小人族でも、女でも英雄になりたい 作:ロリっ子英雄譚
テンション上がりすぎて寝れないので書きました。では行こう。
赤髪の調教師とアイズの剣戟は突如終わりを迎えた。
落石が二人の間に落ちていく。二人ともLv.6クラスでありながら、モンスターを殺すだけならトップクラスの実力と圧倒的出力を誇る風の剣姫と、異端の
「チッ、あの男は何をやっている!?」
「(『
アスフィさん達が先に進んで、何かを見て撤退する為に柱を壊した。そう考えた方が単純だろう。徐々に落石が増えていく中、これ以上の戦闘はアイズも調教師も限界だった。
「こうなっては仕方ない。アリア、五十九階層へ行け」
赤髪の調教師はアイズに忠告した。
「丁度面白いものが見れる。お前の知りたい事がわかるぞ」
「どういう意味ですか?」
「薄々感づいているだろう?お前の中に流れる血が教えてくれる筈だ。そちらの方が手間が省ける」
アイズの中に流れる血。
それは、アイズ自身がよく分かっている事ではある。その答えは、まだ未開拓領域の五十九階層にあると告げられた。どうしてそんな事を話すと、アイズは問う。赤髪の調教師は天井を見上げ、皮肉を口にする。
「上の連中は私を利用しようとしている。ならば精々私も利用してやるさ」
崩れていく未開拓領域。
まだ、知らない事を聞きたかったが、このままじゃ崩落に巻き込まれる。最高速さえ出せればまだ聞ける時間がある。剣を構えようとしたが、後ろから崩落とは別に岩盤が蹴破られた音に振り返った。
「アイズ!!」
「ベートさん、レフィーヤ…!?」
「さっさと脱出するぞ!崩壊が早ぇし、生き埋めにされたら俺達でも脱出出来ねえぞ!!」
ベートの叫んだ言葉に振り返り、一瞬目線を赤髪の調教師から外すと、もう既に彼女は居なかった。
★★★★★
「ルルネ!此方であっているんですね!?」
「あーそうだよ!クソッ、そこ右!!」
崩落が早い前線からの撤退は至難を極めていた。
一回でも道が塞がれたらアウト。怪力自慢のファルガー達でも道をこじ開けられないなら閉じ込められ、即死。
この作戦の立案者であるルージュはそこまで思い至らなかったのだろう。帰り道を知っているからこそできる賭けだ。仮面の男とこの状況を天秤にかけたらこっちの方がまだマシであるだけでどちらも地獄である事に変わりはない。
「アスフィさん!」
「【剣姫】!脱出しましょう!ルルネ次は!?」
「左から一直線!肉の壁がある所で終わり!!」
「私が斬ります……!」
左に全力で曲がる一同。
あと五十メドルといった所でルルネが前方の光景に絶望する。
「やべえ!一本道が塞がれてる!?」
「此処まで来て……!」
ファルガー達の盾部隊で力押しで潜り抜けられるか。そう考えている矢先に、アイズが先頭に出た。そして、唱えた。
それはたった一言の超短文詠唱。
それだけで、今まで秘められた風が解放される。
「『目覚めよ』」
風が吹き荒れる。
暴乱の風が、積み上げられた落石を一振りで全て吹き飛ばした。
「ウッソだろっ!?」
「(う、嘘……あり得ない……アイズさんのそれはただの付与魔法…!なのにこの出力は!?)」
風の異常性にレフィーヤが震えた。
この力は最早、付与魔法に留まらず、出力だけなら砲撃魔法にも匹敵する圧倒的な風の暴威。それが遺憾無く発揮されると、こうまで出鱈目なのか。
ベートでさえ沈黙し、驚愕を浮かべている。
脱出口まであと少しだ。風のおかげで崩落する瓦礫が落ちてもアイズを中心に逸らされていく。
「アスフィさん、ルージュは?」
「……すみません」
「っ……!」
振り返るが、もう通路は崩れて通れない。
幾らアイズでも生き埋めとなれば命が無い。風の出力で押し通ったとしてもこの崩落の前では焼け石に水だ。戻る事は出来ない。悲しい顔をして、前に進んでいく。
「出口だ!!」
「急げっ!!」
出口を抜け、息を切らす【ヘルメス・ファミリア】。
ベートとアイズ、レフィーヤ、フィルヴィスについては息を切らさずに脱出した肉の壁を振り返り、見つめている。
