【完結】軌跡シリーズ ノーザンブリア外伝~灰白の詩~   作:迷えるウリボー

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5話 捧げる希望

 

『出現から二日──国土の約半分が塩の海と化す。グレーヴ川に遮られた南部地域へ住民の大多数が避難』

 

 

 

 

「スレイン!!」

「母さん! 父さぁん!!」

 リーナと少年の声が、空と脆い岩盤しか見えないスレインの両耳を穿った。その事実がスレインの崖縁を掴む左手を僅かに緩めさせ、母親を持つ右手の力を強めさせた。

「く……そぉ……!」

 力が最大限入るなんて、そんな都合のいい状況ではない。それでも、スレインは力を籠めなければならない。

「スレイン! 待って、今──」

「ま、て、リーナ……」

 震える指と共に、スレインは唇を動かした。だがもう遅い。

 リーナが自らを顧みずにスレインのもとへ駆けよる。それは、崖下の残酷な運命を目にすることを意味していた。

 顔を出したリーナは、恋人よりもなお崖下を注視する。そして恋人よりも、自分と同じ行動に出ようとしていた少年に注意を向けた。それは何よりもスレインが願っていた英断だったが、無残にも叶わなかった。

「父さん、母さん、早く──!?」

「だめ、見ちゃ!」

 リーナが少年を抱き留めるが、遅かった。少年は見てしまったのだろう。

 スレインは見ていない。だけど、判る。もう二時間以上前に見た。人が塩と化す姿を。

「父さん!? 父さぁん!!」

「待って! 行かないで、危ない!」

 リーナが、必至に少年にしがみついて、塩の海に走らないようにしている。成長期前の少年と女性、とはいえ恐慌状態に近い子供を押さえつけるのは容易ではなかった。

 そして、スレインと少年の母親も死が目前に迫っている。

(まずい、腕が持たない……)

 万全の状態で女性一人を崖から救い上げるのは、スレインなら()()()()できていた。だが、数時間の塩の地面との格闘、度重なる避難活動、それらがスレインの体力を限界間近まですり減らしていた。もう、この状況で母親を崖縁まで上げる力は残されていなかった。仮にリーナが手隙だったとしても、スレインと女性を引き上げる力などあるはずがない。

 そして、今もなお塩のうねりは大きくなっている。今捕まっている崖が崩れない保証などどこにもないのだ。

 このままでは、スレインも母親も塩の海に呑まれる。

 そんな中、どこまでもか細い声が、スレインの下から聞こえる。

「……遊撃士さん、手を離してくださいっ」

 塩のさざめきに混じったその声。崖上で続く叫びと違い、か細く消え入るようであっても、その意思は確かに伝わる。

「……」

「遊撃士さんっ!!」

 何も言えないスレインに、今度こそ母親は叫んだ。

 どうすべきなのか。そんなことは誰もが判っている。誰が生き残るべきなのかも。

 判っているのだ。誰を見殺しにすべきなのかも。

「俺は、遊撃士……だから、みんなを守って」

「ええ。だから……命よりも大切な私たちの子を、絶対に守ってください」

「絶対に……あなたたちのことを、忘れません……!」

 母親を持つ、その掌を力の限り開こうとした。どうしたって、握る力が収まってくれなかったから。

 震えが大きくなる、その直前。

「ゲオルグ、愛してるわ……!」

 母親は大きく息を吸った。

「絶対に、生き残ってっ……!」

 手が離れた。

「母さぁぁん!!?」

 少年の慟哭が響いた。崖下の沈黙は再び始まり、いよいよ少年の暴れる力も無くなってくる。そうしてリーナようやく少し余裕ができて、想い人に意識を向ける。

「スレイン……?」

 指が見えるだけだった。そこから、もう一方の腕が震えながら伸びてくる。スレインの腕だけが、重々しさをこ感じさせながら上がってきた。スレインは這い上がってきて、生還したことをリーナに示した。

