小人族でも、女でも英雄になりたい 作:ロリっ子英雄譚
魔術師の言っていた援軍を待つ事、数時間。
そろそろ喋る事もなくて欠伸が出始めた。何なら店に置いてあったチェスでアスフィさんに挑んでいるのだが……
「うっ、これほぼ詰みじゃない?」
「あら、分かるのですか」
「七手目くらいで多分一気に狩られる。多分、十一手目辺りから十四手目の間で私死ぬわ。降参」
「中々頭の回転が早いじゃないですか」
「局面を見るだけならね。私、一つの事に集中しないと実力を発揮出来ないから。並列処理が難しい」
「分かります。ですがそれは経験と慣れの問題です。人を率いた事の無い新参者がここまでやれただけ上出来です」
とは言え、三敗なんだよなぁ。
一回目がボロクソに負けて、二回目で持ち直して負けて、三回目は誘導された。指揮官というだけあって局面の考え方が違う。捨て駒を利用する。本気でどうしようもない時、誘いの手を使い、犠牲を出す。そうする事で本陣をカバーする。まあチェスに限っての話だが、この人の強みはその判断力にあるだろう。でも三敗は悔しい。
「ジャガ丸くん、抹茶クリーム味」
「あ、アンタが援軍!?」
えっ、来たの援軍?
あっ、見覚えのある顔だ。確か【ロキ・ファミリア】の【剣姫】だ。酒場で見た事ある。援軍ってこの人か。すっごい美人。
強い。圧倒的な強さを感じる。
この空間の中で彼女が最も強い。それは分かる。
なのに……
「……?」
改めて向き合ってこの違和感。
この人も、フィルヴィスさんと同じようなモノを感じる。気配というか、何というか、私にしか感知出来ないような違和感。
神の力、いや……もっと別のものをこの人は持っている?
「行きますよルージュ」
「あ、はい。今行きます」
大分呆けてしまったようだ。
とりあえずは調査が先だ。私はネリーの後を小走りで追いかけた。
★★★★★
二十四階層。
此処は別名『大樹の迷宮』と呼ばれ、十
とは言えだ。アスフィさん達の連携は全く問題なく、迫り来るモンスターを的確に処理していく。アイテムの多さもそうだが、パーティーを組むと手数の多さもやはり凄い。
「……モンスターの大行列だ」
「私が行く」
「あっ、剣姫。ガン・リベルラ三体は私やるから残しといて」
「うん」
蟻のように見えるモンスターの大行列に飛び込んでいく剣姫。あんなの自殺行為にも等しいが、あの人なら問題無さそうだ。私は私で、新しい魔法を試してみるか。
「遠距離魔法でも使えるのですか?」
「いや、ちょっと違う」
弓を弾き、矢を三つ構える。
そして詠唱を始める。新しい魔法ではなく、私の得意な魔法を唱える。
「『駆け上がれ蒼き流星』」
これはただの加速魔法だ。
故に私のみの加速で矢が加速する訳じゃない。この魔法はこのままでは意味がない。だが、私は
「『集え小さな星々の願い』」
薄く蒼く光る私の身体から光が矢に収束していく。三本の矢は一つの光を帯び、星のように蒼く輝いていた。
矢が放たれる。
距離からすればガン・リベルラが躱せる速度だろう。だけど、この魔法の真髄は此処からだ。
「『
収束した光が解放され、矢はまるで光線のように加速する。
速度は重さ、矢で打てば貫通力は槍すら上回る。ガン・リベルラの胴体はくり抜かれたように風穴を開けられ、地面へと落ちていった。
★★★★
そう、これが私の第三魔法。
説明するなら、私は英雄のような一撃必殺の魔法。まあ聖剣とかそう言ったものをイメージしていたのだが……
《魔法》
【スター・エクステッド】
・連結詠唱。
・魔法、及び発動中スキルの収束実行権
・収束範囲に停滞属性を付与。
・停滞維持にて精神力消費。
・願いの丈により効果増幅。
・詠唱『集え小さな星々の願い』
・【
予想以上に意味が分からん魔法が来た。
えっと、連結詠唱という事は一度目に発動させた魔法に追加詠唱をする事で発揮する魔法という事だ。いや色々検証したのだけど、結論から言えば、これは投擲系でしか使えない。
先ず、魔法を唱える。
私の場合は加速魔法の【ソニックレイド】に対して、追加で詠唱をする。それ自体は問題はない。私の持つ『影淡』に【ソニックレイド】が付与された。収束付与とはそういう事だ。
しかし、付与した所で影淡を振っても加速する訳じゃない。私が加速せず武器だけが加速する訳もなく、【
停滞属性を付与、恐らくそれが問題なのだろう。
停滞属性を付与する事によって武具自体が停滞属性を帯びる為、どんな魔法を収束しても武具が壊れにくくなる。そして、収束した魔法が待機状態になる。それはいいのだが、問題は
