【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話   作:SunGenuin(佐藤)

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感想&誤字脱字報告&ブクマ&評価、サンクスサンクス~~!!
仕事の合間合間に感想読むのが癒やしになってるよ!!(だからもっとくれ)

【報告】
匿名をやめてマイページを紐付けたよ。
かなり未来の話になるウマ娘のサポカ妄想やうまむすサンジェの能力値などは今後は活動報告でボソボソやる予定。
ということでもしうまむすサンジェ関連の感想やスキルネタ等があれば感想欄ではなく活動報告のコメントの方によろしくです。

今日は宣言通り競走馬回だよ!!


9.対決前の騒がしさ

弟が生まれた。

 

『へえ、弟さんは白毛じゃないんですね』

『俺のは突然変異だから。弟はクロフネの3年目産駒だって』

 

ターフコースをゆっくりと歩きながら会話する。

3月2日、予定通り生まれた弟は馬体はそこそこ大きいけど脚元に不安無しで健康だ、と目黒さんが教えてくれた。

なんで目黒さんが知ってるかっていうと、同日に北海道のタカハルから電話が来たからだ。

その内容を馬である俺に教えに来る目黒さんに関しては、うん、もう深くは考えないことにする。

 

俺の母馬・ピュアレディの2頭目。

父親が違うから、括りとしては「半弟」というのに当たるらしい。

葦毛だと言うクロフネの血が濃く出たのか、弟も葦毛で顔立ちもちょっぴり似てるんだとか。

そんな弟だが、どうも俺同様母馬が育児を放棄してしまったようで、今後はタカハルとタクミ、それから同時期に仔を産んだ他の牝馬に育てて貰うことになっている。

生まれて数分は身体中の粘液をペロペロ舐めて貰えた俺だが、弟は生まれた瞬間に母馬が興味を失ったようで、一目見ることもしなかったみたいだ。

……生んだ自覚がないとかそういうレベルじゃないと思うんですけど?これ来年も同じだったら兄弟たちが不憫すぎるな。

母馬よ、いったいなぜ育ててくれないんだ。

いつか母馬に聞いてみたいけど、昔会ったときに「なんだこのガキ」みたいな目で見られたからマジで興味ないんだろうな。

俺は中身が元人間だし、タカハルやタクミの言葉も理解できるけど、そうじゃない弟は寂しい思いをしてしまうんじゃないだろうか。

目黒さんによれば弟も俺と同じサイレンスレーシングで一口馬主を募集する予定らしい。

 

『弟も時期がきたらここに来るってテキは言ってはいたけど』

『よかったじゃないですか!厩舎に1頭で寂しいって言ってたけど、賑やかになりますねえ』

『うん』

 

「サンジェニュイン~~……頼むそろそろ走ってくれ……」

 

お、騎手のあんちゃんの泣きが入ったな。

この前見習いから勝利騎手になったっていうのに、自覚が足りんぞ自覚が。走って欲しけりゃ鞭を打たんかい!いややっぱやめて、女の子の前で鞭打たれてから走るの恥ずかしいわ。

 

さて、茶番はここまでにして、そろそろちゃんと走るとするか。

 

『おしゃべりに付き合ってくれてありがとね、シーザリオちゃん』

『いえいえ、他の馬がいないなんてそんな寂しいの、私だったら嫌ですもん。これくらいならいつでも付き合いますよ』

 

なんて心優しい娘さんだろうか。

俺、心がぽかぽかしてきましたわ!

 

『ほんとありがと~!じゃあそろそろ鞍上も泣き始めたし、走ろうぜ!』

『はい!……ッシャオラァ!!』

『えっ!?いや速……っ!?!?』

 

3コーナーを回ったところで脚に力を入れる。

動き出した俺たちに鞍上が「うおっ」だの「急発進はやめてくれ」だのわめいてるけど、仕方ない走れといったのはそっち!

それよりシーザリオちゃん速すぎ!?

