小人族でも、女でも英雄になりたい 作:ロリっ子英雄譚
新キャラ登場、鍛治士です。れっつ一日一話(エタフラグ)
ロキ・ファミリアの遠征まで一週間。
その間、私とエレ様はオラリオから離れる。それは単純に闇派閥の奇襲を避ける為だ。極上の餌が手薄になっていたらそりゃ襲われる。だから場所は【ロキ・ファミリア】にも告げていない。二週間は外に居るだろう。
「そろそろ、武器を替えないとな」
そろそろ『緑刃』もダンジョン探索に限界が来た。
刀は折れやすい。『影淡』も階層を考えるとそろそろ危険だ。強い武器が居る。特にトワがいる時点で、精霊魔法を使い【スター・エクステッド】による収束、停滞、増幅、解放までやっていると武器が矢の如く消費される。二つとも一撃必殺、切り札にさえ耐え切れる武器ではない。トワは基本的に二種類の魔法が使える。
それを収束し、停滞し、増幅、解放まですると武器はあっという間に砕け散る。触媒の杖は増幅効果があるだけで強度がある訳じゃないからやはり強い武器に限る。
「すみません。ヘファイストス様って居ますか?」
「おっ、久しぶりだなちびっ子」
「あれっ、椿さん。それにフィンさんとロキ様まで」
「遠征の会合中だからね。とはいえもう終わったけど」
なら丁度いいか。
「私に何か用かしら」
「えっと、この刀の製作者を探してるんですけど」
「銘は?」
「『緑刃』です。そろそろダンジョン探索に限界が来始めたので」
中層域の『ミノタウロス』には通じたが、『食人花』の戦闘によってボロボロだ。刃こぼれもかなりある。使い方が悪かったのもあったが、それでも材質的な限界も感じてはいた。
「そういえば世界最速だったね」
「まー、酒場であんな宣言したからね。吐いた唾は飲み込めないし」
「そのせいかウチのアイズたんの記録を悉く塗り替えおったからなぁ。ホンマどついたろか」
「しーらない。私負けず嫌いですしー」
ぐぬぬと項垂れているロキ様を横目にヘファイストス様の鑑定が終わる。この人のブランド名を入れるには一度見せなくてはいけない為、その時に誰が打ったものなのか全部記憶しているらしい。本当に凄いなこの神様。
「……あの子の作品ね。付いてきなさい」
「んじゃ、私はこれで。遠征前の見送りくらいは行くから」
「それはありがたいけど、
見送り前に本当は姿を消すのがベストだけど。
そこに関しては問題ない。実を言うと【ヘルメス・ファミリア】の団長さんが手引きしてくれているから、抜け出す分にはいつでも抜け出せる。元々、透明化のローブは貰ってたし、兜まで貸して貰ったからエレ様も姿を隠して外に抜け出せる。
「まあ諸事情で何とかなるからいいよ。アイズとは友達だし、見送りくらいさせてよ」
「そうかい、なら一週間後」
「うん、またね」
手を振ってヘファイストス様に付いていく。
その様子を見たフィンは少しだけ笑っていた。やはり、優しい人ではある。冥界の女神の所にいるとは思えないくらいに善良な存在だった。まあ冥界の女神エレシュキガルもどちらかといえば厳正で善良な女神だが、過去の冥神を考えると思う所が少しあった。
「なんじゃフィン。お主ルージュを狙っとるのか?」
「んー、否定はしないけど、多分無理だろうね」
「何故?」
「彼女と結ばれたいなら、黒竜を殺してからだとさ」
椿はその言葉に盛大に笑い転げた。
成る程、それは遠い未来になりそうだ。
★★★★★
「此処よ。リース、入るわよ」
「ちょっと待って」
バベルから少し歩いたダイタロス通り。
一見路地を通れば迷い出られないと言われたこの裏路地の奥に広がる場所から熱を感じる。ノックをする主神に制止の呼び声をかけられ、暫くすると扉が開いた。
「お待たせしました。どうしました主神様?」
そこに居たのはエルフだった。
紫紺の瞳と銀色の髪。黒いタンクトップに蒼いオーバーオールで出迎えた凛々しい美人エルフ。鍛治士にしては珍しい。エルフは魔法特化、ドワーフのような鉄を打つ技術との縁は少ないと思っていた。
「貴女の作品を欲しがってる人よ」
「えっ、本当!?……えっと、この子が?」
「どーも、小人族のルージュ・フラロウワです」
「っ!?
