五河琴里は思考する。お題は勿論、回収した精霊のことだ。霊装を纏わず、しかし天使は持ち出して、命可愛さにASTから逃げ回り、かと思えば終いに自爆。
(意味が分からないわ)
行動に一貫性がない。むしろ矛盾さえ抱えている。
(ま、話を聞けば何か分かるでしょう)
幸い、精霊は既に保護しているし、今のところ
それは、そうとして。
(悔しいくらい綺麗だったわね・・・)
五河琴里にも、女の子として自分は可愛いというある種の自負があるし、可愛くあるための努力はしている、つもりである。
にも関わらず、あの精霊を見たとき、謎の敗北感に襲われた。あどけなさを持ちながら大人の色気を感じさせる端正な顔立ち、煤に塗れながらも尚美しい銀髪。まるでフランス人形のようだった。
(でも胸は私のほうが大きいわね!)
そうだ、胸で勝っているならば私の勝ちではないか(?)。不可思議と謎と不明とが一遍に舞い込んできたストレスで、五河琴里の思考はちょっと変な方向にすっ飛んでいた。
因みに、この後目を覚ました精霊が男性であると知り、彼女は情緒が破壊されることになるが、それはまた別の話だ。
「──早速、本題に入らせてもらいます」
レストランの一角、ちょうど窓からも入口からも見られない絶妙な位置で、俺はそう切り出した。相手は件の天才、くだらない前口上は必要ない。
質問責めやら検査やらを済ませていたので、時刻は夜7時を回っていた。
俺の作戦は単純明快。転生云々を抜かして全てを明かし、その上で無害であることをアピールするのだ。これで許されるかどうかは、それこそ
ここに漕ぎ着けるのは、まぁ、難しくはない。何かしらを知っていると匂わせて、ディナーに誘うだけだ(奢り要求)。原作既読者なら、それくらい朝飯前のはずである。
「…先に、いくつか質問をしてもいいかな?」
「どうぞ」
「…君は一体、どこまで知っている?」
確実に聞いてくると思ったよ。答えはもう用意している。
「
「…ふむ、そうか」
・・・よし!正直この時点で殺されないかと焦ったが、杞憂で終わった。まだ安心はできないが。
「…どうやって知ったんだい?」
「【
大嘘である。が、今の彼女にこれを嘘と断ずるだけの材料はない。
「…なるほど、分かった。もういいよ、君の話を聞かせてくれたまえ」
一応の納得はしたようである。
そして質問の終わりは、俺の
「では失礼して。まず大前提として、俺はあなたの計画の邪魔をする気はありません」
「…全てを知っていながら?」
「自分の命が惜しいんですよ」
・・・真士に身を呈して助けられた彼女だ。思うところはあるのだろう。無感情な瞳に、少しばかり侮蔑の色が見えた。
「ただし」
無視して続ける。
「俺があなたの計画に加担する気もありません」
「…私が今、脅してもかね?」
「ええ、たとえ脅されても、です」
「…そうか」
喉が酷く渇いて、コーヒーを一口飲み込んだ。
「…手を出さない、という担保が欲しいのだが」
担保、ときたか。
「俺が【ラタトスク】に所属すること、ではダメですか?」
「…ふむ」
【ラタトスク】に所属するということは、常に村雨令音に捕捉されることと同義。つまり、常に殺せる場所にいるというのが、俺の担保ということだ。というか、【ラタトスク】に所属しないと、俺生きていけないし。
「…いいだろう」
「そうですか!」
「…ただし」
喜びかけた、なんならガッツポーズの振り下ろす直前までいったのになんで止めたんですか。
「…計画に必要な霊力を確保できないと判断した場合」
「場合・・・?」
ゴクリと、喉が鳴る。
「…
そう言うと、始祖は代金を置いて去っていった。
要するに、機嫌を損ねるなってことっすかね・・・。
「え、怖っ・・・」
寒気が背筋を走り抜けた。
「どうも、士道先輩。来禅高校一年、柊十一です。十一って呼んでください。あ、イレブンでもいいですよ」
「あ、ああ、どうも。十一って呼ばせてもらうよ」
翌日、原作通りの
余裕綽々そうに見えて実は心臓バックバクだったりする。
「えっと、十一はどうしてここに?」
「いろいろあるんです」
本当にいろいろあるんです。
「そ、そうか」
「そうなのです。では」
というわけで早々に退場。できるだけ原作に沿うことを目的とするならばキャラクターと関係を持たないのが1番。一般常識としてさすがに挨拶はするが、したらもう赤の他人である。
歩くこと数分。
「お待たせしました」
「いえいえ、こちらも先程到着したばかりなので」
そう返すのは、戦闘態勢の神奈月さんだ。
昨日の今日ので(ウッドマン卿の粋な計らいにより)【ラタトスク】構成員として認められた俺に課せられたのは、天使を用いた戦闘訓練。と言っても、精々自衛程度のものだ。
五河琴里曰く、
私の船に乗ると言うなら、昨日みたいな体たらくは二度と許さないわよ。
とのこと。
だからといって、この人かいと思ったのは内緒の話である。
「では、始めてください」
「分かりました」
ときに思う。数々の天使は、精霊によって銘を呼ばれて顕現する。最初から顕現していた場合を除くと、おそらく例外はない。
いや、例外がないというのは語弊があった。五河士道、かの主人公は、最初に【
とまぁいろいろ語りはしたが、結局のところ言いたいのは、
『うっしゃァ行くかい、坊主?』
こいつは本当に天使なのか。
銘はなく、元々精霊のものであったわけでもない。しかし霊力は放っているし、他の天使に化ける。神様のくれた
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
ちょっと思考に耽りすぎた。いい加減ルーレットを回そうか。
『ガラガラガラガラガラガラガラ〜、ジャン!!喜べ坊主!今日は3番だ!』
バチクソ使えずれぇじゃねぇか馬鹿野郎。
この後、もちろん無様極まりなく負け続けた。驕ってたわけではないけど、やっぱりあの人も大概規格外の部類に入る。
ただ一つ言わせてほしい。銃弾を撃ち込む度に変な声あげるのやめて、切実に。
これでも受験生なのでまた遅くなると思いますが、完結は、多分させるので、これからもよろしくです。はい。
c+javaさん
誤字報告ありがとうございました。