完全にキマった目をした彼女と競り合う。

ゴール直前でなんとかギリギリ先着できたけど、本番さながらのドキドキが心臓に悪すぎる。

加速し始めた時のガンギマリ顔が嘘のように、ゴールした途端にのほほんとした穏やかな顔になったシーザリオちゃん、君が一番恐ろしいわ。

 

「サンジェニュインは調子いいですね」

「だなあ。今日の併せ馬は初めての相手だし、どうなるかと思ったが相性がいいみたいだな」

「サンちゃんが自分から近づくなんてめったにないですよ。……今は何故か距離空いてますけど」

 

今日は3月3日。

報知杯弥生賞、3日前である。

 

 

 

 

 

 

「テキ、目黒さんに近藤さん、併せ馬はどうでした?」

 

芝木くんじゃん、追い切りに来たんか?

 

「おお芝木くん、うん、結果はよかった。シーザリオ号とも相性は悪くなくてね。……相手が牝馬だったからかな、追い回されないってわかっているのか、ずいぶん落ち着いていたよ」

「ヴァーミリアン号に対しては未だに腰が引けてるみたいですからね」

 

水を飲みながらテキたちの話に耳を傾ける。

今日の併せ馬の相手であるシーザリオちゃんは、カネヒキリくんと同厩舎の牝馬だ。

青毛というなかなか珍しい毛色で、日が当たらないところだと黒鹿毛にも見えるんだけど、一転して光が当たれば青色のシルエットが浮かぶ、実に美しい馬体を持っている。

このシーザリオちゃん、走っていない時はとても穏やかでのんびりとした性格の持ち主なのだが、いざ走り出すと人が、いや馬が変わったようにオラオラ系になってしまうのだ。

完全にサンデーサイレンスの血だよね、と言ったのはイサノちゃんである。

そんな馬鹿な……と思ったがサンデーサイレンスの血を引いているヴァーミリアンのあのやばさを思い出すと謎の納得感がある。

あいつはオカシイ。

しっかしそんなヤバい血が自分にも流れているのかと思うと恐ろしいな。

……ん?カネヒキリくんもサンデーサイレンスの血を引いてる?

だまらっしゃい!!

 

「今回の弥生賞は11頭立て。注目すべき馬は9枠11番のディープインパクト、1枠1番のアドマイヤジャパン、7枠7番のマイネルレコルトの3頭だけだと思っている」

「ダイワキングコンも強い走りをしているように見えましたが」

「1着を逃した2歳新馬戦、3歳未勝利戦はともに1200メートル。勝ち馬になったレースはダートの1400と1600だ。距離不安もあるし、芝不適正の可能性もある」

 

報知杯弥生賞は中山の芝右回り2000メートルだ。

そのダイワキングコンとやらは知らん馬だが、勝ち上がったレースがダートで、しかも最長が1600だと、400延長した弥生賞が厳しい見方にはなるよな。

俺もダートの2400に出るぞ!って言われたら暴れる。

 

「朝日杯FSを制したマイネルレコルトの脚質は先行でほぼ間違いないだろうね。若干鞭を嫌がるそぶりを見せるが、基本は乗り手に従順に見える。2000は初だが、新潟2歳Sも朝日杯FSも余裕のある勝ち方だったからか、距離を不安視する声はそこまでないようだ」

 

マイネルレコルトは聞いたことがある。

たしか去年末のGⅠで優勝して最優秀2歳牡馬っていうのに選ばれていたはず。

すごい馬も出走するんだな……いやそのすごい馬と俺もやりあうんだった。

 

「アドマイヤジャパンは新馬戦から全レース芝2000だから距離不安は一切なし。むしろラジオたんぱ杯2歳ステークス3着、京成杯1着はかなり強いポイントだ。京成杯が不良馬場でありながらも2着馬に2馬身差をつけている。パワーがかなりある馬だな」

 

ラジオたんぱ杯2歳ステークス!

