転生したらオーガだった件   作:腐った林檎

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今回だけだから、シリアスは今回だけだからぁぁぁ!
マジで許してください。低評価はいやんです。こっから救済ルート来るから!お気に入り外すんじゃねぇぞ(心の底から心配している)


父さん

 その日はいつもと変わらない一日だった、はずだった。

 

 

 

 長い白髪を後ろで束ねた女性が慣れた手つきでご飯をよそい、その女性の娘と思える少女がパタパタと料理は食卓に載せる。色とりどりの食材がふんだんに使用された料理が食卓の上に並んでいるのを見るに食事の準備をしているのであろう。

 

 今家には二人しかいないのに間違えて三人目の分もよそってしまったと笑い合っている。彼女らの家庭はオーガの里の中でも有名だ。一騎当千の力を誇る女傑に、ここにはいないが里一番の弓の腕前を持ち風の弓兵とも称された男、そして里の中でも類稀な天賦の才を持つと期待されている天才児。

 

 三人は一人一人の個性が強いものの他人に好かれる人柄をしており皆から人気も高い。尚且つ、その女傑の腹に第二子が宿ったという話題も相まって良くも悪くも有名だ。

 

 女性と少女はひとしきり笑い合った後に(少女は少し微笑んだだけだったが)、余分によそってしまった分を鍋に戻し席に着く。何世代も前から受け継がれている家屋であることも影響もしているのか、茶の間はまるで公家の一室のように広く質素だった。

 

 二人は手を合わせて「いただきます」と声を揃えて呟く。それは元々里に伝わる食前の作法であり、山の恵を頂戴するため感謝を込めて食そうという意なのだ。

 

「……なんか、血の匂いがしませんか?」

 

 箸えと伸ばしていた手を止め、確かめるように少女が数回すんすんと鼻を鳴らし疑問を口にする。

 

 しかし女傑は目線だけこっちに向けて「肉切ったときの残ってんじゃねぇの?」とだけ返し黙々と箸を進めるだけだった。

 

 彼女の言う通りオーガの里では肉を主菜に使った料理が多い。理由は単純に肉が好物である者が多いため。当然、肉料理は毎日出されるし一人当たりが消費する量も多い。なので血の処理も時間がかかってしまいどうしても適当になってしまう。匂いが残っているのもそのせいだろう。

 

 少女はそう納得し止まっていた箸を動かそうとして

 

 

 コンコン

 

 

 突然叩かれた戸の音に驚いて手の平から箸を落としてしまった。それを急いで拾う少女を流し目で見ながら、女傑は「誰だっつーの」と席を立ち戸を開ける。

 

「お、機織りのジジィじゃねぇか。もう帰ってきたのか?」

 

 戸を開けた先にいたのは、泥で身体中汚れた老人だった。

 

 甲冑越しでも分かる屈強な身体と幾数の傷跡は歴戦の兵士だという証拠である。普段は機織りの爺さんと子供達から呼ばれるほど温厚な性格であるが、刀を持つと豹変しバーサーク状態になることで戦場でも里内でも有名である。

 

 彼は人間からの依頼で(アイツ)らと一緒にファルムス王国に行ったはずだが……と女傑は頭上に疑問符を浮かべる。「まさか老いて身体が動かなくなってしまって途中で離脱してきたんじゃねぇだろうな」と煽るも男は突っ立ったままで一向に一言も喋ろうとしない。その代わりと言わんばかりに無言で木の枝を掴んだ手を突き出す。

 

「あ……?んだこれ」

 

 男が掴んでいた木の枝を手に取り、訝しげに観察する。どこにでもある木の枝だが良く見れば強度を高めるために塗料が塗り込まれているのが分かる。中央部分には誰かが強く握ったような跡が残っており、木の枝の形も少しカーブが利いているように思える。だが、特徴といえばそれだけだ。ジジィが何の意味もなく木の枝を渡すとは考えられず、再度じっくりと観察し

 

「んー、どっからどう見てもただの木の枝にしか見えないん――――――は?」

 

 ……言葉を失う。開いた口が塞がらないとはこのことだろう。鈍器で直接脳を叩かれたような衝撃が女傑に走ったのだから無理もない。

 

 これはただの木の枝ではない。しなやかさと確かな頑丈性を持っており、中心には大の男が握ったような手跡がある。よく見れば若干血のようなものも付着しているのが目に取れる。枝の両端には極細の限りなく透明に近い白色の糸が巻きついていて、途中で千切れてしまっていた。

 

 それは、どうしても女傑には弓だったものにしか見えなかった。

 

