NARUTO知識ほぼ0の忍による勘違い忍法帖 作:ふくふくまる
また戦闘シーンが苦手ですので、深く考えず読んでいただけると助かります。
影分身で分身した4人のナルトが飛び掛かってくる。
茂みの中から現れたそれをカカシはいなした。先程と同じ単調な攻撃。本を読んでいてもかわすことができる。
一人の足を引っ掛け首に手刀し、もう一人の頭を鷲掴んで放り投げる。
チームを組んでいるということは、もちろんこれだけで終わらないだろう。
カカシの予想した通り、続いて飛来してきたのは多数のクナイ。気配を探ればサクラのものだ。
サクラのクナイとナルトの攻撃を避け続ける。
するとその時、足元にワイヤーの線が引っかかった。
(───誘導か!)
木々の間から現れた巨大な丸太を前に、後ろから気配を察知する。
見れば後ろにはサスケがおり火遁の印を結んでいた。
違和感を覚えながらもサスケの手を片手で拘束し、強制的に不発させる。
(なんだ?印を結ぶのが僅かに遅い。さっき見たサスケの速度と微妙にずれている)
しかしその瞬間、サスケはボフンと煙を立てホタルが現れた。
じゃあサスケはどこに、と思ったその時、迫りくる丸太が煙を立てて消えた。
そして中から虎の印を結び終えたサスケが現れる。
「これで終わりだ!!」
サスケの様子を見るに、先程の火遁で一回切りだと予想していた。しかし二撃目を放とうとするタフさに驚く。
サスケの口から放たれる巨大な業火。
掴んでいたはずのホタルはすでにおらず、代わり身の術でも使ったのか拳大の石があるのみ。
顔面に向かう火遁の巨大な炎をカカシは跳躍して避けた。
ナルトとサクラの誘導に、ホタルのフェイク、そして最後のサスケ。想像していた以上のチームワークの良さにカカシは自然と笑みを浮かべた。
荒削りであるが伸び代は充分ある。
次の瞬間、カカシの跳躍した先の背後から野犬のような気配を感じた。
(ナルト!?サスケの火遁も誘導の内か!)
「だああああああああ!!!」
ナルトが叫びながらスズに手を伸ばす。
空中で身動きが取れない。
ナルトの手にスズが触れる。
───ま、あと一歩ってとこだな。
カカシは宙で身を捩り、ナルトの首根っこを掴んで地面に叩き落とした。
そして時計のアラームがけたたましく鳴り響く。
タイムアップだ。
◆
「だあああ!!痛えーー!!でも惜しかったってばよ!!」
「良い線いったわ!次はもっとサスケ君のポテンシャルを引き出す作戦を立てるわよ!」
「火遁の印、指がつりそう。サスケ君の速度で結ぶの無理だよ」
集合場所に集まった4人が口々と言い合う。あのサスケも手応えがあったのか、どこか晴々とした表情をしていた。
カカシは彼らを眺めながら、うんうんと頷いた。
「よーし、お前らお疲れ。とりあえずスズは昼までに取れなかったから弁当は良いよな?腹も減ってなさそーだし」
ホタル以外の一同はぎくりと肩をすくめる。レーションをきっちり食べていたため問題はなさそうだ。
そしてそれを用意した本人(ホタル)は困ったように曖昧に微笑んでいる。
「まず何点か聞きたいことがある。4人で手を組むことを思い付いたのはホタルだよな?何故一人で挑戦しようとしなかった。これがもし個人の力量を測る試験だったらどうするつもりだ」
問い詰めるように聞けばナルトとサクラは顔を青くし、サスケは厳しい表情でカカシを見据える。
当のホタルは何か考え込んだように俯いた後、口を開いた。
「………この試験が個人の力量を測る試験だとは思いませんでした」
「何?」
「もしそういった試験でしたら、わざわざスズを奪い合うようなことはせず人数分用意すれば良いだけです。けれどスズの数は3つ。わざと互いの足を引っ張り合う状況下に追い込むということは、反対に協力して試験を行うことに意味があると思いました」
それに、とホタルは困った顔をして苦笑する。
「ナルト君やサスケ君の戦闘を見て、一人で先生からスズを奪うのは現実的ではないと思いました。それだったらみんなで協力し合った方が確実にスズを取れます」
そしてホタルは同じ班員であるナルト達を一人一人見ながら言う。
「ナルト君は影分身の術を出来ることが何より強みだし、素早さもガッツもあるから場を撹乱させることができる」
「サクラちゃんは罠の作り方や術の飛距離を瞬時に計算できる頭脳がある。作戦だってきっとアカデミーで読んだ教本を覚えていたから立てられた」
「サスケ君はオールマイティだから、どういった作戦に組み込んでもうまくやれると思う。それに単純に強い」
「───ちょっと上から目線で言っちゃったけど……。こういう力のあるメンバーが集まっているなら、カカシ先生からスズを取れると思ったんです」
