【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話   作:SunGenuin(佐藤)

21 / 79
感想&ブクマ&評価&誤字脱字報告、サンクスサンクス~~!!!!
※ちょっと誤字脱字対応遅れてます少々お待ちを

更新できず申し訳ない。

顎、痛すぎちゃってどおしよっ!ふじ~さふぁりぱーくっ!!って感じの日々を過ごしていました。
日々だけに顎にヒビが入ってました(ドッカンドッカン)
とはいえ今は元気です。

皐月賞・日本ダービーの被害馬紹介は一緒にやった方がいい(出走馬の被りが多い)と思ったので日本ダービーの後に被害馬紹介やります。
今回は本番レース、違った番外編レースという名のゴール後の爆走と前日入りの話と走りきった後の話です(いろいろ混ぜすぎぃ!)


14.戦いの後に ─ 裏・皐月賞

栗東から中山競馬場までは距離がある。

ので、栗東所属の馬が中山競馬場などの関東のレースに出走するときは、前日入りと呼ばれるレース1日前の入厩が基本だ。

GⅠクラスの大レースともなれば、2,3日前には入厩し、中山競馬場に馬を馴れさせる、ということが行われる。

俺は比較的移動を苦にしないタイプの馬なので、今回も本番1日前── 前日入りという形で入厩することになった。

 

皐月賞前日、中山競馬場出張馬房に脚を踏み入れたのは4月16日の夕方のことだった。

 

『あああああ生きてるよかったああああ!!!!』

 

出オチである。

 

『この天使ちゃんがあ……脚痛くないか身体辛くないか元気か無事かあ!?!?』

『うわうるさっ』

『無事ならちょっと跳んでみろいややっぱりやめろ安静にしてろ健康でいろ!!!!』

 

重症である。

無事を確かめられている俺よりもお前の方が大丈夫かヴァーミリアン。

 

『ひっぐ……おお……お前生きててよかった……!』

 

そんなことを嘶きながら泣き出すので、側にいたヴァーミリアンの厩務員がギョッとした顔でタオルを取りに行ってしまった。

待って、俺と目黒さんを置いていくなヴァーミリアンの厩務員……!

ヒィンヒィン鳴き続けているヴァーミリアンに、さすがの目黒さんもドン引きである。

わかる、俺が姿見せた瞬間に跳ね上がって首ズボッて出してきたしな。

ヴァーミリアンの馬房前を通り過ぎて、その隣の部屋に入った。うーん、厩舎よりちょびっとだけ狭いか。

用意された水桶に頭を突っ込みつつ、横目でヴァーミリアンを見る。

ちょっと痩せたか?

限界までこっちに首を伸ばそうとしてるのでそろそろ首痛めそうだな、と水桶から頭を上げた。

もうそれ以上はやめろ、俺が首を伸ばすから。

 

『体力使い切って気絶しただけだって……おおげさだなあ』

 

俺がそう思ってのんびり口にすると、ヴァーミリアンがカッと目を見開いた。

 

『おおげさなわけあるか!!あの、あの他馬よりも神経図太くて何事にも動じない── というか感情あるのか定かでないディープインパクトが、声を震わせながらお前が倒れただ起き上がらないだボソボソ言うんだぞ!?あの他馬に一切興味のない走り屋ディープがだぞ!?』

 

めちゃくちゃ悪口じゃん。

ディープインパクトそんなに他馬に興味ないか?

俺と会うときいつもガン見だしケツ見てくるしすごい鼻息荒いし興味津々では?

 

『あいつ、走れればそれでいいみたいなとこあるし……感情が無いは言い過ぎた。自分より前に他馬がいると苛ついて追い抜くくらいの感情はある』

 

逆にそれ以外の感情はないみたいな言い方やめろ。

いや知らんけど、俺ディープインパクトとは一回も話したことないからわからんけど。

 

『まあディープはガキの頃から母馬とか周りの馬どもに【勝つためだけ】にっていろいろ── いやディープの話はいいんだよ!お前、本当に身体は大丈夫なのか?走れるのか?』

『問題ないってば。すごい元気だし、明日勝つのは俺だからな!!』

『胸を張るな可愛いなクソッ!まあ勝つのは俺様だがな!!』

 

キレながら褒めるの本当に器用なやつ~~!

