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七海は、話を続ける。
「幻想郷という場所にはどれほどの妖怪が?」
「先ほどから妙なことを聞くの。私たちのような1000年単位の年を取っている大妖怪であれば、30ほどいるが、弱小妖怪などを含めるとどれほどいるか私もわからん。」
「そうですか。」
「あなたの正体は何ですか?」
「私は初めに言った通り、八雲
と笑いながら、あっけらかんと言い放った。
「いえ、そうではなく、始めあなたは呪霊が妖怪になるためには恐れられる名が必要だと言っていましたよね。その時に恐れられていた名は何ですか?」
彼女はニッと笑ってから、
「九尾の狐といっても満足せんだろう。私の元の名はだ...」
「お疲れサマンサ」
という声が聞こえてきた。
その声に驚き、後ろを振り返ると、そこには目隠しを外した五条悟が立っていた。
「なんだおぬしの仲間か?」
「おー、すっげえべっぴんさんじゃん。」
「おお、そうか素直な子は好きじゃぞ。まあ良い、それよりも、飲まぬか?」
と、日本酒がぎりぎりまで入った升を差し出す。
五条は手を振りながら、
「あいにくと酒は苦手なもんでね。」
「それは残念。二人とも乗りが悪いの。では、そこの子に甘味でも注文してくれ。」
と、先ほど注文を持ってきてくれた子を指さす。
七海は驚きのあまりこの間、硬直しているとこのようなやり取りがあった。
「どうしてここに?」
と、あんみつやら、大福、団子などなどの甘味を注文する先輩に問いかける。
「まあいろいろあったんだよ。七海が依頼を受けた次の日に、伊地知さんに北海道のほうに出た推定特級クラスの呪霊を退治して来いと、高専のほうから指令が来てね。高専のほうの仕事を一通り終わらせてから、北海道のほうにいる呪霊をぱぱっと片してきたんだけど、帰りの新幹線が時間が時間でなくてね。それで、高専のほうへ帰ってきたわけ。」
「いえ、そういうことではなくて...」
「まあ、話は最後まで聞け。それで、結局空を飛んで帰ることにしたんだけど、帰り道にそういえばナナミンって、宮城のあたりで、任務していたんだっけって思い出したわけ。ちょうど帰り道の途中に少しよるだけで、いけそうだったからせっかくだから、呪霊ごっこをして、ナナミンを驚かしたら面白い反応が見れえるんじゃねと思って、向かっていったわけ。」
先輩は、本堂の上に輝く満月を見上げながら
「結局、刑務所まで行ったんだけど見つけることができなかったんだよね。もう、仕事が片付いて帰ったのかなーと思って帰ろうとしていたんだけど、校庭に呪力溜まりのようなものが生まれていてね、違和感を感じたのよ。目隠しをとったらあらびっくり、領域があったのよ。これは七海が危険だなと思い、中に入ってみたんだけど静かでドンパチやった形跡もないし何もなかったから、警戒しつつ進んでいったら、なんか、呪霊っぽい何かと話してて拍子抜けしたってわけ。それで、君だれ?」
と、キセルをもてあそんでいる、彼女を指さす。
「私か?私は、八雲
「驚いた。僕の名前を知らずに家名を当てられるなんて。どうしてだい。」
「その目を見ればわかるであろう。500いや、600だったか、の御前試合は見事であったぞ。」
ということを聞いた先輩は、驚きのためか、目を見開いたまま固まってしまった。確かこの妖怪は、1600年頃にあった五条家と禅院家との御前試合のことを言っているのであろう。
すると彼女は済まなそうにしつつ口を開く。
「っと、すまぬ。人の子は50年ほどで寿命であったな。わけもわからぬことを言ってすまぬな。」
と、軽く頭を下げた。
先輩も少しは回復したのか軽くうなずいている。
「そうなんだ。でも、八雲ってどこかの本で見たような...」
と、頭を働かせている。
「よく見ておるの。たぶん幻想郷縁起の写本であろう。たしか、著者の場所に
「そうそう、倉庫の奥で埃をかぶってた本だ。たしか、稗田なんだかと、八雲
「マジな話じゃよ。実際、我は妖怪であるし。」
ちょうどその時、
「失礼します。」
という声とともに、お盆の上に大量の甘味を先輩のところへ置き去っていった。
先輩は、それらを食べつつ話を続ける。
「そういえば、
「従者じゃよ。もう一人従者がおるのじゃが、その尻を追っかけていたらいつの間にか従者になっとった。まじめすぎるのが玉に瑕じゃがな。」
「へーどんな、妖怪なの。」
「そりゃあ、いい子に決まってるじゃないか。この前なんか、....」
