しみじみ夏について語る話です。
夏あるある、と言い換えてもいいかもしれません。

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五月も終わりに差し掛かったこの頃。
もう初夏ですね。夏ですよ夏。




 日に日に強まっていく陽光は薄いカーテンを軽々透過して机に模様を浮かび上がらせていた。

 夏。

 もうそんな季節か。しみじみとしながらぬるいコーヒーを口に含む。

 熱々のコーヒーでは汗をかいてしまうのだ。それもまた気持ち良いのだけれど。

 茶色の液体をよく味わって嚥下し、ほう、とじじ臭い吐息をついた。

 まだ春だと思ってたんだがなあ……。

 五月ももう終わり。暦はぎりぎり春だが、そちらはどうあれ気温は初夏。

 夏だ。

 

 春と夏の境目を毎年見極めようとしているが、どうにもうまくいったためしがない。

 それもそのはず。季節という概念は人間が勝手に名付けただけの代物なのだから。

 気温は上がって下がる。動植物たちがそれに対応する。それだけの話だ。

 春夏秋冬、朝昼晩。

 人間たらいう生物が自分の気のすむように命名し、勝手にロマンを感じている。

 そんな自己中心的な営みを、自分は結構気に入っている。

 春とも夏とも言えない、どっちつかずな景色が何とも言えず好きなのだ。優柔不断な自分には性に合っているのかもしれない。

 だんだんと日差しが強まり、ぴりぴりと肌を焼く。帽子を持ってくればよかったと反省。

 公園の遊具は熱を持ち、子供たちは互いの袖をめくって日焼け具合を競い合う。

 一軒家の縁側にはござがかかり、道行く人々は長袖をめくっている。

 どこもかしこも夏めいていた。

 緑を増した樹木。焦げ茶の幹にぴちゃぴちゃと水滴がはじけ、暗く満足げな色に変わる。

 喫茶店の主人が植木に水をやるのを見ていると、なんだかのどが渇いてきた。

 堤防の上空には巨大な送電塔がそびえ、幾本もの黒い電線がわずかにたわんで川を渡っている。

 草木は茂り、空に浮かぶ白雲は規模を増し、より鮮明に位置を占めていた。ぽっかり、なんて擬音がふさわしく思えてくる。

 春に慣れた瞳には明るすぎる日光がアスファルトに照り返し、空も樹木も街並みも、すべてがぼやけているかのようだ。

 風が吹くと安心し、歩けば汗が出る。

 帰りに日焼け止めを買っていくか。ジュースも欲しい。虫よけスプレーもそろそろ。

 コンクリートの歩道は靴が心配になるほど熱く、電柱はひんやりとしている。

 季節が変わるというのは、前の季節が終わるのではなく、次の季節の匂いを感じることなのかもしれない。

 寂しいような、嬉しいような。

 最寄りのビーチの海開きはいつだろうか。

 こんなふとした思考まで変わりつつある。

 衝撃というよりは気づきに近い、穏やかな変化。なかなか悪くない、と思った。

 「……夏っぽくなってきたな」

 額の汗をぬぐいながら、深まりゆく青空を見上げた。




夏あるある、でした。
他にも夏に関する妄想幻想感傷幻影はいろいろあるのですが、ほとんど恋愛話なのでカットしました。まったく恋愛脳は困りますよね。
秋になったらまた秋に関する幻想を話にするかもしれません。

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