実力至上主義の教室で神になることは間違っているだろうか?   作:ちあさ

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蛇足です。なんか色々考えていたことを出すために書いただけの蛇足です。


もし神がDクラスに配属になっていたら

3月某日

 

薄暗い会議室の中で幾人もの大人たちが資料を捲りながら話し合いをしている。

 

「今年で10回目か」

 

その言葉に大人たちが苦虫を噛み潰したような顔をしてうめき声を上げる。この集まりは4月からの新入学生の配属クラスを決めるための会合である。大半の生徒に関しては事前の調査などから問題なく決定されたのだが、ただ一人、非常に問題な人物が居るため話し合いは難航していた。

 

「去年は理事会が無茶をやったせいで退学者を出しすぎた。17人もだぞ!しかも卒業間近の3学期にだ」

 

「特に総理の孫と経団連会長の末娘を退学にしてしまったのが致命的だ。あれのおかげで危うくこの学院が潰れかけたんだぞ」

 

「あのせいで最後まで反対していた坂柳理事長以外の上層部の首が月まで吹っ飛ぶことになった」

 

「会長は特に末娘を溺愛してたからな。馬鹿な娘ほど可愛いと支援金を盾に無理やりAクラスにねじ込むぐらいだったから」

 

「だからこそ山田の不興を買ったんだろう。あの高慢な馬鹿娘が3年間、山田に取り続けた態度は我々から見てもかなり不快だった」

 

「無職のおっさんが有能なワタクシの為に2000万払って退学を取り消すのは当然ですわ、だっけ?どう考えれば最後にあんなセリフが出てくるのやら」

 

「お前たち、話が脱線しすぎだ。その山田だが、どうにかできる案はあるか?」

 

現実逃避気味に横道にそれていた話を教頭が戻した。だが、肝心の結論については未だ定まらず最終的に今年も無難にAクラスにするしかないかという流れの中、一人の女性が声を上げる。

 

「私に提案があります」

 

その女性は今年のDクラス担任の茶柱佐枝であった。

 

「彼を私のDクラスに配属させるべきかと」

 

Dクラス―その言葉に一同は騒然となる。

 

「茶柱教諭。君はまだ若いので知らないのかも知れないが。それは最大の悪手だ。それだけはない」

 

「3回目の悲劇ですね。いえ、あの事は私も知っています。ですが、それを踏まえて尚、今年はDクラス配属こそがベストだと判断します」

 

3回目の悲劇―それは彼、山田隆夫が3回目に入学した際に、Dクラスに配属された事で起きた惨事である。その当時、Dクラスに配属した彼は、4月開始から他クラスに先んじて攻撃を開始した。まず、毎月10万を貰えると思っている他クラスの生徒に月末までに返済できない場合は5月1日に振り込まれる分全てを利息を含めた金額として返済するという契約を個別に結び、Dクラスのポイントをほぼ0に近い形にして調整し、300万近いプライベートポイントを確保。それを使い、ポイントの枯渇したDクラス生徒達に個別に配ることで派閥を確立し掌握した。それは5月1日までSシステムについて他生徒に話さないという学校側との契約の穴をついた見事な手腕だった。彼はポイントという甘い飴を与えつつ、それに靡かない反抗的な生徒はその後の中間試験で軒並みリタイアさせていった。彼にとって、最初の退学者によるマイナスの負債など、クラスを完全掌握出来るなら十分に補填できる範囲だった。

その後、Cクラスで内紛がおき、1学期期末試験に山田に好意的な生徒以外が出席できず退学。夏の船内試験でBクラスからルール違反による退学者が続出。それからも特別試験の度に退学者が出続け、1年の終わりにはAクラスも半数の生徒が退学し、残った生徒も殆どが精神を病み、自室から出てこない不登校状態になり、DクラスはAクラスへの昇格を遂げていた。

 

これらの件は確実に山田が関与していることに誰もが疑念を持たなかったが、決定的な証拠は出てこず、Dクラスへ配属させることは禁忌とされることになった。

 

それでも尚、茶柱佐枝は自身の持論を説明する。

 

「山田隆夫は今年のAクラス卒業のために2000万を多数の下級生からかき集めて使用しています。特別試験の時もプライベートポイントを多額に消費していたことから考えて、それらは次もAクラスへと配属されることを見越した借金でしょう。彼は今、確実にポイントを枯渇して、返すあてはこれからのポイント次第の借金状態です。それを踏まえて、私のDクラス生徒の資料をご確認ください」

 

その言葉と共に、会議室のモニターに生徒の資料が表示される。

 

池、山内、須藤、佐倉など、明らかに例年よりも質の大幅に下る生徒を次々と紹介する。

 

「彼らは本当に中学校を卒業したのか。もしかしたら小学生よりも知能が低いかもしれません。それに素行も最悪と言えます。彼らが致命的に足を引っ張り、Dクラスは前人未到の0ポイントで5月を迎えることになるでしょう」