崩落が完全に終わり、全員脱出出来た事を確認する。だが、【ヘルメス・ファミリア】の面々の顔は浮かばれない表情で俯いていた。
「あの餓鬼は死んだのかよ」
「……この崩落では、絶望的かと」
「……チッ、馬鹿が」
最早これでは死体すら回収も出来ないだろう。
ダンジョンが修復された時には死体は残らない。修復する際に取り込む事で修復する為、ダンジョンで崩落に巻き込まれた場合は遺体すら回収出来ない。怪物に食われるのを目前で突きつけられるよりはマシかもしれないが、それでも堪えるものがある。
「な、何だっ!?」
「地震、いや……コレは」
「総員、構えなさい!!」
ゴゴゴ、と地面が揺れ始める。
崩落に続いてまだ何があるのか、未開拓領域だった場所から離れ、警戒を促すアスフィ。そして、揺れが収まると洞窟から巨大な蛇のようなものが壁を突き抜けてきた。
「あの巨大蛇!?」
「身体の半分は消滅したのに頭だけで掘り進んできたのかよっ!?」
フィルヴィス達は杖を構え、アスフィ達も迎撃態勢に入る。
ルージュが身体半分を消滅させた筈だが、その巨大さは階層主より遥かに巨大。ゴライアスすら超えるだろう。
いつ襲いかかるか分からない。
消耗している【ヘルメス・ファミリア】は撤退も視野に入れて残り少ない武器を手に構える。
「待って!」
そこで制止をかけたのはアイズだった。
「あ"っ!?何で止めるアイズ!?」
ベートがその叫び疑問を投げかける。
それと同時に壁から出ると力無く倒れていく『
やがて、微かに動いていた動作も小さくなり始める。
そして頭の近くがモゾモゾと動き始めた。総員、警戒態勢に入るが、アイズだけは何故かそれを敵と思えずに剣を下ろし、
手を伸ばすと、その手を掴み這い上がってきた小人族の姿が。
「……ぷはっ、ハァ、ハァ、あれ?フィルさんに【
「ルージュ!?」
頭の中から出てきたのはルージュだった。
少し頭から血が垂れているが、『
消えていた羽が薄く浮かび上がっている。どうやら、『
「あっ、蛇が……」
「灰になっていく」
まるで燃え尽きた薪のように身体は灰になっていく。アイズがルージュを下ろすと、抱えられたままルージュは軽く『
「怪物であっても、意志はそこにあるんだね」
身体を消し飛ばしたのは私だ。
なのに、この
意志があった。
怪物でも、親を死なせないようなそんな感情があったのだ。
「ありがとう」
灰となっていく触手を撫で、感謝を告げると表情もないのに、安らかに消えていくように私は見えた。消えていく『
「ドロップアイテムか?」
「魔石と、
素材の色からしてやや緑がかった棍棒。
明らかに普通ではないが、とりあえず回収する。呪いや嫌な気配とかないし。
「おい餓鬼、テメェ今の何なんだ」
「あー、ごめん。とりあえず…限……界………」
無茶して顕現させた羽も消え、私は搾り出した魔力を使い果たし、『
★★★★★
起きたのは次の日の事だった。
気が付けば【ディアンケヒト・ファミリア】の療養所で寝ていて、『
「うぎゃあああああああ………っ!」
この鋭い筋肉痛である。
アミッドの診察結果、魔力を使い果たしたせいで気を失っていた私をアイズが一足先に此処まで連れてきたらしい。そのあと一度ダンジョンに戻ったとか言っていた。
診察結果は『
だが、肩に浮き出た紋章のようなものはアミッドの手に負えないらしく、ただ痛い訳でもなく血もしっかり通っているし、傷口自体が無かった為、正直刺青かなんかと勘違いされた。
「うぐぅ、寝返りも出来ないとか」
治療費は【ヘルメス・ファミリア】が出してくれるらしい。アスフィさん達を治した恩という事で、それにとりあえず甘える事にした。とはいえ、明日には退院出来るし、診察料込みでもそこまで法外な値段をふっかけられる訳でもないのでそこは安心した。
「よー、大丈夫か?」
「おお、ルルネ。あとアスフィさんも」
「調子はどうですか?」
「絶賛筋肉痛に悶絶中。おっ、差し入れ?ありがとう」
病室に入ってきたのはアスフィさんとルルネだった。差し入れに甘味のケーキ。大好物だ。
「……聞きたい事、あるんでしょ?」
