【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話 作:SunGenuin(佐藤)
全然感想返信できてなくて申し訳ない……その内ちゃんと返信するから許して……
タイトルは「サミダレ」ではなく「サツキアメ」
ここ作者の妙なこだわり!!
6/16 追記
ヴァーミリアンの血統のところで名前を挙げた菊花賞馬ソングオブウインドさんですが、勝ったのが2006年で思いっきり未来の話だったので修正しました。
メッセージをくださった方、ありがとうございました!!
『生きてる~~!!よかった~~!!』
冒頭の台詞を浴びせられたのは今日だけで23回目。
誰に浴びせられているかって?
すれ違う馬全頭にだよ……!
「なんか今日は一段と他の馬が寄ってくるねサンちゃん」
ちょっと疲れ気味にそう言ったのはイサノちゃん。
それもそのはず、さっきから一歩進んでは絡まれ、一歩進んでは絡まれの繰り返しをしているからだ。
疲れるよね、本当にごめん。
でも俺にはどうしようもないんだ。
「今までみたいにサンジェニュインに興奮して、と言う感じではないみたいだけどな」
「そうですね……牡馬だけじゃなくて牝馬もいましたし。うーん、どちらかと言うと久々に会った仲間、みたいな」
「そうそう。みんなサンジェニュインの周りを一周していくし、案外体調を心配してたり、なんてな」
冗談めかして言う目黒さん。
それ大正解なんだよなあ……!
まさか俺が弥生賞で気絶した話が最悪の伝言ゲームで栗東の馬たちに広がるとは。
バリエーションは多岐に渡るけど、一番多かったのは「粉砕骨折からの引退、種牡馬入りのはずが行方不明」で、次点で多かったのは「レース後に死亡」だったな。
いや死亡て。どんだけ尾びれ背びれ着いたんだよその伝言ゲームは。
「だが他の馬たちでこんな調子なら……ヴァーミリアン号が中山に行っていて良かったな」
「ああ……いたら確実に、そうですね」
言葉にはしないが明らかにやべえやつ扱いしている目黒さんとイサノちゃん。
おいヴァーミリアン、お前厩務員たちからもなんかヤバイやつ扱いされてるぞ……!!
アイツは俺を前にするとこの美貌に対して異様にテンションが上がっちゃうだけで、カネヒキリくんの話によると気性はちょっと荒いけど調教には従順だし、根はすごい真面目な馬らしいんだよ。
だからあんまりヤバイ馬扱いを……ていうかなんで俺がヴァーミリアンの弁明してるんだ。
普段は俺が「かわいくってごめんなさいと言え!」とか「このエンジェルちゃんが!」って罵られてんだぞ。
……ん?罵られてるか?
いいやなんかアイツのこと考えるとヘンな深みにハマりそうだ。
さて調教を再開してから1週間が経った。
時の流れが速くてキレそうだが、今日は3月20日、スプリングステークス当日である。
出走予定ではあったが、まあ大事を取ってスプリングステークスは回避することになった。
俺はすこぶる元気だったのだが、テキが大変に嫌がったのだ。
「元気な姿を見せるのは皐月賞の時でいい」
そう言ってサイレンスレーシングのお偉いさんを退けてしまった。
お偉いさん方としてはスプリングステークスに出走させて「サンジェニュインは元気です!大丈夫です!」をやりたかったんだろうけど。
テキがあんまりにも凄むので、すごすごと退散していった。
すげえなテキ。
「千葉の方は雨だって聞いたけど、大丈夫ですかね」
「中山は曇りのようだぞ。高山さんから電話貰ったんだが、今のとこ良馬場の見込みらしい」
今日のスプリングステークスにはヴァーミリアンが出走している。
ここ栗東から中山までは距離があるので、昨日のうちに中山競馬場に入厩済みだそうだ。
実はヴァーミリアンとは弥生賞の前に行った併せ馬以降、一度も会っていない。
カネヒキリくん伝手に調教を頑張っていることと、俺のトンデモ話をほかの馬にも広めたことしか聞いてないのだ。
後半に関しては今度併せ馬する時にとっちめる予定だが、かなり心配そうにしていたと聞いたので、軽く体当たりする程度でおさめてやろうと思う。
確かに伝言ゲームは最悪だったが、元をたどればディープインパクトが途切れ途切れに伝えたのも悪いので。
そうそう、牡馬に広めたのはヴァーミリアンだけど牝馬に広めたのはシーザリオちゃんらしい。
……シーザリオちゃん!?!?