そんなホタルの言葉にナルトは得意げにし、サクラは照れたように俯いている。サスケはホタルを訝しげに見ているが、悪い気はしないのか何も言わない。
(───これがあの【人たらし】の娘か)
昨日今日で作られた急造チームをここまでまとめ上げる手腕。およそ十そこらの年齢とは思えない思慮深さに舌を巻いた。
長いこと里から迫害されてきたナルトは自身の力を認めてくれる他者に対して非常に弱い。サクラも、そしてプライドの高いサスケもここまで言われて満更でもなさそうだ。
「だが、時間切れだ。結局お前らはスズを取れなかった」
「弁当があるということは午後もやると思っていましたが……。でも実際は時間切れなんですね。私から言い出したことなので、みんなに本当に申し訳ないです」
素直に謝罪するホタルを前にナルト達は何も言えない。
実力を認め、さらに褒め称えてみせたホタルに強く批判できるほど子供達は非情ではなかった。
これを見越した上で先のメンバーへの賛辞を送ったのならば、彼女は相当な狸である。
「でもホタルのせいだけじゃ無いってばよ!」
「そ、そうよ!ホタルの案に乗っかったのは私達なんだし!」
「いや、でも本当にごめん……。そもそも午後からもやるって思い込んでいた私が悪かった。カカシ先生、何とかなりませんか?スズは3つあるわけだから、私以外のみんなを下忍に昇格してください」
「全員合格だ」
「は?」
カカシの言葉に全員が目を点にする。
一体何を言われたのか理解できない顔で、4人の子供達がカカシを凝視した。
「だから、全員合格だって」
その瞬間、ナルトは飛び上がり「何で!?何で!?」と詰め寄る。サクラは戸惑い、サスケは顔を顰めている。
それにカカシは苦笑しながら口を開いた。
「いいか?任務は今後班で行う!確かに忍者にとって卓越した個人技能は必要だ。……が、それ以上に重要視されるのはチームワークだ」
チームワークを乱す個人プレイは仲間に危機をもたらし、最悪仲間を殺すことに繋がる。
これまでサバイバル演習ではわざと揉めるように仕向け、それを理解しない愚か者達が何人も脱落した。
「お前らが初めてだ。今までの奴らは素直にオレの言うことを聞くだけのボンクラどもばかりだったからな」
特にホタルなんて携行食を持参する始末。
呆れたようにホタルを見たが、意外にもこの事態を想定していなかったのか目を丸くして驚いていた。
おそらくチームとしてスズを取り、誰か一人を脱落させるまでが試験だと考えていたようだ。まさか全員が合格出来るとは思ってもいなかったのだろう。
『───スズは3つあるわけだから、私以外のみんなを下忍に昇格してください』
もしスズを手に入れられたとして、自分が落ちるつもりだったのだろうか。
先程のホタルの言葉を思い出し、彼女がとんだ狸であるか天性のお人好しであるか、カカシにはまだ把握することができなかった。
気を取り直して、ぽかんとする4人に続ける。
「…………忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。………けどな!仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」
そこまで話せば、ようやく実感できたのか各々の喜びを噛み締める。何故かホタルだけ茫然としているが、おそらく想定外のことが起きて動じているのかもしれない。
案外子供っぽいところもあるんだなと思いつつ、カカシは空気を変えるように言い放った。
「これにて演習終わり!全員合格!よーし、第七班は明日より任務開始だ!」
「やったああああってばよ!オレってば忍者!忍者!!」
ナルトは歓声をあげる。
サクラは嬉しそうに笑みをこぼす。
サスケは満足そうに頷く。
そしてホタルはまだ茫然としていた。
「おーい、ホタル。いつまで呆けているんだ」
「あ、いえ。あれ?私、合格?あれ?」
そんなホタルにカカシは苦笑する。
何だかその姿が年相応の少女のように見えた。
カカシが慰霊碑について語るシーンはカットしました。自分本位のことしか考えない第七班に対してガツンと現実を教えるために話した(他にも色々と理由はあると思いますが)と思われますが、ここでは原作を変え協力しあってスズ取りに臨みましたので………。また慰霊碑について話すのは後の展開で用意できたらと思っています。
それから次回から波の国編になるのですが、現在書き溜めている最中ですので更新を少し停止させていただきます。また更新する際には、よろしくお願いいたします。