と、話し続ける。一切止まる気配はない。
先輩は、この妖怪の地雷を踏んだことに気づきなんとしてでも話を止めようとするが止まらず二人して話を聞く羽目となった。
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45分後
「...と、いうわけだ。どうだ、もう少し聞くか?」
「いや、もう十分理解できたよ。」
先輩は、もう満足だと言わんばかりに、少し顔をしかめつつ言った。
たぶん、私も同じような顔をしてるであろうことに苦笑いしつつ情報を整理する。
今回話しててわかったこととしては、八雲
幻想郷という場所でも、人間は穏やかに暮らしており、文化は江戸時代レベルだということ。人里は、強大な力を持つ妖怪たちによって保護されており、ほかの妖怪たちが、人里内にいる人間に手を出すことは禁止されていること。
などなど。ほかには付き合い始めてから数百年たつというのにいまだに甘い蜜月を過ごしていることぐらいであろう。
まだまだ話を聞けば、他にもいろいろの内容が聞けそうであったが、正直色々と満足である。などと思っていたら、急に彼女は口を開いた。
「そういえば、天元ってまだ生きておるのか?呪術師がいるってことはまだ生き残ってそうじゃけど。」
「それを知って何をするつもりだい。」
「そこまで警戒しなくてもよいだろう、五条の末裔よ。ただ単純に挨拶しに行くだけじゃよ。
「確かにいるけど、一度天元様に連絡をとってもいいかい?」
「いいとも。」
彼女は、右手を一閃させる。すると、扉らしきものが生まれた。
「そこを通れば元の場所に戻れるはずじゃ」
「それじゃ、七海よろしくね~。」
と、いうなり今まで手を付けていなかった甘味を食べ始めた。
私は、はぁ、とため息をつき、外へと向かった。
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確か、今週の夜勤は夜蛾学長であることを思い出しつつ高専へと電話を掛けた。
「もしもし、七海ですけど、夜分遅くに失礼いたします。」
「ああ、いい。それで要件は何だ。」
「できれば天元様に確認をとってもらいたいことがありまして。」
「天元様に?確かお前は、任務中だったよな。」
「はい、その先で少し特異な事態に見舞われまして、至急お願いします。」
「わかった。この時間起きておるかわからんが一応確認はしてみる。それで何を聞く?」
「はい、八雲
「八雲
と、保留音が聞こえてきた。
しばらく外の月を眺めつつ待っていると、
「もしもし、夜蛾だ。」
「どうでしたか?」
「天元様が直接変わられるそうだ。天元様からは、その名は他言無用だと言われてしまったが何か面倒事に巻き込まれてないか?」
はぁと、ため息を付きつつ話をする。
「予想ですが一年ほど付きまとわれそうです。」
「災難だな。まあ頑張れ。では天元様と変わるぞ。」
が、一向に声が聞こえない。
何かあったのかと周囲を見渡すが特に変化がない。では高専の方にと考えていたが、夜蛾の
『天元様、受話器の方向逆です。』
という声が聞こえてきて苦笑いをしてしまう。
「おお、すまなかったの。」
「いえいえ。」
「最近は便利になったなものだの。このような機材で遠くの奴とも話せるのであるからな。」
「いえいえいえ。」
「おっと、すまないな。年をとると長話になってしょうがない。では、本題に入るとしよう。ここで詳しく話すのもあれだが、私は三人を知っておる。その内の、八雲
「妖怪がですか。」
「そこまで知っておるのか!!そのとおりだ。あのお方は、もともと結界術に優れているお方での。儂が若い頃、才能があると言われ手ほどきを受けたのはいい思い出だ。」
「そうですか...」
「それで今回この三人のうちどちらがいらしたのだ。」
「それが、八雲
「
「どうしてそれを。」
「夜蛾が『五条が任務からの帰りが遅い仕事を全部押し付けやがって』と、言っておったからな。まあ良い、早く高専の方に戻って、その上で話がある。戻り次第儂のいる薨星宮まで来なさい。」
「今回、私達は貧乏くじを引いたという認識でいいでしょうか。」
「言い方が悪いがそのとおりだな。八雲
「八雲
「じきに招待の手紙を送ると伝えておいてくれ。」
「了解しました。」
「それと、五条のやつに言い含めておけ、決してあのお方と争うでないぞと。」
でわなという声とともに電話は切れてしまった。
テストが近いので次回投稿は遅れます