バリバリに聞き覚えある。

ヴァーミリアンが勝ったってドヤ顔で言ってたレースだな。

たしか2着馬には1馬身差っていってた気がする。

そういやヴァーミリアンのやつが、

「やはり弥生賞か……いつ出発する?俺様が帯同する」

とか言っていたが、結局出走は取りやめたんだろうか。

 

「その2歳ステークスの勝ち馬はヴァーミリアンですよね。俺はてっきり弥生にも出ると思っていたんですけど」

「あちらはスプリングステークスへの出走を決めているよ。ディープインパクトと、それからうちのサンジェとの叩き合いを回避するためだろうね」

「なるほど……でもあれ、スプリングステークスってサンジェも出ますよね?」

 

ん?え?俺って弥生賞の後は、えーと、確かGⅠの皐月賞に直行するんじゃなかったっけ?

 

「うん、最初は皐月賞へ直行しようと思ったんだが、この馬が1800もいけるか、ちょっと見たくなってね。こっちは馬ナリでいいから、皐月賞が本番なのは頭に入れておいて欲しい」

「了解です」

 

スプリングステークスは確か……3月20日か。

弥生賞が3月6日だから、そこから2週間後かあ。

未勝利戦からあすなろ賞は20日間くらいだったから、それよりも短いんだな。

飼い葉をむっしゃむしゃ食べながらテキの方に顔を戻すと、イサノちゃんが何やら言いたそうにモジモジしていた。

 

「どうしたイサノ」

「いや、あの……中1週ではちょっとハイペースなんじゃないかな、と。皐月賞出走を考えると、疲労回復やケガ防止も含めて、直行の方がいいかと思いました」

 

イサノちゃん、俺の身体を心配してくれているんだな。

なんだか感動しちゃって飼い葉を食べるスピードが上がった。

 

「イサノがそう思うのも理解できるけどね、サンジェには並外れたスタミナがある。よほど無理な調教や走り方でもしない限り、スプリングステークス出走は問題ないと思っているよ。ただ「絶対」がないのが競馬だ。弥生賞の結果次第でまた改めて決めよう。……それでいいかな?」

「は、はい!テキ」

 

テキはずいぶんと俺のスタミナを評価してくれているようだ。

確かに今までの2000メートル、走った後でもあまり息切れはしなかったし、したことがあるのは新馬戦で他の牡馬どもに追いかけられた時くらいだしな。

いっぱい走ると食欲は減るけど、その分、夜は爆睡できてしまうので翌朝の目覚めがいい。きんもちい!のだ。

まあ爆睡とは言っても2時間くらいで、途中で何度か起きてしまうけど。

それがどうしてそうなるのかは不明だが、俺がもっと寝ようと思っても途中で身体が勝手に起きてしまうのだ。

妙に辺りが気になって、ちょっとウロウロしてからようやくまた眠気がきて2時間爆睡する、そしてまた起きて、を朝になるまでに3回ほど繰り返している。

馬と言う生き物がそういうシステムになっているのか、それとも俺の人間時代の分刻みのシフトタイムで働いていた日々がそうさせるのか……後者だったら魂に刻まれすぎだろ。

まあ今となってはどっちでもいい。

2時間とはいえしっかり眠れているのが影響しているかも解らないけど、俺は体力の回復が早いほうだという自覚はあった。

レースの翌日なんかは「今日は走らんぞお!」という気持ちになるのだが、その次の日からは「まあ走れと言われたら走る」になり、3日目には「騎手?いいよ乗りなよ」となる。

レースから1週間も経てばちょっとハードな調教にもついて行けるようになるので、他の競走馬たちに比べたら早いのではないか、とは前々から思っていた。

それを踏まえると今回のスケジュール、あまり苦にはならないような気もする。

 

「……俺の正直な気持ちを言うとね、敵じゃないんだよね」

 

テキが敵じゃないのは当然だろ。

え?そこじゃない?

 

「アドマイヤジャパンもマイネルレコルトも確かに強敵だろうけど、この2頭にサンジェが、うちのサンジェニュインが負けているとはまったく思わない。むしろ勝っているとすら思っている」

 

テキそれフラグじゃないか?

大丈夫かそんな啖呵切って。

その2頭はどっちも重賞レースで勝ってるんだろ?