 

「茶柱。それでは彼らが中間試験で早々に排除されるだけではないのか?」

 

Aクラス担任の真嶋教諭が指摘するも、茶柱はそんな事は想定済みと、新たな生徒の資料を示す。

 

「それに関してはこの平田、櫛田、掘北の3人に情報をリークすることにより阻止させます。平田は過去のトラウマから、櫛田は承認欲求から、そして"頭だけ"は良い掘北はAクラスを餌に彼の計画を頓挫させます。そして最初の中間試験を乗り越えた先、元々協調性の足りない彼らはそれぞれに派閥を作り、内紛となります。彼は3回目の悲劇の経験から4月中の生徒間との契約を禁止されていますので、クラスポイントが0のままならポイントを使ったクラス掌握は無理でしょう。彼の最初の選別さえ失敗させられれば、その時に彼の暗躍をバラすことによりクラス内での求心力は大幅に落ち、その後の特別試験も派閥ごとに足を引っ張り合い、成果を出すことを阻止できます」

 

最初は冷ややかな顔で見ていた者たちも、茶柱の理路整然とした説明を聞くうちにその顔を強張らせ、配布された資料を何度も確認したり他の者と小声で相談したりしだす。部屋の空気はもはや茶柱によって完全に支配されていた。

 

「出来るのか…」

「いや…でも確かに」

 

僅かにでる不安の芽を押し流すように茶柱佐枝は声を上げる。

 

「この奇襲攻撃は、彼の資金が枯渇している今年でなければ成功しないのです!どうかご決断を!」

 

もはや形勢は完全に茶柱の思惑通りになっていた。

そんな中、1年Aクラス担任の真嶋教諭だけは心配げな顔で茶柱に問いただす。

 

「茶柱。本当にそれで良いんだな?」

 

「ああ、これがベストだと私は判断した」

 

茶柱のその言葉に何故か悲しげな顔をして真嶋は顔を伏せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月。

山田隆夫はDクラスへと配属された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった。やってやったぞ!これで私の悲願は叶う!」

 

Dクラス担任の茶柱佐枝は寮の自室で秘蔵の酒を開け、有頂天になっていた。

 

「綾小路と高円寺、堀北に松下、そして山田隆夫と手札は揃った。これでAクラスは私のものだ!」

 

茶柱は会議の際に意図的に隠していた生徒の資料を見ながらこれからの下剋上へと思いを馳せる。その中でも綾小路清隆の秘匿資料を見ながらニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべる。

 

「綾小路を託したあの研究員には悪いが、利用できる者はなんだって利用させてもらうぞ。さて、明日はDクラスの記念すべき0ポイントデー開幕だ。早速綾小路を使って掘北のケツを蹴り上げようか」

 

茶柱は全てが自身の思惑通りに事が運び勝利することを確信するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月1日、無事に中間試験を乗り越えたDクラスの教室に、山田隆夫と綾小路清隆、高円寺六助の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い会議室の中、坂柳理事と真嶋教諭、茶柱教諭。そして山田隆夫と綾小路清隆、高円寺六助の6人が居た。

 

 

 

強張った顔の茶柱に山田隆夫が告げる。

 

「1日付けで私と、綾小路清隆、高円寺六助の3人は6000万ポイントを使いAクラスへと移動させていただきました。短い間ですがご指導ありがとうございます。茶柱後輩」

 

「どういう…いったいどういうことだ…なんでこんなに短時間でそんなポイントを」

 

茶柱の頭は混乱しながら問うが、その質問に答えたのは真嶋教諭だった。

 

「茶柱、お前、本当に山田先輩がポイントを枯渇させていたなどと盲信していたのか?」

 

「だが、ポイントは確かに数日前まで数万しかなかったはずだ、一度卒業してポイントはリセットされているはず。借金だってあったはずだろう。一体どこからそんなに」

 

「茶柱後輩、確かにポイントは卒業する際にリセットされる。だがな、なぜ私がリセットされるポイントを最後まで持っていなければいけないんだ?」

 

山田は不思議そうな顔をして言う。

 

「私はここに30年いるんだ。そして、過去の卒業生がどれだけこの学校の敷地内で働いていると思っているんだ?その中に私が現役時代に世話をしてやった生徒がどれだけいると思っている?」

 

「山田先輩は、今まで卒業前から余剰ポイントを分散して後輩や敷地内の店舗で働いている元後輩の店員などに利子をつけることを条件に契約して預けている。学校側は把握しきれていないがおそらく総資産は億を超えているぞ」

 

真嶋の説明に茶柱は愕然とする。

 

「億…そんな…だが、なぜだ!なぜ綾小路と高円寺を連れて行くんだ!その二人がお前の役に立つと思っているのか!」

 

