【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話   作:SunGenuin(佐藤)

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前回、2万文字超えたから1万文字と1万文字で分割して投稿したのですが、
1万8千文字になったので、8千文字と1万で分割して予約入れました。
長くなって申し訳ない。

10/23 24時に73話「44.駆け抜ける ─ 第51回有馬記念」
10/24 22時に74話「閑話 掲示板回 Ep-final」
の更新予約済みです。


43.再会を祈る

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【第51回有馬記念】3枠4番ディープインパクト、サンジェニュインは8枠15番に

 24日に中山競馬場で行われる第51回有馬記念(3歳以上・牡牝・GⅠ・芝2500m)の枠順が21日に確定した。

 

 天皇賞・秋、ジャパンカップを制し、GⅠ・7勝目を目指すディープインパクト(牡4、栗東・沼江琢郎厩舎)は3枠4番に、欧州GⅠ・5勝、日本馬初の凱旋門賞を制したサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)は8枠15番からGⅠ・9勝目を目指す。

 そのほか、マイルCSを制したダイワメジャー、メルボルンカップ制覇のデルタブルース、2着入線のポップロック、JC2着のドリームパスポートや、2006年クラシック二冠のメイショウサムソンら、有力馬が脚を揃えた。

 

 ファン投票は前年の第50回有馬記念の有効票数「1,951,473票」を上回り、総計「1,960,058票」となった。日本初の凱旋門賞制覇などの話題が、投票への追い風になったと見られる。

 うち、約18万票をサンジェニュインが、約16万票をディープインパクトが獲得している。サンジェニュインの獲得票数は、平成元年にオグリキャップが記録した約19万票に次ぐ、歴代2位の記録だ。

 

 出走15頭の枠順は以下の通り。

 

枠順 馬番 競走馬名牡/牝 年齢

1
1 ポップロック 5

2
2 デルタブルース 5

2
3 ドリームパスポート 3

3
4 ディープインパクト 4

3
5 ダイワメジャー 5

4
6 スイープトウショウ 5

4
7 コスモバルク 5

5
8 メイショウサムソン 3

5
9 トウショウナイト 5

6
10 アドマイヤメイン 3

6
11 スウィフトカレント 5

7
12 アドマイヤフジ 4

7
13 ウインジェネラーレ 6

8
14 トーセンシャナオー 3

8
15 サンジェニュイン 4

 

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サンジェニュイン快調 2年連続の有馬記念制覇へ 上がり3F=33秒

 心房細動によりジャパンカップを回避していた凱旋門賞馬・サンジェニュインが、12月2日に公開調教を行った。管理する本原佳己厩舎によると、飼い葉食いにも問題はなく、歩様にも支障はないとのことで、有馬記念には予定通り出走となる・・・

サンジェニュインの初年度種付け料・1500万円の予定

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凱旋門賞馬・サンジェニュインの半弟・アセンドトゥザサンが入厩

 11月5日、栗東の本原佳己厩舎に、サンジェニュインの半弟・アセンドトゥザサン(父・クロフネ、牡、1歳)が入厩した。半兄のサンジェニュイン同様、早期入厩となる。翌年夏の2歳新馬戦を目指して調教中で、主戦は兄同様、芝木真白騎手と・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは11月30日。

ジャパンカップが終了して4日後のことだった。

 

『ハーツクライさん!ハーツクライさんお久しぶりです!!』

 

いつもより早めに調教を切り上げると、俺は目黒さんに導かれる形で、ハーツクライさんとキングジョージ以来の再会を果たした。

ジャパンカップでは、序盤は上手くコース取りして走っていたハーツクライさんだが、調子が余り良くなかったのか、終盤では思うように進まず10着。

目黒さん曰く、やはり喉ナリがキツいらしく、ジャパンカップを最後に引退することが正式に決定。11月30日の今日、ここ、栗東を出ると聞いていた。

年内ならまだ会うチャンスはあるだろう、と思っていたが、想像していたよりも早い引退に、もうハーツクライさんに会えるチャンスは今しかないと無理矢理連れていって貰った。