普通に強いじゃん……いや強いから普通じゃないか。

なあテキ、実際に走るのは俺なんだが。

 

「同感ですテキ。ここまでの3戦すべて乗ってきて、そして他のアドマイヤジャパンたちのレースを見ても、やっぱりサンジェの方が強いと思います」

 

芝木くんまで!?

目黒さんとイサノちゃんもウンウンうなずかないでくれる!?

 

「ここまでの仕上がりは完璧だ。距離も芝もこの馬にピタリとハマっている。唯一懸念があるとすれば──」

 

あるとすれば?

 

「ディープインパクトだけだ」

 

二度と同じレースを走りたくない馬ナンバーワンじゃん。

もうやる気が絶不調だわ。

目黒さんは何故かまだ自信満々な顔だけど、イサノちゃんが「確かにそいつは強敵だ」って顔してる。

わかるアイツは強すぎる。

だいたいなんだよ追い込みって。

なんであんな位置から先頭をトップスピードで駆け抜けてた俺に追いつけるの?差せちゃうの?

おまけにレース後も俺のケツ追っかけてくるし、馬運車では鼻息荒かったし……アイツとレースするくらいならヴァーミリアンのキレ芸を真正面から浴びた方がマシ!

あ、うそごめんどっちもイヤ!!

 

「それでもサンジェが勝ちますよ」

 

芝木くぅん!?

だからこれ実際に走るのは俺なんだって!

自信満々にするたびにフラグがボコボコ立ってるんだよ!

何のフラグかって負けフラグに決まってんだろ!

テキも嬉しそうに頷くんじゃないよ!

イサノちゃんも目をうっとりさせないで、これ俺へのプレッシャーでかすぎるんよ!!

 

「弥生賞まであと少しだ。厩舎一丸となってサンジェをサポートするぞ!」

 

おおー!!と拳をあげる3人。

 

絶対負けられない戦いがはじまっちゃったな……もう知らん!!寝るわ!!

またディープインパクトに競り負けても怒るなよな!!

 

俺は飼い葉が入っていたバケツをひっくり返し、不貞寝をキメた。




サンジェニュイン 牡3
ガンジョウメイバ先輩が引退されたので、
3月時点で本原厩舎唯一の所属馬となった白毛のオッス馬
弟が生まれたので来年の9月くらいには2頭になるから寂しくない(なお今は)
競馬にも馬産にも縁のない人生だったため、複数回に分けて睡眠→起床はともかく、1回2時間ぶっ通しで爆睡することを異常だと知らない
回復力が異常なのは睡眠の影響というよりは「疲れにくい体質」というだけ
厩舎の期待を一身に背負うが、期待のされ方が負けフラグみたいな感じでドキドキしている

シーザリオちゃん 牝3
15話もやってきて初の牝馬
パッパはスペシャルウィークさん
カネヒキリくん・ヴァーミリアンと同厩舎
一見穏やかのんびり娘に見えるが、
レースとなるとちょっとオラついた性格になってしまうお茶目な一面も
今回が初併せ馬だったが、相性が良かったので今後の回数が増える(確定)

ヴァーミリアンさん 牡3
この時点では「まだ」芝でいい成績を出している
相変わらず会うたびに主人公に性癖の圧を掛けている
弥生賞に帯同しようとしたがお前はスプリングSに出るのだ!された

カネヒキリくん 牡3
今回名前だけ登場
その目に映るのは7月13日ジャパンダートダービーただひとつ
目指せ、砂の王者!!
主人公には3日に1度会いに行く
会いすぎでは?????

本原厩舎のみなさん
ガチ(ガチ)
うちのサンジェニュインはディープインパクトにも負けない!!!!
どでかい負けフラグみたいなことを平然と言うので主人公も震えている

6/16 追記
カネヒキリくんとヴァーミリ院、間違えたヴァーミリアンを同厩舎としていたんですけど、これ完全作者の頭の中で一緒になってただけで史実は別厩舎です。
感情のままに書くとアカン、それがよくわかるミスでしたわね……(反省)
修正したので見逃してください(懇願)

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