神が讃えしその駿駆   作:松武栗尾

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第三十六話 『五冠』な日々 その一

 シンザンの朝は早い。

 

 日の長い季節は午前三時に、短い季節は午前四時に目を覚まし、朝と呼ぶには夜闇がまだ濃い時間に準備体操と日課のランニングを小一時間こなしたらひとっ風呂浴びて朝食を摂り、温かいお茶を喉へ流し込みつつ朝刊を読み耽る。

 

 それが『五冠バ』シンザンの一日の始まりであり、普段と何ら変わらぬ日常である。

 

 今日も今日とていつもと同じく朝四時丁度──目覚まし時計はかけていない──に覚醒し、いつも通りに掛け布団を捲りながら起き上がる。

 

「……」

 

 ……ことはせず、瞼を半分開けて天井をじっと見つめて動かない。

 

「……」

 

 金縛りにあったかのように微動だにしないシンザンはたっぷり三十秒、暗闇を見つめ続け、そして……。

 

「……」

 

 

 

「……寒い」

 

 

 

 冷め切った部屋の空気にふるりと体を震わせると、掛け布団を頭まで引っ被った。

 

()()になったもんだわねぇ本当)

 

 布団の中で体を丸めながらシンザンは胸の内でぼやく。

 

 トレーナーが亡くなる(休学に入る)以前は暑かろうが寒かろうが雨だろうが雪だろうがお構いなしに走ったものだったが……最近は気分が乗らない日もあり、日課と呼ぶには少々首を傾げたくなる状態である。

 

 特に、寒くて雨や雪が降る日はことさら日課のランニングが億劫に感じるようになってしまった。

 

「セッちゃんがいてくれればなぁ……」

 

 足で引き寄せた冷めた湯たんぽを足元へ追いやりため息をつく。学生寮時代、よく布団に潜り込み懐炉代わりにしていた同室でありチームメイトでもあったセッちゃんことオンワードセカンドの温もりが懐かしい。

 

 とはいえ今のシンザンは学生寮の外で下宿している身であるし、友は既に卒業してしまっている。あの温もりで暖を取ることはもう叶わない。

 

 ともあれ悲しい現実とセッちゃんへの想いは一旦脇へ置き、うーんとシンザンは布団の中でもぞもぞしながら今日の日課をこなすかどうかを考える。

 

「……うん」

 

 考えに考えた後に一つ頷くと、布団から這い出て伸びをした。

 

「サボろう」

 

 しばらく悩んだ末に判断を下し、そうと決まればと意識を切り替え、さむさむと肩を抱いつつ暗闇の中で朝支度を始める。

 

「叔父貴に笑われるな、こりゃ」

 

 シンザンはふと動きを止めると、下宿先の主のことを思い浮かべる。やれやれと眠気混じりの頭を振り、いそいそと布団を畳みに取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

「うー……しばれるっ」

 

 いつも以上に十分な時間を朝の日課へ割いた後、シンザンは登校の支度を終えて日も昇っていない時間に下宿先を出て、寒気に身を縮こませながら河川敷を一人歩いていた。

 

「やっぱり、浦河(くに)とはまた違う寒さだべや」

 

 東京に出て初めての冬が訪れたときも思ったが、北海道の方が気温が低いのに体感ではこちらの方が寒さを強く感じることが多々あった。気温も高く、雪だって全然降らないのにである。

 

(まぁ今日は雪が降るかもしらんそうだけども)

 

 やっぱり北風が助長しているのかしらとぼんやり考えつつ、シンザンは足を止めると空を見上げた。

 

 見れば重苦しい灰色の分厚い雲が低く立ち込めており、空を遮っている。

 

 予報によると今日の気温は一日中上がらず、おまけに低気圧が関東一体を覆うように南から北上してくるそうだ。

 

 十中八九降りよるわな、と湿り気を帯びた重たい空気に鼻をひくつかせ、シンザンは薄闇に満ちた河川敷を再び歩き始める。

 

「寒いせいもあるのか人っ子一人見かけないねぇ」

 