加速魔法はあくまで自分の行動の加速。
武具だけ速くしても意味がない。なので投擲中にそれを解除すれば爆発的な加速を得られる。
何というか、剣に意味があるのか分からない魔法を付与している気分なので、当たりか外れかと言われたら微妙なのだ。
「増幅効果、スキルに対しても?」
試しに聖域をやったが無理だった。
歌いながら収束が出来ない。聖域を収束出来るかと思ったが、【スターエクステッド】はあくまで先行した魔法、スキルのみだ。つまり、歌いながら魔法の詠唱を唱えなければならない。それはつまり、口が二つもなければ不可能だ。当然、私には口が二つもある訳ないから出来る訳ねぇだろ。歌を歌い終え、消滅する前の僅かな時間の収束しか出来ない。聖剣みたいになると思ったが、何このハズレ感。
とまあ、調べた結果、ざっくり効果はこんな感じ。
・魔法を収束し、増幅させ、解放する事で本来の威力の底上げ。
・魔法は収束する分、一点突破になる。
・主に効果があるのは投擲武器、自身の魔法が放出するようなものがない為、投擲中に解放する事が現在1番強い。
・聖域を収束出来る時間は二秒のみ。
「地味、だな」
効果が多い割にショボい。
確認が終わったが、効果の収束という事で加速度は異常だが、あまりなぁ。後衛職専門の魔法って感じがする。せめて私が属性魔法を使えたら良かったが、うーん。
「魔法の増幅って意味じゃ全癒魔法と相性はいいけどさ」
後衛職専門魔法。……うん、地味だ。
★★★★★
とは言ったが、想像以上に力を発揮する。
願いの強さ。倒したいという願望を上乗せし、魔法効果は増幅する。この階層のモンスターをあの鏃で貫けただけあって相当だろう。
「うわ、矢が壁にめり込んでる」
「マジで!?」
多分私の場合はその意欲が強過ぎる。
願い、負けず嫌い、そして挑戦。それが相まって物凄い力を発揮出来る。増幅効果はこの通り、壁にめり込んでいるくらいに。
とりあえず、壁の部分から目を逸らしながら私達は魔石を回収する。強化種になる可能性を防ぐため、魔石はしっかり回収しないと。
「よし、では南の方から」
「あっ、待ってアスフィさん」
「何ですか?」
「私は助っ人で呼ばれたでしょ?回復役と調査役として。だからちょっと私のスキルを使っていい?」
「構いませんが、それで見つかるのですか?」
「大丈夫」
さて、何を歌おうか。
戦闘もあるし、緊張を少しでもほぐす様な歌がいい。安らぐようなものを考えるなら。そうだ、アレにしようか。
「ーーーー♪」
みんなが一度は聞いた事のある歌。
童話【蛍の庭】より抜粋。曲名は『蛍と夜』。星の浮かばない夜に蛍が代わりとなって安らぎと儚さを届ける小さな安らぎの歌。
「凄い、落ち着く」
「
範囲が更に広がる。
この階層を覆うくらいには探知範囲も広がった。探知できたのは前と同じ、モンスターの反応とはまた違う反応。僅かな人智を超えた力を感じた。北の方に。
「〜〜〜♪……ん?」
剣姫が目を見開いて私の腕を掴んでいた。
それはまるで、探していたものを見つけたかのように、迷子の子供のような顔をしていた。私の歌に錯乱させるものは無いはずだ。
いや、これは……
「大丈夫?」
「あっ、……えっと、その、ごめんなさい」
「いや謝る必要なんて、この歌に何かあったの?」
「その……上手くは言えないんだけど」
剣姫の様子がおかしい。
何だ?モジモジして言い辛そうだ。恥ずかしい事なのか?
「一瞬、お母さんと姿が重なって」
「剣姫の母親?まあ、『蛍と夜』は結構メジャーな歌だし、絵本とか読んだ事があるなら聞いた事あるんじゃない?」
「そうだけど、そうじゃない」
……?歌い方がお母さんに似ていたとか?
違うってどういう意味だ?私はかなり歌った事はあるけど、なんて言うか。この歌に何かがあるのか?と言うか私と姿が重なったって剣姫の母親そんなにちっちゃいの?んな訳ないよね……ないよね?
「……この
「依頼?」
「もう一度歌ってほしい。今度は、ちゃんと最後まで。お金も払う、だからお願い」
「う、うん。いいよ」
「あ、あと剣姫じゃなくて…普通に名前で呼んでほしい」
「あっ、うん。じゃあ私もルージュと呼んで。よろしくね、アイズ」
「うん、よろしく。ルージュ」
周りの視線が何故か生暖かい。
気が付けばニヨニヨしている人が数名いる。なんなら「これがヘルメス様の言っていた百合の花か、尊い」とか呟いている馬鹿もいる。ケツに矢をぶっ込んでやろうか。
「コホン!さ、さあ北へ行こう!」
アイズも私も少し照れながらも反応があった北を目指す事にした。