 スレインは沈黙を保ち──いや、そのまま言葉を発することなく、呆然としている少年の前までやって来た。そのまま強引に少年の腕を掴んで引き上げる。

「スレインッ!?」

「おいっ、なんだよ……待ってよ!」

 暴れる少年、けれど疲労しているとはいえ、リーナでなくスレイン相手では少年ももがくことしかできない。

 リーナから見たスレインはまるで幽鬼のような表情だった。その理由が判らないほど馬鹿ではない。だからスレインを止められない。

 尚も少年は暴れていたが次の罵倒がスレインの口を開かせる契機となった。

「どうして母さんを助けなかったんだよ!? 父さんだって! 皆を守るのが遊撃士じゃないのかよ!?」

 思わず、スレインは少年の胸ぐらを掴んだ。少年を押し込んでわざと転ばせる。

 そして告げた。

「君の両親は死んだ」

「っ!」

「何もできなかった。俺も、君も、力がないから」

 泣きべそをかく少年。下を向き、その相貌に宿ろうとしているのはこれ以上ない程の無力感と絶望だった。

 だけど。スレインがもう一度、胸ぐらを掴んで無理矢理に起こす。

「でも、生き残るんだよ……! それが、俺たちの使命だからだっ!」

「……ぁあ」

「君の名前は!? なんだ!?」

「……ゲオ、ルグ」

「ゲオルグ。悔しいなら泣き喚け。俺が憎いならいくらでも恨め。……でもなぁ!」

 スレインの両眼から涙が溢れた。少年に負けないほどの量だ。汚くて、かっこ悪いくらいに。

「君のご両親のために……なんとしても、生きて世界に証明しろ! 自分がそれだけの価値があったんだって!」

 死の瀬戸際だからなのだろうか。スレインは自分や助けた人が確かにここにいる実感を感じたくて、妊婦に赤子の名前を聞いた。それと同じだった。少年はここにいる。

「君の両親は、『生き残って』って言ったんだよ!!」

「あぅ……ああ……!!」

 両の肩を握りしめる。少年と顔を近くして、大人でも発狂しそうなこの状況で、なんとか踏みとどまらせる。

 そうやって、少年は膝を折らずとも、今度こそ顔をぐしゃぐしゃに歪めて泣き喚いた。それでも、少年はしっかりと立っていた。

「ごめんなさい……ごめんなさいぃぃ……」

 もうとどかない懺悔を聞きながら、スレインはリーナを見据える。

 言葉を交わすでもなく、リーナは頷いた。もう時間はない。正直なところ、間に合うかすらも判らない。

「行くぞ……」

 今度はスレインが少年の手を握りしめる。三人は、ようやく歩き出した。

 三人とも精魂共に尽き果てていた。限界など、とうに超えていた。戦争や大飢饉などの危機を経験したことのない世代だ。遊撃士だろうがなんだろうが、そんな立場なんて関係がなかった。

 ようやく橋が、公都ハリアスクを抜け出せる南の大橋が見えてきた。それと同時、周囲の建物が瞬く間に塩となって崩壊し始めた。

 スレインは少年をリーナに託す。それで力尽きスレインの歩が目に見えて遅くなった。

 橋に足を踏み入れた。と同時に、公都の全てが塩になった。

 スレインたちはなんとか走る。橋の向こうで、数人の兵士たちが必死の形相でこちらを見ているのが見えた。その中には、バレスタイン大佐もいた。

 急げ、と叫んでいるのだろうか。それももう、砂塵のような塩に巻き込まれて聞こえない。

 リーナが何とか少年を橋の向こうの兵士たちに送り届けた。即座に、兵士たちよりもなお早く、リーナは向かって走った。

「スレイン! 早くっ!」

「……ああ」

 ボロボロのスレインは、なんとかリーナの手を握る。

 その時、ついに限界を迎えた橋梁が、塩となった根本に耐えきれず、轟音を立てて崩壊を始めた。

「な……!」

「きゃああっ!?」

 橋そのものはまだ塩の侵食を受けていない。が、それを支える岩盤部分が崩れてはもう構造を保つことはできなかった。石畳みは順に末端から崩れ去っていく。

 スレインだけでない、一緒にいたリーナ諸共落ちていく。二人は反射的に抱き止め合った。

 軍はよくやってくれていた。より多くの民たちを守らなければいけないなかで、無謀に知り合いたちを助けに行っていた人々を、最後まで助けに行っていた。橋の崩落が始まる、この時まで。