 人気のない河川敷を見渡しながら「朝も早いしこんなもんかぁ」と独りごちる。

 

 今日は普段よりも大分早い時刻に下宿先を出て、本来の登校路とは大きく外れたルートを歩いていた。日課のランニングをサボタージュした代わりの運動がてらの散歩である。

 

 まあ比較するのもおこがましいくらい運動量としては足りていないが。

 

「にしても叔父貴め……予想通りの反応しちゃってからに」

 

 ふと朝の食卓でのやり取りを思い出すと、シンザンは忌々し気に顔をしかめた。

 

 下宿先の主人である叔父貴とは長い付き合いである。

 

 そもそも叔父貴もかつてはトレセン学園のトレーナーを勤めており──担当ウマ娘がダービーの栄冠を手にしたこともある──加えて自分のチーフトレーナーであった親分とも親しい間柄だったこともあって、現役の頃からお世話になっていた。

 

 そういった関係もあり、同級生がおらず(皆卒業してしまった)、加えて自分の入寮で後輩たちに気を遣わせそうだなと寮に入るべきか否か悩んでいたところを叔父貴の好意で自宅に下宿させてもらっているのだが……。

 

 

 

 

 

 ──最近、()()が足りてないなあ。

 

 

 

 

 

 朝風呂でさっぱりしてさあ朝餉だと食卓で顔を合わせるや否やこれである。

 

 気心の知れた仲ではありからかわれていることは百も承知だが、その台詞をぶつけられてシンザンは思わず鼻白んでしまった。

 

 無論、図星故にだ。

 

「いやはや……付き合いが長いのも困りもんだべや」

 

 気合なんてのは必要な時必要な分だけ発揮すればいいんだなんだと言ったところで叔父貴は「それもそうだね」と柔和に笑っていなすだけ。現役時代を、それも身近に知っている人だからこちらの言い分もお見通しな訳である。

 

 嫌になっちゃうわねぇと肩を竦めるシンザンだったが、叔父貴のことは一旦忘れることにして、目線を横を流れる川の方へと向けた。

 

「綺麗になったもんだねぇ」

 

 昔は経済成長に伴う環境汚染が社会問題化していた時分で、目の前を流れる川もご多分に漏れず生活排水が垂れ流されていた影響で酷く汚染されていたものだ。

 

 しかし今はこうして土手上から臨んでいる限りでは悪臭はしないし……冬だから香ってこないというのはありそうだが。明らかな濁りも見えない。法規制やインフラ設備のお陰もあって水質も改善されたのだろう。

 

(そういえば)

 

 もう少し上流へ向かえば昔のようにアユやイワナが獲れるのかしら、との考えが脳裏を過り、シンザンはふと思い出す。

 

 

 

(セントライトさんに食べさせてもらったなぁ)

 

 

 

 魚獲りや鳥撃ちなどに連れ出してもらい、獲った得物をご馳走になったり、あの雄大なバ格に似合わぬ手先の器用さで打った網は自作したんだと、言葉少なに語りながら投網なんかの作り方を伝授してもらったことがひどく懐かしい。

 

 ……鉛玉の作り方まで教えてもらったが、こちらは日の目を見ることはないだろう。

 

「ミハルもしょっちゅうお声掛けされてたっけか」

 

 目黒記念、天皇賞、有マ記念と対峙したミハルカス──普段は遠慮がちな性格のくせして勝負するときは大胆になるウマ娘で、引退レースとなった有マの四コーナーでのコース取りなどまさしく大胆不敵そのものだった。

 

 そのミハルカスも何故だかセントライトのお世話になっていたそうだ。当時は気に留めていなかったが、今更ながらそのような関係に至った経緯が知りたくなった。

 

「今度電話したら聞いてみようかねぇ。セントライトさんには……聞けないしなぁ」

 

 デビュー時期が一年早いミハルカスならともかく、セントライトとは年も世代も離れている。友人感覚で連絡など取れるはずもない。

 

 それに、彼女は『()()()()』の末席に連ねるような身分のウマ娘だったと聞いている。

 

