意図せずウマ娘達から目の光を奪うお話   作:みっちぇる

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マイル因子が出ないので初ウマぴょいです



第8話(ウマ娘視点)

『あら?あなたは……ふ〜ん、サブトレーナーねえ。ふふっ、そんなに緊張しなくていいわよ。お姉さんが優しく教えてア・ゲ・ル』

 

『ハァイ、サブトレーナーくん。今日もあたしの体調はバッチグーよ!……ちょっと!なんで笑ってるのよ〜!』

 

『見てみてサブトレーナーくん!

はいっ、”だっちゅーの” うふふっ、今流行りのギャグなんでしょう?……え?とっくにブームは終わったの!?うそっ!?』

 

『うーん……あっ!丁度いい所に!サブトレーナーくん!これの意味分かるかしら?お友達からメール来たんだけど、内容がめちゃくちゃで何言ってるのか全然分からないのよ〜。

……えっ?縦読み?……あっ、ほんとだ!へえ〜今はこんなのも流行ってるんだ〜。また一つ最先端の流行を取り入れることができたわ!ありがとっ!』

 

『ねえ、サブトレーナーくん。あたしとデートしない?ちょっと!何も企んでないわよ!なぜかみんな遠慮しちゃって誰も来てくれないのよ!

え?どこにって?勿論あたしのタッちゃんでドライブに決まって……あれ〜?せっかくお姉さんが誘ってるのにどうして逃げるのかな〜?

こらっ!ジタバタしないの!トキメキとドキドキは保証するから二人で楽しみましょ!』

 

 

 

 

 

 ただ楽しかった。レースで勝った時と同じくらい胸がドキドキして、この高鳴りが気付かれないように君をからかう。

 よく男性からの視線を感じることは多いけれど、君からの視線は不思議と嫌悪感はない。君はバレてないと思ってるみたいだけど、女の子は視線に敏感なんだからね?

 

 自由に走って、楽しくトレーニングして、親友やカワイイ後輩たちと過ごす日常が好きだった。

 いつからか、君もあたしの日常に入り込んでいて、今では君と過ごす日々は当たり前になっていた。

 

 まだトレーナーじゃない君は、毎日色んなチームに顔を出してあたしたちのサポートをしている。トレーナーから指導を受けている時の君はとても真剣な表情で、あたしと話をしている時とはまるで別人みたいに。

 ちょっとからかってみたり、あたしなりにアドバイスをしたら真面目に聞いてくれる顔も好きだけど、一番はやっぱりあたしがレースで一着を取った時に見せてくれる子供っぽい笑顔。

 

 君の喜んでくれる笑顔が見たくて、あたしはレースで結果を出し続けた。また一つ走る楽しさを見つけたお陰で、トレーニングもレースも、今までよりもずっと楽しむことが出来た。

 

 だからあたしは、日に日に強くなる想いをトレーナーであるおハナさんと理事長にぶつけることにした。

 

『将来彼がトレーナーになったら、彼のチームに入りたい』

 

 未だにおハナさんと理事長の驚く顔を憶えている。たづなさんは苦笑いをしながら、やっぱりねという顔をしていたのは、長年の付き合いから何となく予想していたんでしょうね。

 今まで育ててくれたおハナさんには、恩を仇で返すようなことをして申し訳ない気持ちがあるけど、この気持ちに嘘を付くことはできない。あたしは二人に頭を下げて自分の気持ちを正直に伝えた。

 

 そんなあたしのワガママを、二人は意外にもすぐに認めてくれた。今までの功績を考慮してくれたのか、彼がトレーナーになるまではこれまで通りチームリギルの一員として残ることになり、二人にもう一度深く頭を下げお礼を言う。

 

 その日のトレーニング後、おハナさんから彼に話をしたらしい。直接あたしは聞いていないので、どういう言葉を彼に言ったか知らないけど、今まで見たことがない真剣な表情で「もう少しだけ待っていて欲しい」とお願いされた時は、つい見惚れてしまった。

 あんまりお姉さんを待たせると、どっかに行っちゃうぞ!と照れを隠すようにからかいの言葉を言ってしまったのは、初めて君の事を男らしいと意識してしまったからではない。きっと多分。

 

