NARUTO知識ほぼ0の忍による勘違い忍法帖   作:ふくふくまる

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第二十四話 新チーム

 

 

 どうしてこんなことになったのだろう。

 

 隣に立つ二人を見る。一人はどこか浮世離れした雰囲気を持つ色白の少年──サイ君と、もう一人は長い黒髪の美しい女性──ユウさんだ。

 

「ホタル、そのぼうとした面を何とかしてくれないかな。ブスに拍車がかかっているよ」

「サイ君、厳しすぎない?」

 

 ここが日本だったらあらゆる方面から大バッシングを受けるだろう。さも当然ですと言わんばかりの顔をするサイ君に、最年長のユウさんが「女の子にそんなことを言っちゃ駄目よ」とめちゃくちゃ当たり前なことを言う。

 

 そんな二人を横目にふと空を見上げる。

 

 何でこうなったんだろう。潜入するといっても、まさか中忍試験に潜入するだなんて。

 

 

 

 

 

 時を遡って数時間前。

 火影室に呼ばれた私を待ち構えていたのは、火影様にご意見番、そして顎に傷のある御老人(相談役だろうか)だった。

 

 そんな錚々たる面子に嫌な予感がする。明らかに一下忍に対して一任務を伝える面子じゃない。

 冷や汗をだらだら流しながら部屋の中に入れば、火影様が静かに口を開いた。

 

「今回、お主には中忍試験を内部から監視してもらう」

 

 その言葉に思わず首を傾げる。

 監視するとはどういうことかと思っていると、火影様はいつもの好々爺然とした姿とは打って変わって厳しい表情で話し出した。

 

「木の葉内部に他里のスパイが潜んでいるという情報を得た。他里の交流の多い中忍試験で連中の尻尾を掴めるかもしれん」

「スパイ、ですか?」

「そうだ。また他里の下忍や引率の上忍達が何を仕出かすか。それをお主達には受験生として内部から監視してもらう」

 

 なるほど。確かに元から受験する気のない私は合否に縛られて動けなくなることはないし、現役の下忍という立場から中忍試験に潜入しても違和感はないだろう。

 

 しかし納得したけれど、気持ちの方は全く追いついていなかった。

 

(いくら何でもこの間下忍になったばかりの私には荷が重すぎるよね?木の葉隠れの下忍として身を隠している他里の忍を私一人でどうこうできるはずがないし………)

 

 けれどその時、火影様との会話にふと引っ掛かりを覚えた。

 

 お主、達?

 

「ホタルにはこの両名と班を組んで中忍試験に参加してもらう」

 

 すると次の瞬間、ボフンという音をたてて煙の中から二人の人物が現れた。

 二人とも白塗りの動物の面を付けているため顔は分からないが、体付きからして一人は少年で、もう一人は長い黒髪の女性だろう。

 

「二人とも暗部の出だ。彼らとホタル自身のやるべきことをしっかりと見定め行動するように」

 

 暗部との任務にスパイの洗い出し、また他里の忍達の監視。中忍試験がどういったものかは今のところ把握できないが、試験官だけでなくこうして内部から探らなくてはならないところにきな臭さを感じる。

 

 そして火影様から『私自身のやるべきこと』と言われ、きっと本物の下忍である私は二人の隠れ蓑となって、彼らの情報収集のサポートをすることを望まれているのだと理解した。

 

 ふと両隣に立つ二人を見つめる。

 

 暗部という特殊な忍であるため、何か起こった場合自分は切り捨てられやしないかと不安になってしまう。

 けれど上層部が揃っている手前、渋々頷くしかなかった。

 

 そしてこの不安はもっと別方向で振り切ることに、この時の私は知る由もない。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「ホタルももっと怒りなさい。こいつが付け上がるだけよ」

「年下と言い争おうとする貴女に言われたくありません」

「言い争おうって言ってるんじゃないわ。チーム行動をするのならそれなりに協調性を持った振る舞いをしろってことよ。そちらの先生に習わなかったのかしら?」

「そういう貴女は随分と甘いですね。それはそちらの方針ですか?」

 

 中忍試験の潜入任務でチームを組むことになった暗部の両名は、演習場の一角に場所を移すとお面を取って自己紹介をしてくれた。

 私と歳がそう変わらない色白の少年がサイ君で、美貌の若い女性がユウさん。

 

そしてサイ君とユウさんだが、何故かこの二人、あまり仲が良くなかった。二人とも互いに良い感情を持っておらず度々こうして言い合いを始めるのだ。

 

 ………これ、どういう人選なんだろう。チームを組むからには能力や性格に応じて編成を行っているとは思うんだけど、明らかにそれ以外の何かが含まれている気がしなくもない。

 サイ君の明け透けで失礼な物言いにユウさんが呆れて怒っているのもあるのだが、それ以前に何かある気がした。

 

(ていうか、そちらって何だろ。二人とも同じ暗部出身なんだよね?暗部の中にある隊が違うってこと?)