 そして、おそらく助けられるであろう最後の人間が、遊撃士であったのがまずかった。誰しもが緊張の糸が切れていた。だからだれも手を取りに行けなかった。

 抱き合いながら、二人は落ちる。

「ふざけるな……! まだ、守れて……」

「スレイン……!」

 今際の際。その場の全員が、二人の最期を覚悟した時。

 東の空から、突如として光点が溢れる。

「なっ」

 光点は明滅を繰り返し、ものの数秒で橋の下の川に落ちる二人に近づいてきた。

 リーナはスレインの胸に顔を埋めていてそれに気づかなかった。光点の正体を見ることができたのは、至近距離にいたスレインと、

「飛空挺! 一体、どこの……!?」

 数々の経験をしてきたバレスタイン大佐だけ。

 運用されている飛行船より一回り小さな、白色の機体。武骨なデザインではなく、所々に金のラインが刻まれた意匠。

 落ちゆくスレインたちの真下に、同速で降下しながら近づく飛空挺。だがそれでも、もう水面に衝突する時間がない。

 飛空挺は後方甲板をスレインたちに向けた。一瞬だけ、そこに立つ人間の紅い外套が目について──

「我が深淵にて煌めく金色の刻印よ」

 厳かな、逞しいその声が聞こえた。

「地の琥耀、風の翠耀、時の黒耀」

(巡回神父……?)

「その(おお)いなる息吹をもって、彼らの行く末を大地へと導け」

 瞬間、シアン色の輝きがスレインとリーナを包み込んだ。落下する視界は急激に減速し、しかし伴うはずの衝撃はなく、大地に吹く風だけを感じる。

 目を閉じていたリーナが、体を包む風に違和感を感じ徐々に、ゆっくり目を見開いた。

「これって……」

「助かった、みたいだ」

 ゆっくりと、水面の数アージュ上方を下降する。二人が安全に降り立つその舞台として、飛空挺の後方甲板が寄り添うように用意された。

 機械的な地面が、なによりも心地よかった。緊張から解放された二人は膝から崩れ落ちる。

 塩のさざなみと、グレーヴ河の水流が耳を打つ。呆然とした思考の中、今更ながら震えが止まらない。スレインは見上げた。

 そこには男性が立っている。白髪と髭があるが、鋭い眼光は優しい叔父などではなく、雷親父のようだった。

「遊撃士か。このような状況で己の実力を厭わない無謀……《支える籠手》が聞いて呆れるぞ」

 筋骨隆々、紅い外套に隠しきれないその体軀は、威風堂々と二人の前に仁王立つ。

 数時間の死地を経て、もはやスレインは感情を出せなくなった。夢見心地のような感覚の中で、掠れるような声で呟いた。

「アンタは……」

 男は静かに言い放った。それは、スレインたちにとって絶望的な現実でもあった。

「我が名は《吼天獅子》バルクホルン。七耀教会星杯騎士団所属──守護騎士第八位。此度の《異変》終息のため、迅速に参った」

 異変は、まだまだ終わらないのだと。

 飛空挺はグレーヴ河から上昇し、動き出す。

 公都ハリアスクは崩落した。城館、街並み、全ての橋梁。遊撃士協会、リーナの喫茶店、思い出の場所。全てを、ただの塩の塊へと変えた。

 避難の遅れた人々は塩の彫刻と化したか、それか塩の海に溺れ死ぬこととなったと思われる。

 国民、観光客、そして軍人からも、決して無視できない程の犠牲者を出した。

 出現から一昼夜、旧公都北部に広がる広大な針葉樹林帯が結晶化して崩壊。橋梁が落ち、主要な街道の全てが通行不能となる。

 グレーヴ河は場所にもよるが、河幅が大きい。それでも、塩化の全てをせき止めることは不可能だった。グレーヴ河の北方に存在するレヴェリとキルヴァは、公都と同じ運命を辿ることになった。海運のための船などで文字通りの全滅は防げたが、それでも多くの人間が、世界から消えていった。