今度の併せ馬、3頭でやる必要があるみたいだな。
この伝言ゲーム下手くそなヴァーミリアンだが、目黒さん曰くちょっとガレてたとか。
ちなみに「ガレる」っていうのは「痩せてる」って意味。
前より馬体重が減って、調子はあんまり良くないようだ。
「ここまで全戦芝だが成績は悪くない。ただ昨年末のレースから馬体重も減ってるし出走期間も空いたから、そこらへんがどう響くかだな」
「ヴァーミリアンの血統的にはダート・芝どちらにも利きそうなんですよね?」
「そうだな。芝で走れることはすでに本馬が見せているし、母の方だと半兄のサカラートはダートで活躍した馬だよ」
飼い葉を貪りながら話を聞く。
最近やたらと草が美味いので食べ過ぎてしまうのだが、俺も出走まで後2週間くらいになったのでそろそろセーブしないとな。
「馬体重や輸送もまあ心配ではあるんだが、鞍上もなあ」
「乗り替わりがあったんでしたっけ」
「ああ。今まで乗ってた竹騎手から南村騎手に変わったんだよ」
乗り替わり。
俺はしたことないけど、人気の騎手を乗せている馬には度々あるらしい。
例えばディープインパクトの鞍上も竹騎手だが、この竹騎手はディープインパクト専属の騎手というわけではなく、今回のヴァーミリアンや俺の大親友・カネヒキリくんにも乗っているのだ。
仮にディープインパクトとカネヒキリくんが同じレースに出走する場合は、どちらかの騎手を変える必要がある。
これを「騎手の乗り替わり」と言うんだそう。
今回どっかで被ってしまったんだろうか?
普段は会うたび俺に性癖プロレスをしかけてくるヴァーミリアンだが、あれでちょっと繊細なところもあるのだ。
レースで怪我とかしなければいいけど……。
「よし、馬体もキレイになったぞ、サンジェニュイン」
お、ブラッシング終わりか。
いつもツヤツヤにしてくれてサンクス目黒さん!
「もう大丈夫ですか?」
「ああ、連れてっていいよ」
芝木くんじゃん。
中にも入らずにどうしたんだ。
いつもならブラッシング代わりますって言ってやってくれるのに。
馬房の扉を開けて貰い、手綱を引かれるより先に前に出る。
芝木くんの前に立つと、表情がいつもより冴えない気がしたけど気のせいだろうか。
だがそう思ったのは俺だけじゃないらしい。
芝木くんが来るといつも目黒さんの影に隠れてしまうイサノちゃんが、かなり心配そうな顔で芝木くんの顔を覗き込んだ。
「し、芝木さん……?」
「……うん?」
「元気ないですけど、また馬主から何か言われたんじゃ……」
馬主?
俺のか?
「あー……まあ、仕方ないことです」
「いや芝木くん、あれは芝木くんだけが悪いわけじゃないよ。テキもそう言っているだろう?」
「そう言っていただけるのは嬉しいんですけど……あの時、コース取りを間違えたなとは、思うんですやっぱり」
ああ、弥生賞でのことか。
芝木くん、アレは俺が力みすぎた結果の自業自得なんだよ。
そもそも俺がちゃんとゲートから抜けて先頭が取れてればなあ。
体力消耗したのも、中団につけた後にどうしても前へ行きたくて上手く折り合いが取れなかったせいだし。
コース取り自体は、芝木くんは俺を内に寄せて徐々にあげていこうとしたんだろ?
それを無視してぐいぐい前に引っ張った俺が悪いわな、うん。
だから気にするなよ芝木くん。
俺はいまピンピンだしさ、むしろ中団から差し返す脚が自分にあるんだと知れたから結果オーライみたいなところがある。
最悪飲み込まれても逃げ出せるってのが解ったのは大きいんだぞ?
主に精神の安定的な意味でな!
失うものはあったけど、得るものもあったってことだ。
ほれ芝木くん、顔をあげて。さ、俺に乗って乗って!
今日も元気に調教だぞ!
「……サンジェ。お前は本当に優しい馬だな」
もー、そんなこと……ある!なんてな。
はい手綱持って、テキんとこに行くぞ!
「……皐月賞も、お前に乗りたかったよ」
あん?乗るんだろ何言ってんだ。
そんな芝木くんは俺に乗れないみたいな……乗らないの?