 

 しかしよく分からないまま暗部についてどうこう聞くのはあまりにも怖すぎる。そのまま二人の様子を黙って見ていると、ユウさんがはあと溜め息を吐いた。

 

「とりあえず、私達が中忍試験に参加するのは第二次のサバイバル試験まで。本戦予選と本戦までに他里の忍達が怪しい動きをしていないか監視して、木の葉内部にいるスパイを炙り出すわよ」

 

 彼女の言葉に頷く。ちらりと横目でサイ君を見れば、任務に対しては何の文句もないのか彼も素直に頷いていた。

 

「質問があるんですが………試験と呼ぶにはおそらく担当の試験官がいらっしゃいますよね?この任務について試験官は把握されているのでしょうか?」

「情報が漏れないよう特別上忍達とごく一部の上忍達しか伝達されていないわ」

 

 聞けば中忍試験の試験官は特別上忍と中忍達で行われており、更に秘密裏に暗部の幾人かが他方から監視するらしい。

 

 そして中忍試験への潜入について何点か詰め、日が傾き始めた頃に解散となった。

 中忍試験に推薦された下忍達の詳細と、試験官である中忍や特別上忍の把握。それから第二次試験の試験会場である死の森の地理などを頭に叩き込まなければならない。

 

(これ、サクラちゃんだったら聞いただけで覚えられるんだろうなあ………)

 

 気が遠くなりそうだが、とりあえず任務を請け負ったからには出来る限りやるしかなかった。

 

 どんよりと気が滅入っていると、いつの間にかサイ君の姿がない。帰ってしまったのだろう。演習場に残されたユウさんと二人きりになり、何故かじっと私を見つめてくる彼女にへらりと苦笑いを浮かべた。

 

 この任務において私がやれることはかなり少ない。サイ君とユウさんが円滑に動けるよう私が率先して他の下忍達と交流するのだが、足手まといになる気がしてならない。

 隊のリーダー的な存在であるユウさんに一先ずそのことを伝えようとした時、彼女は先に口を開いた。

 

「あなたのこと、ずっと前から知ってたわ」

 

 ユウさんの言葉に「え?」と聞き返してしまう。すると彼女はくすりと笑った。

 

「ホタルの担当上忍にはたけカカシって人がいるでしょう?その人、私の先輩なの」

「そうだったんですね」

「あなたのことを色々聞いたわ」

 

 色々って何だろう………。

 カカシ先生には迷惑をかけっぱなしであるため、面倒くさい生徒くらいに思われているだろう。それに表面上は仲良くやっているものの、カカシ先生と私は根本的に気が合わない。

 

「先輩から話を聞いて、ホタルがこの任務につく上で足りないものがあるのが分かったわ。それが何かあなた自身分かっているかしら?」

 

 そんなもの逆にあり過ぎて困る。

 

「色々あると思いますが、やっぱり忍としての技量がまだ足りないのは自覚しています。今回の試験では一次試験のペーパーテストと二次の死の森へのサバイバル試験がありますよね?ペーパーテストはまだしも、他下忍を監視しながら死の森を通過するのは………」

 

 それを言えばユウさんも頷いた。

 

「そうね。今の実力じゃ不安が残る。だから中忍試験が始まるまでみっちり修行をすることにしたわ」

「へ?」

「毎日体作りと忍術の練習はしているみたいだけど、それじゃあ足りないわね。持久力もそうだけど三日三晩、休息なしで動けるようにするためのチャクラの効率的な使い方。それから……」

 

 そしてユウさんが私の体をぺたぺたと触る。「本当はカカシ先輩やゲンマさん辺りに頼みたかったんだけど二人とも忙しい身だから」と言って二の腕や腹のあたりを突くユウさんに固まるしかない。

 心なしか急にいきいきとし出す彼女に戸惑ってしまった。あ、あれ?もっとクールな人だと思っていたけど、こういう感じなのかな。

 

「あ、明日から特訓ですか?」

「いいえ。今から特訓よ」

 

 嫌な予感がひりひりとして仕方がない。不敵な笑みを浮かべるユウさんの瞳に闘志が見え隠れしていて、思わずたじろいでしまったが「逃げるなよ?」とでも言うようにユウさんがにっこり笑って私の右腕を掴む。

 

 もしかしたら大人しく中忍試験を受けた方がまだましだったかもしれない。

 

 するとその時、彼女はふと表情を変えた。

 

「それから、あのサイって子には気を付けなさい」

「…………サイ君ですか?まあ、少し変わっているとは思いますが………」

 

 しかしそこではっと止まる。ユウさんがひどく真剣な表情をするものだから、そんな表面的なことを言っているのではないと察した。

 

 そして彼女はそれ以上は言えないのか「それじゃあ行くわよ!」と言って駆け出した。

 

 

 

 

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