「ああそうだ。
船の出発準備が整うまでの間、俺はあちこちに指示を飛ばしていた。
「恐らくはタメトモに戦力を集中させ、占拠を試みるはずだ。オーブ全体を巻き込むほどの戦力はどこも捻出できん。タメトモを2、3発撃てるだけの時間保たせられる程度のものが精々だろう。防衛戦力の分配は、それを前提として考えてくれ。場合によってはタメトモごと殲滅することを考慮に入れた方が良い」
予測と方針だけを告げ、直接的な指示は出さない。そろそろ俺が指揮を執らずとも、やりこなせるようになって貰わなきゃな。
一通り連絡を取ったところで、同じように各所への対応を行っていたチヒロ達が報告してきた。
「アラスカとパナマより非正規の戦力が出立していた模様です。正確な数は不明ですが、目標はオーブとみて間違いは無いでしょう」
「緊急招聘した傭兵たちは各所へ配置するよう手配しています。程なくシフトは整うかと」
「想定通りだが、まだ表に出ない戦力はあるだろうな。その辺はマティスの報告待ちか。姫さんは?」
「
「元気があって大変よろしい、と言うことにしとこう。戦力として頼りになるのは事実だからな」
止めても無駄だと分かってるから文句は言わない。彼女も、そして彼女を送り出したスカンジナビアの王族も覚悟の上だ。覚悟の決まり方がなんか方向性違うような気がするが、本人達が是としてることを止めるわけにもいくまいよ。
と、ここで各所に連絡を取っていたマティスが姿を現した。その表情は眉を寄せた、厳しさを感じさせる物だった。
「すまない。やはり思うような情報は集められなかった。一族の残党についてはまるっきりの空振りだ」
「そうか。だが
「手慰みにもならない情報だがな。
ふむ、ジョーカーの彼か。この時期はまだMSに乗っていないどころかロウとも出会っていなかった気がするが。
「そのジャーナリスト、何か目を引く点でも?」
「いち早くMSの戦術的優位点に目を付け、戦場での取材を重ねている人物だ。目の付け所もそうだが、戦場で生き抜くセンスも図抜けている。これからの注目株といったところかな。名をジェス・リブルというフォトジャーナリストだ」
「なるほど、覚えておこう。それにしてもユーラシア南部か……コーディネーター難民が多く出ているところだったな」
気にはなる。今は余裕がないが、ね。
「うちの情報部から人を回しておこう。何かがあるかもしれん」
原作でそんな話はなかったような気はするけど、流れが変わったせいでどんな影響が出てるか分からん。外伝主人公が関わっていることだし、調べるだけはしておこう。(←令和以降のガンダムは知らん人)
それはさておくとして。
「そろそろ準備も整っただろう。船へ移動しよう」
「しかし用心するのはいいが、そこまで石橋を叩くか?」
移動する俺についてきたマティスが問うてくる。
「叩くさ。俺なら狙えるとなれば狙うからな」
「大気圏突入時を、ですか? そのような高度迎撃ができる兵器は存在しないように思いますが」
リシッツァの指摘は正しい。NJが機能している以上、通常の長距離レーダーは役に立たず、その使用を前提とした兵器はほぼ使えない。大気圏突入を行う物体を地上から迎撃する手段は限られていた。
その常識が通用するなら苦労しないんだがなぁ。
「偶然とはいえ、大気圏突入しようって時に戦闘が発生した前例もある。ある以上やってやれないことはないって考える人間もいるだろうさ。用心するに越したことはない」
やりかねないんだよこの世界の住人は。なにしろびっくり人間には事欠かないんだからな。
そんなことを話しながら、俺たちは船に乗り込む。
ハガクレ級4番艦【キリハ】。大気圏突入中でもある程度の戦闘を可能とした、最新鋭艦である。
幸いにして、大気圏突入中に戦闘は発生しなかった。
「で、予想通りの展開になってるわけだが」
「どこを向いて何の解説をしていますの!?」
散発的に轟音が響くさなか、俺の言葉に隣のリシッツァが俺にツッコミ入れてきた。
何のことはない。クーロンズポートに辿り着いた途端襲撃があった。それだけだ。
前々からクーロンズポートを張っていたんだろう。数隻の大型潜水艦を手配し、それをMSが積載できるよう改装した。そのうえで
それを俺たちが降り立つと同時に打ち込み、奇襲する。いくらなんでも対応しきれるはずがなかった。
加えて連中、陸戦要員も同じような手段で打ち込んできやがった。半分以上が衝撃やGでお陀仏になっただろうに、無茶にもほどがある。
「それくらいしなければ貴方を仕留められないだろうという事なんだろうが……こういうやり口は、一族っぽいな」
「手段はともかく、予想されたお客だ。盛大に歓迎するとしよう。……おっと?」
