【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話   作:SunGenuin(佐藤)

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ブクマ&評価&感想サンクスサンクス!!前話分の感想まだ返し終えてないけどもっとくれ……楽しみになってる……!!

本日2話目の更新です。
ヴァーミリアンくん、父エルパサの産駒はそろって気性がアレと聞いたのでイロイロひねりました。
捻りすぎィ!?!?

やっぱり主人公を見つめてばかりの牡馬では面白み……いや芸がないかとおもいましてね

新しいヒト族も追加しました

2021/06/06 追記
2005年1月22日の小倉2R3歳新馬戦が牝馬限定戦なのを忘れていました。
ので、1月23日の小倉3R3歳新馬戦に急遽レースを変更します。
これによって物語に支障とか変更とかは正直ないです!!
ガバガバですみません!!


7.結局は抗えない

「サンジェニュイン号は実に大人しい馬ですね」

「そうですね、調教で手が掛かることはないです」

 

おっちゃん、もっと褒めてくれてもいいんだぞ?

ふふん、と鼻を鳴らし、鞍上の見習い騎手くんの指示通り、パッパカラッと走り出すと、横にいた黒鹿毛── ヴァーミリアンも脚を動かす。

 

「2頭とも非常に落ち着いていますね」

「今日が初併せだったんですが、まあ、相性は悪くなさそうです」

 

今日の併せ馬は俺をベースにしているため、ヴァーミリアンの鞍上がペースを落とすように綱を操るが、ヴァーミリアンがそれを振り切ってスピードを上げる。

 

……俺の方を完全に向きながら。

 

「みてますねえ」

「……見てます、ね」

「白い馬体が気になるんでしょうか?」

「えぇ……はい、あの、たぶんそうですね」

 

テキッ!嘘つくんじゃあない!!

いやある意味嘘ではないよね、俺の身体が気になるのはそう。

クソッ、何もかもが意味深!

 

わずかにヴァーミリアンが先着した状態でゴールすると、ヴァーミリアンから引き離すように俺の鞍上が綱を引いた。

この見習いくん、併せ馬のときやちょっとした調教の時も時々俺に乗っているので、俺が牡馬に異常に好かれるのを知っているのだ。

ちなみにヴァーミリアンの鞍上も見知った見習いくんで、彼はカネヒキリくんと併せ馬するときに乗っている。

俺とヴァーミリアンとの間に2馬身くらいのスペースを持とうとしているが、まあ、うん、そう上手くはいかないよな。

 

「ははは、仲良しだ」

「ですね。……サンジェ、もうちょっとだけ耐えてくれよ」

 

ちょっとテキ、ソレだと俺がいつも耐えれなくて暴れてるみたいじゃねえか!

……その通りだな。

いやでもこのヴァーミリアン、出だしの目のギラギラには慄いたけど、実際に走ってみると悪い馬ではない。

確かに鞍上を無視して先着しようとはするけど、顔が完全に俺の方を向いているように、おそらくカネヒキリくんみたいなタイプなのだろう。

この前のディープインパクトや3歳牡馬たちと違って追いかけてくるわけでもない。

いいじゃないか、平和だ、平和よ!

こういう併せ馬だったらカネヒキリくん以外の馬ともやりてえよ。

相変わらず俺をジッとは見つめてくるが何もしないヴァーミリアンに、嬉しくなってニッコリ笑った。

 

へへっ、仲良くしような、ヴァーミリアンくん!

 

『ケッ、ニコニコ笑ってんじゃねえぞ、この可愛い子ちゃんが!いくら馬体が最高にセクシーでキュートな瞳してるからって俺様は負けねえからな!!』

 

ん?

 

『レースとなりゃそのプリティフェイスが多少はクールガイなツラに変わってるかもしれねえが、おキレーなままじゃ勝てねえレースもあるんだよ』

 

うーん?

 

『そのふわふわでスリスリしたくなるような真っ白な身体を汚されたくなかったらとっととおうちに帰ってママのおっぱいでも吸ってな!観光牧場で手厚く世話されながらたんまりにんじんもらってる方がお似合いだぜ!ッハハハ!!』

 

これは── 魅了が効いて、ない、のか……!?

エーッすごいな!?

今まで会う牡馬全頭が俺の(魅了の)前に屈していったというのに……ヴァーミリアンくんすげえわ!!

もうなんだよ、俺のことすごい見てくるから効いてたのかと思っちゃったじゃん!