「おやおや、茶柱後輩、おかしなことを聞く。私は毎年入学生の資料を学校から購入しているのでね。綾小路君には非常に目をかけていたんだよ、君もそうだろう?」

 

その言葉に茶柱は目を見開く。

 

「茶柱ティーチャー。私はもしマウンテン先輩と同じクラスになったら彼に協力するように父から言われていてね。どうやら父は学園時代、彼にAクラスへ上げてもらった恩があるらしいんだ。私としては面倒な話だが、これも後継者としての努めというやつさ」

 

高円寺はやれやれと言った顔で言う。

 

「綾小路!お前、目立ちたくないんじゃないのか?山田とAクラスへ行くということは注目されるということだ。卒業後にどうなるか分かっているんだろうな」

 

微かな希望にすがるように茶柱は言うが、綾小路は無表情で答える。

 

「あー、それに関しては山田先輩が魅力的な案を提案してくれました。オレも彼と一緒にここにずっと残ることに決めたので問題ありません」

 

その言葉に茶柱は唖然とした顔をする。

 

「茶柱君。どうやら君は第二の山田君を作り出してしまったようだね」

 

今まで黙って様子を見ていた坂柳理事は厳しい顔を茶柱に向ける。

 

「そして。山田君から渡されたものがある。君のこの発言は一体どういう意図があったのかね?」

 

坂柳理事が懐から取り出したボイスレコーダーから、茶柱の声が流れる。

 

 

『私が出てきて良いと言うまではここで物音を立てずに静かにしているんだ。破ったら退学にする』『退学にするぞ』『退学だー!』

 

 

会議室の中に退学という言葉が虚しく響く。

 

 

「長年理事を努めてきているが、Dクラスの教諭は生徒を意味もなく退学にする権限があるのを初めて知ったよ。理事としての立場から知るべきことを知れなかったこの身を恥じて、君以外の全教諭に問い合わせをしているところだ。これについて君の意見を聞きたい」

 

 

茶柱の顔は蒼白を通り越してもはや死人のようであった。

 

 

「茶柱。だから言ったんだ。本当にそれで良いんだなって」

 

 

真嶋教諭の言葉を最後に茶柱"元"教諭は崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 

茶柱BADEND

 

 

 

 

「掘北?ああ、あの馬鹿娘2号な?あれについては掘北会長が試練を与えてほしいって言うんでDクラスに残してきたぞ。本当ならあんな傲慢な奴は徹底的に潰して退学にさせる所だが、手加減してこの3年間で成長させることにしたよ。彼には去年Aクラス潰しの情報をリークして貰った恩があるからな。まぁ叶わぬAクラスへの理想を抱いて溺死しなければいいけどな」

 

 




茶柱先生って凹ましたいと思わないですか?
そんな事考えてるのって私だけですか?
あと掘北の序盤の態度はあんまりにも苦痛です。
掘北なら山田のことを絶対馬鹿にして自分のために持ってるポイントを出せとか言い出すだろうね。
「無能なあなたが大金を持っていてもドブに捨てるようなものよ。私みたいな優秀な生徒が有効活用してこそ意味があるの。あなた、Aクラスへと上がりたいのでしょう?ならさっさと有り金全部差し出すことね」
とか言いそう。そして山田君プッツンしそう。


追記
3回目の悲劇で最初に行った詐欺っぽい契約ですが。
もしSシステムを理解してるDクラスの有能オリ主や、Dクラスが0ポイントになる事を知っている転生者が居たら出来るんじゃないかなって考えていました。
来月も10万が入ると思ってる人に
「大きい買い物をしちゃってポイント枯渇しちゃったんだ、来月までに返すから5万貸してよ。もし返せなかったら来月1日に入るポイント分を利子含めて全額渡すから」
って言えばお利口なAクラスや、友達思いなBクラスの人はホイホイ5万貸してくれそうですよ、特に葛城や戸塚や一ノ瀬さんとか。
んで5月になったら「ポイント0だから、0ポイント渡すね。これで完済です。契約書にもそう書いてるでしょ?」って言えばOK。山田君の場合は念の為10~20にクラスポイントに調整して1000~2000ポイントぐらい払ってるだろうけど。
でもこの場合、全方位に敵意を買うので、Aクラスなら先に坂柳に話を通して葛城派にのみするとか、Bクラスを完全に敵に回してもいいと覚悟完了するとか、そういう強気プレイが必要になるでしょうが。Cクラス?そんな事を他クラスにやる時点で龍園に目をつけられるのでやるならCクラスからも搾り取りましょう。
あとは契約時に「こんなポイント借りたなんて恥ずかしいから黙っててください」って言って契約について秘密にする条件つければOK。
こんな感じの詐欺っぽい事ばかり考えています。
他のSS作者さん、使いたい方はどうぞこの案を使って坂柳さんや龍園くんをにっこりさせてください。
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