小人族でも、女でも英雄になりたい 作:ロリっ子英雄譚
声が聞こえた。
故郷にいた頃、私には偶に声が聞こえたりする。
私の場合はそのどれも違う。
私には––––声が聞こえるのだ。
昔からそれを聞いたことがある。
死にかけていた雛鳥の叫び声だったり、土砂に巻き込まれてる泣き叫んでいる子供の声だったり。
死に直面した時、命を失いそうになった時に生物は魂が籠った救いの声を吐き出す。
死にたくない。生きたい。誰かに会いたい。救われたい。そんな想いの集合された心からの本音。
私には、それが偶に聞こえるのだ。
『助けて……』
それは、誰の声だったのかまでは分からない。
けど、手を伸ばして、頰に触れて涙を掬ってやれる英雄になりたい。英雄になりたいから救うんじゃない。私が救いたいと思った道が英雄になってほしい。今までに見ない主役として君の主人公になりたい。
「いつか……必ず」
救いに行くよ。だから、待っていて。
その言葉が届かなくても、その言葉を誓いにいつか必ず救うと決意した。
★★★★★
「ん……う」
目が覚めると、知らない天井とベッドの上だった。
上半身を起こすと、僅かな鈍痛が背中と左腕に響く。左腕にはご丁寧に包帯がしっかり巻かれていた。そしてベッドの横にスヤスヤと寝息を立てて眠っている。
「エレ様?」
「んみゅう……ハッ!ルージュ!?大丈夫?痛みとか身体の調子は!?」
「寝起きでテンパり過ぎです。私は何とか……まあ鈍痛があるかな」
確かミノタウロスと出会って五秒でバトって死にかけた。頭と腕に包帯が巻かれているが、痛みはそれほどではない。周りを見渡してもやはり知っている所ではないようだ。薬品の匂いと、僅かながら薬草の匂いもする。
「此処は?」
「【ディアンケヒト・ファミリア】の医療場よ。一応、手術は成功して、万能薬と魔法で回復したから殆ど問題ない筈なのだわ」
「手術?ああ、左腕の?」
「粉砕してたわ。だから治すのに苦労したってアミッドが……」
左手を握っては開いてみるが、僅かな鈍痛意外は問題無い。いや、待って?【ディアンケヒト・ファミリア】は医療系ファミリアのトップだよね?治療費って相当高いんじゃ……
「ああ、治療費なら【ロキ・ファミリア】が負担してくれるのだわ。少し少ないけど慰謝料のお金も一応貰ったし」
「【ロキ・ファミリア】?何で大手派閥が?」
「ミノタウロスがいた理由が【ロキ・ファミリア】の不手際によるものだったの」
あー、まあ確かに普通に中層に居るミノタウロスがあんな場所に居るわけないもんね。納得……それでも、ミノタウロスに負けたのは悔しい。勝てると思ったわけじゃない。蛮勇もいい所だが、それでも退けるくらいは出来たかもしれなかったのに。
「そういえば……」
声が聞こえた。
本当に偶にしか聞こえない声が、眠っている時に微かに聞こえた。あの時の声は一体誰のものだったのだろう。
泣いていた。
アレは……何かに裏切られ、助けを求めていた声だった。
「……誰だったんだ?」
その声に疑問が残ったままだった。
その後、アミッドさんが来てくれて退院しても問題無いと言われた。ダンジョンに潜らずに三日は絶対安静と言われたが。
★★★★★
良い時間帯でお腹も空いた。
一日眠っていて何にも食べてないからお腹空いた。一度宿に帰ってステイタスの更新をした後、ちょっと食べに行かないか?とエレ様に相談すると、同じ考えだったらしい。宿のご飯が不味いわけじゃないが足りなかったりするし。
「うわっ……相当伸びてるのだわ」
エレ様から受け取った羊皮紙を見てみると、思わず顔を引き攣らせていた。
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ルージュ・フラロウワ
Lv1
力:G283 → F340
耐久:H193 → E431
器用:G264 → G298
敏捷:F311 → E401
魔力:G223 → G289
《魔法》
【ソニック・レイド】
・加速魔法
・詠唱『駆け上がれ蒼き流星』
《スキル》
【
・早熟する
・対抗意識、宿敵意識を持つほど効果向上
・逆境時に全能力に対して
【
・
・精神力消費
・歌唱時、自身を中心に『聖域』を構築
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「うっっわ」
耐久が物凄い伸びている。
いやまあ死にかけたなら妥当かもしれないが、まさか二百を超えるか。天井知らずの伸びだな。
「まだランクアップは出来ないけど、
「ランクアップが近いって事?」
「そっ」
うん。本当に最速でランクアップ出来るかもな。
とは言え、やる事が色々ある。『影淡』が刃こぼれしてるし、新調もしくは造った人に研いでもらうか。
「……無理させちゃったか」
とりあえず、暫くは予備用のナイフを使うか。
私達はソレを確認すると外へ出た。
★★★★★
街を歩くと何処もかしこもいい匂いがする。
香辛料の香り、肉の脂、腹を刺激するようなその匂いに思わず涎が出てしまいそうだ。
「この空きっ腹にこの匂いは……」
「クるわね。分かる」
思わずお腹を押さえるエレ様。
私も空腹を抑えて、美味しそうな匂いの誘惑に耐える空腹は最高のスパイスだと言うが、どうせならちょっと高くても美味しいものを食べたい。何より怪我をしている以上、食べなければ回復するものもしないだろう
「もう何処か入りたいのだけど」
「待って、
見えた看板に少し喜ぶルージュ。
あの場所が少し高いけど一番のオススメらしい。荒くれ者もあの場所では大人しく席につかないと、痛い目見る場所らしいから、安全っちゃ安全である。
「アレがオススメ?」
「そっ、宿の
そこはオラリオの他のお店よりも活気が溢れていて、何より美味しそうな匂いが鼻を刺激し、腹を鳴らせる。此処が大手ファミリアも常連になっている荒くれ者も跳ね除ける異端の酒場。
「『豊饒の女主人』だって」
ルージュはこの時思いもしなかった。
この場所で自分が伝説を生み出す事なんて、まだ誰も知る由もなかった。
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