小人族でも、女でも英雄になりたい 作:ロリっ子英雄譚
「何やってるのですか貴女はああああああああああああ!!!」
アミッドさんに凄い怒られた。
まあそれもそのはず。昨日の酒場の噂が広がっていた。
その名は『蒼の宣告』
駆け出しの新人が【ロキ・ファミリア】に絶対に越えると言う無謀な弱者の遠吠え。その少女は蒼い瞳と蒼色の艶やかな髪をポニーテールをした
まあそこまでは良かったのだ。問題は引き止められなかった原因を【ロキ・ファミリア】がウェイトレスに聞いたところ、馬鹿にしていたトマト野郎を探す為に夜の街を駆け出したと言うのも知ってしまったらしく、その経緯が街中に広がって、【ディアンケヒト・ファミリア】のアミッドさんにどういう事か説明を求められた。
そしてダンジョンに潜って少年…ベルを救った事をうっかり滑らしてしまい、絶対安静を命じられたことを無視してしまった事にアミッドさんが大激怒である。
「絶対安静って言いましたよね!?何で更に深い階層まで行ったのですかああああああっ!!!」
「本当すみません!」
こればかりは頭が上がらない。
幾ら助けるためとは言え、夜のダンジョンに向かった事は確かに危険だった。予備用のナイフも斬りすぎて刃こぼれが酷いし、買い直した方がいいくらいに闘った。鬼の形相で迫るアミッドさんに頭を下げる他なかった。
「全く……まあ診察上、怪我はもうありません。で・す・が!病み上がりと言う事をちゃんと理解してから行動してください!!」
「すみませんでした」
超反省した。
まあ回復過多になればポーションも効きにくくなってしまうらしく、万全の状態に戻すなら三日で完全復活らしい。万能薬や回復薬頼りは禁物だ。
まあそれはそうと。二日間はダンジョンに潜らない事にした。
★★★
「カゲタン……ちょっと刃こぼれしてるしなぁ」
現在使用中のナイフ『
コイツの製作者に会えるかなぁ?現在八千ヴァリス。昨日の分はまだ換金してないが、それで修理費が足りるとは思わないし……籠手に関しては今は団長になった奴が作った物だしなぁ。
「まあ行くだけ行ってみるか」
途中の露店で買ったジャガ丸君を食べながら、バベルまで向かい始めた。
★★★★★
「良いぞ」
「マジ?」
「むしろ買ってくれなかったと思っておったからなぁ。整備くらいなら引き受けてやろう」
「でも、高いんでしょ?」
「ある程度格安にしてやる。造った物には責任を持つのが手前の
ヘファイストス様の案内で団長の所へやってきた。まさか引き受けてくれるとは思わなかった。だが、古びた作品までちゃんと整備してくれるなんて思わなかった。
だからこそ疑問に思う。何でアレ彼処に売られてたんだろう?
「でもどうしてこの籠手があの場所に売ってたの?」
「アレはフィン用に造ったが、徹夜のせいでサイズを間違えてなぁ。残念ながらフィンが着るには窮屈過ぎて作り直しにさせられてな?あの時マジ号泣したわい」
これ、【
そもそも、女の小人族で冒険者として、しかも前衛を戦う者が殆どいない。この籠手もしっかりしているが、前衛じゃなければ確かに使わない。
成る程、
「それじゃ、任せてもいいですか?」
「うむ!二日後に来い!」
話によると、影淡の整備はそう時間がかからない。籠手も焼き直しですぐに罅を直せるらしい。整備費用に二万ヴァリス。二日後に返すと約束して、団長の椿・コルブランドに預けて私は予備の装備を見にバベルの昇降機を目指した。
★★★★★
鍛治士駆け出しの品を幾つか見て回る。予備用のナイフもだいぶ磨耗して使い物にならない。『影淡』の他に探してみようと思っていたのだが……
「……まあ、何本か良いのはあるけど」
それでも『影淡』に劣る。
残念ながら、ナイフについてはメインとなるいい得物は見つからなかった。いっそ武器を変えてみるか?大剣は使えないし、槍は使った事がない。弓は故郷の狩りでやった事はあるが、一人だとダンジョンでは不向きだ。私の長所の敏捷を殺してしまうし。
「……!」
目を惹かれた。
思わず手に取って鞘から抜く。
それは極東の人間が使う刀の一種『小太刀』である。刃渡りが長くないが、軽く防御に向く刀。小回りも良いと聞いたことがある。しかもデザインがいい。緑の銷と緑がかった綺麗な直刃。少し使われているようにも思えるが新品同様だろう。名は『
「製作者は……不明?」
またか?今度もまた誰かのお下がりだったりして。
いや、でもこれはしっかりしていて絶対にいい。六千ヴァリス。他のに比べたらこれは断然買いだ。刀は使った事はないが、慣れれば使いやすくなる。
「よし。これにしよう」
そして、明日二万以上稼ごう。
エレ様は神の宴に行ってくるらしいし、今日の夕飯どうしようかなぁ?
★★★★★
「……ハァ、ルージュに持って帰りたいけど」
流石にそんなはしたない真似はしない。
流石に冥界を統べていた女神としての矜持がある。まあ隣の
ガネーシャが開いた神の宴にエレシュキガルも参加した。死と腐敗の女神を招くなんて酔狂な真似だと思うが、そこはガネーシャのいい所でもある。平等に、神も、子もしっかり見ている所はとても好印象だ。
「全く、少しは落ち着きなさいよヘスティア」
「げっ!?エレシュキガル!!君まで招かれたのかい!?」
「まあ眷属がいる神は誰でも招くでしょ。私も零細ファミリアとして動き出したし」
「君に眷属が!?マジ!?」
「マジよ」
ヘスティアは私の事がやや苦手らしい。
それもそうだ。ヘスティアは竈の女神で聖火を司るのに対してエレシュキガルは冥界の女神、死を司る腐敗の女神。性質が逆な分、お互いに苦手なのだ。まあ、性質に伴って嫌いという訳じゃないが、苦手意識があるのは事実だ。
「……あら、二人とも参加したのね」
「あっ、ヘファイストス」
「久しぶりね、ヘファイストス」
ドレスに身を包んで着飾っている赤髪の鍛治神。ヘファイストスに声をかけられた。エレシュキガルを見て目を細めて安心したように話し始めた。
「いい眷属を持ったわね」
「会ったの?」
「午前中にね。椿に整備を任せていってたし」
ガネーシャに招かれた神々の中で飛び交っている噂。酒場の宣言が名前までつけられて聞こえている。
「あと、噂になってるわよ?『蒼の宣告』って」
「あああ……まあね。まあ外見が珍しいから分かりやすいし、ルージュが頑張るって言ったのなら私は応援するだけ」
驚いた。
ヘファイストスがエレシュキガルと会ったのは一度、その時は厳格な女神かと思ったが、物腰柔らかく、一人の女神としてしっかりと子を愛している事に。
「まあ、私は疑わないけど」
「?」
「あの子は間違いなく宣言通りに抜いて行くわよ」
「その根拠は?」
「秘密よ」
ニヤリと笑い、はぐらかすエレシュキガル。
死と腐敗の神の不敵さを僅かながら感じて、「へぇ…」と呟きながら軽く笑う。
お互いに信用しているからこそのその信頼。英雄になる宣言はこのままだと間違いなく実現される。そう、彼女も下界の未知の一つなのだから。
装備『
銷は緑で若干緑がかった直刃。極東の打刀『小太刀』。これも訳ありであるが、使って間もない新品同様である。
★★★★
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すみませんが、明日はお休みします。