小人族でも、女でも英雄になりたい   作:ロリっ子英雄譚

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第二十六歩

 

 

 

「改めて見るとデカい」

「まあ、これでも大手派閥のファミリアだからね」

  

 

 黄昏の館。

 此処が【ロキ・ファミリア】のホーム。私がオラリオで一日中歩き回ってる時に見かけた事がある巨大なホーム。

 

 

「紅茶を用意しよう」

「あ、お構いなく」

 

 

 ハイエルフのリヴェリアさんが直々に入れてくれるなんてエルフの嫉妬を受けそうだ。茶菓子だけ持ってこられ……いや見覚えのある金髪の人が持ってきたな。上の空でこっちに気付いてない。

 

 

「……何してんのアイズ?」

「る、ルージュ…!?なんで此処に……」

「僕らが呼んだんだよ」

「何でメイド服?……まさか団長さんの趣味」

「ロキの趣味と反省の意味でだ。断じて違うよ」

 

 

 ちょっと早口になってるんだけど。

 エレ様は嘘はないと言っている。ほんとでござるかぁ?今の動揺はちょっと怪しかったのだが。

 

 

「おー、エレちゃーん!!二週間ぶりやなぁ!!」

「胸触ろうとしたら刈る」

「何を!?」

 

 

 萎縮して飛びついたと思ったら全力で下がるロキ様。そういえばセクハラが酷い神様だとか言ってたな。特に金髪の美少女には。と言うか刈るってなんだ、髪か?髪を殺そうってこと?神だけに。

 

 ……何言ってんだ私は。

 

 

「とりあえず、アイズと団長さんとリヴェリアさん、ロキ様。その四人で情報管理はやってくれ」

「アイズは退出した方が」

「いや、此処にいてほしい。知りたいんでしょ?」

 

 

 アイズは何かを知りたがっていた。

 聖域は癒す効果がある。それは人ならば軽い傷などだが、精霊の場合では格を引き上げる力がある。私が『宝玉』から精霊にする事が出来たのはまさにそれが原因。

 

 『宝玉』にはモンスターと精霊の二つの力がミックスされ、ややモンスターの力の方が強く、精霊をその力で支配している。感覚で表すならモンスター七割と精霊三割くらいか。私は精霊の格を上げる事で、モンスターが支配していた精霊を強め、精霊八割くらいまで格を引き上げる。そうすると、モンスターの支配が消え、精霊の力がモンスターの力を殺す事で、本来の姿を取り戻す。

 

 アイズからも、精霊にまつわる何かを感じ取れた。

 何かを知りたがっていたのは、あの時私を誰かと勘違いしているみたいだったから。悲しい顔をするくらいに、誰かに似てたのかもしれない。

 

 

「まず、私はあまりこのファミリアが好きじゃないのは知ってるよね」

「まあ、酒場の一件でね」

「ウチのベートが済まんかったわ。その後、『蒼の宣告』って伝説が生まれたけどなー」

 

 

 誰だろその名前付けたの。

 まあ、気に入らない所はあるが、ファミリア全体を憎むのはお門違いだ。だが【凶狼(ヴァナルガンド)】、テメェはいつか超えたら殴る。

 

 

「正直、解決出来るなら一人で解決したいんだけど、流石に手に余るから非常に不本意だけど、協力関係を結びたいと思ってる。今回の案件、オラリオを脅かすもので特に私に関しては爆弾を抱え過ぎた」

「爆弾?」

「そっちのファミリアでの爆弾はアイズ。こっちでは私」

 

 

 団長さんの顔が険しくなった。

 

 

「多分だけど、奴等は私とアイズを狙ってくる」

「根拠は?」

「茶菓子の部分を見たら分かるよ」

 

 

 全員が茶菓子の入った皿を見る。

 そこには実体化し、サクサクとクッキーを食べ進めるトワの姿がそこにあった。だがそれを見たリヴェリアさんは珍しく大声で質問していた。まあ精霊はエルフからしたら信仰を捧げるくらいのものだし。

 

 

「精霊か!?」

「うん、私と同化している精霊だよ。そして、これが『宝玉』の中身」

「ロキ」

「嘘やない。真実や」

 

 

 おおー、今のトワの大きさからしてもクッキー大きいと思うんだけど、二つ目に突入している。アイズが興味津々で近づいてみると、トワがクッキーを遠ざけた。いや取らないから。

 

 

「トワ、食べ過ぎると太るよ」

「精霊って太るの?」

「知らない」

 

 

 と言うか魔力を消費して実体化してるだけだから太りはしないと思うけど。もしかして栄養って私の方に来るのか?同化って言うわけだし、共有しているならあるかも。

 

 クッキーを食べ終えると、アイズの肩に乗っかって座った。自由か。アイズも気になって頬をツンツンと触る。

 

 

「貴方なら大体分かるでしょ?この件で分かった事は」

()()()()()()()()()()()()。そういう事だね?」

「恐らくね。それも複数体、古代のモンスターに取り込まれて、融合し、怪物に堕ちた事によってダンジョンしかモンスターを産めない常識を覆した亜種精霊」

 

 

 しかし、英雄達が寿命などで置き去りにされた精霊が怪物に食われて人類の敵となるなんてとんだ皮肉だ。正直胸糞悪い話ではあるな。

 

 

「複数体って分かる理由は?」

「トワと同化してる私は精霊の魔法が使えてね。種類が二種類、属性も詠唱もバラバラ。精霊は一属性を極めた存在でしょ?それが二属性も使えるって事は」

「少なくとも二体以上は取り込まれている」

「そう考えるのが妥当だね」

 