馬運車を前に、大勢の関係者に囲まれているハーツクライさんは、キングジョージで会った時よりは元気そうに見えた。

 

『サンジェニュイン!……無事か』

『めちゃめちゃ無事っすよ~!ほら、脚の怪我もすっかり!ピンピンしてます!』

 

その場でポンポンと跳ねて見せると、ハーツクライさんはホッと安堵したような表情を見せた。

やっぱり心配を掛けていたらしい。

いつもより鬣を噛む力も弱く、右脚は念入りにチェックされた。

 

『ハーツクライさん、実家に帰るんすね』

『それはどうだろう。ユートピアのように、実家ではないところで過ごすことになるかもしれないが』

『ああ……そっか……』

 

ハーツクライさんのトモダチであるユートピアさんは、あのドバイの後、あちらのセレブに金銭トレードされたらしく、今は海外にいるようだ。

前にテキに聞いた話では、現役引退後── つまりは種牡馬入りなのだが、それも海外になるらしい。

ユートピアさんは実家、産まれ牧場に帰る予定はないそうだ。

でも向こうのスタッフに大事にされているようだと、イサノちゃんがネット記事に載っていた写真を見せてくれたのは、今年の夏。

確かに元気そうなユートピアさんが、厳ついおっちゃんたちに囲まれて堂々と立っていた。

 

ハーツクライさんは、自分もユートピアさんのようになる可能性があるのではないかと思ってるみたいだった。

そういや前、目黒さんが「ハーツクライ号の繋養先はまだ発表されていない」って言ってたっけな。

 

『……サンジェニュイン』

『はい』

 

俺の鬣をやわやわと噛んでいたハーツクライさんが、真剣そうな声色で俺の名前を呼んだ。

 

『おそらく、私たちが会うのはこれが最後になるだろう』

『ハーツクライさん……』

『ヒトの声色から、決して悪いことにはならないだろうと思っているが、こればかりは私たちにはどうにもならないことだ』

 

そう、俺たちは経済動物。

ヒトの夢を背負って走り、生み出す熱戦を黄金色に変える。

ヒト無しで生きていくことは叶わず、ヒトの情を頼りにしなければならない生き物だ。

故に完全な自由などない。

ハーツクライさんは純粋な馬にも拘わらず、それに対して自覚的であるようだった。

それはハーツクライさんが誰よりもヒトに愛情を感じているからこそ、汲み取れてしまった結果なのかもしれないけど。

 

『……案ずるな、サンジェニュイン。どこへ行こうとも私は変わらない。私はハーツクライ。ヒトの期待に応え、走り続けた、お前のトモダチだ』

 

その声色には、優しさだけが詰まっているようだった。

 

『さて、そろそろ時間のようだ。私の手綱を握るヒトの手が強くなってきたからな』

 

馬運車に目を向けると、扉は開き、ハーツクライさんを入れる準備が整っているようだった。

ハーツクライさんの真横でその手綱を握る厩務員が、目黒さんに一礼する。

それが、別れの合図になった。

 

『サンジェニュイン、怪我にだけは気をつけるように。長く走るためには、自分の身体こそを第一に考えるべきだ。何よりヒトが悲しむから』

『はい……』

 

手綱を引かれ、歩いて行くハーツクライさんに小さく頷いた。

ハーツクライさんは最後まで堂々とした歩きで、これからへの不安とか、戸惑いとか、悲しみとか、そう言ったものがまるで見えない。

驚くほど落ち着いていた。

でも。

 

『……再会を祈っている』

『ハーツクライさん……はい、はい!また会いましょう、ハーツクライさん!』

 

馬運車に乗り込む直前、再会を願う言葉を残したハーツクライさんの、目尻に光るものが涙に見えたことだけは、ずっと覚えていようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようし、どうかなサンちゃん、痛いところない?」