「ええまあ。その前に、ありがとうございます。今回、貴女がいるおかげで私達は欠ける事なく生還できました。それと、あの時は申し訳ありません」
「いーよ。アレは仕方ないし、責任を感じて治療費も払ってくれたんでしょ?それでも返し足りないなら貸しにしといてよ」
「そうします」
うぐっ、フォークを持つのも辛い。腕も痛くて、めっちゃプルプルしている。アスフィさん達が苦笑してルルネが食べさせてくれた。なんか恥ずかしい。
「あの時の力の反動ですか?」
「うん、まあ自分の器以上の力を引き出すとこうなるんだよね」
「もうあの時の力は使えないのですか?」
「使えるけど、デメリットもデカいから今は使えない」
あの状態だと魔力を食い過ぎる。
まだエレ様にステイタス更新はしてもらっていないが、あの時の精霊の力、もしくは魂みたいなものが私の身体の中で感じる。今は普通に鎮静化して、眠っているっぽい。
私のステイタスはあの時はLv.4くらいまで上がっていた。今はそこまで昇華出来る気配はない。恐らくだけど、聖域を展開して本来の形を取り戻して、怪物の力から解き放たれた。
だけど『宝玉』の時にあの場所で魔力を補充していたおかげで精霊も一時的に限界以上の力を引き出せたっぽい。今はその補充していた魔力を使い果たしてるから意志を感じない。寝てるが、私が全快になったら起きるだろう。
「というか、よく来たね。帰ったの昨日だった筈なのに」
「まあ、俺達は中層から帰るくらいは余裕だったし、【
「あー、とりあえずお疲れ様。見舞いに来るならせめて休んでからでもよかったのに」
「他の奴等は休んでるよ。ほら、コレも持って帰ったしな」
あっ、ゲン担ぎで飲んだ酒だ。
ボトルに残ってる量を見た感じ、少しだけ多めに入ってある。気を遣ってくれたのかね。やったね。
「コレ、お前の分な。他はみんなが飲んだし」
「あー、ありがとう。今度飲むよ。此処で飲むとアミッドさんにドヤされる」
「だろうな」
アミッドさんが見たら雷を落とす勢いで叱ってくるだろう。入院患者が酒を飲むのは言語道断だし。まあ怪我って程の怪我は無いんだけどね。罅については聖域さえ使えれば直ぐに自然治癒出来る。というか、聖域の力がなんか強くなった気がする。まだ魔力が回復しきってないから使ってないけど、そんな実感がある。精霊を体内に宿しているからかな?
「『宝玉』の中身は…精霊なのですか?」
「うん、間違いなく。怪物に取り込まれた精霊。それが母体となってモンスターを産んでるっぽい」
「そうですか。となると、深層から…?」
「そうだね。そう考えるのが単純かな。精霊自体は古くから居るし、下手したらダンジョンが生まれる前にモンスターに取り込まれて、下で時間をかけてその在り方に変貌した。それが『宝玉』だと思う」
あまり言いふらさない方がいい気もするが、【ヘルメス・ファミリア】は少なからず信頼していいだろう。あの神様が、胡散臭くてスケベな所はあるけど、根幹は意外と熱い神様って言ってたし。
エレ様に出会う前にオラリオについて教えてくれた神様が居たけど、あの人が注意する神様を全員挙げてくれたから、ある程度助かってる。ヘルメス様は多分別の意味で注意となんか念を押されたし。
「……敵の狙いは」
「此処までコンパクトに深層の怪物化した精霊を持ってこれるなら、予想は付くでしょ?」
「モンスターの地上進出、ですか」
ファミリア結成から大体一ヶ月。
コレは【ヘルメス・ファミリア】や私だけでは手に余る。【ロキ・ファミリア】も動いている上に、私は精霊を宿している為、最高位の切り札と同時に最大級の核爆弾として相手に見られている。
私一人で解決出来るような甘い話ではない。
地上進出を狙っているなら手引きしている神が居る。それを踏まえて、【ファミリア】全てが容疑者。
「コレは【ファミリア】単体でどうこう出来る問題じゃない。敵は、予想以上に強大な奴等だよ」
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