 そうして出現から二日、国土の約半分が塩の海と化す。グレーブ川に遮られた南部地域へ住民の多数が避難した。

 ノーザンブリア大公国において、南方のニ都市は比較的牧歌的なそれだった。衣食住もまともに準備できず、避難民はトラウマと共に眠れぬ夜を過ごすことになる。

 塩化の状況を確認しつつ、公国軍はバレスタイン大佐をはじめとした生き残りの将官を中心に一時的に軍に権限を集約させた。全ての都市で連携して継続的な避難・救出とできる限りの調査を進める一方、国中の公民問わず全ての組織から力を借り、少しでも糧食や医療的措置に力を注いだ。

 エレボニア帝国からは大公国国境のドブニエル門付近に帝国軍が詰めているという情報が出回り、子供たちが希望を感じる一方で大人たちは危機感を顕にする。レミフェリア公国からは心強い支援の声明が届いた一方、バルムント大公避難の報が届き、拠り所を失ったのだということを国民の意識に植え付けた。

 遊撃士協会もまた、大陸全土に網を持つ組織として協力を望むが、事件発生から日の浅い段階では、安易な入国も危ぶまれる。そんな中で頼みの綱は、現地の遊撃士だった。

 事件発生当時、大公国所属の遊撃士は多くが公都ハリアスクに集まっていた。各地方にいた遊撃士とは連絡が取れず、行方知れず。公都にいた五人のうち、一人は死亡を確認。リーダーであるスレイン・アルビドゥスは公都から避難した直後、気を失い短期の療養をすることとなる。アリエルが国内遊撃士たちの指揮を取って、避難活動に従事することとなった。

 そして、出現から三日未明、ようやく塩化の侵攻が停止した。

 

 

────

 

 

「こ……こは……?」

 意識を取り戻したスレインが最初に見たのは、慣れ親しんだ自宅と同じ石造りの部屋の天井だった。夕暮れのオレンジの光が窓から射す。この世ならざるような、幽世の気配を感じた。

 はっきりしない意識の中で、体に違和感を覚えた。ベッドに横たわっていたにしては、休まりきれていないからだ。寝巻ではなく装備を外しただけの遊撃士としての服装だった。同時に、足元に布団でない重みを感じる。

 そこには、リーナがいた。といっても同じく横たわっているわけではなく、スレインの布団に顔をうずめている。数秒で、遅まきながら気を失う前の状況と、そして大事な一人だけは守ることができたのだと理解する。

 上半身を起こすだけでも、それなりに疲労を感じた。大仰な動きだったからか、あるいは覚醒直前だったからだろうか。体動が激しくなり、それはリーナにも影響を与えた。

 身じろぎの後、リーナもぼんやりと覚醒した。やはり状況を理解するのに数秒の時間がかかり、スレインの顔を瞳に納めて、それで瞳孔が大きくなる。

「スレイン……!」

 声は震え、感極まっていた。だがその顔は一瞬で近づいて見えなくなる。スレインに抱き着き、極限状態のあの時と同じく胸に顔をうずめたからだ。その重みに苦しさと安心感を覚える。

「リーナ……よかった」

「うん……うん……!」

 極限の状態だった。沢山の人の最期を見た。自分の死も覚悟した。リーナすら、守れないと思った。

 そして生き残った。

「目が覚めたか、スレイン」

 騒ぎが聞こえたのだろうか。ノックの後、女遊撃士アリエルが入ってきた。

「アリエル……心配をかけたみたいだな」

「まったくだ。私たちのリーダーが聞いてあきれるぞ」

「アリエル」

「なんだ?」

「ありがとう、()()()()()()()()