『ぜんぜんない~!ありがとイサノちゃん』

 

有馬記念に出走するために中山競馬場に輸送される、その前夜。

俺はイサノちゃんにマッサージをしてもらっていた。

日本に戻ってきたからと言うものの、やっぱりパンパンの和芝は脚に合わないのか、シャンティイでやっていたような調教量でやろうとすると、その2倍疲れてしまう。

脚に溜まった疲労を減らすために、こうしてイサノちゃんにマッサージをしてもらっていた。

イサノちゃんは俺と一緒に欧州に滞在している間、向こうで競走馬専門のマッサージ師に弟子入りしていたらしく、マッサージの腕が格段に上がっていた。

今日だけじゃなく、馬房でごろん、と寝転がり、時々イサノちゃんに腹を撫でられつつ、脚のメンテナンスをして貰うのが今の日課になっている。

毎晩遅くまでありがとねイサノちゃん、と感謝を込めて鼻先を押しつけると、イサノちゃんはくすぐったそうに笑った。

 

『にいちゃあん』

『ん?どうした、アン』

 

俺の隣の馬房を自室としている半弟・アン── アセンドトゥザサンが、情けない嘶きをあげた。

そう言えば今日は乗り運動だったな。

テキが「アセンドトゥザサンはちょっと硬いな」って言ってたけど、それと関連があるのだろうか。

俺が聞く姿勢になっていると、アンは弱り切ったような声色で口を開いた。

 

『にいちゃあん、はしるのつらいよお、うえにヒトがのってるのおもいよお』

『ああ……まあ、初めのうちはなれないよなあ』

 

わかるわ、と内心で同意する。

俺も初めてヒトを乗せた時は『いや重いな!なんでヒト乗せて走らないといけないんだよ』なんて思ったもんだぜ。

まあヒトがいないと走るペースとかそういうのわからないし、残念ながら当然としか言いようがないわけだが。

でもそういうのは、純粋な馬であるアンには理解できない点だ。

そもそも馬って基本、勝ち負けとか興味ないしな。

俺は論外として、ディープインパクトとかカネヒキリくんとかラインクラフトちゃんみたいな、勝ったら何かが変わる、と理解しているタイプは馬界でも珍しい部類。

ハーツクライさんみたいに、ヒトそのものに絆を感じている馬はもっと珍しいのだ。

中身ヒトの俺が言うと一切珍しい気がしないっていうのが惜しいところだけど。

 

『にいちゃんはさあ、はしるのつらくないの?』

 

アンにどう伝えたら良いかなあ、と考えているうちに、新しい質問だ。

走るのが辛くないか。

そらあもちろん。

 

『辛いよ、ハチャメチャに辛い、苦しい、今にでも走るのやめてゴロゴロしたいわ……今ゴロゴロしてるけど』

『ええ……じゃあなんではしってるの……』

 

ちょっと引いたような声色出すんじゃじゃないよ。

 

『俺が走る理由は── 辛さや苦しさを超えるほど、愛されていると思えるからだ』

 

その愛に報いるため、ヒトのため自分のため。

心に作ってもらった大きなコップに、なみなみと注がれた愛情を飲み干して、そこにまた愛を注ぐため。

 

『ことばもわからないのにぃ?』

『でも声色はわかる。優しい手はわかる』

 

イサノちゃんの手が俺の右後ろ脚を撫でる。

キングジョージで傷を負ったその右脚を、どこよりも丁寧に揉み込まれ、暖められ、触れられて。

そこから伝わるぬくもりのすべてが、愛だ。

 

『……むつかしくてわかんない』

『いいよ、今はわかんなくていい』

 