 弟みたいな存在が、いつの間にか立派に成長したのはどこか寂しいような、嬉しいような複雑な気分になる。

 でもそんな男らしいと感じた表情は、おハナさんから書類のミスを指摘されて直ぐにいつもの人懐っこい顔に戻っていた。

 すみませんとベコペコ謝る君の顔を見て、まだまだあたしがフォローしてあげなきゃダメねと、心のどこかで安心していることを無視してまた彼を弄り倒す。

 

 しばらくはこの関係がいい。変に気を使わず、自由に楽しく走ってたまに彼をからかう、この日常を大切にしたい。

 

 それからも毎日が充実した学園生活を送ることが出来た。毎年新しく入ってくる初々しい後輩ちゃんたちに鼻の下を伸ばしてる彼を威嚇したり、親友でもありライバルでもあるルドルフをいつの間にかスカウトしていたことを問い詰めたりと、あっという間に年月が過ぎていく。

 

 いつか君がトレーナーになってチームを作っても、きっと今まで通り楽しい日常が待っている。あたしはそう信じて疑わなかった。

 

 

 

 

 

 だから君が苦しんでいるのに気付いてあげられなかった自分自身が腹立たしい。

 あたしが君を支えているなどと自惚れていたことが許せない。

 一体あたしは何をしていた!!結局彼に甘えていただけじゃないの!!

 

 ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!

 

 一人で全部抱えて怖かったわよね……。

 もう大丈夫よ。お姉さんが側にいるから。

 だから安心して。今度こそ、あなたを支え続けると約束するから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレセン学園内でも屈指の実力者を有するチームリギル。もうすぐ開催されるURAファイナルズに向け、各ウマ娘たちが今日も厳しいトレーニングに励んでいた。

 

 リギルのトレーナーである東条ハナは無言でチームメンバーの練習風景を観察し、その視線は険しい。

 段々と厳しさを増しているはずの気温が、彼女たちの必死さでこれから冬を迎えるのがウソのように熱気に包まれている。

 

 そんな中で、マルゼンスキーは普段と違う雰囲気でトレーニングを行う一人のウマ娘をじっと見つめていた。

 何度も重賞で勝利を重ね、コンディション調整は幾度も経験しているはずの彼女、シンボリルドルフがレース本番さながらの威圧感を放ち、トレーニングに励んでいる。

 

 マルゼンスキーのような実力者ならば耐えうる圧ではあるが、並のウマ娘ならばまず萎縮してしまう程の圧に、チームメンバーは思わずルドルフの方へ視線を向ける。

 トレーナーである東条ハナもルドルフの様子に気付き、すかさず声を掛ける。二人でしばらく話をして、徐々にルドルフから圧が消えていく。

 ルドルフからの重圧から解放されたチームメンバーは、まるで最初から何もなかったかのように続々とトレーニングを再開していく。

 

 その中で黙々とトレーニングに励むウマ娘、グラスワンダーに気付いたのは誰一人といなかったのだが……

 

 その日のトレーニング終了後、マルゼンスキーとシンボリルドルフは誰もいなくなったターフの上をゆっくりと歩いて行く。

 いつも駆けている場所を、改めて踏み締めるように芝の上を歩く彼女たちの心情は、歴戦の猛者と呼ぶに相応しい二人にしか分からないだろう。

 

「それで?いつもクールなあなたにしては珍しいわね。何かチョベリバなことでもあったの?」

 

「……いやなに、私にだって気が張る日くらいあるさ」

 

「ふふっ。ルドルフは昔から嘘が下手ね。彼と同じくらい分かりやすいわよ」

 

「それは……あまり嬉しいことではないな」

 

 観念したように苦笑いをしながら答えるルドルフだが、彼に似ている所があると指摘された彼女の尻尾は嬉しさを隠しきれていない。

 それをマルゼンスキーはからかおうとは思わない。なぜなら、もし逆の立場ならきっと彼女のように嬉しさが隠せないから。

 

「ねえ、ルドルフ?あなたが思い悩んでいることがあたしに関係ないことならこうして無理に聞かないわ。

でも彼に関してなら話は別よ?あなたがここまで思い詰めるのは彼の事以外ありえない。

それに、あたしたちはまだ二人だけの彼のチームメンバーでしょう?だからあたしにも協力させて!!」

 

