私は、学長室を後にしてから食堂へと向かった。
食堂には現役の呪術師であろう人々や、生徒たちが昼食や談笑を楽しんでいる姿を見ることができた。
私は食堂で、精進料理を注文した後、一年生たちが座っている、席へ手を振りながら向かった。
「ヤッホー。さっきぶりだね。」
一年生たちは、私の存在に気が付いたのか後ろを振り向いた。
「こんにちは。先生も昼食ですか?」
「そうだよ~。五条先生から私も午後の呪術実習に参加しないといけないらしいから、少しぐらいコミュニケーションをとっていたほうがいいかなと思ってね。となり失礼するね。」
と、言い、隣へと腰かけた。そこで一人、足りないことに気が付いた。
「あれ、禅院さんは?」
「禅院か?あいつなら、もう食べ終えて、校庭のほうで呪具の手入れをしてると思うが...」
と、パンダが答えてくれた。
「ああなるほど。一人足りないけれど改めて自己紹介を、先ほども言ったと思うけど八雲
「
とふざけたように、パンダが呼んでくれた。
「はい、なんでしょうパンダ君。」
「まさか返してくるとは思わなかった。じゃあ、五条先生と引き分けたと、言ってたけどそれってマジ?」
「うん、正しいよ。私も正直、まさか私と引き分ける人がいるとは思わなかったよ。」
などと八雲先生は笑いながら言った。
「もともと何されていたんですか。
「
とにっこりと笑いながら言う。
「質問を質問で返してきた。」
「体術で五条先生に勝ったんでしょ。道場の師範とかじゃね。」
「しゃけ」
「あとは警察とかじゃないですかね。ちなみに、狗巻君はパンダと同じで柔道の師範だそうです。」
「残念。不正解。もともとは、秋葉原あたりで働いているバイト戦士だったんだよ。」
「戦士って何ですか戦士って。」
「まあいいじゃん。そっちのほうがかっこいいかなと思ったからだよ。」
と、言うと、彼女はひとまず手を合わせてから食事を始めた。
「実家はどこにあるんですか?仕送りしなきゃいけいないと言ってましたが...」
「実家でしょ、東北の山奥にある小さな神社だよ。一応国から補助金みたいなものをもらってるんだけどいささか生活が苦しくてね。だから東京に出てバイトしてるってわけ。」
「なるほど。」
と、皆一様に納得した。
「おかか ツナマヨ」
「おかか ツナマヨ?」
「ああ、どうやって体術はうまくなったんですか。だそうだ。」
と、パンダが和訳してくれた。
彼女は苦笑いしつつ、
「なるほど、よく通訳できますね。体術は基本的に独学ですよ。」
「独学?」
「はい、先ほど話したと思いますが、山奥の神社に住んでいるといいましたよね。」
「そうですね。」
「そこには本当に何もなくて、道場なんて言う立派なものは何一つなかったんですね。ですから、道場というものは行ったことががないんですよね。そのうえでなぜ強くなったかというと私の術式に関係があるんですよ。それを自覚したのは、小さいころにお祭りの際に祭具に触れる機会がありまして、その時に歴代の祭祀がどのようなことをしていたのかが頭の中に流れ込んできたんですよね。」
「それって物の記憶を読み取る術式とかですか。」
と、指輪を付けた男の子が言ってきた。
「夜蛾学長や五条先生がいうぶんにはそうみたいです。話は戻りますが、その際にまだ子供だったので面白がって、いろいろな道具の記憶を見たんですよね。その際に実家の倉庫にあった、この槍を触ったというのが強くなった要因なんですよ。」
と、彼女は背負っていた、布に巻いた一本の長い槍を取り出した。
「呪具のように見えるのだけど。」
「そうみたいですね。これに触れた際に、おとぎ話のような話になりますが、これを使って戦っている、今でいう神様らしき人が頭の中に入ってきたんですよね。その際にその人は、自分が私に見られていることに気が付いたんじゃないんですかね。私に、単純な槍の手ほどきから応用までを教えられたんですよね。」
「神様?」
「実際に、神様かどうかはわかりませんけどね、それっぽい人だと思ってください。」
と、彼女は苦笑いする。
「そこから、教えられたとおりに、この槍を使っていろいろ訓練したんですよ。そしたらもともと私に槍に関する天賦の才があったのかもしれませんが、体術含め面白いほど上達したんですよ。そんな感じですかね。」
「なるほど。」
「ほかに何か聞きたいことはありますか?」
「じゃあ、気になったんだけど、なぜ高専に入学してきたんですか。」
と指輪を付けた男の子が聞いてきた。
「なぜか...大きく分けると二つあるんですよ。一つ目は言わずもがなお金ですね。正直、バイトやって稼げるのって限度があるんですよね。頑張っても年収が大体2~300万円ぐらいなんですよね。だけど、呪術師で準一級クラスになれれば、年収1000万も夢じゃないといわれてやりたいなというのが一点ですね。」