急にテンションが上がったのかフンフンと鼻息を荒くするヴァーミリアン。

そういや、ヴァーミリアンとレースで走るのは初めてだ。

よく併せ馬はするけど、お互いの騎手乗せて競り合い、はしったことなかったしなあ。

追い切りはヴァーミリアンはディープインパクトとやってるし、俺は今回の追い切りは年上の牝馬とやった。

カネヒキリくんはダートだし、シーザリオちゃんは桜花賞があったし。

柴畑さんは「ヴァーミリアンは先行に着くと好走する」って言ってたから、レースでは先頭争いすることになるかもしれない。

いくらよく会う仲間だからって油断してたら負けちゃう。

俺は気を引き締めるべく、飼い葉の入った桶に顔を突っ込んだ。

 

うめえ!!

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

皐月賞当日、寝不足である。

 

『調子悪いのか、どこか痛いのか、人間どもに知らせるか!?』

『いいから……そういうのいいから声のボリューム落とせ……』

 

寝不足の理由は言わずもがな、このヴァーミリアンと、それから近くの部屋に入っていた馬たちである。

 

『寝てるのに起こすなよお……』

『お前が寝過ぎなんだよ!大体他の馬が起きる時間にまだ横になってれば気になるだろ!』

 

解せぬ。

寝入って30分も経たずに起き上がるってなに?

30分寝る、起こされて15分くらい馬房の中でウロウロ、また寝入って30分で起こされて、を朝日が昇るまで繰り返されたんだぞ。

あんまり寝た気がしない。

思わず大きく口を開けてあくびをすると、横から熱い視線を感じた。

 

『……ヴァーミリアンはうるさいけど、お前はお前でなんか言えよ── ディープインパクト』

 

出張馬房にはもちろんディープインパクトもいて、朝、部屋から出された時からずっと俺の横にピタリとつけている。

パドック回るために手綱を引かれた時なんか、エッお前そんなに暴れる!?ってくらい暴れてたが、視界から俺が消えた瞬間大人しくなったらしい。

まあパドック回り終えていざ返し馬、の今、また真横に張り付かれているわけだが。

すごいぞ、俺の姿を確認した瞬間、鞍上の制止振り切って走ってきたからな。

 

「うぅん、サンジェニュイン、本当に牡馬に好かれるというか」

 

そういや柴畑さんがいるときはいつも牝馬と走ってたから初見なのか。

いや、前走も一緒だったから見てはいたけど、俺の鞍上から見るのが初めてなんだな。

やばいだろ?モテすぎてこまっちゃう~!とかそういう次元じゃないからなコレ。

俺の左右に張り付くヴァーミリアンとディープインパクトをちらりと見つつ、あくまで気にしていないように振る舞う。

反応なんて返したら逆にひどいことになりそうだし……堂々としていた方が柴畑さんも落ち着くだろうしな!

俺はグッと首をあげてひたすら前を向いた。

遙か向こう側、視線に収めるべきはゴール板ただひとつ── だからそう、俺の目に、フルオッス!なオッスなど映っていない!

映ってないったら映ってない!!!!

 

『はぁ……はぁ……かわいい……』

『顔が圧倒的に可愛い……近づきたい……ハァ……ハァ……』

 

ヒィン……!!!!

 

絶対にレースは逃げ切ってやる。

俺は決意を新たにゲートに向かって脚を動かした。

決して怖くて逃げたわけではない。

これは戦略的逃げだ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『ばかばかばかああああああ!!!!!来るなってばあああああ!!!!!』

 

ゴール板を並んで通過したあと、俺は脚にさらに力を入れて大地を蹴り続けた。

目指すゴールなどない。

ただ脚を止めるわけにはいかない。

男には、俺には、絶対に負けられない戦いがあるのだ。

 

『ああああああうまだっちされちゃううううう!!!!!なんでまだ走れるんだよばかあああ!!!!!』

 

続々と落ちていく他の馬を横目に、一切スピードが落ちないディープインパクトには恐怖しかない。

なんでお前まだ走れてるんだ。

スタミナも化け物なんですか?

躓いたくせにすっげえ勢いで追い上げてきて、今回もゴール前で競り合いになった。

ハイハイどうせまたハナ差!!どうせ俺の負けだろ!!

うぎぎ、ぐやじいい!!!!