「母さん。どうしたのですか?ご飯が冷めてしまいますよ」

 

 一向に戻らない母を心配してのことか少女は床に座ったまま女傑の背中に声をかける。

 

「―――――ッ!……なんでも、ない。お前は、先に食べてていい」

 

 動揺を隠し、顔に笑顔を貼りつけ答える。

 

 まだ疑問に思っているだろうが察しが良い少女は敢えて母の指示に従い鍋に箸を伸ばし始めた。それを横目に見てほっと息を吐く。愚直な自分の娘とは思えない心配りだ。やはりアイツの血が強いのだろうか。だが容姿は母寄りだと自分を鼓舞した思い出がいくつもある。それらは今になっては良い思い出だ。そして、女傑のお腹にいる新しい家族もきっとアイツのように優しくて

 

「あ……ああ…………!」

 

 心臓の音はうるさいくらいに鳴り続けているが、今はそんな場合ではない。

 

 この――――弓には、見覚えがあった。幼い頃から共に森を駆け抜け、戦場では互いの背中を預け合った戦友にして……初恋の男。その男も、確かこのような弓を使っていた。

 

 自然と呼吸が早くなる。何を思ってこの老人は弓を私に渡したのだろうか、そう聞きたくて口を動かすも出るのは自分が意図して出たものではなかった。

 

 

「あ……う……あああああああああああああああああああああ!」

 

 

 自分の、心の悲鳴。心の断末魔。それらが涙と共に止めどなく溢れ出てくる。

 

「あっあああ!うああああああああああああああああああああ!!」

 

「母さん!?大丈夫ですか!」

 

 急に蹲って叫び出した母に少女は持っていた箸を放り捨て瞬歩法で女傑の隣に移動する。だが女傑は娘の心配する声など耳に入っていないのか悲しみが籠った意味のない言葉を叫ぶだけだ。

 

「母さん!落ち着いてください!どうしたんですか!」

 

 必死に何度も肩を揺するも全く反応しない母に痺れを切らし、戸の前で突っ立っている老人に目を向ける。

 

「どういうことですか!?説明してください!」

 

 老人は少女の問いに反応しない。このクソジジィ……!と手が出そうになるが必死に堪える。この老人は動きが遅いことでも有名なのだ。

 数秒待ってみればゆっくりと老人は泥だらけの手を合わせ口を開いた。

 

 

 

「死んだのだ。お前の父が」

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 老人の言葉に少女は目を見開く。何を言っているんだという感情が湧き出るが、老人は少女の心の内など知らないように口早に懺悔するように呟く。

 

 

 

 

「全ては人間の罠だったのだ」

 

「急に……どうしたんですか?」

 

「魔物にやる金はないと言われた途端白い鎧を纏った者達が襲い掛かってきた」

 

「だから、何の話を……」

 

 

 目元を隠すように兜を前に下げ老人は掠れた声を出す。

 

 

 

 

「その者達が所属するのは、西方聖教会」

 

 

「そんなこと言われても―――――――は?教会?」

 

 

 老人の言葉の内に、妙に耳に残るものがあった。今日日生きてきて一度も耳にしたことがなかった言葉だったが、前世では何度も耳にしているし実際に教会に行ったことさえあった。だが、それは前世での話だ。今世においては無に等しい。

 

 一つ、一つだけ心当たりがあるとすれば

 

「魔女……教……」

 

 リゼロ世界において重要な役割を持つ魔女教。それぞれの大罪を司る魔女がいて、それらを讃える……なんてものだったはずだ。魔女については辛うじて暴食と強欲があったのは覚えているがそれ以外には思い出せない。オーガの里を襲ったのだからきっと襲撃なんてものを頻繁にやっていると思っていて、何を目的に活動しているかは知らないし本当に初歩的な知識しかないのだ。

 

 せめて少しでも情報を得ようと老人の言葉に耳を傾ける。

 

 

 

 

 

「魔物の殲滅を教義に掲げる者達の溜まり場だった」

 

「…………」

 

 

 

 

 魔物の、殲滅。

 

 

 

 

 

「我らは為すすべもなく壊滅された。生き残ったのは儂のみ」

 

 

 

 生き、残った。

 

 

 

「せめて散っていった同士達の遺品をと戻った先にはこの薄汚れた弓しか残っておらんかった」

 

 

 

 散っていった、同士達。

 

 

 

「その場にあった穿たれた大地は恐らくお前の父によるものだろう」

 

 

 お前の、私の父。

 

 

「アイツは、生涯の最後にて“鬼人”と並んだのだ」

 

 

 生涯の、最後。

 