ただガンつけてただけね、はいはいはい、わかった。

 

── こいつと絶対トモダチになろう

 

俺のケツを追っかけない貴重な同性だ。

もし一緒のレースになったとき、ヴァーミリアンくんと仲良くなっていれば仲裁とかしてくれるかもしれない。

そうじゃなくても、魅了が効かない同性とか普通に安心できる。

 

『……なにニコニコ笑ってんだよ』

『ヴァーミリアンくん、今は俺のこと嫌いでもいつかトモダチになってくれよ!』

 

あわよくば俺の貞操を守る手伝いをしてくれ!

 

『ハ……?嫌い……?』

 

ん?そういう話じゃないんか?

 

『嫌いとは一言も言ってねえだろこのエンジェルちゃんが』

 

……なんか風向きが変わったな。

いや気のせい、気のせいだよね!

 

『ハァ、首を傾げるなバブちゃんか?毛の先っぽまで可愛さを詰め込むな!ぶどうみてえなツヤツヤまるまるのおめめしやがって……牡馬なめてんのか?』

『ヒ、ヒェ……舐めてないです……!』

 

「ちょ、止まって」

「お前ちゃんと綱引けよ……!」

「引いてるってうわっ、ちょ、ヴァーミリアン」

 

『カーッ、においまでイイとかなに?神が作り給うた傑作か?』

 

そうです。

 

「おお、ヴァーミリアン号とサンジェニュイン号の鼻が!絵になりますねえ」

「そう、ですね……」

 

そうですねじゃないだろテキ!

助けて、止めてこの馬を!

ぐいぐい来る、鼻先から圧がぐいぐい来てるんだよお!

 

『「ボクは誰よりもかわいいです。かわいくてごめんなさい」と言え』

『ヒェ……』

『言え』

『ぼ、ぼくは誰よりもかわいいです、かわいくてごめんなさいぃ……!』

 

トモダチになりたいって言ったの撤回するわ。

 

 

 

後日、雑誌に掲載された記事には「お互いの鼻をスリスリ♡仲良しな2頭」という題で写真が載ったらしい。

一方的にやられてたんだよこっちはよぉ……!

 

怒りにまかせて雑誌を噛みちぎったらテキに叱られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう新年である。

取材から超スピードでサックサク時が進んだ。

調教やってると日付の感覚が本当にない、キレそう。

ヴァーミリアン?……そいつの話はよそう。

 

「サンちゃーん、ブラッシングいくよー」

 

あいよ!

 

手綱をひかれて馬房から出る。

このお姉さんは本原厩舎の厩務員のひとりで、去年までは4歳牝馬を担当していたイサノちゃん。

今は目黒さんの助手という形で俺付きとなっている。

というのも、イサノちゃんが担当していた4歳牝馬が引退したのである。

戦績がどうなったとしても4歳で引退させる、というのが馬主との話し合いであったらしく、クリスマスまでを厩舎で過ごした後に生産牧場の方へと帰って行った。

この牝馬は俺の数少ない話し相手で、戦績気にせず本馬が楽しめるレースにのみ出走していたからか、かなりのんびりとした性格だ。失礼ながら母親のような包容力に勝手に癒やされていた。

そんな牝馬── ハルノメガミヨさんは今年の春から繁殖牝馬になるんだそう。

 

イサノちゃんは本当だったら3歳牝馬付きになる予定だったんだけど、なんと本原厩舎の3歳馬たち全頭が去年末で引退・転厩してしまい、いまこの厩舎にいるのは3月引退予定の6歳セン馬と、3歳牡馬という括りになった俺・サンジェニュインだけになったのだ。

ちなみに去って行った3歳馬たちの内訳は、4頭いるうち1頭が繁殖牝馬になるため、2頭がケガ、1頭が馬主の意向による転厩である。

2頭はともに同じレースに出ていて、コーナーを曲がる時に躓いた1頭に、もう1頭が接触したことによるケガだった。

転厩していった1頭はこの2頭のケガを見た馬主が、テキ── 本原さんに預けるのが不安になったみたいで、何度か協議を重ねたが結局は転厩が決まったらしい。

なんで知っているのかと言うと、これも目黒さん……ではなく、その助手となったイサノちゃんの独り言を聞いたからだ。

こっちは目黒さんとは違って俺に話しかけているわけではなく、あくまで独り言の範囲である。いやソレが本来の厩務員の姿で、目黒さんがオカシイ……。

 

「今日は芝木くんが来る日だねえ、あ、ここ気持ちいか?よーしよしよし」

 