「我が名はレーツェル! レーツェル・プリツェスィン! 悪を討つ剣なり!」
…………………………。
「絶好調で何よりだ」
「いや良いのかあれ? 本当に良いのか?」
上空で見得を切るMSは放っておきたい。マティスも指さすんじゃありません。気にすると疲れるから。
ともかく襲撃してきたMSは任せていいだろう。見たところザフトの水中用MSばかりのようだし、姫さ……レーツェルが後れを取ることはない。そこは信頼していい。
となれば。
「残りはこっちで平らげる。ちょうどいいストレス解消さ」
「まーたこの人は、ここぞとばかりに」
「私も似たようなことはしてたから、あまり人のことは言えんのだよなあ」
何しろここのところ忙しかったんでな。ちょっとストレスもたまっていることだし、俺の目の前に立ちふさがるってんなら容赦なく潰すわ。
「というわけでおもてなしに向かう。チヒロはオペレート。リシッツァ、用意を」
「仕方ありませんわ……ねっ!」
溜息を吐くと同時にリシッツァは着ているスーツに手をかけ――
一気に脱ぎ去った。
その下から現れたのは、ボディーラインがはっきりと表れたぴっちりスーツ姿のリシッツァ。胸元のジッパーを開け双丘が零れ落ちそうになっているのは、確実に狙っている。
「おお、見事かつよく似合ってる。さすがだな」
「ふふん、こんなこともあろうかと密かに鍛錬していましてよ」
「あの、鍛錬するところがおかしくないとかなんで動じてないのとか、どっからツッコんだらいいんだこれは?」
『この程度で動じてるようではまだまだですね。この人達のツッコミどころはこんな物じゃありませんよ』
キリハのブリッジでオペレートをしているチヒロは言うが、君もそのツッコミどころに入ってるからな? 我々は同じ穴の狢ぞ。
まあそれはそれとして。
『ミサイル改造のポッドで乗り込んできた陸戦隊は50人ほど確認されています。4、5人の分隊単位で行動開始。コントロールセクターに向けて移動中。マップに出します』
アイパッチゴーグル状の端末に、網膜投射でマップが表示される。ポッドで撃ち込まれた歩兵達は即座に再集結、分散し、クーロンズポートの中枢を制圧するつもりのようだ。
現在ポートにはCSSが集めた傭兵を含めた戦力が警備を行っている。だが多くがMS乗りで、歩兵は驚くほど少ない……ように見せかけている。実際は少数精鋭で固めており、その上で
「それじゃあ、反撃開始といくか。リシッツァはバックを。俺とマティスが先行する」
「承知いたしました」
「異論は無いが……良いのか私にこのような物を持たせて」
マティスが手にしているのはカービンタイプのアサルトライフル。仮にも元敵対的な立ち位置にいた自分に背中を任せて良いのかと、問うているのだ。
それに対して俺はにやりと笑ってみせる。
「ここで意味の無い裏切りとかするような、つまらん人間じゃないだろお前さんは。人を見る目はあるつもりだ」
続けてリシッツァが、にたりと獣のように笑んだ。
「それに万が一の場合、わたくしが背中から撃ちますので」
本気である。それを理解したマティスは、深々とため息を吐いた。
「……精々背中から撃たれないよう、留意するとしよう」
色々と諦めたらしい。大丈夫だ俺たちみんなが通ってきた道だから。
ともかく、俺たちは降りかかる火の粉を払う為に立つ。少々
歩みながら俺は、PDWのボルトをじゃきん、と引いた。
※クリス……おほんレーツェル視点
レーツェルの駆るアストレイブルームゲシュテーバーが今回装備している武器は、多弾装魚雷ランチャー。水中に打ち込んだソナーからの情報を頼りに、迫りくる水中MS部隊へと魚雷を叩き込む。
「あからさまに時間稼ぎ、なんですけどねえ」
レーツェルは、敵に対して昆虫じみた無機質さを感じている。目的を果たすためだけにすべてをそぎ落としたような、感情の見られない動き。それには覚えがあった。
以前アズラエルとラクスの談義(偽)を護る為、戦ったMS部隊。あれと酷似した気配だ。あの時はやり手の隊長機に率いられていたが、今回それがないところを見ると
「積極的に上陸しないのは水中で受ける攻撃を制限するため。ザフトの水中用MSを使っているのは、そちらの方が長期戦に向いているから。堅実といえば堅実」
逆に言えば積極性に欠ける、という事である。本格的にクーロンズポートを攻略する気であれば、戦力も戦術もまるで足りていなかった。先も言った通り、時間稼ぎでしかないのだろう。
「リョウガ様を足止めするため、かな? この分だと陸戦隊も似たようなものか。……となれば、リョウガ様が懸念した通り、本命はオーブのタメトモあたり」
