俺の命はルーレットに掛かってる   作:うろ底のトースター

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危うく半年放置するところでした申し訳ない。


大きなギャンブル

五河琴里は思考する。お題は勿論、回収した精霊のことだ。霊装を纏わず、しかし天使は持ち出して、命可愛さにASTから逃げ回り、かと思えば終いに自爆。

 

(意味が分からないわ)

 

行動に一貫性がない。むしろ矛盾さえ抱えている。

 

(ま、話を聞けば何か分かるでしょう)

 

幸い、精霊は既に保護しているし、今のところ消失(ロスト)する気配はない。目が覚めるのを待つだけだった。

 

それは、そうとして。

 

(悔しいくらい綺麗だったわね・・・)

 

五河琴里にも、女の子として自分は可愛いというある種の自負があるし、可愛くあるための努力はしている、つもりである。

 

にも関わらず、あの精霊を見たとき、謎の敗北感に襲われた。あどけなさを持ちながら大人の色気を感じさせる端正な顔立ち、煤に塗れながらも尚美しい銀髪。まるでフランス人形のようだった。

 

(でも胸は私のほうが大きいわね!)

 

そうだ、胸で勝っているならば私の勝ちではないか(?)。不可思議と謎と不明とが一遍に舞い込んできたストレスで、五河琴里の思考はちょっと変な方向にすっ飛んでいた。

 

因みに、この後目を覚ました精霊が男性であると知り、彼女は情緒が破壊されることになるが、それはまた別の話だ。

 

 


 

「──早速、本題に入らせてもらいます」

 

レストランの一角、ちょうど窓からも入口からも見られない絶妙な位置で、俺はそう切り出した。相手は件の天才、くだらない前口上は必要ない。

 

質問責めやら検査やらを済ませていたので、時刻は夜7時を回っていた。

 

俺の作戦は単純明快。転生云々を抜かして全てを明かし、その上で無害であることをアピールするのだ。これで許されるかどうかは、それこそ賭け(ギャンブル)

 

ここに漕ぎ着けるのは、まぁ、難しくはない。何かしらを知っていると匂わせて、ディナーに誘うだけだ(奢り要求)。原作既読者なら、それくらい朝飯前のはずである。

 

「…先に、いくつか質問をしてもいいかな?」

 

「どうぞ」

 

「…君は一体、どこまで知っている?」

 

確実に聞いてくると思ったよ。答えはもう用意している。

 

()()()()()。あなたが何者か、目的がなんなのか、五河士道、いえ、崇宮真士とどんな関係があるのか」

 

「…ふむ、そうか」

 

・・・よし!正直この時点で殺されないかと焦ったが、杞憂で終わった。まだ安心はできないが。

 

「…どうやって知ったんだい?」

 

「【囁告篇帙(ラジエル)】で」

 

大嘘である。が、今の彼女にこれを嘘と断ずるだけの材料はない。

 

「…なるほど、分かった。もういいよ、君の話を聞かせてくれたまえ」

 

一応の納得はしたようである。

 

そして質問の終わりは、俺の戦争(ギャンブル)の始まりを意味する。

 

「では失礼して。まず大前提として、俺はあなたの計画の邪魔をする気はありません」

 

「…全てを知っていながら?」

 

「自分の命が惜しいんですよ」

 

・・・真士に身を呈して助けられた彼女だ。思うところはあるのだろう。無感情な瞳に、少しばかり侮蔑の色が見えた。

 

「ただし」

 

無視して続ける。

 

「俺があなたの計画に加担する気もありません」

 

「…私が今、脅してもかね?」

 

「ええ、たとえ脅されても、です」

 

「…そうか」

 

喉が酷く渇いて、コーヒーを一口飲み込んだ。

 

「…手を出さない、という担保が欲しいのだが」

 

担保、ときたか。

 

「俺が【ラタトスク】に所属すること、ではダメですか?」

 

「…ふむ」

 