ああ、そこいいですわ……。

 

芝木くんは俺の主戦騎手だ。

なんと2003年のJRA賞最多勝利新人騎手である。

すごーい!何がすごいかはわからんかったけど。

目黒さんが言うには、デビューしたその年で30勝以上をあげた騎手の中で、1番の勝利数を持つ新人騎手に与えられる称号らしい。

つまり芝木くんはデビュー年で30勝以上勝っている、今後最も期待できる騎手の一人ということだ。

この本原厩舎所属の騎手なわけだが、2003年度は今よりも競走馬の数も多かったらしい。それでも有名な厩舎よりは馬の数も── いっちゃなんだが馬の質も下がる中でよく30勝もできたものだ。

ちなみに3月に引退するセン馬のガンジョウメイバ先輩とのレース数・勝利数が一番多いらしい。

ガンジョウメイバ先輩はその名の通り非常に身体が強く、今まで熱も出したことがなければケガをしたこともないとか。無事これ名馬!すげえ!

 

「……ふふ」

 

どうしたイサノちゃん、思い出し笑いなんかして。

 

「白馬と芝木真白……ふふ……」

 

白馬とは言わずもがな俺である。

芝木真白というのは芝木くんのフルネームだ。

下の名前が「ましろ」の芝木くんが、真っ白い馬の俺に乗る、これが面白くて笑っているんだな。

フフ……確かに面白い……俺たち笑いのセンスが似てるわ!

 

「この前の新馬戦、見に行けたら……サンちゃんに乗ってた芝木くん、絶対格好よかったよね……」

 

ほっぺたをちょっと赤くしながら言うイサノちゃん。

なに?ほの字か?甘酸っぱい恋の予感なのか?

 

「誰もいないよね……あのねサンちゃん、ここだけの話、私ちいさいころから白馬の王子様に憧れてたんだ」

 

女の子は誰しもが憧れるっていうもんな。

イサノちゃんは髪の毛も耳の下でバッサリ切っていて、スーツでも着ようものなら「ザ・現代のクールな女性像」みたいな雰囲気になる女性だ。

年明けからそう経っていないけど、仕事ぶりは実に真面目で、浮ついたところも見たことがなかった。

テキに対しても目黒さんに対しても、厩舎で同期っぽい厩務員たちに対しても、どこか一線を引いたような空気だった。

 

「似合わないのはわかってるんだけどね」

 

そんなことないさ。

誰しも「似合わない」ことなんてないんだよ。

持論だけどね。

 

「初めてサンちゃんを見たとき、王子様が乗ってる白馬だ!って思っちゃってね……芝木くんが主戦だった聞いたときは、乗ってる姿がすぐに想像できて……あ、テキの声だ、や、やばいやばいごめんねサンちゃん、すぐブラッシングすませるからね!」

 

急がなくていいぞイサノちゃん、何本か毛がブラシに絡まっててちょっと痛いぞ。

 

それにしても俺が「王子様の乗っている白馬」か。

この場合の王子様は間違いなく芝木くん。

どうみても芝木くんに惚れていそうなイサノちゃん……白馬の俺……閃いた!

 

「イサノ、サンジェの様子はどうだ?」

「はい、テキ。飼い葉食いは問題なし、水も飲んでます。ブラッシングで多量の抜け毛もなし、毛艶もいいです。調子がいいと思います」

「そうかい。イサノはよく馬を見てるからね……今日は目黒くんがいないから、このままイサノが連れてってくれるかな。芝木くんはもうコースの方にいるから」

「あ、は、はい。わかりました」

 

ナイスだテキ!

ようし、いくぞイサノちゃん、おら早く、早くいくぞ!

 

「ははは、サンジェはなんか張り切ってるな、芝木くんが気に入ったのかな?」

「……新馬戦で相性が良かったと聞きました」

「そうだね、序盤スピード出してたサンジェをセーブしようとしたときは折り合いに欠いているかと思ったけど、中盤からは本当に息が合っていた」

 

やっぱり今後も主戦は芝木くんにしよう、とテキが言うと、イサノちゃんはちょっぴり頬を赤くして笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「次走なんだが、まあ発表したとおり、1月23日の小倉3R3歳未勝利戦に出そうと思う」

 

よう芝木くん、前より身体が絞れてるんじゃない?