すべての馬が得られるかもわからない、その深い感情に触れるチャンスがあるだけで、俺たちはずいぶんと恵まれている。

世の中にはそれに触れることなく、人知れず虹の橋を渡る馬もいるだろう。

得たくても得られないぬくもりを、当たり前に思ってしまうことだけは、この弟にはしてほしくない。

今は理解できなくても、俺のように、ターフを去るその瞬間に思ってくれればいい。

 

あの時、兄ちゃんが言っていた優しい手はこれか、ってな。

 

『無理して愛情を感じようとしなくていい。今すぐわからなくてもいい。ただ、ここにいるヒトは本当に、心の底から本当に俺たちを愛してくれてるよ。だから、だからお前も信じたらいい』

 

走り抜いたゴールの先で、抱きしめられることを信じたらいい。

 

『ただまっすぐ走って、ただいまって言えばテキたちは笑ってくれるからな』

 

俺がそう言うと、アンはやっぱり難しいと言って嘶いた。

ハテナマークをたくさん浮かべてそうな声色を笑うと、アンが怒ったように嘶いたので、宥めるように俺も小さく嘶いてみせた。

 

『お前が走り抜いて、ただいまって言った先に俺もいるよ。……お前には見えなくなっても、遠く離れても、そこに兄ちゃんはいるから、だから走り続けろ』

 

耳を澄ませる。

もう俺1頭ぼっちではなくなった厩舎は騒がしくて、それが嬉しい。

アンは、弟は俺みたいに寂しさで1頭遊びをすることもなく、ここで仲間達と生活できるのだと思うと、ひどく安心した。

しばらく「はしるのつらい」「あしたはゴロゴロしたい」「あそびたい」と鳴いていた弟も、途中で疲れたのか、小さな寝息が聞こえる。

さっきまでうるさかったアンが鳴き止んだのでイサノちゃんが様子を見に行ってくれたが、やっぱり寝ていたようだ。

アンが寝ちゃってるから静かにやろうか、とイサノちゃんの柔らかい声色に導かれて、俺もうとうととしてきた。

 

おやすみ、サンちゃん。

 

そんな声が聞こえたような気がして、俺は夢の中でおやすみと返事をした。

 

 

 

翌日。

俺は中山競馬場に輸送されるため、馬運車の準備完了を待っていた。

イサノちゃんに念入りにマッサージをしてもらった馬体は、自分で言うのもなんだがツヤツヤピカピカ、それにいつもより身体が軽い感じがする。

無駄なコリもほぐしてくれたみたいで、今なら和芝でもレコードタイムで走破できそうだ。

つまりめっちゃ調子が良かった。

良かったのだが。

 

「うぅ……サン……元気でやれよぉ……」

『おいおい……今生の別れじゃないんだからさあ……』

「お前ね、今生の別れじゃないんだから」

 

テキとセリフ被ったわ。

 

「すみませんん……もう長くサンだけだったから、なんか感慨深くて」

「そうですよテキ。サンジェが1歳の秋から今日までずっとなんですから、俺たち感動で胸がいっぱいなんです」

「もう2年くらい、こいつだけでしたからね、うちの馬は」

 

苦笑いのテキに抗議するように声を挙げた3人の厩務員に、目黒さんも苦笑いを浮かべた。

ちょっと笑うだけで止めないのは、目黒さんにも思うところがあったのかも知れない。

イサノちゃんも少しだけ目を潤ませて、今日で最後だね、と呟いた。

 

思い返せば、ハルノメガミヨさんやガンジョウメイバ先輩が引退したのももう2年近く前なのか。

元々少なかったテキの管理馬は、いろいろとあって転厩したり、引退したりで、クラシックシーズンに入る頃には俺だけになっていた。

馬たちが複数頭いた時はもっと大勢いた厩務員たちも、管理馬が俺だけになったタイミングで他の厩舎に移動したりして、今は数人だけ。

でもたった1頭の馬の面倒を見るにはかなり多い人数だ。

俺が勝っても勝っても、今の厩務員の人数でお給料を計算すると、割と少ない方にあたると目黒さんは言っていた。

20馬房もある厩舎でただ1頭だけの管理馬で、しかもそんなにお給料も貰えない中で、全員で丁寧に俺の面倒を見てくれた。

前にアンに言った通り、1頭切りで寂しい夜もあったが、不安に感じることは今までなかった。

それは毎晩のように俺の様子を見にくれていた、みんなのおかげ。

 