「……」

 

 マルゼンスキーの強い想いにルドルフは頭の中で問答を繰り返す。彼の秘密を話していいのか。彼女まで辛い真実を知ってしまってもいいのかと。

 ルドルフの懸念は既にマルゼンスキーが理解しているかのように、じっとルドルフの顔から視線を逸らさない。例えどんなことを言われようと、全てを受け入れる覚悟がある。マルゼンスキーの表情はそう言っているように思えた。

 

「……私のせいで……彼は命を落とすかもしれないんだ!!」

 

「っ!?ど、どういうこと!?」

 

 ルドルフの思いがけない返答に、さすがに予想できなかったマルゼンスキーは驚愕の表情を浮かべ詳しく事情を聞こうとする。

 

 3年程前から、彼は病に侵され体調を崩し始めた。それをいち早く見つけた学園側は治療法を捜し、フランスの病院なら彼を助けられるかもしれないと可能性を見つけることができた。

 でも彼は私たちのことを何よりも大事に考え、自分の身体の事は後回しにしてずっと私達に尽くしてくれた。

 不甲斐ない私のせいで、彼に甘え過ぎた私のせいで彼の寿命を奪ってしまったと。

 

 悲しみと自分への怒りに身体を震わせながら語るルドルフに、マルゼンスキーは一通り話を聞いた後にそっと彼女を抱きしめる。

 ルドルフは嫌がる素振りを見せず、彼女の優しさを受け止め、二人はターフの上でしばらくお互いを抱きしめ合い続けた。声に出さずとも聞こえてくる悲しみはどちらからなのか、はたまた両方からなのか、それは彼女たちでしか分からない。

 

「……ごめんねルドルフ。辛かったでしょう。ごめんね力に成れなくて。ごめんね……」

 

「……違う!これは私への罰なんだ。彼に甘え続けた報いなんだ。

だから私は、彼に後顧の憂いを断って治療に専念して欲しいんだ。もう私は大丈夫だからと、彼が安心して向こうに行けるように」

 

「そっか……でもねルドルフ。あなたは一つだけ間違っているわ。あなた一人だけ頑張っても、心配性の彼はきっと無茶をするに決まってる。だから、あたしにも協力させてよね!あたしたち、二人だけのチームメイトでしょう?」

 

「ふっ……そうだな。私達なら彼を安心させることが出来るか……

力を貸してくれるか?マルゼンスキー!」

 

「がってん承知の助!心配ばっかり掛ける彼にあたしたちの力を見せて、全員ぶち抜いてあげましょ!」

 

 ようやく抱き合っていた二人が離れると、先ほどまで垂れていた耳と尻尾も元気になり、いつもの笑顔を取り戻した二人。口には出さずとも心の中で感謝をしているのはお互いに感じ取っていた。

 ライバルであり親友。彼女たちはもう何も言わずとも理解出来る信頼関係がある。

 無言でその場を後にする二人だったが、決して気まずいということはなく、お互いに一つの決意を秘め、皇帝と怪物はさらなる飛躍を誓うのだった。

 

 他のウマ娘とは違い、近くに家を借りて生活しているマルゼンスキーは、心身共に疲れた身体を癒そうと風呂に入る準備に取り掛かる。

 だがふと自分の携帯を見ると、メッセージが届いていた。

 差出人は……まだ会う心の準備が出来ていない彼からだ。

 まるで先ほどの会話を聴いていたかのようなタイミングに思わず心臓が掴まれるような錯覚に陥る。

 ゆっくりとボタンを押し、メッセージ内容を一文字一文字見間違えないように確認していく。

 

 だが、マルゼンスキーは受信したメッセージを理解できないでいた。一応意味は分かる。でも自分宛に送った内容にしては意味が分からない。

 しばらくメッセージを眺めるが、何て返答すればいいか分からない。いっそのこと電話で聞いてみるか。

 

 彼の番号を携帯の電話帳から捜そうとしたその時、先ほどのメッセージに違和感を持つ。

 

(な、なに?今なにか見えたような……)

 

 もう一度よくメッセージを眺めていく。もしかしたら、本文の内容に意味はないのでは?マルゼンスキーは頭の知識を総動員させて解読に挑む。

 

(……あっ……)

 