【ラタトスク】に所属するということは、常に村雨令音に捕捉されることと同義。つまり、常に殺せる場所にいるというのが、俺の担保ということだ。というか、【ラタトスク】に所属しないと、俺生きていけないし。

 

「…いいだろう」

 

「そうですか!」

 

「…ただし」

 

喜びかけた、なんならガッツポーズの振り下ろす直前までいったのになんで止めたんですか。

 

「…計画に必要な霊力を確保できないと判断した場合」

 

「場合・・・?」

 

ゴクリと、喉が鳴る。

 

「…()()()()()()。心しておいてくれ」

 

そう言うと、始祖は代金を置いて去っていった。

 

要するに、機嫌を損ねるなってことっすかね・・・。

 

「え、怖っ・・・」

 

寒気が背筋を走り抜けた。

 

 


 

 

「どうも、士道先輩。来禅高校一年、柊十一です。十一って呼んでください。あ、イレブンでもいいですよ」

 

「あ、ああ、どうも。十一って呼ばせてもらうよ」

 

翌日、原作通りの空間震(ドカーン)により士道(ナイト)と【プリンセス】がお出会いになり、回収された後のこと。俺は原作主人公との初顔合わせに挑んでいた。

 

余裕綽々そうに見えて実は心臓バックバクだったりする。

 

「えっと、十一はどうしてここに?」

 

「いろいろあるんです」

 

本当にいろいろあるんです。

 

「そ、そうか」

 

「そうなのです。では」

 

というわけで早々に退場。できるだけ原作に沿うことを目的とするならばキャラクターと関係を持たないのが1番。一般常識としてさすがに挨拶はするが、したらもう赤の他人である。

 

歩くこと数分。顕現装置(リアライザ)を利用したテレポートで飛んで、【ラタトスク】本部へ。でさらに数分歩いて。

 

「お待たせしました」

 

「いえいえ、こちらも先程到着したばかりなので」

 

そう返すのは、戦闘態勢の神奈月さんだ。

 

昨日の今日ので(ウッドマン卿の粋な計らいにより)【ラタトスク】構成員として認められた俺に課せられたのは、天使を用いた戦闘訓練。と言っても、精々自衛程度のものだ。

 

五河琴里曰く、

 

私の船に乗ると言うなら、昨日みたいな体たらくは二度と許さないわよ。

 

とのこと。

 

だからといって、この人かいと思ったのは内緒の話である。

 

「では、始めてください」

 

「分かりました」

 

ときに思う。数々の天使は、精霊によって銘を呼ばれて顕現する。最初から顕現していた場合を除くと、おそらく例外はない。

 

いや、例外がないというのは語弊があった。五河士道、かの主人公は、最初に【鏖殺公(サンダルフォン)】を顕現させたとき、銘を呼んではいなかったはずだ。多分、無意識的な顕現だったからだろうけど。

 

とまぁいろいろ語りはしたが、結局のところ言いたいのは、

 

『うっしゃァ行くかい、坊主?』

 

こいつは本当に天使なのか。

 

銘はなく、元々精霊のものであったわけでもない。しかし霊力は放っているし、他の天使に化ける。神様のくれた転生特典(ギフト)ってことで考えるのを辞めてもいいが、それでも謎は募るばかりである。本当に、なんなんだこいつ。

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、いえ、なんでもないです」

 

ちょっと思考に耽りすぎた。いい加減ルーレットを回そうか。

 

『ガラガラガラガラガラガラガラ〜、ジャン!!喜べ坊主!今日は3番だ!』

 

バチクソ使えずれぇじゃねぇか馬鹿野郎。

 

 

 

この後、もちろん無様極まりなく負け続けた。驕ってたわけではないけど、やっぱりあの人も大概規格外の部類に入る。

 

ただ一つ言わせてほしい。銃弾を撃ち込む度に変な声あげるのやめて、切実に。

 

 




これでも受験生なのでまた遅くなると思いますが、完結は、多分させるので、これからもよろしくです。はい。


c+javaさん
誤字報告ありがとうございました。
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