 

追いかけられている恐怖と悔しさで涙が止まらん。

走りながらでも泣いているのがわかるのか、柴畑さんが俺の首を撫でて宥めようとする。

すまんな柴畑さん勝てなくて……柴畑さんクラシックレースでまだ勝ったことないって言ってたのに。

この3週間、俺に必死に向き合ってくれた柴畑さんを勝たせたかったけど、また負けちゃった。

ぼたぼた泣きながら走っているうちに、だんだんと疲れが押し寄せてきてスピードが落ちる。

ずっと追走してきていたディープインパクトが脚を止めたのが見えたため、さらに100メートル走ったところで俺も脚を止めた。

 

「やあっと止まったか……サンジェニュイン、すごい走ったな……」

 

付き合わせてごめんな柴畑さん。

結局勝てなかったし……アナウンス聞くとまだ審議中みたいだけど、前2回ともハナ差負けだったし、今回も差し切れた気がしないし。

また負けちゃったよ……今回結構いけると思ったのに。

そりゃ途中でコーナーうまく曲がれなくて柴畑さん落としそうになったけどさあ……。

あのロスがなければ先着できてたかも……そう思うとさらに悔しさが募る。

今日はいつもより身体が軽かった。

ここ最近調子がいいっていうのもあるけど、物理的に軽かった。

馬体重はむしろ増えたのになんでだろうって思ったが、鞍上の柴畑さんが芝木くんよりも軽いからだ。

出だしからあんまりパワー使わずにスイスイ先頭走れたし、柴畑さんが上手いポジション取りをしてくれたおかげで途中までかなり余力を持てた。

ただまさか、その【軽さ】がコーナーカーブで仇になるなんて。

 

俺はもともとパワーがある方で、馬体の大きさもあって走るときは前のめりになりやすい。

スピードもガンガンでるけど調節が上手くないから、コーナーに差し掛かった時に減速して曲がる、っていうのが苦手だった。

けど今までレースでコーナーカーブを苦に感じたことはない。

何故なら今までのレース、曲がるときは芝木くんの【重み】がブレーキになっていたから。

今回その重みがなかったことで、コーナーで勢いを殺せなくて体勢がブレた上、柴畑さんを落としそうになった。

結果、柴畑さんの騎乗が上手かったことで落とさず、俺も芝とこんにちはすることなく完走できたわけだが。

 

あんなに調教頑張ったのに。

ディープインパクトなんて躓いて出遅れだし、これは俺、さすがに勝ったでしょ、って慢心したのがダメだった。

反省。大反省だ。

俺は申し訳なさから首を下げつつ、柴畑さんに背中を撫でられながら検量室に戻ろうとした。

戻ろうと振り返って、思わず柴畑さんを落とした。

 

『アイエエ!?ディープ!?ディープなんで!?』

 

俺から100メートル後ろで止まったはずのディープインパクトが真後ろにいた。

な、なにを言っているかわからねーと思うが、俺が一番わかってない。

驚きで腰から力が抜け、芝にごろんと寝転がった。

 

ひ、ヒェ……なんでここにいるんだよお……!

 

「サンジェニュインどうした、どこか痛いのか!?腰か、脚か、ちょっと待ってろ、馬運車呼んできてやるからな」

 

いや待って待って怪我してない怪我してない、腰抜かしただけだから!

咄嗟に柴畑さんの袖を食んで引き留める。

本当にマジでどこも痛くない。ビックリしただけだからと目で訴え続ける。

そうやって俺が柴畑さんと目を合わせている間にも、ディープインパクトが俺の腹をつっついたりグリグリ頭を押し付けてくる。

やめろばかばかばか、腹をぷにぷにするな匂いを嗅ぐなあ!!

 

……あ、鞍上振り落とした。

 

「うわ、大丈夫か、(はじめ)

「は、はい……あっ、ディープ!」

 

ディープインパクトの鞍上が慌てて綱を持とうとするも時すでに遅し。

 

その後、俺が立ち上がるまでの数分間、ディープインパクトは真横で寝転がりながら俺をガン見していた。

しばらくして【同着】のアナウンスが響くと、柴畑さんとディープインパクトの鞍上── 竹騎手が笑顔で握手を交わす。

GⅠでの、それもクラシックでの同着優勝は史上初らしく、競馬場は熱い歓声に包まれた。

 

……俺も熱い視線に絡まれていた。

何度手綱を引いても離れようとしないため、勝利会見も2頭並んで行うことになり、双方の関係者がウィナーズサークルに会すると、あたりからは小さく歓声が上がった。

互いの馬主(俺のは一口さん代表)が苦笑いを浮かべる中、2頭の皐月賞馬として未来永劫競馬史に刻まれるだろうワンシーンのため、俺は視線に焼かれながらもキメ顔をカメラに向けた。

 

後日、皐月賞の特集記事を目黒さんに見せてもらうと、【視線が逸らせない!?ディープインパクトの熱視線とクールなサンジェニュイン】と題して俺をガン見するディープインパクトと目が死んでる俺のツーショットが掲載されていた。

こんなのが競馬史に残るなんて嘘だ……涙が止まらん。

ヒィン……!!