 そして見つけてしまった彼の本当のメッセージ。彼女は頭よりも先に体が動き、彼の所へ走り出す。

 誰もいなくなった部屋の真ん中で、光を放ちながら持ち主の帰りを持つ。その光の向こう側は彼が初めて彼女に溢した弱音が写し出されていた。

 

 

 

   『もっと早く行かないとすぐに

    うり切れちゃうぞ。

    つぎに出るのなんていつか分からないんだし

    かえる時にかっておかないと。俺も生徒の

    れんしゅう見ないといけないし代わりに

    たのんだぞ!』

 

 

 

 いつもより呼吸が荒い。走っているせいか?違う!彼が苦しんでいるのに今まで助けてあげられなかった事実が彼女を苦しめる。

 まだ学園に残っているはずだ。道路を走っている車を余裕で抜き去りながら彼の元へと急ぐ。

 

 ノックすらせずに彼がいる部屋を力尽くにトビラを開けた。だが、お目当ての人物はそこにはいない。まだ彼のカバンが置かれているので学園内のどこかにいるはずだ。

 マルゼンスキーは彼が居そうな場所を手当り次第訪れ、最後に残った屋上へと足を運ぶ。

 

 静かに屋上のトビラを開けると、そこには満天の星空の下で学園を見下ろす彼の姿が。背中しか見えないその格好は儚く、今にも壊れそうで、このまま消えてしまうのではと錯覚しそうになる。

 

 ゆっくりと彼の側に近付き、そっと彼の背中と自分の背中をくっつけ合わせた。彼は一度だけこちらを見たが、またすぐに視線を戻し、今度は空を見上げている。

 

 少しずつ身体を彼の方に寄せていき、体重を掛けていくが、何も言わずとも彼はしっかりと支えてくれた。それがマルゼンスキーにとって何より嬉しかった。言葉を掛けなくても自分が望んだことをしてくれる、そんな事実が。

 

「もお!あんまりお姉さんを心配させないでよね!」

 

「あ、ああ、ごめんごめん。でもよくここにいるって分かったな?」

 

「当然よ?だってあなたのウマ娘なんだから!」

 

 本当はあちこち捜したことを彼に言わなかった。その理由は彼女すらもよく分からない。

 

 しばらく二人で空を見上げながらきれいに浮かぶ星たちと半分に欠けた月を眺め、二人だけで月見を愉しむ。会話はほとんどない。でもこのかけがえのない時間は、まるで一着を取った時と同じくらいドキドキしている。

 

 まだずっとこうしていたい。だが時間は有限だ。マルゼンスキーは勇気を振り絞り、そのままの体制で彼の手を握りしめて想いを伝える。

 

「一人で苦しかったわよね?もう大丈夫よ。あたしが側にいてあげるから。心配しないで」

 

「……」

 

 彼は何も話さない。だが彼の手が少し強く握り返してきたことが返事だったのだろう。マルゼンスキーも更に握る手の力を強める。

 

「実はあたしも初めての重賞レースは怖かったの。もうすぐ出走だっていうのに初めて脚が動かなかった。

そんな時に君がおハナさんに怒られながらあたしを励まそうとしている姿を見て思いっきり笑ったの。そしたら震えも止まって脚が動くようになった。

だから今度はあたしが助ける番。怖くても、誰かが側に居てくれるだけできっと力になるから!」

 

 マルゼンスキーは背中合わせの格好でよかったと思っていた。もし正面を向いていたら、彼に泣き顔を見られていたから。力になるって言ったばかりなのに、自分が悲しんでてどうするのか。それでも流れ落ちる涙はしばらく止まってくれそうにない。だから、もう少しだけこのままで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日からまた楽しく頑張るから。最後まで一緒に楽しんで、君だけのあたしとルドルフが証明してあげる。君のお陰で強くなったよって。だからあなたも生きることを諦めずに、これからもあたしたちの側にいてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星空が二人を照らす中、それを見上げる様に佇む女神像。彼女の願いは届いているのか、それは三女神像にしか分からない。




新キャラが実装し、ガチャを引いて新しい子がすり抜けて加入し、ストーリーを見て脳とプロットが破壊され、話数がどんどん増えていく

もう、ゴールしてもいいよね?(チラッ
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