「……ああ」

 彼女もまた、少し元気がない。アリエルは続けた。

「遊撃士協会公都ハリアスク支部。五名のうち……私たちを含めた三人が無事帰還を果たした」

「……そうか」

「ここはアングリアの七耀教会の宿舎だ。疲れている所悪いが……祈りを捧げたい。スレイン、リーナも。付き合ってくれ」

 だるい体を無理やりに起こして、リーナに支えられながら、スレインは礼拝堂に向かう。

 その最中、アリエルとリーナから現在の状況に聞くことになった。

 バルムント大公が亡命したこともあって政治・外交・安全保障の全ての面で、大公国は殆ど崩壊している。今は計略も何もなく、全ての国民がただ生き残るために戦い続けている。

 スレインたちを助けたあの飛空艇は、そのままグレーブ河を上昇した。大公国東、グレーブ河が三又に分岐した、両端を河に護られた河港都市アングリアまで飛空艇は移動し、そして七耀教会の礼拝堂近くに着陸したのだという。

 スレインたちを助けた巡回神父風の男は、自らを守護騎士バルクホルンと名乗った。所属を明かした組織名には、《七耀教会》の名が入っていた。だから、きっとこの場に運ばれたのだろう。

 教会にしては怪しげなその飛空艇だが、人払いがされたこともあってか大した騒動にはならなかったのだという。バルクホルンと彼の従者らしい者たちに連れられ、スレインとリーナは七耀教会に預けられ治療を受けた。

 アリエルは、スレイン救出の間際で一部始終を見ていたバレスタイン大佐と接触し、情報を受けたうえで探し出した。リーナはスレインよりも早くに目を覚ましており、スレインの看病に付き添っていた。

 そして、7月3日夕方。巨柱出現から二日後に、スレインは目を覚ましたのだ。

 スレイン、リーナ、アリエルの三人は、最期まで戦った友を魂を想い、夜の帳が降りるまで、ずっと祈りを捧げていた。その後に礼拝堂の司教と会い、夕餉に促される。最も、それも楽し気な時間とは縁遠いものだったが。

 あまり食欲はなかったが、それでも食べきった。そのタイミングで様子を見計らっていた司教が告げた。

「遊撃士スレイン・アルビドゥス殿。貴方との面会を望む者がいます」

「判っています」

 ひとまずは命を繋げたスレインだが、まだ災禍は終わっていない。巨柱出現によって崩壊した公都と地方都市。ノーザンブリア大公国の流通を担う首都と海港都市を失い、苦難の季節を迎えることになる。これから遊撃士が不要になることなんてないのだ。今以上に、民間人のために働かなかければならなかった。例え、大公国の遊撃士から少なくない数の犠牲が出るとしても。

 だが、その前にしなければならないことがある。導力革命によって加速しつつある時代。大陸に存在する一国が消滅し、不安定な地域が生まれれば、それは後にやってくるであろう激動の炎に薪をくべることになる。

 国境線に軍を構える帝国然り、隣国レミフェリア然り、さらには遊撃士協会や国境を越えた組織の介入も。国に根付く人々は、様々な者の思惑を見極めなければならなかった。

 そして、それは教会も例外ではない。

 スレインは、一度アリエルにリーナを預けた。同僚であるアリエルと、恋人リーナ。二人はスレインと共に行けないことに腹を立てもしたが、スレインの今まで以上に真剣な態度を見て、納得せざるを得なかった。

 一人になったスレインは、司祭に促され、礼拝堂の執務室に入る。

「来たか。遊撃士よ」

 導力灯と、原始的な蠟燭の僅かな灯火だけが頼りのその部屋には、一人だけが窓の外の月を見上げていた。

「ええ、来ましたよ……バルクホルン神父」

 七耀教会、星杯騎士団。その隠密部隊の大男が、厳粛な声と共にスレインを歓迎したのだ。

 

 

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