 

 

 

「お前の父親は、偉大な誇り高き風の弓兵として死んだのだ」

 

 

 風の弓兵として、死んだ。

 

 

 

「は……は、そんなバカなこと私が信じるとでも」

 

 

 

 老人の話を全く信じていないように、或いは揺らいでいる自分に言い聞かせるように声を絞り出す。ああ、魔女教について聞こうとしていたのに真っ赤な法螺話だったとは。なんて嘘つきな老人なんだろう。オーガの里の老害という称号を与えてやろうか、と頭の中で意味のないことを必死に思考し続ける。まるで現実から目を背けるように。

 

「あ……」

 

 ふと、叫びさえ出なくなった母――――女傑の方を向く。未だにボロボロと涙が流れ落ちているが、どうやら先程のような錯乱状態は収まったようだ。そう安堵した瞬間、視界の端にある物が入る。

 

 

「あああ……」

 

 女傑の腕の中に抱かれた、どこにでもあるような木の枝から目が離れない。どこかで見たことがある、そんな気分に陥った途端全身から血の気が引く。

 

 どこかで見たことがる、なんてものじゃない。

 

 自分の父親の愛用していた弓にしか見えない。何故ここにある?当然だ、老人が言っていたじゃないか。私の、俺の父は――――――

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

 

 

 少女が突然叫び出し、狂ったように家の中へ走り戻る。

 

「おい、落ち着け!」

 

「ああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 うるさい、誰だこの声は。

 

 

 階段を転げ落ちそうになりながらも這い這いで登る。

 

 

「ああっあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 耳元で叫ぶな、頭痛がする。

 

 

 荒い呼吸を気にもせず戸を勢いよく開けて部屋に飛び込む。その拍子に部屋の中にあった木刀や机が吹き飛ぶ。

 

 

「ああああああ、あはははっはははははははははははははは!!!!」

 

 

 ああ、机を倒してしまった。後で謝らないと。

 

 

 畳に敷いてあった布団に蹲り、何かに縋るように布団を抱き締める。

 

 

 

「あはははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 

 

 高らかに狂気に満ちた声を上げる。

 

 

 きっと父は死んだんだ。だから母もあんなに取り乱したんだ。それ以外に考えられない。考えることが出来ない。頭の中がそれで一杯一杯で破裂しそうだ。……ああ、それも案外いいかもしれないな。人殺しにはお似合いの死に方だ。父も死んでその娘も死ぬ。実に滑稽だ。

 

 

 そう、父は殺した、殺したんだ私が。

 

 

 あの日、父に母の腹の中にはお前の新しい家族がいると言われ、くだらない感情で悪戯を父の弓に施した。父はとっても強い人だから、きっとこの悪戯がなかったら今もこの世界にいただろう。

 

 

 でも、もういない。私が殺したんだから。

 

 

 直接殺したわけじゃない?そんな都合のいい話があるか。父は、私がどこに隠れてもすぐに見つけ出すし、遠く離れたそれこそ数キロはある先を視認することだって出来る。弓の腕だって百発百中の凄腕だ。私の悪戯以外に負ける要素がない。

 

 

 

 私が、殺した。

 

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『破綻者(クルウモノ)』獲得………成功しました。同時に「夢の虜()」を発動しました≫

 

 

 

 ああ、父さんの声がする……。

 

 

 

≪ユニークスキル『破綻者(クルウモノ)』の「能力狂化」により同等又は高位の能力(スキル)以外の下位の能力(スキル)を黒化……成功しました≫

 

 

 

 ごめんなさい、全て私が悪かったんです。

 

 

 

≪エクストラスキル『遠視』『魔力感知』『物質錬成(剣)』『流水岩砕拳術』etc……を黒化。成功しました≫

 

 

 

 いかないでお父さん。私を置いていかないで。

 

 

 

≪ユニークスキル『破綻者(クルウモノ)』が魂へと干渉……状態異常無効により遮断されました≫

 

 

 

 私もそっちに連れてって。

 

 

 

 

 

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

 

 

 

 

 

≪精神状態への悪影響を確認……「夢の虜」を強化発動します≫

 

 

 

 

 

 

 

 一人ぼっちは嫌だよ――――――――――――――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『破綻者』

 
 ・能力狂化 同等、又は高位のスキル以外の下位スキルを豹変―-―-黒化させる。

 ・夢の虜 不安定な精神を抑えつける一時的な夢。所有者の「こうであってほしかった」という夢を見せ続ける。

 ・幸セナ記憶 自分の幸せの思い出を代償に新たなチカラを得る。
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