 日高の片田舎で生まれ育ったシンザンとしては出自の違いから気安く関わっていいものかと遠慮気味になってしまうのは致し方ない。

 

「にしては朴訥とした方だったのよねぇ」

 

 加えて、立派な家柄の生まれのはずだが庶民の方便(たずき)に随分と詳しい上に手慣れていたのが印象深い。

 

「いやねぇ全く……時代の荒波っていうのは」

 

 とシンザンはため息をつき、のんびりまったり歩を進めながらあれやこれやと過去を振り返りながら学園への道を行く。

 

 見渡す限りの武蔵野に田畑が広がっていた時代、東京競バ場前駅がまだ存在した時代*1、大先生の自宅が府中の坂上にあった時代……。

 

 現在から現役当時を振り返ってみれば何もかもが変わってしまった。勿論、大部分がいい意味でだが。

 

 とはいえ住宅地が増え、高層化し、洗練され、木造建築などまるっきり見なくなった。かつて存在した府中の街並みとは異なる風景の中を歩いていると、まるで自分が半世紀以上もタイムスリップしたような感覚に囚われてしまう。

 

「……待てよ。いつぞやおんなじこと考えたような──お」

 

 学園までもう少しというところ、自分の発言に既視感を覚えるシンザンの視界に前を歩く一人の女性の姿が映った。

 

 コートを羽織り、ハンドバッグを肩に下げた見覚えのある緑の帽子。シンザンはにやりと笑い、こそこそと背後へと近寄って軽く息を吸った。

 

「あらあらぁ、こんな朝早くにべっぴんさんに会えるなんて今日はついてるなぁ」

「わっ」

 

 無防備な背中へ向け、少しだけ張った声を投げ付ける。

 

 驚いて肩をぴくりと震わせ、慌てて振り返った女性──理事長秘書の駿川たづなへシンザンは手を振った。

 

「たづなさん、おはよう」

「もうっ、シンザンさんったら。朝からからかわないでください……って、わあっ」

 

 頬を脹らませるたづなだったが、シンザンを見るやいなや目を丸くして──

 

「シンザンさんっ、それ『真知子巻き*2』じゃないですか!」

 

 両手を合わせ目をきらきらさせるたづなの姿にシンザンもうんうんと満足げに頷いた。

 

「今日は寒いから巻いてみたんだぁ」

「うわー、懐かしい……!」

「んふふ〜。流石たづなさん、分かってくれると思ってたよ。どう、似合う?」

 

 今朝は冷え込みが強く余りに寒かったので登校の道中、母から教わったやり方でマフラーを巻き付けたのだが、何でも昔の映画が切っ掛けで流行った巻き方だったそうだ。

 

 映画好きの彼女なら気づいてくれるはず、と期待したシンザン。予想は見事的中、流石はたづなさんだとの想いを新たにした。

 

「はい、とってもお似合いです! 学生時代、私も真似したなあ」

「当然だけど、たづなさんにもうら若き学生時代があったんだんね──ん?」

 

 うっとりと目を細める彼女の発言に「学生時代?」とシンザンは思わず首を傾げる。

 

「…………ま、いいや。そんなことよりたづなさん、ちょいと失礼」

 

 ……が、芽生えた違和感を頭から放り出し、たづなの横に並ぶと彼女の腕へ自分の腕を回した。

 

「あ、ちょっとシンザンさん──」

「今日は寒いからね、人の温もりが恋しいんだ。それとも何? たづなさんはわたしと手ぇ繋ぐのは遠慮したいって口な訳なの?」

「そういうことではないですけど……」

「じゃあ良いじゃない、学園くらいまでは。ねぇ?」

 

 そう言ってシンザンは両腕で掴んだたづなの腕にもたれ掛かる。

 

 一応年齢や立場(体裁上のである)もある。が、甘えられる相手には多少甘えたってバチは当たるまい。

 

「はあ……もう、仕方ありませんね。見かけに似合わず甘えん坊さんなんですから」

「んふふ~。わたしに姉がいたらたづなさんがいいなって思ってたけど、わたしの目に狂いはなかったね」

「おだてても何も出せませんよ。そんなことより、この時間帯の登校なんて珍しいですね? 私、シンザンさんに初めてお会いしたような気がするんです」

「まぁ今日は偶々だから。たづなさんこそこんな朝っぱらに出勤してるんだ?」

「そうですよ」

 