「芝木くん」
「テキには、俺が主戦騎手だと言っては貰えました。けど、誰がサンジェの背中に乗るか、それを決めるのは馬主です。サイレンスレーシングです。俺は……皐月も、ダービーも、その後も、コイツの背には……」
そう言って俺の首筋に顔を押しつける芝木くん。
声は震えて、言葉は途切れ途切れで。
詰まった息は冗談には思えなくて。
それで。
俺の周りだけ、雨みたい。
2005年3月20日 中山11R フジTVスプリングステークス GⅡ 芝1800メートル
「なかなか雲は晴れませんが中山競馬場11R、良馬場の発表となりました。フジTVスプリングステークスGⅡを争うのは16頭。1番人気はペールギュントです。前走シンザン記念は1番人気に応えて見事1着。本レースでも好走を期待されています」
「体重はマイナス6キロですが馬体は堂々としていてトモの張りも良いように見えます。ここまでの全レースですべて馬券圏内に絡んでいますし、当然の1番人気と言えるのではないでしょうか」
「続いて2番人気は前走から3ヶ月経って久しぶりのレースとなりました、ヴァーミリアン。デビューから乗っていた竹騎手がトップガンジョーに騎乗しているため、本日は南村騎手に鞍上が代わっています」
「ラジオたんぱ杯2歳ステークスでは2着に1馬身差です。先行につけることができればまず外れないでしょう。気になるのは前走から3ヶ月経って馬体重がマイナス8キロ。ややガレているように見える点と、落ち着きのなさ。鞍上が替わった影響でしょうか」
「3番人気にはパリブレストが押されました。デビューは12月とやや遅めですが、クロッカスステークスと続いて2連勝。ここを勝って無敗で皐月に駒を進めて見せると陣営も自信を見せています」
「勝ち鞍は1600と1400なので距離が気になる点かもしれませんが、母父スペシャルウィークはダービー馬、距離適性は問題ないでしょう。この馬もやや先行で攻める戦法ですから、レースでは位置取りに注目したいですね。期待の1頭です」
ファンファーレが鳴り響き、振り落とされた旗を合図に、青々とした芝の上を馬たちが疾走していく。
マイクを握る実況の声は熱さを孕んで競馬場を包み、馬たちがゴール板を踏み越すその直前に、馬券の嵐として舞い踊った。
1着:ダンスインザモア
2着:ウインクルセイド
3着:トップガンジョー
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14着:ヴァーミリアン
2005年4月17日 中山11R 第65回皐月賞 GⅠ 芝右回り2000メートル
「晴れ渡るような青空が中山競馬場を包みます。いよいよクラシック第1戦、皐月賞です。早速本レースに出走する有望な3歳馬たちを紹介していきましょう」
軽快なアナウンサーの声をバックに、一生に1度の大舞台を迎えた3歳馬たちが手綱を引かれて歩く。
1頭1頭、この日のためだけに生産者、調教師、厩務員、そして騎手に並々ならぬ情熱を注がれて生きてきた。
続く道は灼熱のダービー、大輪の菊花賞。
目指すは三冠、すべての冠を頭上に戴く── 最強の馬。
「──……これまで4戦2勝2敗、負けた相手はただ1頭。その1頭もまた、この競馬場にいる。鞍上はこれまでを共にした
白い馬体がターフに躍り出る。
その瞬間に競馬場を包んだ歓声は、口伝で、文字で、動画で。
あらゆる媒体で後世に残るほど大きく、大きく響き渡った。
「──……7枠14番、ここまで圧倒的な強さを見せつけ、無敗で駒を進めました。最後方から魅せる鬼の末脚。すべてを追い抜いた後、伸びる影を踏める馬はただ1頭。その1頭と勝負をしに来たのだと鞍上の
頭上から照りつける太陽が、鹿毛の馬体を金色に縁取る。
まるでこれこそ運命の馬。
この馬こそがレースを制するのだと言わんばかりに光り輝いていた。
完璧にも思えるその姿には、走る前から結果が見えているようにさえ思えた。
それは「サンデーサイレンス産駒VSサンデーサイレンス産駒」の、見飽きたレースになるはずだった。
この十数年、競馬界に強く根を張ったその存在。
またこいつの産駒か。
またこの産駒同士の戦いか。
零れるため息。やるせなさ。それを上回る「つまらない」と言う感情。
ブラッドスポーツと言えばそれがすべてだ。
しかし遠のく客足はなかなか戻らない。つまらない、と言う感情には打ち勝てない。
そのはずだったのに。
鹿毛のサンデーサイレンスと、白毛のサンデーサイレンスの戦い。
2005年4月17日、中山競馬場は、熱かった。
レースの前説はオリジナルです(爆死)
誰か競馬実況の資料書籍とか知ってたらメッセージくださいお願いですなんでもするから(なんでもするとは言ってない)
ちなみにスプリングステータス、皐月賞は下記サイトのデータをベースとしています。
フジTVスプリングステータス
https://db.netkeiba.com/race/200506020811/
第65回皐月賞
https://db.netkeiba.com/race/200506030811/
皐月賞の本番は「13.夢想 - 第65回皐月賞」です。
競走馬回を掲示板含めて5回やったので、次回はウマ娘回に入ります。
のでこの続きは明後日くらいです。
サンジェニュイン 牡3
いざゆかんクラシック
想像以上に栗東の馬たちに下手くそ伝言ゲームが広がっていた
カネヒキリくん 牡3
3日に1回が2日に1回になった
主人公が元気だってわかったので飼い葉食いもすっかり元通り
ヴァーミリアン 牡3
まだ主人公と再会できていないことでとんでもないことになってる
芝で初の大敗を喫してしょんぼり
ディープインパクトさん 牡3
皐月賞で再会
次回(明後日)ゲート前でひと悶着……?
芝木くん ヒト族 男
とんでもねえ……とんでもねえことになったぞ……
竹さん ヒト族 男
サンジェニュインがちゃんと皐月賞に出てきてホッとした
完全素人ニキの愛馬名アンケート
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サニードリームデイ
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サンシカカタン
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タイヨウノムスコ
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タイヨウハノボル
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ブライトサニーデイ
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ラブディアホワイト