迫りくるヤキン・ドゥーエを迎撃するという名目で占拠し、ヤキン・ドゥーエだけでなくプラントそのものに攻撃を加える腹積もりと見た。プラントさえ潰せれば後はどうでもいいという、後先考えない決死の手段のつもりなのだろう。リョウガさえ押さえておけば、オーブなど恐れるに足らずとでも思っているのだろうか。
「それほど甘いものでは……おっと」
襲撃者たちのMSが、時間差で海中から姿を現し攻撃を放つ。フォノンメーザーの光が次々と空を貫くが、ブルームゲシュテーバーは舞い踊るようにそれらを回避。お返しとばかりに魚雷を撃ち出した。襲撃者たちは即座に海中に没したが、2機ほどが直撃を受け大破。そのまま海の底へと消えていく。
「この様子なら、それほど長い時間はかからないと思いますけどね。援軍がなければ」
戦力の随時投下はあり得る話だ。だがレーツェルは、それはないだろうと睨んでいた。
勘でしかない。しかしリョウガを狙う勢力のうちブルーコスモスはその力を大きく減じられ、解体した一族残党もまた同様。リョウガを
であればさっさと片付ける。願わくば……。
「格好良くリョウガ様の援軍にはせ参じたいところだけどっ!」
そんなことを考えるくらいの余裕が、レーツェルにはあった。
※他者視点……というかオーブ視点
領海に侵入しようとする艦隊の存在を察知したオーブ首脳陣は。
「もうリョウガ殿の予想通り過ぎて笑いも出ませんな」
と呆れ返ったとも何とも言えない雰囲気であった。
「確かに今、リョウガはおらぬが。まさかそれだけで防衛力がガタ落ちになるとでも思われたのだろうか」
ウズミの言葉が大体皆の心情を表していた。確かにリョウガが大体の政策を具申し、戦術ドクトリンなども考えてはいるが、だからと言って居ないだけでいきなり機能不全になるわけでもない。そもそもそのような事態が起こるだろう事も考えて、各所に仕事を割り振っていた。
もちろん完全に割り振れたわけでもなく、未だリョウガに頼る部分も多いが、彼抜きでも防衛機能に滞りはない。(リョウガの求める水準が高すぎるのではないかという話もあるが)
ともかくよほどの大戦力を投入しない限り、オーブを攻略することは難しいだろう。だというのに攻めてきたのは十数隻。船籍はほとんどが
しかし。
「……増援が、あるやもしれんな」
顎に手を当てながら、静かに言うのはコトー。オーブの裏を司ってきた家の当主は、周囲より一歩、リョウガに近かった。
彼の言葉に、ウズミも眉を寄せる。コトーほどの視点はないが、彼もリョウガの身内だ。オーブの獅子は伊達ではない。即座にコトーの意を汲んだ。
「アメノミハシラに襲撃をかけ、撤退した者たちか。だがとって返してオーブへ降下するとなると……戦力の逐次投入どころではないな。手遅れに過ぎる」
「それでも、終わった、と思っている所へと言う奇襲にはなろう。それに、ブルーコスモスだけではない」
「……ザフトか? 地上の戦力を動かし、タメトモを狙うと」
「その算段があってヤキン・ドゥーエを動かしたと考えた方が良かろう。狙われていると分かっているのだ、対策くらいは取ろうさ」
下手をすればブルーコスモスとザフトの戦力が入り交じった、阿鼻叫喚の地獄絵図になりかねない。そういう懸念が生じていた。
ウズミはしばし目をふせ、考え込む。ややあって、意を決した彼は面を上げた。
「やむを得まい。
全員が挙手した。リョウガがもたらした石橋を叩いて壊してかけ直す精神。それは確かにオーブ首脳陣の意識を改革していた。
こうなるだろうと思っていたウズミは内心でため息。まったく、折角封印処理したばかりの物を、すぐさま用意することになるとは。せめてもの慰めは、まだ最低の状況を想定しただけで、実際にそうなると決まったわけではないことだが。
(……使う事にならねば良いのだがな)
そう言うときに限って使う羽目になる。リョウガの言い草ではないが、ウズミはそんな気がしてならなかった。
さて、更新です。
いつものわけのわからん前置きは抜きにして。
遅 く な っ て 大 変 申 し 訳 ご ざ い ま せ ん で し た っ!
色々ありましたが最大の要因は話がなかなか浮かんでこなかったんですよ。なんか今回展開が降りてこない。ついに才能の枯渇なんでしょうか。元々そんなに無かったという話がありますがそれは置いて。
結局の所そんなに話が進んでいないという体たらくです。一応決着まではおぼろげに思いついてはいるのですが。いつになったらそこにたどり着けるのか。
自由どころか運命までいけるのかも怪しいぞう。どうしましょうホント。
そんなこんなで今回はここまで。次回はもう少し早めに更新できればと思います。
……こんな状況で、閃光までは無理筋と思われ。