 見上げながらシンザンが尋ねると、ずれた帽子の位置を調整していたたづなはうんと頷いてみせた。

 

「今日はグラウンドの状態を確認するので普段よりちょっとだけ早いんですけどね。今日は一段と冷え込んでますし」

「今日は雪になるかもしらんからねぇ」

「それに、スポンサーとの折衝や学園運営や学園行事といった多くの業務を任せていただいているので、早めに出勤するに越したことはないんですよ」

「ほぉー」

 

 「でないと中々処理し切れなくて」とほっそりとした人差し指を立てながら苦笑する彼女の説明にシンザンは目を丸くする。

 

 金に物言わせるだけのけちくさい企業連中、礼節を弁えないマスメディアを向こうに回し、加えて可愛らしい理事長さんや個性豊かな生徒たちの無理難題に応えるために昼夜を問わず東奔西走する彼女の姿が容易に想像できた。

 

 まさしく企業戦士*3、いや学園戦士の鑑である。

 

「ほおーって、シンザンさんも理事長秘書()の大体の業務内容を把握できる立場だったでしょう?」

「まぁそうだったけどねぇ」

 

 半眼にたづなの指摘をシンザンは頬を掻いてすっとぼける。

 

 もちろん図星だったからだ。

 

「にしてもだ。たづなさんも今じゃ立派な皆の頼れる理事長秘書さんだよねぇ」

「生徒の皆さんやトレーナーの皆さんが何不自由なく学園生活とトレーニングに精を出せるようサポートするのが私の職務ですからねっ。しっかりしないとですっ」

 

 ふふんと誇らしげに胸を張るたづなを、シンザンは微笑ましい気持ちで見つめた。

 

「見習い時代は()()()()のしごきでいっつも半べそかいてて、頼りなさげだったのにねぇ」

「うっ」

 

 入学当時、たづなのトレセン学園への入職時期が被っていたこともあり、シンザンは多忙ぶりに目を回す彼女の姿をよく覚えている。

 

「た、確かにあの頃の私は未熟ではありましたけど、その……半泣きになっていたのはまた別の理由がですね……」

 

 生徒たちや若いトレーナーの知らないたづなの初々しい時代を知る身だったのでそのちょっとからかってみると、彼女は遠い目をしてしまう。

 

 ……恐らくだが、彼女の先輩──前任の理事長秘書──との日々を思い出しているのだろう。

 

「ま、おっかない人だったからねぇ。トシヱさん」

「…………はい。藤林先輩、大変『おっかない』方でしたから」

 

 言葉の返ってくるまでの間に切実さを感じ、なんとなく申し訳ない気持ちになったシンザンは暫し口を慎むことにする。

 

 誰にだって振り返ることを遠慮したい過去の一つや二つはあるものだとしみじみと感じ入った。

 

 

 

 

 

「皆の衆ぅーおはようさーん」

 

 おどけながらシンザンが教室へ足を踏み入れると、それまで思い思いに過ごしていたクラスメイト──残念なことに皆後輩だが──が一斉に振り返る。

 

「「「「「おはようございますシンザン先輩」」」」」

「まぁーったく朝から堅苦しいねぇ」

 

 示し合わせたかのように揃った挨拶が返ってきた。

 

 いつものことなので慣れてはいるが……如何せん現在のクラスメイトは休学以前からの在校生なので仕方ないかシンザンは肩を竦めた。

 

「お、久し振りだねぇ。脚の具合は良くなったのかしら?」

「お陰様で大分良くなりました。湯治って本当に効くんですねえ」

「湯治? 本当は温泉満喫したかっただけで脚の不調は方便と違うの〜?」

「そ、そんなことないですよ……っ」

「へへ、どうだかねぇ〜」

 

 

 