と、言うと皆が呆れた顔をしていた。
「準一級って相当大変だぞ。プラスして命の危険がどの任務にも存在するし...」
「おかか」
「重々承知の上です。そのうえで二つ目なのですが、こちらのほうが目的で入ってきたんですよ。」
それは何なのかとみんなでこちらを見ている。
「それは、女の子と付き合うことですね。」
「え?」
「マジ?」
「...」
と驚きの表情でこちらを見てきた。
「本当ですよ。今でいうLGBTのlesbianっていうやつですね。先ほどの話につながるんですけど、実家は神社だといいましたよね。」
「ああ。」
「神社だけあって、跡継ぎを残すためにお見合いというのを多々行ってきたんですよ。その際にとある一族とお見合いしたんですけどあまりピンとこなかったんですよね。今回も断ろうと思っていたんですけど、その時廊下で、その妹である人と会うことができたんですよ。その際にこの子となら結婚できると思って、その妹と付き合うためにその男性とのお見合いを受け入れたんですよ。」
「なんか流れが不穏になってきたぞ。」
とパンダが合いの手を入れてくれた。
「私、これでも美しいという自覚はありますから、妹を惚れこませるのは簡単でした。しかし、家族たちは、婚約者の妹と密会を重ねていたことに気が付いたのか、ちょうど体を重ねる日の晩に婚約破棄を言い渡されたということですね。」
「それが、どう先ほどの話につながるんですか。」
「まあ、話は最後まで聞いてください。そのせいで家から勘当するのかという話になったんですけれど、もともと一人っ子だったので勘当もできず、ひとまず東京に送ってしまって問題を先延ばししようという考えになったんでしょうかね。それ含め、私がいなくなったせいで参拝客も来なくなり生活が立ちいかなくなりそうで、かわいそうだったんで仕方がなく仕送りをしていた。それが先日までバイト戦士をしていた理由ですね。」
彼女は、はははと笑いながらそのように言った。
「でも、呪術師になったところで状況的には変わらないと思いますが...逆に忙しくなって付き合う機会がなくなってしまうと思うんですけど...」
「もちろん、そのことはわかっている。しかし、女性が女子と付き合うというのも大変なものだぞ。ほとんどの場合が普通ではあるのだが男性好きというのでそれまでの関係で止まってしまうことが多々あるからな。しかしだ、そこに命の恩人という肩書が加わったらどうであろうか?」
「ああ、なるほど。」
「こんぶ」
「たぶんパンダと狗巻君はわかったと思うが、日常生活ではありえない状況から救ってくれた救世主となり、一気に恋人関係へと持っていきやすくなるのだ。まあ、夜蛾学長からはふざけた内容だと、言われましたけどね。」
と、笑いながら彼女は言った。
「いくら すじこ こんぶ」
「すまない誰か、通訳頼む。」
「もしかして、真希さん狙ってるだそうです。」
「おお、よく気付いたな。もちろんだとも。あんなスタイルがよく、がさつだけど、面倒見がいい姉御肌の人でしょ。狙わなければ女が廃るってもんよ。プラスして、生徒と先生の禁断の恋というのにも憧れるわね。ちなみにこの話は、真希さんには黙っていてね。」
と、彼女は三人にウィンクを飛ばした。
三人意外に性格が当たっていることを含め、彼女はこういう人なんだと感じつつ雑談をつづけた。
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「はーい皆さん集合。」
昼食を終え、いつものように目隠しをした五条先生が待っていた。
「今回は二つの任務があるから、二手に分けます。おk?」
皆が一様に頷くと、
「おk。じゃあ、今回は男女で分けよっか。一組目はパンダ、狗巻、乙骨で、二組目は真希、
「よろしくお願いしますね。真希さん。」
と、にっこりとほほ笑む。
「ああ、よろしく。」
と、不愛想に返された。
「パンダと狗巻、わかっていると思うが、乙骨は、改めて体ならしをする必要がある。そこフォローすること。そして、真希。
と、言うと、待機していたのか車が二台目の前に止まった。
車に乗り込むと、真希さんが聞いてきた。
「お前、どんな術式を使うんだ?」
「術式は物の記憶を読むことができるだけなので大して戦闘で使えるものではありませんよ。」
「どうやって戦うんだ?」
「たぶんあなたと同じだと思いますが呪具で戦いますよ。」
と、背負ってきた一本の槍をあらわにする。
「戦闘経験は?」
「人間相手ではありませんね。」
「呪霊では?」
「ありますよ。実家が東北の奥深くの神社なんですけど、そこで変な化け物に襲われることが多々あって、その際にこれを振り回していましたね。」
と先ほどの槍を持ち上げる。
「ところで、真希さんは、どのような術式を使うんですか。」