「サンジェぇ……最後まで楽しく走ってこいよぉ……うぅ……っ」

「怪我だけはすんなよ~」

 

厩務員たちが俺に力を分け与えるように撫でる。

その手がいつでも暖かいことを思い出して、俺は感謝の気持ちを込めて大きく嘶いた。

 

ありがとう、厩務員のみんな。

俺、絶対、有終の美ってやつを飾ってやるからな!!

最後にみんなにどデカいお給料をプレゼントしてから実家に帰るわ。

 

「うおっ、デカい鳴き声!どうした、撫でられるのイヤだったか?」

「最後のレースなのにご機嫌ななめかよ?」

「サンジェは最後までマイペースだなあ」

 

失礼な!今いい感じの嘶きしたやろがい!

もっとこう、しんみりしてくれや。

 

「テキ、準備完了しました!」

「おお、じゃあ行こうか」

 

落ち着いて行けよ、リラックスリラックス、と厩務員たちからの声援を受け、俺は笑って嘶いた。

 

『パドックで盛大に立ち上がってやるから見てろよ!!』

 

輸送先の中山競馬場の馬房で爆睡したあと、翌日の有馬記念のパドックで俺は宣言通り立ち上がった。

目黒さんは苦笑い、テキは頭を抱えたが、芝木くんには大ウケだったらしい。

でもオッズが下がって2番人気になった。

 

ヒィン……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サンジェニュイン、お前ってやつは……」

 

いやごめんて。

でも最後だからな、なんか記憶に残ることやってやろうと思って。

今までパドックでも返し馬でも大人しかっただろ、俺。

有馬記念を見に来た何万人という観客に、サンジェニュインの最後のパドックを楽しんで貰おうと思いまして……。

というのは建前で、普通に自分がリラックスするためだ。

立ち上がった瞬間の、観客の「おお!」という声に逆にこっちがビックリしちゃったけど。

 

「……まあ、お前が楽しんでるならそれでいい。さあ、そろそろ芝木くんが来るな」

 

止まれの合図が響き、俺は顔を上げた。

真横の目黒さんは優しい顔をしている。

俺はその顔に自分の顔を擦り付けた。

 

『目黒さんと歩くパドックもこれが最後かあ』

「結局最後まで別周だったな」

『それな』

「でも、それがお前らしくて良い。……サンジェニュイン」

『ん?』

 

他の馬たちが続々と鞍上に騎手を迎え入れる中、俺は目黒さんに名前を呼ばれて首を傾げた。

目黒さんは少しだけ目尻を下げると、俺の顔を持ち上げ、メンコの太陽部分を撫でる。

 

「いままでも、これからも、お前は最高だ」

 

何度聞いても飽きない言葉が、耳の奥まで響く。

目黒さんは俺の背を押すように言葉をつなげた。

 

「最後まで楽しめよ、サンジェニュイン」

 

そして、俺の鞍上に、芝木くんが乗った。

 

「……芝木くん、サンジェニュインを頼んだよ」

「はい、目黒さん!」

「リラックスして、いつ通りの騎乗でいい。サンジェの力あるまま、芝木くんの力あるまま、ただ駆け抜けて行ってくれ」

「はい、テキ!」

 

目黒さんとテキの言葉に頷いた芝木くんが、俺の首筋をぽんぽんと撫でる。

 

「……さあ、行こうか、サンジェ!」

 

おうよ!

 

俺の手綱を揺らした芝木くんに笑う。

噛みしめるように踏み出した1歩は、それまでの何よりも重く感じた。




次回、

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残り4話で完結

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