 

「よしよしサンジェ……本当に人懐っこいなあ」

 

芝木くんは騎手界隈では大柄だ。

通常騎手というのは小柄な人が多いんだが、芝木くんは175cmとかなりデカい。今いる現役ジョッキーの中でもとびきりデカいんじゃないだろうか。

騎手の学校に入学したときは160後半だったらしく、体重も50ギリギリだったのが入学してしばらく経つとぐんぐん伸びたらしい。

今の体重は52kgと、175センチの成人男性としてはかなり痩せている、とイサノちゃんが言っていた。

 

「テキ、小倉3Rの3歳未勝利戦というと、芝右回りの2000メートルですか?」

「うん、新馬戦をね、2000走らせても緩くならなかったから。未勝利戦も同じ長さでいかせるよ。芝木くんもソレで問題ないな?」

「ハイ。距離に全く不安はないです。レース後も先頭を走り続ける根性がありますし、差し競り合いも悪くなかった、この馬はもっと上に行きます」

 

嬉しいこといってくれるな芝木くん!

んふふ、人馬一体で上を目指そうな!

 

「頼むよ、芝木くん。……サンジェは白毛で、馬券に絡むだけで「快挙」だの「史上何頭目」だのと言われるが、俺はこいつにつける「史上初」は、G1勝利だって思ってるんだ」

 

テキ……!

 

「俺もテキと同じ気持ちです。こいつにG1を勝たせてやりたい、世界初の白毛のG1馬になれるくらいの素質がこいつには十分にあるんです。その鞍上に乗せていただけるのは、騎手としてこれ以上の喜びはないと思っています」

 

芝木ぐん~~!!

俺、頑張るからな!!

例え牡馬どもにケツ追われても、ケツ守りつつ逃げ切って勝つからな!!

でもやばい時は芝木くんも振り落として逃げるかもしれない、その覚悟だけしといてくれ。

 

~ 完 ~

 

いや俺の物語はまだまだ終わらないけどね!

 

「未勝利戦の前に、最後の追い切り含めてカネヒキリ号と併せ馬をするよ」

 

お、カネヒキリくん!?久しぶりの併せ馬じゃん。

 

「あちらは2月に未勝利戦が控えているけど、まああくまでうちのサンジェがベースで。時間はちょっと多めに取ってるよ」

 

カネヒキリくんの次走は2月かあ。

確かダートのヤツに出るっていってたな。

会場は京都だったっけ?

次こそは俺が先着するわ!

 

「タイムを念入りにつけるんですか?」

「というよりは……これが最後の併せ馬だからな」

 

 

 

え?




またクセ馬が増えちゃった……

サンジェニュイン 牡3
年が明けて括りとしては3歳牡馬
初併せのヴァーミリアンが魅了の効かない初の同性かと思いきやそんなことなかった
厩務員ちゃんの甘酸っぱい恋を叶えるキューピッドになろうとしている
それより先に自分が他の牡馬にキューピッドされないか心配しろ

カネヒキリくん 牡3
まだ再会できてないがこちらも3歳牡馬になった
次走が2月のダート戦だと判明したが、
それと同時に次回の併せ馬がラストランだと判明してしまった

ヴァーミリアン 牡3
ちょっと様子がおかしい口の悪い同年代牡馬だと思われていたが
ちょっとどころか大分様子がおかしかった
魅了が効いてないようでナナメ上に変な効き方をした
なおこちら、実は普段はディープインパクトと併せ馬をしている模様

テキ ヒト族 男
取材回ではよく目が泳いでいた
主人公はG1もとれると強く信じている

イサノちゃん ヒト族 女
本原厩舎の若手厩務員
現役競走馬が主人公と3月引退予定のセン馬しかいなくなってしまったため、
急遽主人公の厩務員・目黒さん付きの助手になることに
恋愛に等興味はない!とラオウ顔で言っていそうな雰囲気だが、
実はバリバリに恋愛に興味があり、白馬の王子様に夢を見ている
芝木くんがすき

芝木真白くん ヒト族 男
2003年JRA賞最多勝利新人騎手に選ばれたすげーやつ
ただ身長がかなりあるので、斤量を気にした他の厩舎になかなか所属できず、
唯一声をかけてくれた本原に恩義を感じて所属
主人公と心中してでもG1を目指す漢

笹原 ヒト族 男
取材のおっちゃん
主人公がヴァーミリアンに鼻先でグリグリされていた写真を取る
数年後、これがウマ娘界隈で拡散する

完全素人ニキの愛馬名アンケート

  • サニードリームデイ
  • サンシカカタン
  • タイヨウノムスコ
  • タイヨウハノボル
  • ブライトサニーデイ
  • ラブディアホワイト
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