「私は一般人並みの呪力しか持たないから術式なんて使えないよ。その反面ある程度のフィジカルギフテッドがあるけどな。」
「ああ、なるほど。いわゆる天与呪縛ってやつですね。武器は何を使うんですか?」
「一応、同じ槍だな薙刀というのかもしれないが。」
と、布にくるんである武器であろうものを軽く持ち上げる。
「そうなんですか。ぜひ機会があれば、模擬戦でもしてみましょう。」
「ああ。」
車は進んでいった。
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車から降りると、目の前には、町中にある古びた工場のようなものがあった。
「ここですね。最近、子供たちの遊び場になっていたようで、そこから行方不明者が多数出たんですよ。推定一~ニ級程度の呪霊がいると考えられます。」
「なるほど。死体とかは上がってきたのか?」
「特にはないですね。」
「わかりました。それじゃあ行きましょう。」
と、いうと、
私は、運転手さんに見守られながら工場のほうへ二人で歩みを進めた。
ふと後ろを振り向くと球状の黒い靄のようなものに覆われそうになっていた。
「百鬼夜行の時も思ったのですけどこの黒い靄って何なんですか?おおわれると外に出られなくなるし、呪霊みたいなものが活発化して襲ってくるんですけど。」
「ああ、確か任務は初めてだったよな。」
「はい。」
「これは帳というものだよ。これには、外から中の呪術師たちを見えなくして呪いをあぶりだすための結界みたいなものだよ。」
「そうなんですか。あぶりだされて身の危険にさらされたと呪霊が感じたせいで呪術師達を襲ってくるから一掃するにはちょうどいいと。」
「まあ、そうだな。それよりも前を見てみろ、」
と、真希さんに指をさされた。そちらの方向に目を向けると、多分三級ぐらいであろう弱い呪霊たちが、4匹群れていた。
「いけるか?」
と、真希さんに言われたのでグーサインを出し呪霊めがけては駆け出した。
そこで、目の前にいた3体の呪霊めがけて人間でいう首と心臓部めがけて二閃。その後、奥の一体の心臓部めがけて一突きを放った。
「速い...」
と、真希あまりの速さに呆然としていると、
「どうしたんですか。おいてっちゃいますよ~。」
といいつつ彼女は工場の中へと入っていった。
工場内を進んでいくと、中には、なかには、多くの下級呪霊たちがいた。
「おー。いっぱいいますね。」
「
「できれば、
「ああ、あまりにも武器の扱いになれていたのでついな。」
と、気まずそうに頬をかいている。
「じゃあ、右側から片付けましょうか。」
「オッケー。じゃあ先行ってるからね。後ろよろしく。」
というと、右側を固めていた、低級呪霊たちをすごい勢いで倒していった。
片っ端から呪霊たちをかたづけつつ、屋上に出れる踊り場までたどり着いた。
「とてつもない量の呪霊がいましたね。都会ではこれぐらいが当たり前なんでしょうか?」
「ああ、都会というのもあれだが、都会は田舎に比べて圧倒的に呪いが集まる量がとてつもなく多くなるからな、曰くつきなどというだけでも多くの人の負の感情が集まり必然と呪霊が集まってしまうんだよ。」
「なるほどね。私が住んでいたところでは大きさ的に高級といえばいいのかな?高級呪霊たちがたまに迷い込んでいたからとても新鮮だよ。」
と、いいつつ、屋上への扉を開けた。
屋上へと上がると、屋上の屋根の上に巨大な蜘蛛のような形をした、呪霊がいた。
「これが今回のボスってことでいいの?」
「ああ、多分あっているぞ。」
「りょーかい。私が倒しちゃうよ。」
「ちょっまt...」
と、
その呪霊は私たちのの気配を感じ、唸り声をあげて襲い掛かってきた。
その蜘蛛は前足を挙げ私めがけて振り下ろす。
ドシン
という大きな音を立て、コンクリートの屋根にその前足が埋まった。
蜘蛛は登られたと気が付いたのか、前足を持ち上げ振り落とそうと、前足を振る。
避雷針が難なく折れる勢いで振ったが、
しかし、すでに遅かった。
スッと、彼女は空中へと飛び上がり、槍を構え、彼女は弓のように体を引き締める。
彼女は体が落ち始めるとと同時に、槍を蜘蛛の頭めがけて、一本の槍を投擲した。
ドシン。
という音とともに槍は、蜘蛛の頭を貫通させ、槍とともに勢いそのままに地面へめり込ませた。
グオオォォ。という絶叫に近い声を上げるがすでに致命傷を受けたせいで呪霊の体の影が薄くなっていくのを見つつ
彼女は奇術師のようにコンクリートに刺さった、槍の石突の上に着地した。
気が付くとそこには、致命傷を受けた蜘蛛の呪霊は、初めからそこには何もなかったように消えていた。
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