 

 

 

 

 

 

 

「え?どういうことですか、テキ」

 

皐月賞から2日開けた朝。

昨日は丸一日マスメディアの対応に追われ、騒がしかった厩舎も一時の静けさを取り戻していた。

というか無理やり取り戻した。

無理に取材を受けて馬の── 俺の体調が崩れてレースに不利が出たら責任取れんのか、いずれ億単位になるかもしれない馬だぞ、とテキが遠回しに伝えたところ日程が延期になったのだ。

テキすげえ!!!!そして俺の価値上がりすぎィ!?!?

 

まあ同着とはいえGⅠ勝ったしな。

JRA史上初のクラシック同着ってのもそうだけど、俺自身が白毛初のGⅠ馬なのでそれ関連でも価値が上がったのかもしれない。

競馬に詳しくない層への受けもいいらしくて、俺の生まれ牧場では早速「サンジェニュインソフト」としてソフトクリームが売られているらしい。

あとぬいぐるみやストラップも生産予定だとか。

商魂に熱くて何よりだわ。

そのうち俺の名前のついたパチモンまで作られそう、なんてな。

 

いろいろ未来に思いを馳せつつ水桶に頭を突っ込んでいると、目黒さんから困惑したような声が聞こえた。

話し相手はテキのようだ。

ちなみにイサノちゃんはおつかいに出ている。

 

「うぅん……JRAからな、サンジェの馬体検査を行う、と」

「馬体検査って……薬を疑われてるんですか?」

 

薬、とな?

水桶から頭を出して、それとなく耳を目黒さんたちに向ける。

俺の馬体検査の話から、なぜ薬に飛ぶのか。

 

「いやいや、薬じゃなくてな。……皐月賞での、ほら、他馬が馬っけだした件で」

「ああ……え、あれが、うちのサンジェニュインに関連したものだと?そんな断定的な、いや、この短期間で話が来るってことは、複数意見が上がったってことですか」

 

馬っ気……うっ、頭が。

フルオッスした牡馬どもの姿は記憶に新しいが、フルオッスしてても皐月賞は全頭真面目に走っていた。

残念ながら掲示板入りを逃したヴァーミリアンとて、普段は俺のケツを追っかけたりしているがレースでは真剣そのもの、俺がゲート入りした後は落ち着きだって見せていたし。

 

「まあそうだろうね。まさかうちのサンジェやヴァーミリアン、ディープインパクト以外の全頭が馬っけを出すとは……」

 

俺のせいじゃないけど俺のせいなんだよな、すまんなんか。

いややっぱり俺のせいじゃない。

全部神が悪いわ。

 

「馬体検査って言っても、うちのサンジェニュイン、どう見ても牡馬ですけど……」

「そうなんだが……牝馬が出すフェロモンを疑似的に出せてしまうのでは、とかなんとか、とにかく検査したいと。日本ダービーでも皐月のようなことがあっちゃ堪らんだろうし」

 

日本ダービーは3歳馬の頂点を決める大レースらしい。

皐月賞同様、一生に一度の大舞台で、愛馬がフルオッスしてる姿なんて誰もみたくないだろう。

俺もそんな大レースでほかの馬がフルオッスしてる姿を見たくない。

これは神によってつけられた呪いのようなものだが、もし科学的にどうこうできるなら俺も精神的ストレスを軽減できる。

……いいんじゃないか?馬体検査。

 

「社来やサイレンスレーシングからはなんと」

「やむを得ないと。日本ダービーにはサンジェを憂いなく出したい気持ちもあるんだろう」

「……わかりました。サンジェニュインは知らない場所でも動揺するような馬ではないので、輸送は問題ないです。飼い葉食いも悪くないですし、体調も整った状態で検査を受けられると思います」

「うん、それじゃ日程のやり取りをしてくるよ。……サンジェ、しばらく知らないところで身体を見られたり触られたりするが、大丈夫、痛いことはないからな」

 

おっす、わかってるよテキ。

スムーズに馬体検査受けてスマートに帰ってくるからな!!

日本ダービーまでそんなに日がないし、今度こそディープインパクトに先着して見せる。

俺は決意を新たに、最近さらに美味く感じられるようになった飼い葉に頭を突っ込んだ。

 

うめえ!!!!




ここまでディープインパクトさん、無言!

※全頭オッスさせた以上、検査はやむを得ないですよねえ※

完全素人ニキの愛馬名アンケート

  • サニードリームデイ
  • サンシカカタン
  • タイヨウノムスコ
  • タイヨウハノボル
  • ブライトサニーデイ
  • ラブディアホワイト
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。