの朝までやっている酒場に入る。あの魔術師、フェルズが言うには此処に私を連れて行ってくれるパーティーがあるのだとか。
「……!」
酒場に入って分かった。
「じゃが丸くん、抹茶クリーム味」
「……貴女が援軍ですか」
援軍というか、サポーターです。
今回ばかりは、調査以外足手まといになりそうなのでそう告げる。握手した時に分かった手のタコ、そして経験から来るような雰囲気。この人が団長か。
「あの
「私はルージュ。今回は索敵と回復、まあ後衛職として来たからあんまり戦闘面は期待しないでください。流石に二十階層以上下には行った事がないから少し足を引っ張るかもだけどよろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
よろしく、と周りの人達が頭を撫でたりして、もみくちゃにされる。うわー、こー言うの初めて……っておい誰だお尻触ったの。しばくぞ。
「よし、これで全員揃ったな!じゃあ行くか!」
「そうですね。貴女は今回は
「大丈夫です。元々魔導師って訳じゃなかったですし、自分の周りだけなら守れます」
「よろしい。では、出発します」
こうして私達はダンジョンへと足を運び始めた。
★★★★★
十六階層、【ヘルメス・ファミリア】率いる調査隊は順調に進んでいく。改めてパーティーを組んだ冒険者の連携を見て感嘆する。連携で、周りの出来ない動きを補っている。
「凄い…的確、しっかり連携が取れてる」
「凄いですか?」
「いや私まだ新参で団員はいないけど、こう指示出せればいいなって思ったりする事もあるんですけど」
アスフィさんだったか?
場面をしっかり見て指示を出し、連携に息が乱れない。とにかく上手い。どうやって決着を付けるのかを見えている。先を見据えた動きだ。仮に私が団員を持った時、あのように指示を出せる自信はない。
「後衛!ミノタウロス一体!!ネリー、ドドン、迎撃!」
「はい!」
ドドンが角でミノタウロスの攻撃を防ぎ、ネリーは腰に持つ短剣でミノタウロスの腱を切り裂く。
「ルルネ!」
「あっ、待って私にやらせてもらっていい?」
「後衛の貴方が?」
「お願い」
「わかりました。ルルネ、いざとなったら援護!」
ステイタスが上がれば強くなれる分、強さが私の器に合致しないズレが生じる。特に私は急激過ぎる成長に器が追いついていない。だから戻すとなると、
「ブモオオオオオオッッ!!」
見える。
あの時の拳で私は重傷を負ったが、今は見える。胴体を軽く逸らし、『緑刃』で殴りかかる拳を斬り裂く。悲鳴を上げるミノタウロスは咄嗟に左腕で叩きつけようとするが遅い。間髪入れず、私は『緑刃』でミノタウロスの首を切り落とした。
「おお、鮮やか」
「うん。まだズレが戻ってないけど、これくらいならまだ行けるね」
問題ない。『影淡』はいざと言う時にしか使わないし、基本的に『緑刃』で何とかなる。この階層から先はやや不安だが、後衛ならあまり使うことはないだろう。
★★★★★
ここがダンジョン。それを微塵も思わせない程に、見ている光景はいつも見ているダンジョンの風景と全く違う。獰猛な世界を通り抜けた楽園のように見えた。
森があり、湖があり、空がある。
空に浮かぶ太陽は水晶が輝き、辺りを照らす。朝の、いや時間的には昼前の日照りがこの階層に降り注ぐようだ。
ダンジョンは迷宮であり、日の光を遮る。
ダンジョン特有の光苔などは存在するがここまで明るいと思わず目を細めてしまいそうだ。この空間には昼夜という概念が存在しているらしい。マジで見分けが付かない。
「……十八階層。聞いてはいたけど、本当にダンジョンなの?」
「初めてだったのか?ああ、新参って言ってたな。此処はモンスターを産まない休憩所みたいな所だ。ただ産まないだけでいない訳じゃない。森とかにはモンスターはいるし」
「へー、成る程。アレ、私達は何処に向かってんの?」
「酒場」
酒場?ダンジョンに?
ルルネさんが言うにはそこで援軍を待つらしい。
「『黄金の穴蔵亭』って場所、あの黒フードが言うには援軍を引き連れるらしい。だから私達はそれまで待機」
「援軍って誰、ってかどのファミリアなの?」
「さあ?来る人に暗号を持たせるらしいから問題ないけど、誰かは分かんねぇ」
随分ザックリだな。
それでいいのか。まあ援軍と言っている時点で心強い。どれだけ安全を考えても連携ではなく確立した強さ、或いは突飛な実力者が欲しいところだ。このパーティーを見ていると一番強いのはアスフィさんだが、指揮官でもあるなら、陣形崩して前に出る動きは極力避けた方がいい。
「と言うか、ごめん。聞きたいことがあったんだけど」
「なんだ?」
「いや、調査はモンスターの大移動と宝玉の回収、だったよね?このファミリアが力不足って訳じゃないけど、そういうのってレベルが高い人達が最小人数で行うよね。どうして大人数での調査なの?」
ピシリ、とファミリアの空気が凍った。
特にルルネが冷や汗を流しまくっている。そう、今回の調査の危険度は知らないが、ギルドがわざわざ警告を出している。多分黒フードの魔術師フェルズだったか、アレはギルドの人だ。勘だけど。
そのギルドの人間ならば
「あー、そのな、色々ギルドに弱みを握られて」
「シラを切ればよかったものを、この馬鹿のせいで私達全員が調査に赴く形になったのです」
「弱み?……と言うと、レベル詐欺とか?」
「……まあ、そんな感じです。私達の事は口外しないように」
「わかってるよ。そこまで鬼じゃないよ」
成る程、人数が多くなると苦労するんだね。
団長の苦労は今の私じゃ分からないし、今のうちに聞いておくか。この後、私とアスフィさん率いる【ヘルメス・ファミリア】は援軍が来るまでに験担ぎと、色々パーティーの動きについて簡単に教わっていた。