「あらっ、自分耳飾り変えた?」

「気付きました? 実はこれ、仲の良い後輩からの贈り物ッス!」

「へぇ~、よっぽど仲が良いんだねぇ。その後輩、大切にしなきゃ駄目よ」

「勿論ッスよ!」

 

 

 

「そうだ、この間はお茶会に呼んでくれてありがとうね。これ、つまらない物だけどお礼」

「お礼だなんてとんでもございませんっ! こちらこそ貴重な機会をいただけて恐悦至極でありましたわ」

「久し振りに記念コンビにも会えたし、昔話に花を咲かせてもらって楽しませてもらったよ」

 

 

 

 冗談を交えつつ後輩たちへ声を掛けながら──途中出来の悪い後輩(ミナガワマンナ)を押し退けて──窓際の一番後ろの自席へと辿り着くと腰を落ち着かせた。

 

「あーどっこいしょお」

 

 呻き声におじさん臭いですね、と周囲の後輩たちが苦笑が漏れ聞こえてくるが、同時に彼女たちも各自の席へと着き始める。

 

「こらっ。自分ら、毎度毎度人を時報代わりにしてるんじゃないよ」

 

 シンザンが拳を振り上げながら声を上げると、再び後輩たちから笑いが上がった。

 

(まぁわたしが同じ時間に教室入るのが悪いんだけどねぇ)

 

 「時計を見なさい時計を」と苦言を呈しつつも扱れ方は受け入れている。何せ、必ずホームルームの始めるきっかり十分前に教室に入っているのだから。

 

「にしてもまぁ、朝稽古しないと時間を持て余すわねぇやっぱり」

 

 普段から登校時間が早いのが、今日のように朝のランニングをおサボりしたこともあっていつも以上に早く学園についてしまうと手持ち無沙汰になってしまう。

 

 そんな場合はケンさんのトレーナー室で寛いだり、カフェテラスで一服したり、図書室で気の向くまま書籍に目を通したりして過ごしている。今日に限り登校路で鉢合わせしたたづなさんに着いて一緒にグラウンド状態を確認したりしたが……。

 

「けど、冬は寒いからなぁ」

 

 朝練による充実感と呑気する空き時間とを秤にかけていると、担任教官が姿を現したのでシンザンは一旦思考を中断した。

 

「皆さんおはようございます」

 

 おはようございます、と一同挨拶を返し終えると教卓に立った教官は早速ですがと言って連絡事項を述べ始める。

 

「本日のグラウンド使用についてですが、コンディションと雪の予報を考慮しグラウンドの使用を一部制限し──」

 

 担任教官の連絡事項を胸に留めつつ、窓の外へ目を向ける。

 

「……今日は基礎練習に変更だぁね」

 

 窓の外に広がる灰色の景色を眺めながら、放課後に控えている後輩たちとの練習内容について考えを巡らせつつ、ホームルームの終了を合図にしてシンザンは授業へと意識を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラシック三冠レースと呼ばれる皐月賞、日本ダービー、菊花賞は一生に一度しか出られない特別なレースであり──」

「…………」

 

 

 

 

 

「この説明、三冠ウマ娘(わたし)も聞いたほうが良いのかねぇ……」

 

 

 

 

 

*1
かつて東京競馬場の真西、府中本町駅の真南に存在した下河原線の駅。1973年武蔵野線の開業に伴い路線と共に廃止となった。

*2
一九五二年にラジオドラマとして放映され、その人気から映画化もされた『君の名は』で岸恵子演じるヒロインの氏家真知子が巻いていたストール姿が女性の間で大流行し、ストールで頭と首を覆うような巻き方を『真知子巻き』と呼ぶようになった。

*3
戦後復興期から高度経済成長期にかけて仕事を第一とし会社のため粉骨砕身して働いたサラリーマンを指す。




これからちょこちょこ物語の本筋からちょっと逸れつつ、シンザンの過去話や交友関係、本筋に繋がる話なんかを語っていく予定です。

史実におけるシンザン陣営の人間関係や当時の競馬界の歴史などの小ネタを含んでますので、興味のある方は調べていただけると元ネタを理解できて結構面白いかもしれません。
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