 

 土の精霊、光の精霊は少なからず取り込まれている。私が使える超長文魔法の系統が、光と土の二種類のみだからだ。他の属性も使えなくはないのだが、トワ曰く、仮に使ったとしても威力は弱いくせに魔力を消費するらしい。

 

 

「君たちの要求は同盟を結びたいんだよね?」

「あー、うん。そうだね、私達は今かなーりヤバい立ち位置だから」

「……どうして?」

「あのさ、仮面の男も赤髪の調教師?もアイズを狙ってた。というよりは、アイズの力の根幹を狙ってた」

「!」

「アイズ、君は大精霊アリアにまつわるナニカを持ってるでしょ?」

「!?」

 

 

 アイズの瞳孔が開き、震える。

 どうやらこの事は本人の前では禁句のようだ。トワがさっきからアリア、アリアと珍しそうに笑って呟いている。召喚の経路(パス)が繋がってるせいかな頭の中で聞こえる。

 

 同時にこの室内で緊張が走るが、私は首を横に振る。

 

 

「無理に聞こうとはしてないよ。私に似てるって思ったから、言わなくていい。大体分かってるし」

「……ありがとう」

「爆弾、というと具体的には何なのだ?」

「『宝玉』を浄化する力を持つ私は言わばジョーカーだ。チェスの中で唯一、取った駒を味方として使える。そんな認識をされてる以上、消しに来ると思わない?」

「……まあ僕だったらそうするね」

「成る程」

 

 

 私も敵の立場なら手駒を消費してでも潰しに来ると思う。そんな反則手が使えるなら特に。というより私は利用されたら最大限利用される力が強過ぎる。才能なのかな?

 

 

「同盟を結びたいっていうのはソコが関わる。言ってしまえば、私は誰よりも狙われやすい。精霊だって、私ごとモンスターに食わせられたらすぐ反転する」

「反転?」

「モンスターに堕ちた精霊になるって事。そうなったら、私の浄化を除き、精霊ごと殺すしかない」

 

 

 私の浄化がどこまで通用するかは未知数だが、それでも充分可能性はある。反転した精霊は私でなければモンスターに変わりはない。救う事は簡単ではないだろう。

 

 

「同盟に当たっての此方のメリットは?」

 

「一つ、59階層に出てくる精霊の情報。二つ、私には聖女の血に由来する全癒魔法があるから、いざとなったら頼ってくれて構わない。場合にもよるが無償で引き受けるよ。三つ、調査の時は同行する。精霊とかの探知が可能だし、損はない筈」

 

「此方に求めるメリットは?」

 

「同盟関係であると多くのファミリアに流してほしい。それだけで、私達には後ろ盾があるという事で牽制出来て迂闊に攻められないと思う。まあいざとなったら護ってほしいのもあるかな。あとは、そっちのファミリアに不利益の及ばない程度で、この事件について話してほしい。私もザックリ知ってるけど、全部知ってる訳じゃないし」

 

 

 メリットとしては充分だ。

 アミッドを超える聖女の治癒力を考えてみればメリットの方が大きい。フィンは思考を止めずに考え続ける。

 

 

「(意外と考えられている……同盟としては悪くない協力体制。女神エレシュキガルに話をさせないのは、ロキなら嘘が見抜けるから故にルージュが話しているのか)」

 

 

 ルージュが話しているのは、ロキなら嘘がわかるという点。それはつまり、裏がない事を自分から証明しようとしている。クロの線はないだろう。

 

 

「(惜しいな……同盟ではなく、傘下なら彼女を候補に入れられる。僕としてはそちらの方がいい気もする)」

 

 

 フィンの頭の中では、同盟自体は悪くはないと思っている。それこそ、【ディオニュソス・ファミリア】より、同盟するにあたってのメリットが大きい。だが、それでは少し惜しい。それだけの力があるなら、同盟より傘下にする方が此方のメリットは最大に上がる。

 

 ルージュが護られる立場ならもう少し要求を上げてもいい気もする。メリットは悪くないし、交渉で上手く誘導出来るか。

 

 

「ただし、傘下はヤダ!」

「えっ?」

「あくまで同盟と協力はする!けど、傘下に入るとかそう言った事は考えないで!私はいつか【ロキ・ファミリア】だって超えるって誓ったんだから!」

「ルージュ……」

 

 

 エレ様が呆れている。

 此処で啖呵切るのか、と呆れ顔だけどそれでも嬉しそうに見える。顔に出ていたのか、それともそれを察していたのか、ルージュはルージュなりの牽制で宣言する。

 

 

「ふ、あははははははははははっ!!」

「フィン?」

「……ああごめん。ロキ、構わないよね」

「ええよ、ウチらのメリットも多いしなぁ」

 

 

 勇敢で馬鹿。

 賢いけれど、妙な所で意地っ張り。

 

 でも、不思議と人を惹きつける才能がある。

 

 フィンの考えている候補としては充分過ぎる魅力がある。一族の繁栄の為に縁談を申し込んでも今は絶対に断られるだろう。今はいい、彼女が世界最速の称号を手にした以上、これから自分達を超える速度で成長していく。そうなれば、小人族の自分からしてもいい事ではある。

 

 

「改めて、よろしくルージュ」

「此方こそよろしく。フィン……さん?」

「フィンで構わないよ」

 

 

 とりあえず、彼女とお近づきになれただけ良しとしよう。

 

 

 

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