目を見開いてコホンと咳払いする。
どうやら顧客が来ないらしく、直接会いに来てくれたことに驚いているようだ。
「コホン、とりあえず中へ入るかしら?それとも移動する?熱気が篭ってたし、此処じゃもてなせる紅茶とかは出せないけど」
「いいよ。中も見てみたいし」
リースに案内され、入ってみると大きくない場所ではあるが、机や壁には無数の羊皮紙や設計図の山。
そして飾ってある剣やククリ刀、槍や斧も立てかけてある。見た感じ、緑刃よりしっかりしている。
「改めて、初めまして。私の名前はリース・ファンロッテ。Lv.2よ」
「私はルージュ。この『緑刃』の製作者は貴女なんだって?」
「ええ、私が打ったものよ」
腰に据えた『緑刃』を差し出す。
刃のボロボロさを真剣に見続けると満足して納刀する。役目を果たしたのね、と呟いていた。
「その腕を見込んで––––」
「あっ、その前に私から言わせて」
手を自分の胸に当てて、私に懇願する。
「私と直接契約をしない?」
直接契約。
それは専属の鍛治士になるという事だ。簡単に言えば、ドロップアイテム入手後、それを武器にしてくれたり、整備を格安にしてくれたりと、契約する事で双方の利益になる契約を結ぶ事だ。
「私の作品を求めてくれた。つまり、私の顧客よ。だから私は貴女を手放したくないの」
「…?いや、リースってLv.2なんでしょ?それなら顧客の一人や二人くらい居るんじゃ…」
「この子は発展アビリティに【鍛治】が出なかったのよ」
えっ、嘘だろ。
その言葉にリースに視線を向けるとバツが悪そうな顔をしていた。
「この子の鍛つ作品はどれも上質なものよ。だけど、鍛治アビリティが無い。だからどれだけ打ってもロゴを入れられるだけの質までは届かないの」
「でも、鍛治をしているなら普通は」
「そうね。でも、発現したのは【耐熱】【対異常】【神秘】だった」
マジか。【神秘】なんて超レアアビリティじゃん。
とはいえ、鍛治をしているのに鍛治アビリティが発現しなかった。才能の問題?エルフの鍛治士は珍しいからか?前例があるか分からないが。
つまり、ブランドを入れる事が出来ない。
幸い魔法はあってそちらの才能は桁が外れている為、冒険者になって魔道士後衛なら引く手数多な筈なのに、鍛治を続けてその先で【鍛治】アビリティが出なくて、彼女はひたすら鉄を鍛つ事に専念していたらしい。
「とはいえ、次のランクアップまで近いのも事実よ」
「じゃあ問題ないよ」
「……その、私から言ったけど、いいの?」
「打った刀に嘘はない。才能の問題なのか、分からなくてもこの刀はいい刀だし、腕を見込んで頼もうとしてたから問題ないよ」
それにしても【神秘】か。
何故【鍛治】を押し退けてまで発現したのか。私だったらかなり泣くかもしれない。努力に裏切られた気分になるか自己嫌悪で死にたくなりそうだ。
「でもなんで【神秘】?」
「それは多分、私の鍛つ剣にあるわね」
首を傾げると剣を差し出された。
その刀身に僅かながら線のようなものが見える。
「魔杖は知っているわね」
「うん。魔法を増幅させる機能がある魔道士の杖でしょ」
「私の剣は魔杖の回路を組み込むの」
「回路を組み込む?」
言ってる意味が分からなかった。
というより、私の知識不足もあるだろう。エルフは魔法に長けている。魔法は使えるが、魔法そのものに目を向けた事はあまり無かったりする。
「魔法の原理は知ってる?」
「ザックリは。魔力を燃料に詠唱で起動させ具現化させる」
「そう。魔力を燃料にして外に放出する器官。それを魔力回路と呼ぶの。私の剣はそれを組み込めるように研究してるの」
そのメリットは
「いつか聖剣すら超える剣を生み出す。それが私の目標よ」
いい目標だ。
私も英雄になりたいと思っている。だったら彼女が鍛つ武器はきっと聖剣を超えてくれる気がする。そんな気がしてならなかった。
「気に入った。リース、直接契約しよう」
「本当!?」
「冗談でこんな事言わないよ。Lv.3まであとちょっとなんでしょ?ならダンジョン探索にも行こう」
「うん、よろしくルージュ!」
お互いに握手を交わし、私達は直接契約を結ぶ事になった。
リース・ファンロッテ
Lv.2
二つ名【
・剣に回路を組み込む新しい手法を研究及び挑戦している。
・発展アビリティは【神秘】
・魔法の才能は桁外れ
彼女にはルージュに伝えていない秘密がある。